原核生物・・・最も共通祖先に近い生命。
原核生物は、細胞核を持たない生物で、真正細菌(バクテリア)と、古細菌(アーキア)があります。
これらが現れたのは、35億から41億年前と考えられており、共通祖先が、まず真正細菌と古細菌に進化したと考えられています。
その後古細菌か古細菌に近縁な生物から、真核生物の本体が進化した、ようです。
ただし、原核生物では、遺伝子の水平伝播(遺伝子の水平転移)、という現象があるため、
その遺伝子から作成される系統樹と、種の系統樹との整合性に矛盾が見られることがあり、注意が必要です。
(ヒトを含む高等生物においても、レトロウイルスなどによりウイルスの遺伝子がとりこまれることがあります。)
・・・真核生物のミトコンドリアや葉緑体で働く遺伝子や、一部の代謝に関連する遺伝子は、真正細菌に近いようです。
・・・細胞膜も、下記のように真核生物と真正細菌は同じですね。
・・・古細菌でも、ユリアーキオータのMarine Group IIは、エステル型脂質の合成酵素を持っています。遺伝子水平伝播によるみたいですが。
(ユリアーキオータより、クレンアーキオータの方が真核生物に近縁、という説(エオサイト説)もありますね。)
この辺りは、 どんどん新説が出てきそうですね。
さて、原核生物は、生物圏のほぼすべてに分布し、バイオマス(生物量)は真核生物の数倍から数十倍にもなるとされています
・・・過酷な環境を耐えてきているため、タフですね。
真正細菌と古細菌の外観はほぼ同じで共通する性質も多いですが、系統的には古細菌は真正細菌よりも、真核生物に近いと考えられています。
1990年、ウーズは全生物を真核生物ドメイン、古細菌ドメイン、真正細菌ドメイン、に大別する3ドメイン説を提唱しました。
1996年、超好熱性メタン菌の全ゲノムが解読されました。真正細菌と類似の遺伝子は、11〜17%で、半分以上の遺伝子は新規の遺伝子であった、とのことです。
原核生物と真核生物との相違点は、
大きさは、真核生物(5から100μm)に比べて非常に小さい(数μm)、
細胞核や細胞内小器官がない、
微小管を持たない、
原形質流動やエンドサイトーシスを行わない、
有糸分裂を行わずDNAは細胞膜に付着して移動する、
リボソームが70S(50S+30S)(真核生物は80S(60S+40S))等、があります。
・・・真核生物の進化は、大型化(でないと、他の生物を取り込めません・・・
どうやって大型化が可能になったのかはわかりません・・・細胞骨格(微小管等)の獲得(原形質流動や有糸分裂にも関わります)とリボゾームの改変でしょうか?)と、
エンドサイトーシスによる他の生物の取り込み(ミトコンドリアや葉緑体等)、によるのでしょうか?
後、核膜や小胞体など内膜系の進化も重要だと思います。内膜で区画を区切ることで代謝の効率が上がりますし、代謝を行う面積も増えます。
真正細菌と古細菌との相違は、
細胞膜を構成する脂質の構造が対掌体の関係にあり、真正細菌がグリセロール骨格のsn-1、sn-2位に炭化水素鎖が結合するのに対し、古細菌はsn-2、sn-3 位に結合します。
また、真正細菌の細胞膜の脂質は、グリセロールに脂肪酸がエステル結合しますが、古細菌は脂肪酸がなく、イソプレノイドアルコールがエーテル結合します。
真正細菌の細胞壁は、ムレイン(ペプチドグリカン)で、N-アセチルムラミン酸、D-アミノ酸を含むのに対し、多くの古細菌の細胞壁は糖タンパク質です。
・・・各々脂肪酸やイソプレノイドその他を採用した理由は何でしょう?・・・どちらもタフなので、謎です。
真正細菌は、グリセロール-3-リン酸の脂肪酸エステル、により構成される細胞膜を持つ原核生物です。
個体数は、推定5×1030、約7000種で、未発見の種を含めると100万種以上存在すると考えられています。
通常の土壌や湖沼に加え、上空8000mまでの大気圏、熱水鉱床、水深11000m以上の海底、南極の氷床等、極限環境にも生存します。
ただし、生育には必ず水分が必要で、乾燥に対して極めて弱いです。しかし一部は芽胞という乾燥に強い形態をとることができます。
更に、多細胞生物の腸管や表面にも生息しています(共生)。腸内細菌や発酵細菌、病原細菌として人との関わりも深いです。
真正細菌の中で最も初期に分岐したと考えられているのは、アクウィフェクス門で、コル古細菌とともに生命の起源に最も近いともいわれています。
(ただし、派生的な系統であることを示す研究もあります。)
これは、グラム陰性、好熱性で、好気的に水素を酸化し、二酸化炭素を炭素源とする化学合成独立栄養生物です。
嫌気条件で最終電子受容体に硫黄や窒素、硝酸塩を用いることができるものもあります。鞭毛を持つものが多いです。
最初の光合成生物は、緑色非硫黄細菌という説や、紅色細菌(共に、酸素非発生型の光合成を行います。)という説などがあり、詳細は不明です。
最初の酸素発生型光合成生物は、シアノバクテリア、といわれていましたが、最近は、シアノバクテリアと異なる、という説もあるようです。
真核細胞のミトコンドリアは、プロテオバクテリア門、アルファプロテオバクテリアの細菌に由来している、と考えられています。
モリクテス綱は、動植物の寄生体として特化しており、細胞壁をありません。マイコプラズマや、ファイトプラズマが属します。
・・・ベンターらが、ゲノムを人工合成して移植した細菌が、マイコプラズマですね。
プランクトミケス門 は、原核生物の中では最も複雑な構造と生活環を持つグループの1つです。
通常の細菌と異なり、出芽によって増殖し、細胞壁はペプチドグリカンを含まず、糖タンパク質より構成されています。細胞内に核膜のような構造を形成します。
古細菌は、グリセロール-1-リン酸のイソプレノイドエーテル、より構成される細胞膜をもつ原核生物です。
極限環境に生息し、高度好塩菌、超好熱菌、好熱好酸菌に区分されます。
高度好塩菌は、20〜25%の塩化ナトリウム (NaCl)濃度でも増殖し、塩湖等、非常に塩濃度が高い環境に生息します。
好熱菌は、温泉や海底熱水噴出孔等、45℃以上の環境で活動します。
このうち80℃以上に至適生育温度を持つものを超好熱菌といい、全生物中最も高温の122℃で増殖可能なものがあります。
強酸を好む好熱好酸菌は、温泉や硫気孔等に生息します。
アルカリ性の塩湖には高度好塩好アルカリ菌が、生息します。
更に、極地の海、湖等の寒冷の環境でも遺伝子が検出されます。
湿原や下水、海洋、土壌等一般的な条件にも存在し、メタン菌は水田、湖沼、動物の消化器官等、嫌気環境に限れば広範囲に分布します。
古細菌の分類: 約320種(2010年)
ユリアーキオータ、ユーリ古細菌: メタン菌や高度好塩菌を中心とした分類群です。既知の古細菌の8割以上が含まれます。
下位分類として8綱が記載され、原核生物の門としては最大の多様性を持ちます。
テルモコックス綱(サーモコッカス綱)は、進化的にはユリアーキオータの基部付近から分岐したと考えられています。
分布の中心は熱水噴出孔周辺の地下と考えられています。
テルモプラズマ綱は、好気好酸性のテルモプラズマなどがあります。非常に多様な栄養形態を示します。
細胞壁がない種が多く、細胞融合をすることがあります。
大規模な遺伝子水平伝播の形跡があり、古細菌型ヒストンやアクチンを持たず、代わりに真正細菌型のHUを持ちます。
Marine Group IIは、古細菌でありながら、エステル型脂質の合成酵素を備えており、光合成型ロドプシンを持っています。 トップ
ハロバクテリウム綱(高度好塩菌)は、増殖に高いNaCl 濃度を要求します。
多くは、光合成をするために膜にバクテリオロドプシンという光合成色素を持ちます。
メタノピュルス・カンドレリは、深海の熱水噴出孔などに生息する超好熱メタン菌です。2009年現在、最も高温(122℃)で増殖が可能な生物です。
クレンアーキオータ(クレン古細菌): 超好熱菌や好熱好酸菌が多く、水素や硫黄を酸化、従属栄養的に増殖するものが多いです。
ユリアーキオータよりも真核生物に近縁とする説があります(エオサイト仮説)。
テルモプロテウス目(サーモプロテアス目)からは、ヒストンと相同性のある遺伝子が見つかっています(一般的に好熱クレンアーキオータはヒストンを持ちません)。
また、アクチンに似たクレンアクチン、というタンパク質が発見されています。
タウムアーキオータ門(タウム古細菌)は2008年に新しく提案された古細菌の門です。
古細菌ですが、極限環境微生物としての性格は薄く、分布は海洋や土壌が中心です。
系統的には、クレンアーキオータに近縁とされています。
真核生物がこの系統から派生したという仮説もあり、ユビキチンやチューブリンなどの報告があります。
コルアーキオータ門(コル古細菌。生命の起源に最も近いともいわれています)