ShitamatiKARASU  私の歴史覚書帖   No.1



新撰組(1) 実態について
2009/5/5



中学生の頃、司馬遼太郎さんの『燃えよ剣』を夢中になって読み、新選組を知った。それと同時に、テレにドラマ『新選組血風録』の栗塚旭の土方歳三のかっこ良さに魅了され、沖田総司(島田順司)や斎藤一(左右田一平)の活躍に胸をおどらされた。『新選組血風録』も司馬遼太郎さんの作品だが、このテレビドラマ『新選組血風録』は、脚本家・結束信二さんのオリジナル作品だと思う。毎回激しい殺陣シーンがあり、映像からは新選組が強力な殺戮集団の印象を与えるが、毎回ドラマの終了前に土方歳三が日誌を記す場面で、史実を歪めない巧みな描き方をしていた。中学生だった私は、映像の印象が強烈で、それが新選組のイメージとして記憶に残った。

 十数年前に小栗上野介忠順に興味を持ち、幕末の時代を調べるようになったころ、浅田次郎さんの『壬生義士伝』を読み、再び新選組に感心を持った。そのとき、伊東成郎著『新選組は京都で何をしていたか』に出会い、新選組の意外な素顔に私は驚いた。

 新選組の現実に行った仕事は、京都に潜伏する過激派尊王攘夷論者や不逞浪士の取り締まりであり、それは斬殺ではなく捕縛することである。京都における5年間で、新撰組が池田屋の変などの取締りにおいて殺害したと確認できる人数は、17名のようだ。ドラマ等で描かれるような煩雑に人を斬りまくる暗殺集団のようなイメージとは、明らかに異なる。

 新選組が刃を向けていたのは、過激派尊王攘夷論者や不逞浪士ではなく、むしろ組織維持のために同志たちだった。これは、動かしがたい現実だが、とても悲惨なことである。組織維持や内部抗争の過程で粛清された隊士は、初代局長芹沢鴨や新見錦らを含めて41名にのぼる。取り締まりにおいて殺害した17名の2倍以上である。京都の治安部隊として、京都守護職の支配下にあった初期の隊員数が約60名(最終的には200名を超す集団に成長するが)であったことを考えると、41名という粛清された隊員数は、あまりにも多い。この事実から推測される新選組の姿は、大いなる矛盾を抱えた組織であると言わざるを得ない。

 新選組の実態はどのようなものだったのか? 
 
 ご存知ならば、是非教えて欲しいです。エピソードなどを、これから気長に綴ってゆきたいと思います。

(1)坂本龍馬が新選組に入っていたかもしれなかった。
  新選組は庄内藩の浪人・清河八郎が幕府に建白して採用された『浪士隊』が元になり、この浪士隊の献策がされたとき、隊の幹部として取り立てるべき十二名の浪士の名簿が作成された。この十二名の中に、坂本龍馬の名前が入っており、近藤勇や土方歳三の名前は見られない。
 浪士隊の設立の際に、幕府に提出されたその名簿は、
『文久三壬戌年十二月十三日松平主税助より差越候書面』
庄内産:清河八郎
芸州産昨年入牢当九年出牢:池田徳太郎
下総産昨年入牢当十一年出牢:石坂宗順
水戸産昨年入牢当此節出牢:内藤久七郎
水戸産昨年入牢当此節出牢:堀江芳之助
水戸産先年遠島当時揚屋:杉浦直三郎
水戸産当時牧助右衛門家来:倖塚行蔵
筑前産:磯新蔵
常陸土浦産当時寄合水野国之助家来:大久保杢之助
土州産当時浪人:坂本龍馬
伊勢産先年箱根御雇当時浪人:松浦竹四郎
阿州産当時浪人:村上俊五郎
の12名である。

 坂本龍馬は文久2年3月24日、土佐藩を脱藩し、4月下関・白石正一郎宅に赴く、7月大坂に着く、閏8月江戸の千葉重太郎宅に入る。10月勝海舟に面会する。
 清河八郎は北辰一刀流の千葉道場において竜馬の先輩にあたる。また清河八郎は土佐勤皇党の間崎哲馬らと『虎尾の会』という尊皇攘夷団体をつくっており、その間崎哲馬は龍馬と土佐勤皇党の同志である関係などから、龍馬は浪士隊に関わっていた可能性が浮かんでくる。 そして、勝海舟の作った神戸の海軍塾の設立主旨と、浪士隊の設立主旨に、多くの共通点が見られることから、二つは良く似た目的で設立された団体と考えてよい。
 この頃、勝海舟は神戸に海軍の学校を設立する許可を得て、幕臣の子弟たちが学ぶ正規の学校のほかに、勝海舟の私塾として諸藩の藩士たちが学ぶ海軍塾も設立していた。
 龍馬は、この『海軍塾』と『浪士隊』の両方から声が掛かり、清河八郎と勝海舟の人物の違いなのか、理由はわからないが、勝海舟を選んだ。もし海舟の『海軍塾』の設立の時期が遅れていたならば、龍馬は新選組の隊員になっていたかもしれないし、その場合は、新選組は違ったものになっていたかもしれない。


以下随時、気長に、更新してゆきたいと思います。

2009/5/6

参考文献
伊東成郎著『新選組は京都で何をしていたか』(2003/10/4KTC中央出版1800円)
松浦玲著『新選組』2003/9/19 岩波新書
中村彰彦著『新選組全史(上下)』2001/7/25 角川文庫
加来耕三著『徹底検証・新選組の謎』2003/10/15 講談社文庫
木村幸比古著『史伝・土方歳三』2001/12/15 学研M文庫
竹下倫一著『龍馬の金策日記』2006/5/5 祥伝社
ほか多数


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