葉緑体・・・光合成を行う小器官。
葉緑体 : 葉緑体の起源、葉緑体の形状、葉緑体の機能、藻類の葉緑体
参考 : ピレノイド、カルボキシソーム、盗葉緑体現象
葉緑体は、光合成を行う、生物にみられる、細胞小器官です。
その他に、窒素代謝、アミノ酸合成、脂質合成、色素合成など、植物細胞の代謝で、重要な役割を持ちます。
クロロフィル(PSIIでは680nm、PSIでは700nmの波長(赤色)を吸収します。)を含みます。
紅色光合成細菌のバクテリオクロロフィルは、870 nm、
緑色硫黄細菌のものは、840 nmの波長(ともに赤外線)を吸収します・・・
赤外線が発生する場所で、光合成生物が誕生したのでしょうか?
シアノバクテリアは、カルボキシソームという、タンパク質の小構造体があります。
これは、細胞質に濃縮された重炭酸イオンを、二酸化炭素に変換し、ルビスコに供給するための構造です。
ルビスコの基質は、二酸化炭素で、重炭酸イオンは固定できないため、炭酸固定反応に重要ですが・・・
なぜ、シアノバクテリアは、二酸化炭素を利用するようになったのでしょう・・・
そのまま、重炭酸イオンを固定する酵素を作る方が、便利と思いますが。
尚、ルビスコは、地球上で最も存在量が多い酵素、とされます。カルビン回路
後、盗葉緑体現象があり、葉緑体は細胞から分離した状態でも、機能できることがあります。
光合成を行う、生物にみられる、細胞小器官です。
黄色のカロテノイドや、
多量のクロロフィル(PSIIでは680nm、PSIでは700nmの波長(赤色)を吸収します。)を含むので、
一般的には緑色に見えます。
ただし褐藻の葉緑体は、クロロフィルの他にフコキサンチン(主に400-500nmの波長(青色)を吸収します。)も持つため褐色に、
紅藻は、フィコビリンをもつため紅色に見えます。
紅色光合成細菌のバクテリオクロロフィルは、870 nm、
緑色硫黄細菌のものは、840 nmの波長(ともに赤外線)を吸収します。
紫外線を利用した光合成は、基本的になさそうです。
葉緑体は、細胞内に1から1000個存在し、大きさも、形も様々です。
原始褐藻のように細胞体制が原始的な藻では、細胞一つあたり、1個の球形の葉緑体を含みます。
紅藻、褐藻、緑藻などでは、1から数個含みます。
多細胞の緑藻や陸上植物では、10から数百個含みます。
維管束植物の場合、葉緑体は、非光合成細胞では、色素体として存在します。
色素体には、アミロプラスト、クロモプラスト、白色体など、様々な種類がありますが、
すべての色素体は、二重の包膜で囲まれ、葉緑体DNAを持ちます。
葉緑体DNAは、様々なタンパク質とともに核様体を作っており、
細胞核の染色体と同様、核様体は、葉緑体DNAの複製,転写,分配の単位となっています。
ただし、ヒストンはありません。
また、細菌のDNA結合タンパク質として知られるHU, DPS等のタンパク質は、
緑色植物の葉緑体には、基本的には存在しません。
代わりに亜硫酸還元酵素が、DNA結合タンパク質として機能しています。
起源については、真核光合成生物の共通祖先が、
光合成を行う真正細菌や真核生物を細胞内に共生させたことに由来する、と考えられています。
色素体の起源となる共生体としては、シアノバクテリアの一種と考えられていますが、詳細不明です。
尚、シアノバクテリアの起源としては、
光化学系 I と II を供給したものとして、ヘリオバクテリアとクロロフレクサスが考えられています。
しかし、光合成以外の機能に関しては、細胞の起源は不明です。
尚、葉緑体の培養はできませんが、
嚢舌目などで、盗葉緑体現象がみられ、
葉緑体は細胞から分離した状態でも、機能できることがあります。
多細胞植物の多くは、直径が5 - 10μm程度、厚さが2 - 3μm程度の凸レンズ形です。
種子植物の場合、葉緑体は、大きさが直径約5μmで、単純な円盤状です。
細胞の外周に並んで見えることが多いです。
これは、細胞の中央部を液胞が占めていることもあります。
原形質流動によって移動するのが見られます。
葉緑体の形は、分類群によって様々で、
高等植物のものは、やや扁平な円盤状です。
藻類でも、様々な形のものが知られています。
リボン型で円筒形の細胞内にラセン状に入っている、アオミドロのものや、
星型になったホシミドロのもの、
板状になって常に光の方に面を向けるサヤミドロのものなど、があります。
種子植物の葉緑体は、外側を全透性の外膜と、半透性の内膜の二重膜で覆われており、
内膜の内部を、ストロマといいます。
ストロマには、独自のDNA( 葉緑体DNA、cpDNA )が含まれ、
それと対応した独自のリボソームがここに含まれています。
ストロマ内には、多数の膜でできた薄い袋状の構造が並んでおり、
この袋をチラコイドといいます。
酵素、DNA、RNA、リボソーム、そして膜で囲まれたチラコイドがあります。
チラコイド膜は、葉緑体の内膜が陥入することで形成されます。
チラコイド膜の組成は特殊で、リン脂質は10%しかなく、
膜の構成成分の80%を占めるのは、
ガラクトシルジアシルグリセロールと、ジガラクトシルジアシルグリセロールです。
チラコイド膜のアシル基は、高度に不飽和であるため流動性が大きく、光の強弱に反応して動き回ることができます。
この時活躍するのが、アクチンタンパクです。
チラコイド膜には、光合成色素や、光合成の光に関わる反応に関する酵素が位置しています。
チラコイド膜の内部は、チラコイドルーメンといいます。
チラコイドは、積み重なってグラナを構成し、
グラナ同士は、チラコイドラメラ(ストロマチラコイド)でつながっています。
グラナの数は10〜100程度です。
光合成が最もよく知られた主要な機能です。
その他に、窒素代謝、アミノ酸合成、脂質合成、色素合成など、
植物細胞の代謝で、重要な役割を持ちます。
葉緑体の形質は様々で、光合成色素も群によっては異なったものを持っています。
比較的共通する形質としては、ピレノイドという構造があります。
色素体の中に1 - 数個ある、丸い粒状の構造で、
タンパク質性で、光合成産物を貯蔵物質に変えるのに関与しているとされます。
緑藻類では、デンプン合成がここで行われます。
植物界のものと藻類とで大きく異なる点に、
藻類の葉緑体が、しばしば三重以上の膜で覆われている点があります。
葉緑体のDNAが、はっきりした塊に見える場合があります。
これらは、重複的な細胞内共生によるものと考えられるようになりました。
植物界や藻類の二重膜葉緑体を持つものは、
葉緑体を持たない真核生物に、シアノバクテリアのような原核藻類が共生したのが起源、と考えられます。
二重の膜は、
内側が原核光合成生物の細胞膜、
外側が植物細胞の細胞膜に由来するようですが、詳細不明です。
それに対して、クロララクニオン藻の葉緑体は、四重の膜に包まれ、
外側から二枚目と三枚目の間に、ヌクレオモルフという、核様の構造があります。
内側の二重膜は本来の葉緑体であり、
その外の膜は、それを所有していた藻類の細胞膜、
最外層がこの藻類自体の細胞膜に由来します。
つまり、真核藻類を、非光合成性の真核生物が細胞内に取り込んだことで、藻類化したとされます。
尚、盗葉緑体現象という現象があります
ヌクレオモルフは、取り込まれた藻類の核の名残です。
この藻類の場合、取り込まれたのは緑藻類とされます。
藻類の葉緑体で、炭素固定の中核を担う区画です。
ピレノイドは、葉緑体の中に存在する細胞小器官です。
多くの場合、光合成産物であるデンプンなどの貯蔵物質に囲まれており、
葉緑体の他の部分と明瞭に区別できます。
ピレノイドは膜系を持たない細胞小器官ですが、
ここには葉緑体内のルビスコが高密度で集積しています。
ルビスコは、二酸化炭素を、五炭糖リン酸(D-リブロース1,5-ビスリン酸)と結合させ、
2分子のC3化合物(ホスホグリセリン酸)を作ります(カルボキシラーゼ(カルボキシル基転移酵素)反応)。
これと競合的な反応として、
ルビスコは炭素固定を伴わないリブロース1,5-ビスリン酸へのオキシゲナーゼ(酸素添加酵素)作用も持ちます。
ピレノイドは、炭素固定の場における溶存二酸化炭素の拡散を防いで濃度を高め、
同時に酸素濃度を低下させる(光化学系IIを隔離する)ことで、
競合的なオキシゲナーゼ反応の抑制に役立っていると考えられています
ピレノイドの起源は、藍藻のカルボキシソームとされています。
ピレノイドは高等植物には見られません。
これは、水中では空気中よりも二酸化炭素の拡散速度が小さく(約 1 / 1000 )、
藻類のように水中に棲む小さな生物の方が、ピレノイドの存在が有利に働くためと考えられています。
例外として、唯一ツノゴケの仲間には、退化的なピレノイドが見られます。
また、どの藻類の植物門にもピレノイドがない生物が含まれており、
分類群とその有無を単純に対応づけることはできません。
ピレノイドの形状は、分類群ごとに異なっており、しかも群ごとに安定した形態形質です。
したがって、藻類の分類形質として非常に重要なものです。
生物によっては、ピレノイド中に葉緑体DNAが局在しているものや、
またピレノイドが細胞核を包むような形状をとなっているものもあります。
そのため、細胞核とピレノイドが、何らかの遺伝情報をやり取りしているという説もありますが、詳細は不明です。
ルビスコを集積したタンパク質の小構造体で、
シアノバクテリアや、一部の化学合成独立栄養細菌の細胞質に存在します。
カルボキシソームの内部にはルビスコが集積し、
特殊な殻タンパク質に被われた多面体構造をしています。
役割は、細胞質に濃縮される重炭酸イオンを、CO2に局所的に変換して、ルビスコに供給し、
炭酸固定反応を助けることにあります。
ルビスコを集積している藻類のピレノイドも、一種の相同器官といわれています。
しかし、表面の殻タンパク質の有無は不明です。
サルモネラ菌や大腸菌にも、
嫌気状態でエタノールアミンやプロパンジオールを資化する時、
細胞質にカルボキシソームに似た構造体が形成されます。
この構造体の組成は不明ですが、
エタノールアミンやプロパンジオール資化オペロンには、
カルボキシソームの殻タンパク質と相同性を示す遺伝子があるので、関連した構造体と考えられています。
しかし、これらの細菌はルビスコをもたず、炭酸固定に直接の関係はなく、機能は不明です。
光合成をするほぼすべてのシアノバクテリアや
ルビスコを主要なCO2固定酵素とする、化学合成独立栄養細菌の一部
(プロテオバクテリアの、Halothiobacillus, Thiobacillus, Thiomonas, Acidithiobacillus, Nitrobacter, Nirosomonasなど)に分布します。
原始的な真核藻類Cyanophora paradoxaの、葉緑体に存在するタンパク質構造体は、
ピレノイドというより、カルボキシソームであるようです。
大きさ80 - 140 nmの多面体構造で、タンパク質の殻と内部にあるルビスコからなり、
厚さ3 - 4 nmの殻タンパク質の層に包まれています。
また、炭酸脱水酵素(カルボニックアンヒドラーゼ)も含まれていますが、その局在ははっきりしていません。
シアノバクテリアは、炭酸濃縮機構をもち、明所で細胞質に重炭酸イオン(HCO3–)を高濃度に蓄積します。
カルボキシソーム内のカルボニックアンヒドラーゼは、
重炭酸イオンを二酸化炭素に変換し、すぐそばのルビスコに二酸化炭素を供給します。
溶存ガスとしての二酸化炭素は細胞内に濃縮できませんが、
重炭酸イオンは細胞内に濃縮できます。
しかし、ルビスコの基質は二酸化炭素であるため、重炭酸イオンは固定できません。
カルボキシソームは、細胞質に濃縮された重炭酸イオンを、局所的に二酸化炭素に変換し、ルビスコに供給するための構造です。
構成成分によって2種類に分類されます。
α-カルボキシソームは、化学合成独立栄養細菌とα-シアノバクテリア(Prochlorococcusなどを含む)に分布し、
β-カルボキシソームは、β-シアノバクテリア(Synechocystisなどを含む)に分布します。
α-カルボキシソームをコードする遺伝子は、ひとまとまりになっていますが、
β-カルボキシソームの遺伝子は、いくつかのクラスターに分かれています。
また、この違いは、ルビスコの系統とも相関があります。
軟体動物の嚢舌目や繊毛虫・有孔虫・渦鞭毛藻で見られる、餌の特殊な利用法です。
餌藻類の葉緑体を細胞内に取り込み、一次的に保持する現象です。
ウミウシの仲間の嚢舌類(のうぜつるい)は、海藻の細胞内物質を吸い込むように食べますが、
藻類の葉緑体を分解せずに細胞内に取り込む例が知られています。
こうして動物細胞に取り込まれた葉緑体は、ここで光合成を行い、動物細胞にその産物を供給するようです。
取り込まれた葉緑体が光合成能力を保持しており、
取り込んだ個体がその光合成から栄養を得ている場合は、機能的盗葉緑体現象と呼ばれます。
尚、クロララクニオン藻などでの葉緑体の二次的獲得と異なり、
葉緑体を元々持っていた個体の核は、細胞内に取り込まれません。