若者の悲しみにある花の色
跡もなく心射し込む蒼い月
針の穴覗いて見える母の爪
秒針と短針だけの老い時間
負けどきをいつ誤ったか粘り腰
尊敬で繋がる刺激身を正す
あるがまま動く姿の万華鏡
発見は白紙に戻り触れたとき
語らいで見えないものが光出す
泡沫(うたかた)の流れに弾け天に溶け
抜け穴を都会につなぐコマネズミ
ウイルスが総てを止めて人試す
§§§§§§
心病み言葉乱れて花消える
思うほど淋しくは無い孤独感
糸を引く未練の粘り捨てて来た
§§§§§§
導火線過去のことまで並びたて
待っていた優しい言葉空手形
見た目ほど平凡じゃなく喰いしばる
沈黙に痺れ切らせて粘り勝ち
捨てきれぬ粘りがあざの即身仏
距離を置き溜息殺す猿翁
図書館は夢掻き立てる老若男女
粘り気を可愛い嘘が中和する
§§§§§§
振り返り柱の影で泣く女
京はずれ乙女のままの化石出土(でる)
最後まで騙され通し去ってゆく
旅の果て利休鼠に染めた雨
縄のれんちょっと夢見た恋の美酒
久しぶり唇重ね恋終わる
§§§§§§
人類と歴史が違うウイルス
水際は仮想の幕の粘り腰
稲光遅れる音を数えてる
殺消毒大気を覆う静電気
雨だれの砕けた恵み苔に告ぐ
時と温 生命(いのち)のかたみ地下で羽化
粘り気のさなぎの記憶少しあり
ラビットの泪の数に思い馳せ
成果まで数え切れないモルモット
§§§§§§
人間の騒ぎをよそに花は咲く
人乱れ地球の気性荒くなる
粘らずにざわめき消して雨は降る
水鏡花びらひとつ掬(すく)いあげ
少しだけ黄色を加え春になる
身を任せ転がる花の風模様
音もなく季節知らせる椿咲く
春の風ベンチにそそぎ時間(とき)遊ぶ
§§§§§§
ストレスを露天に溶かし白い雲
とつとつとたき火を囲み語る夜
一輪が花を咲かせた老食卓
二本立て私を責める夢を見た
§§§§§§
滑り台奥行きのない時流れ
エゴイズム貫く意地の矛盾華
舞台から見えないものを客見てる
孤独だと思わせているハリネズミ
音階をあやつり心なごませる
見えぬもの見えたときトンネル消え
§§§§§§
揚げ足を取って取られて茶番劇
隠蔽で安倍氏が見せた腹の底
偽りの過去変える嘘繰り返す
托生の重さ噛みしめ衿正せ
§§§§§§
温暖化地球の涙溢れだす
首脳等の決断の差が瞭然化
棘じゃなくウイルス潜む蜜の味
桜までちょっと控えめパンデミック
§§§§§§
賽の目に粘り勝ちなどありません
今も過渡期必要悪の煙出す
ストレスに総てを背負わせるカルテ
親切を重ねたリスク誰が負う
入荷せず告げる店員マスクして
§§§§§§
酔うほどに忘れたいことが痛みだす
確かめて何も語らず空見上げ
優しさが生活基盤脅かす
無言の目糸引く粘り責め立てる
寂しさは小さな夢で終わること
古時計物語あって棄てきれず
なぜ生きる素朴な疑問にうろたえる
腹を割り本音で一人また消えた
駆け巡る反論殺し頭下げ
人生で何度か思う時止まれ
墓場まで持ってゆきたい墓が無い
§§§§§§
海の色見続けて夢膨らませ
日が沈み校庭にひとり君がいた
ヒロインに恋しながら通学電車
小指触れ最後と決めて粘り出す
恋をして同心円に離れ行く
そっとしまい次の恋までチャージする
匂いたつ重量感の息遣い
木蓮に泪が伝う白い肌
§§§§§§
守るため未来拒否して時止める
まな板に泪の跡が光ってる
慾残し口はさまぬ忍の老い
欲は無くでも知恵がいる老いの道
忘却で冒険増やし生きつなぐ
§§§§§§
人とは何か 見せる親の責務
悪意なく乱れた言葉罪深い
糸粘る試す釈迦を諌める蜘蛛
§§§§§§
§§§§§§
世の中、何が起こるか分からない。昨年末、新しい年に新型コロナウイルスの
爆発的拡がりで世界中が身動きできなくなると、たぶん誰も想像できなかったと
思う。令和二年(2020年)4月7日現在、拡散の勢いは増すばかりで治療薬や
ワクチンがなく、収束の次期は誰も予想できない事態に陥っている。ナノ単位
の大きさの肉眼で見えないウイルスの恐怖に、世界中が振り回されている。一
寸先は闇だと云うことを、世界中の人々は実感させられた。
令和二年(2020年)の春、ニュース番組に限らず、テレビのチャンネルを捻
ると、連日連夜、新型コロナ関係の話題がトップで、しかも大半の時間を費やし
ている。このような状況になって、約二ヶ月になり、事態は悪化するばかりで、
有効な手立ては、手洗いと外出の自粛など消極的な対処に終始している。今
後も数カ月にわたって、もしくは年を超す恐れもあり、収束のめどすらついてい
ない。
当初、昨年末(2020年12月)、中国武漢で発生したとき、新型コロナウイル
スが、急速に世界に拡散するとは、想像もしていなかった。あっという間に、中
国全土に拡散したが、日本など東南アジアの地域で治まるものと、私は思って
いた。それが、ヨーロッパ・特にイタリアで爆発的に感染し、アメリカ・南アメリ
カ、そしてアフリカまで世界全土に拡がり、毎日毎日、多くの人々が亡くなって
いることは、私にとって、まったくの予想外のことだった。
三月に入り、一気に新型コロナウイルスが世界規模で拡散した。その勢いは
衰えを知らず、猛威をふるっている。しかし私は、正直なところ、手洗いやうが
いなど清潔感を維持していれば、インフルエンザと比べて怖くないと、数日前
まで考えていた。しかし、新型コロナウイルスの感染力の強さに、警戒感を持
つようになった。潜伏期間が2週間と長く、ほとんど症状に出ないために、本人
の自覚なく知らぬ間に感染を広げてしまう。とても厄介なウイルスである。70歳
の志村けんが感染後数日で亡くなり、両親は陰性にもかかわらず1歳未満の赤
ん坊が亡くなった。吾が家は、90歳を超える二人の両親と同居しており、神経
質に成らざるをえない。
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は2020
年3月11日、新型コロナウイルスの感染拡大について、世界的な流行を意味
するパンデミックだと述べた。
4月7日、安倍晋三首相が、「緊急事態宣言」発令を、国民向けに説明した。
対象地域は、東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県
で、8日午前0時から効力を発生させ、期間は1カ月程度で5月上旬の大型連
休までは、国民に不急不要の外出の自粛を求めることになった。
令和二年(2020年)4月7日現在、新型コロナウイルスの国内感染者数(クル
ーズ船含む)は4618人、死亡者数91人。世界では、感染者数は1,206,590
人、死亡者数67,510人。この数字も刻々変化している。検査調査器具や医療
関係者が総ての国で充実しているとは考え難く、各国の環境や事情を考える
と、この数字の信頼性は、それほど高いとは思われず、氷山の一角の可能性を
感じる。
今年に入っての、感染者と死亡者の推移を下記に記す。
1月末日 2月末日 3月末日
中国本土 9782人(213人) 79,251(2,835) 81,519(3,305)
香港 12 92(2) 714(4)
マカオ 7 10
台湾 9 39(1) 322(5)
日本 17 947(11) 2,915(77)
韓国 11 3150(17) 9,786(162)
タイ 19 42 1,651(10)
カンボジア 1
ベトナム 5 16 204(0)
フィリピン 1 3(1) 2,084(88)
シンガポール 13 102 879(3)
マレーシア 8 25 2,766(43)
ネパール 1 1,251(32)
インド 1
スリランカ 1
アラブ 4 19
米国 6 62 164,610(3,170)
カナダ 2 14 7,448(89)
英国 2 20 22,465(1,408)
フランス 6 57(2) 45,171(3,024)
ドイツ 5 66 67,051(650)
イタリア 2 821(21) 101,739(11,591)
フィンランド 1
ロシア 1 2,337(9)
オーストラリア 9 24 4,550(18)
ベトナム
イラン 593(43) 44,605(2,757)
クウェート 45
バーレーン 38
イラク 7
イスラエル 7 4,831(17)
スペイン 32 94,417(7,716)
スイス 15 15,922(359)
オーストリア 9 9,851(128)
メキシコ 2
ブラジル 1 4,661(165)
ベルギー 22,775(513)
オランダ 11,817(864)
トルコ 10,827(168)
ポルトガル 6,408(140)
スエーデン 4,028(146)
インドネシア 1,528(122)
南アフリカ 1,326(3)
エジブト 656(41)
読売新聞から引用、日本はクルーズ船を含む
人類にとって大きな試練に違いない新型コロナウイルスという複合汚染が、
いつ、どのような形で収束してゆくのか、想像し難いが、そのとき、世界も日本
も、昨年までと違った『世界のかたち』になっているように、私には思える。新し
いものが誕生し、新しい仕組みが始まっているかもしれない。今まで以上に、し
たたかさを身に付けていかなければ、生きてゆけない社会が拡がっているのだ
ろうか。
ウイルスの歴史は人類とは比べられぬほど古い。だから今回の新コロナのよう
なウイルス感染は、何度も起こっていたに違いない。しかし、昔むかし、例えば
平安時代ならば、人や物の移動は限られた範囲のことで、大半が、その範囲内
で治まっていた。
文明の発達によって、流通が盛んになり、限られた地域からいっきに世界レ
ベルになってしまう。初期の段階で隠蔽せずに、危機を認める誠実さに徹する
勇気があれば、世界中の知恵と対処によって、拡大化は防げる時代に進化し
ていると、私は信じたい。しかし、各国のリーダ達の何かが、それを阻んでいる
のだろう。
地球の視点になれば、今回の新コロナ感染は、地球の浄化と人類への警告
なのかもしれない。この躓(つまづ)きを、今後どのように活かせるか、地球の地
点になって考察すべきだと思う。
新型コロナウイルスの感染予防のため、世界中が鎖国状態に陥り、日本にお
いても、三密(密室、密集、密接)を避けることを、政府が推進して、音楽やスポ
ーツ・演劇、宴会などが中止や延期で、極端に控える傾向が強くなっている。
このようなときこそ、音楽やスポーツや芸術が人々に力を与え必要とされるに
もかかわらず、それ等が出来ないストレスは、いずれ問題になるように思われ
る。自宅で一人楽しめる読書が見直されたならば、不幸中の幸いであるが、図
書館の閉館は致し方ないけれど、個人的には残念なことだ。
私個人について述べれば、二月三月と読書やこの五七五(娯秘稚語)に費
やした時間は、今までと変わらなかった。これからどうなるかは不明だが、大き
な変化はないように思う。出来上がった作品の出来栄えも相変わらずで、自身
としては、迷い道に紛れ込んだ印象を抱いている。いろんな試みに挑戦した
が、ちょっと、その挑戦に引っ張られている感覚がある。それが、迷いになって
いるのかもしれない。これからも気長に、詠んで行けたならば、それで良いと思
っている。
今回まとめた作品は、令和2年3月1日から3月31日までの一ヶ月間に詠ん
だ作品から、自選しました。何か一句でも、心に触れる作品があれば、これほ
ど嬉しいことはありません。
2020年(令和二年)4月7日
福井正敏
|