キノンワールド・・・細胞膜で活躍する分子たち
ブログもよろしく。
脂溶性ビタミン
細胞膜には、膜タンパクをはじめ、様々な分子が存在しますが、
細胞膜の主な成分は、脂質ですので、脂溶性のものが多いです。
細胞膜の機能は、物質の輸送やシグナル伝達の他に、原核生物ではエネルギー代謝が重要ですが、
これらに、キノンや脂溶性ビタミンが重要です。
ちなみに、納豆で有名な?ビタミンKは、キノンの一種です。
ビタミンには、水溶性のビタミンB群もありますが・・・
水溶性なので、細胞膜の中にはなさそうです・・・
ちなみに、B群は、核酸の構造に似ていますが・・・
RNAやDNAといった核酸も水溶性なので、細胞膜の中には入り込みにくそうですね。
尚、タンパク質は、脂溶性のものも、水様性のものもあります。
原始生命体が、細胞膜(と膜に埋め込まれた物質)だけで、
細胞内に何もない段階では、キノンや脂溶性ビタミンが活躍していたかも・・・キノンワールド???
古細菌の細胞膜は、グリセロール-1-リン酸のイソプレノイドエーテル(脂質)でできていますが・・・
脂溶性ビタミンは、イソプレンから生成される、テルペノイドに由来するのは興味深いですね。
余談ですが、真正細菌の細胞膜は、グリセロール-3-リン酸の脂肪酸エステルでできていますが、
ω-6脂肪酸のアラキドン酸から生成される、
プロスタグランジンやロイコトリエン等のエイコサノイドは、炎症反応と関連する生理活性物質です。
キノンは、
2つのケトン構造を持つ環状の有機化合物です。
最も単純な構造のキノンには、ベンゾキノンがあります。
1,4-ベンゾキノンが、一般的で、
誘導体には、ユビキノン-1があります。
ケトンの性質として、オキシム( >C=N−OH )を形成し、
酸化剤(自身は還元され、プロトンをもらいます)の性質として、ジヒドロキシ誘導体(1,4-ヒドロキノン)を形成し、
アルケンの性質として、α,β-不飽和ケトンを形成します。
6員環構造を生じるディールス・アルダー反応の、親ジエン体にもなります。
1,2-ベンゾキノンは、安息香酸から、カテコールを介して生成するバクテリアもあります。
安息香酸といえば、葉酸の原料にパラアミノ安息香酸がありますが、何か関係するのでしょうか?
ビタミンK(フィロキノン・メナキノン)も、キノンに分類されます。
脂溶性ビタミンには、A、D、E、Kあります。
脂溶性ビタミンは、イソプレンから生成される、テルペノイドに由来します。
テルペノイド由来のものは、他に、コエンザイムQ10(ユビキノン)、クロロフィル、ヘム、胆汁酸があります。
ビタミンAは、
レチノール(アルコール)、レチナール(アルデヒド)、レチノイン酸(酸)、のビタミンA1と、
これらの3-デヒドロ体である、ビタミンA2、及び、その誘導体です。
動物にのみにみられます(β-カロテン等のプロビタミンAは、動植物ともにみられます)。
網膜細胞の保護や、DNAの遺伝子情報の制御に用いられます。
ビタミンAは、ロドプシンの発色団で、視覚信号伝達に重要です。
ちなみに、古生代でみられた、カンブリア爆発は、眼ができたことで硬い殻をもつ生物が出現するようになった、
という説があります(光スイッチ説)。
目の遺伝子は、植物からもらった、という説もあるようです。
また、光合成をするウミウシ(エリシア・クロロティカ)のDNAから海藻のDNAが発見されたそうです。( 生命大躍進P.50- )
尚、ウミウシの仲間は、藻類の葉緑体を分解せずに細胞内に取り込む例があります(盗葉緑体現象)。
ちなみに、ミトコンドリアと色素体のDNAも、大部分は細胞核に移行しています・・・
葉緑体型 Fts Z(シアノバクテリア由来)やミトコンドリア型 FtsZ(αプロテオバクテリア由来)は、
細胞核にあるゲノムにも含まれているようです。 細胞骨格
尚、眼の分子進化は、分子からみた生物進化P.185、も参考になります。
余談ですが、眼のレンズのもととなるクリスタリンという構造タンパク質は、
なんと、乳酸デヒドロゲナーゼ等の酵素が起源のようです。( 同P.264 )
ビタミンDは、
ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)と、ビタミンD3(コレカルシフェロール)があります。
ビタミンD2は植物に、ビタミンD3は動物に多く含まれます。
ビタミンD3は、皮膚で、紫外線により生成されます。
ビタミンD受容体( VDR )は、核内受容体で、転写因子として作用します。
腸、骨、腎臓及び副甲状腺の細胞にある、VDRの活性化により、
甲状腺ホルモンとカルシトニンの補助により、血中カルシウム及びリン酸濃度の維持等が行われます。
VDRは、細胞の増殖と分化にも関わっています。
免疫反応にも関わるようです。
ハダカデバネズミでは、ビタミンD3を欠損しているようですが、長寿です。
ビタミンEは、
抗酸化物質として働きます。
ビタミンK(フィロキノン・メナキノン)は、
キノンに分類されます。
動物体内で、血液の凝固や、組織の石灰化に関わります。
メナキノンは、酸化還元電位がユビキノンよりも低いため、
より還元的(嫌気的)環境における電子伝達体として機能します。
原生代以前の太古の生命は、電子伝達体に、ユビキノンではなく、メナキノン(ビタミンK2)を利用していたようですが・・・
電子伝達系では、
細胞膜上に存在する電子伝達体に電子が流れることによって、
プロトンポンプ機構(プロトンが膜を通過する機構)と、
スカラー反応(膜の内側で還元反応(プロトンをもらう反応)が起こり、
膜の外側で酸化反応(プロトンを渡す反応)が起こって、
プロトンを間接的に膜外に放出する機構) 酸化還元反応
が生じて、プロトンが膜の内側から外側にくみ出され、プロトン濃度勾配が生じます。
酸素非発生型光合成の電子伝達系では、
光化学反応系が細胞膜に存在するため、呼吸鎖複合体との共同的な働きが行われます。
光化学系I( PSII )がキノン型と呼ばれますが、
PSII( 鉄硫黄型 )に対応する緑色硫黄細菌の電子伝達が、
ユビキノンより原始的とされる、メナキノン(ビタミンK2)が使われているのは興味深いですね。
光合成と呼吸鎖の電子伝達は以下の通りです。
酸素非発生型
紅色細菌(PS IIに対応)
光(赤外線)→P870(バクテリオクロロフィル)→ユビキノン→
シトクロムbc1複合体(呼吸鎖複合体III)→シトクロムc2→シトクロムオキシダーゼ(呼吸鎖複合体IV)→酸素)
緑色硫黄細菌(PS Iに対応)
光(赤外線)→P840(バクテリオクロロフィル)→フェレドキシン→
NAD+→呼吸鎖複合体I→メナキノン (ビタミンK2)→シトクロムbc1複合体(呼吸鎖複合体III) →シトクロムc→P840)
バクテリオロドプシン(高度好塩菌)
レチナール(ビタミンA)で光を吸収して、プロトン濃度勾配を形成するプロトンポンプです。
ATP合成に用いられます。
反応は、バクテリオロドプシンが単体で行い、光合成経路や、電子伝達経路は存在ません。
酸素発生型(非循環的電子伝達系)
光(赤色)→PSII(キノン型。クロロフィル 680nm)→プラストキノン→シトクロムb6/f複合体→プラストシアニン→
PSI(鉄硫黄型。クロロフィル 700nm)→フェレドキシン→NADPH→CFo-CF1ATP合成酵素→光リン酸化
呼吸鎖 電子伝達
複合体I(プロトンポンプとキノンサイクル)→ユビキノン(複合体II(コハク酸デヒドロゲナーゼ)でも還元型ユビキノンが生じます)→
複合体III(スカラー反応)→シトクロムC(真正細菌はキノン)→
複合体IV(プロトンポンプ、真正細菌はスカラー反応)→酸素(水が生成)
酸素発生型光合成の電子伝達は、酸素非発生型のものを組み合わせたようです。
酸素非発生型光合成には、呼吸鎖複合体が使われているので、当然といえば当然なのですが、
呼吸鎖の電子伝達は、緑色硫黄細菌(NADHから開始)→紅色細菌を組み合わせた電子伝達に、とても似ていますね。
高度好塩菌のバクテリオロドプシンは、レチナール(ビタミンA)で光を吸収して、細胞膜内外でプロトン濃度勾配を形成します・・・
ビタミンAは、ヒトでは視覚に関係しますね。
他の脂溶性ビタミンはというと・・・、
ビタミンDは、カルシウム( Ca2+ )濃度維持に重要です・・・
Ca2+といえば、細胞内での情報伝達に重要ですので、細胞膜の情報伝達機能と関係しそうです
ちなみに、Ca2+は、細胞内では、ミトコンドリアと小胞体で貯蔵されています・・・
呼吸鎖は、ミトコンドリアにあり、脂質は小胞体で生成されますね。
あと、そういえば、紫外線から生成されますね・・・
紫外線を吸収することで、細胞膜の機能維持や紫外線の知覚に役立つかも???(詳細不明)
余談ですが、昆虫は、紫外線を知覚できるものがありますが、ビタミンDと関係するのでしょうか?
細胞膜は脂質でできているので、脂質の酸化防止により、細胞膜の機能維持に関係しそうですね。
ベンゼン環から誘導され、2つのケトン構造を持つ環状の有機化合物です。
七員環構造のもの等、非ベンゼン系のキノンもあります。
最も単純な構造のキノンには、ベンゾキノンがあります。
生物学的に重要な物質です。
ビタミンK(フィロキノン・メナキノン)は、キノンに分類されます。
光化学系I ・光化学II 等の電子伝達系において、電子受容体としての働きがあります。
光化学系I には、2対のフィロキノン、
光化学系II には、2対のプラストキノンが存在します。
また、光化学系II と相同性が高いとされる、紅色光合成細菌の光化学系には、2対のユビキノンが存在します。
タンパク質と反応して結合する性質があり、
昆虫の外骨格が脱皮後に硬化するのは、キチン質の外骨格の基質にあるタンパク質に、キノンが結合することによります。
その他、色素や酸化剤としても利用されます。
分子式C6H4O2で表される有機化合物で、1つのベンゼン環からなるキノンです。
2種類のみ存在し、1,4-ベンゾキノンが一般的で、1,2-ベンゾキノンは不安定です。
アニリンや、p-フェニレンジアミンを酸化させることによって得られます。
また、フェノールをアセトニトリル溶媒中において、過酸化水素で酸化させることによって、カテコール、ヒドロキノンとの混合物として得られます。
ユビキノン-1は、天然に存在する1,4-ベンゾキノン誘導体です。
ケトンの性質として、オキシム( >C=N−OH )を形成し、
酸化剤の性質として、自身は還元されるため、ジヒドロキシ誘導体(1,4-ヒドロキノン)を形成し、
アルケンの性質として、付加反応を経て、α,β-不飽和ケトンを形成します。
ディールス・アルダー反応における、親ジエン体としても用いられます。
無水酢酸及び硫酸と反応して、ヒドロキシキノールの3酢酸塩を与えます( Thiele reaction )。
オレフィン・メタセシス反応中の、二重結合の組み換えを抑制するためにも用いられます。
ポリエステル樹脂の原料は、反応性が高くゲル化しやすいため、重合禁止剤としてベンゾキノンが用いられます。
カテコール水溶液を、空気酸化させることによって得られます。
フェノールのオルト酸化によっても得られます。
亜硫酸等の還元剤と反応させることで、カテコールに還元されます。
メラニンの前駆体です。
バクテリアであるPseudomonas mendocinaは、安息香酸の代謝によって、カテコールを介して、1,2-ベンゾキノンを得ています。
ビタミンA (レチノイド)
レチノール(ビタミンAアルコール。狭義のビタミンA。-CH2OH )、
レチナール(ビタミンAアルデヒド。-CHO )、
レチノイン酸(ビタミンA酸。-COOH )、のビタミンA1と、
これらの3-デヒドロ体である、ビタミンA2、
及び、その誘導体です。
ビタミンAは、動物にのみにみられます。
β-カロテン(テトラテルペン)等、動物体内においてビタミンAに変換されるものを、プロビタミンAといいます。
プロビタミンAは、動植物ともにみられます。
ヒト血液中のビタミンAは、ほとんどがレチノール(アルコール型)です。
β-カロテンが、小腸の吸収上皮細胞(または肝臓、腎臓)において分解されてビタミン A になります。
網膜細胞の保護や、DNAの遺伝子情報の制御に用いられます。
β-カロテンは、小腸に存在するβ-カロテン-15,15'-ジオキシゲナーゼの作用により、レチナールに変換されます。
レチナールは、レチノールデヒドロゲナーゼの作用により、多くはレチノールに還元された状態で存在しています(可逆反応)。
また、レチナールオキシダーゼにより、レチノイン酸へと代謝(不可逆反応)されます。
レチノールは、肝臓中にパルミチン酸エステルの形で貯蔵され、必要に応じて遊離します。
遊離したレチノールは、レチノール結合蛋白質 ( RBP ) と結合し、
更に、トランスサイレチン( プレアルブミン・TTR )と複合体を形成して、血液中を流通します。
尚、生理作用の発現には、レチノールよりも、その代謝産物であるレチナールやレチノイン酸が重要とされます。
ヒトでは、眼球の網膜上にある視細胞のうち、薄明視に重要な桿状体細胞において、
桿体オプシン(タンパク質)と、リシン残基を介して結合し、ロドプシンとなります。
ビタミンAは、ロドプシンの発色団となります。
視色素とも呼ばれ、視細胞における、光による興奮(視興奮)の引き金機構として重要な物質です。
βカロテンが、鎖の真ん中で切断されると、二つのトランス型のレチノールというアルコール型のビタミンAが生成します。
レチノールは、酸化されてレチナールというアルデヒドになります。
トランス型のレチナールを、シス型のレチナールに変化させ、タンパク質であるオプシンに収納されます。
この状態が、ロドプシンです。
ロドプシンに光が当たると、シス型のレチナールが、安定なトランス型に戻り、トランス型レチナール分子が、オプシンから外れます。
この変化が細胞の中に伝えられ、化学的に増幅されて、光が当たった、という信号となり、視神経に伝えられます。
トランス型レチナールは、再びイソメラーゼの働きでシス型に折り曲げられて、オプシンに収納されます。
レチナールが不足すると、レチノールの酸化により、補われます。
このため、網膜には、レチノールをレチナールに酸化するためのアルコール脱水素酵素が豊富に存在します。
ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)と、
ビタミンD3(コレカルシフェロール)があります。
ビタミンD2は植物に、
ビタミンD3は動物に多く含まれ、ヒトでは、ビタミンD3が重要です。
ビタミンDは、
腸での、カルシウム( Ca2+ )の吸収を高める、
腎臓の働きにより、Ca2+の血中から尿への移動を抑制する、
骨から、血中へCa2+の放出を高める、
ことで、血中のCa2+濃度を高める作用がある。
また、ビタミンDは、免疫反応等への関与も示唆されています。
作用機構と機能の多様性から、ビタミンAとともにホルモンに分類されることがあります。
ビタミンD3は、皮膚で、紫外線により生成されます。
羽根や毛皮により、紫外線が皮膚に到達しない動物があります。
鳥類や、毛皮を持つ哺乳類では、皮膚から羽根や毛皮に皮脂を分泌し、
毛繕いすることによって、口からビタミンDを摂取しています。
ハダカデバネズミでは、ビタミンD3を欠損しているようです。
ハダカデバネズミは、完全地中棲であるので、太陽光にあたることはありません。
尚、ハダカデバネズミは、老化に対して耐性があり、健康な血管機能を維持し、げっ歯類の中で非常に寿命が長いです。
ビタミンD3 ( コレカルシフェロール )の生成
コレステロールが、プロビタミンD3( 7-デヒドロコレステロール )となったあと、
皮膚上で紫外線を受けて、ステロイド核のB環が開き、プレビタミンD3( ( 6Z ) -タカルシオール )となります。
ビタミンDの生成に効果がある、波長300nm付近の紫外線( UV-B線 )を、ドルノ線といいます。
プレビタミンD3は、自発的にビタミンD3へ異性化します。
ビタミンD3は、肝臓で、25-ヒドロキシコレカルシフェロール( 25( OH )D3 、カルシジオール)へと変化し、肝細胞に貯えられます。
カルシジオールは、腎臓の尿細管に移送され、2種類のビタミンDに変化します。
活性型ビタミンD( 1,25-ジヒドロキシビタミンD3 、カルシトリオール )は、
副甲状腺ホルモンと、活性化したカルシジオール-1-モノオキシゲナーゼ( 1α-ヒドロキシ酵素 )によって生成されます。
1α-ヒドロキシ酵素が不活性な場合には、別の酵素がカルシジオールのC-24をヒドロキシ化して、
非活性型ビタミンD( 24,25-ジヒドロキシビタミンD3 )を生成します。
この反応により、カルシジオールは、不活性化されます。
作用のメカニズム
活性型のカルシトリオールは、リンパ液中の輸送物質であるビタミンD結合タンパク質( VDBP )と結びついて、対象臓器に運ばれます。
カルシトリオールは、対象細胞の細胞核内に存在する、ビタミンD受容体と結びついて、生体効果を発現します。
ビタミンD受容体( VDR )は、ステロイド/甲状腺ホルモンの核内受容体に属しています。
脳、心臓、皮膚、生殖腺、前立腺及び乳房を含む、ほとんどの臓器の細胞で発現しています。
VDRは、TRPV6(腸内でのカルシウム吸収の第一段階を担う、膜カルシウムチャンネル)や、
カルビンディン(腸及び腎臓での、ビタミンD依存型カルシウム結合タンパク質)、
等の輸送タンパク質の遺伝子発現を調節する、転写因子として作用します。
腸、骨、腎臓及び副甲状腺の細胞での、VDRの活性化により、
甲状腺ホルモンとカルシトニンの補助により、血中カルシウム及びリン酸濃度の維持と、骨密度の維持が行われます。
VDRは、細胞の増殖と分化にも関わっています。
ビタミンDは、免疫システムにも影響を及ぼし、
VDRは、単核白血球、活性化T細胞及びB細胞を含む、白血球で作用しています。
ビタミンE (トコフェロール) NTP
主に抗酸化物質として働きます。
2-メチル-1,4-ナフトキノンの3位誘導体で、
天然には、ビタミンK1(フィロキノン)と、ビタミンK2(メナキノン)が存在します。
その他、ビタミンK3やビタミンK4等の合成型が知られます。
ビタミンKは、ビタミンK依存性タンパク質中の特異的なグルタミン酸残基が、
γ-カルボキシルグルタミン酸( Gla )に転換される際に必要な補因子です。
ビタミンK依存性タンパク質の活性化に必須であり、
動物体内で、血液の凝固や、組織の石灰化に関わっています。
ビタミンK1(フィロキノン)
植物が光合成に使うために合成しています。
光合成装置のうち、光化学系Iにおいて電子伝達体として機能します。
動物体内では、ガンマグルタミルカルボキシラーゼの補因子として働きます。
酸素発生型光合成を行う生物(シアノバクテリア、藻類、植物)のみが合成します。
ナフトキノン骨格は、シキミ酸経路を通ってコリスミ酸が合成され、
そこから1,4-ジヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸( DHNA )が合成されます。
フィチル側鎖は、ピルビン酸とグリセルアルデヒド-3-リン酸から、
非メバロン酸経路を経由して、ゲラニルゲラニル二リン酸が合成され、
ゲラニルゲラニル還元酵素によって、フィチル二リン酸が合成されます。
DHNAとフィチル二リン酸を、プレニル基転移酵素で結合し、
最後に2位をメチル化することで、フィロキノンが合成されます。
ビタミンK2 (メナキノン)
更に、イソプレノイド側鎖の違いにより細分されます。
チーズや納豆に多く含まれます。
原核生物は、MK-6からMK-14という、側鎖の長いメナキノンを合成します。
主な機能は、原核生物において、呼吸鎖や光化学系における電子伝達体です。
NADH:メナキノン酸化還元酵素は、
ミトコンドリアの呼吸鎖複合体Iと相同なタンパク質複合体で、
NADHを酸化し、メナキノンを還元する際に、細胞膜をはさんでプロトンを輸送します。
こうして生じたプロトン勾配を利用してATPが合成されます。
他に、補酵素F420、リンゴ酸、ピルビン酸等が、メナキノンに電子を供給します。
生じた還元型メナキノン(メナキノール)は、他の化合物に電子を渡して、メナキノンに戻ります。
メナキノール:フマル酸酸化還元酵素は、
ミトコンドリアの呼吸鎖複合体IIと相同なタンパク質複合体で、
メナキノールをメナキノンに酸化すると共に、フマル酸をコハク酸に還元します。
メナキノンは、酸化還元電位が-74 mVと、ユビキノンよりも低いです。
このため、酸素分子の存在下では自発的に酸化状態になるため、電子伝達体としては機能できず、
より還元的(嫌気的)環境における電子伝達体として機能します。
原生代以前は、大気中の酸素濃度が低かったことから、ほぼ全ての生物がメナキノンを利用しており、
約6億年前以降に酸素濃度が上昇するに従って、ユビキノンを利用できる生物が広がったようです。
メナキノンのような低電位キノンから、ユビキノンのような高電位キノンへの移行は、原核生物のいくつかの系統で独立に起こったようです。