光合成・・・起源は、電子伝達系と解糖系?

 

 

光合成の分類

葉緑体(クロロプラスト)

光化学反応

カルビン回路

 

光合成は、植物や植物プランクトン、藻類など、光合成色素をもつ生物が行う、

光エネルギーを化学エネルギーに変換する生化学反応です。

 

光合成生物は、光エネルギーを使って、と空気中の二酸化炭素から、炭水化物(グルコース、ショ糖、デンプン等)を合成しています。

また、水を分解する過程で生じた酸素を大気中に供給しています。

年間に地球上で固定される二酸化炭素は約1014kg、貯蔵されるエネルギーは1018kJ、と見積もられています。

 

光合成は、光化学反応と、カルビン回路に大別されます。

光化学反応は、光エネルギーからNADPHATPを合成する過程で、

カルビン回路は、NADPHATPを使ってCO2H2Oから糖を合成する過程です。

 

葉緑体(色素体)の起源は、詳細は不明ですが、シアノバクテリアの一種と考えられています。更に、

シアノバクテリアの起源としては、光化学系Iは、ヘリオバクテリア光化学系IIクロロフレクサス、と考えられています。

 

光化学反応は、電子伝達系と似ていますね。

カルビン回路は、ペントースリン酸回路と似ています・・・何となく、ホルモース反応とも似ているような気もします。

トップ

 

 参考

光受容体タンパク質 フィトクロム(赤)、クリプトクロムとフォトトロピン(青)、可視光線(光)

ニトロゲナーゼ

ポリリン酸

亜硫酸酸化酵素 、モリブデン

亜硫酸還元酵素 、フェレドキシン

トップ

 

 

分類

酸素発生型光合成(主に真核生物)

緑色植物

紅色植物

灰色植物

クリプト植物

ハプト植物

不等毛植物

渦鞭毛植物

ユーグレナ植物

クロララクニオン植物

藍色細菌(藍藻またはシアノバクテリア。真正細菌): 色素体の起源?

 

酸素非発生型光合成(全て真正細菌)

ヘリオバクテリア 光化学系IPSI鉄硫黄型)の起源?

緑色非硫黄細菌 光化学系IIPSIIキノン型)の起源?

緑色硫黄細菌 : PSIに類似。

紅色非硫黄細菌: PSIIに類似。

紅色硫黄細菌 : PSIIに類似。

好気性光合成細菌

 

ロドプシン型(主に古細菌)

高度好塩菌

Marine group II テルモプラズマ綱

SAR11(真正細菌)

 

酸素発生型光合成は、反応中心、電子伝達系などの相同性は高いです。

集光色素は、かなり異なっており、

カロテノイドではβ-カロテン、

クロロフィルではクロロフィルaだけが、共通に存在しています。

 

酸素非発生型光合成は、系統樹上極めて古く、光化学系が一つしかありません。

緑色硫黄細菌の光化学系は、PSIと相同性が高く、

紅色細菌緑色非硫黄細菌のものは、PSIIと相同性が高いです。

 

各光合成の収支式

一般式:  CO2 + 2 H2D(電子供与体) → (CH2O)n (炭水化物) + H2O + 2 D (酸化を受けた電子供与体)

 

酸素発生型光合成           :  6 CO2 + 12 H2O C6H12O6 + 6 H2O + 6 O2

緑色硫黄細菌                  :  6 CO2 + 12 H2S C6H12O6 + 6 H2O + 12 S

紅色非硫黄細菌              :  6 CO2 + 12 CH3CHOHCH3 (イソプロパノール) → C6H12O6 + 6 H2O + 6 CH3COCH3 (アセトン)

トップ

 

葉緑体(クロロプラスト)

光合成生物にみられる細胞小器官で、色素体プラスチド)の一種です。

黄色のカロテノイドや、多量のクロロフィルPSIIでは680nmPSIでは700nmの波長(赤色)を吸収します。)を含むので一般的には緑色に見えます(補色)。

ただし褐藻の葉緑体は、クロロフィルの他にフコキサンチン(主に400-500nmの波長(青色)を吸収します。)も持つため褐色に、

紅藻は、フィコビリンをもつため紅色に見えます。

 

紅色光合成細菌のバクテリオクロロフィルは、870 nm

緑色硫黄細菌のものは、840 nmの波長(ともに赤外線)を吸収します。

紫外線を利用した光合成は、基本的になさそうです。

 

葉緑体は、細胞内に1から1000個存在し、大きさも形も様々です。

原始褐藻のように細胞体制が原始的な藻では、細胞一つあたり、1個の球形の葉緑体を含みます。

紅藻、褐藻、緑藻などでは、1から数個含みます。

多細胞の緑藻陸上植物では、10から数百個含みます。

 

種子植物の場合、葉緑体は、大きさが直径約5μmで、単純な円盤状です。

全透性の外膜と、半透性の内膜の二重膜で囲まれています。

内膜の内部を、ストロマといい、酵素、DNARNA、リボソーム、そして膜で囲まれたチラコイドがあります。

チラコイド膜の内部は、チラコイドルーメンといいます。

チラコイドは積み重なってグラナを構成し、グラナ同士は、チラコイドラメラ(ストロマチラコイド)でつながっています。

グラナの数は10100程度です。

 

チラコイド膜は、葉緑体の内膜が陥入することで形成されます。

チラコイド膜の組成は特殊で、リン脂質は10%しかなく、膜の構成成分の80%を占めるのは、

ガラクトシルジアシルグリセロールと、ジガラクトシルジアシルグリセロールです。

チラコイド膜のアシル基は、高度に不飽和であるため流動性が大きく、光の強弱に反応して動き回ることができます。

この時活躍するのが、アクチンタンパクです。

 

起源については、真核光合成生物の共通祖先が、光合成を行う真正細菌や真核生物を細胞内に共生させたことに由来する、と考えられています。

色素体の起源となる共生体としては、シアノバクテリアの一種と考えられていますが、詳細不明です。

トップ

 

シアノバクテリア 分類

原核細胞で、細胞小器官をもちません。細胞内には、

光合成の明反応を行うチラコイド膜

炭酸固定を行うカルボキシソーム

有機窒素の貯蔵用のシアノフィシン

リン貯蔵用のポリリン酸顆粒、などが存在します。

 

チラコイド膜では、酸素発生型の光合成を行いますが、

葉緑体とは異なり、光合成の電子伝達と、酸素呼吸の電子伝達が、プラストキノンなどを共有しています。

光捕集アンテナ装置として、フィコビリソームを持ちます。

カルボキシソームには、RubisCOと炭酸脱水酵素が存在し、細胞内に蓄積した重炭酸イオンから二酸化炭素を生成し、RubisCOに供給しています。

ニトロゲナーゼを持ち、窒素固定をするものもあります。ニトロゲナーゼは、活性中心にモリブデンを持ちます。

ポリリン酸は、リンやエネルギー源貯蔵の他、遺伝子発現など種々細胞機能調節の役割もあります。 参考へ

 

グロエオバクター目が、最も古く分岐したとされ、チラコイド膜はなく、細胞膜上に光化学系複合体が存在し、フィコビリソームは細胞膜の内側表面に結合しています。

 

シアノバクテリアの起源は、光化学系IIIについては、

ヘリオバクテリア(フィルミクテス門)と、クロロフレクサス(緑色非硫黄細菌)が考えられていますが、詳細不明です。

 

フィルミクテス門には、ヘリオバクテリアを含むクロストリジウム綱(この綱に含まれる、破傷風菌やボツリヌス菌は、自然界で最強クラスの毒素を産生します。)や、

バシラス綱(乳酸菌は、発酵食品を生産します・・・毒と食物、極端ですね。)などがあります。

特徴として、DNA中のGC含量(全核酸塩基中のG+Cの割合)が低いことや、芽胞形成などがあります。

ヘリオバクテリアは、酸素非発生型光合成を行い、光化学反応中心は、光化学系I鉄硫黄型)と類似していますが、

光捕集系を持たず、初発電子供与体は、P798です。 

分類へ 

 

クロロフレクサス門には、緑色非硫黄細菌の他、高度好熱性のテルモミクロビウム綱などがあります。

特徴として、リポ多糖(LPS)を含む外膜を持たないこと、などがあります。

緑色非硫黄細菌は、酸素非発生型光合成を行い、光化学反応中心は、紅色細菌のものや酸素発生型光合成の光化学系IIキノン型)と類似しています。

緑色硫黄細菌のものは、光化学系Iと類似しています。) 

分類へ 

 

維管束植物の葉緑体

主な機能は、光合成ですが、その他、窒素代謝、アミノ酸合成、脂質合成、色素合成など、植物細胞における代謝の重要な中心となっています。

非光合成細胞では、色素体として存在します。

 

葉緑体DNAcpDNAは、ストロマに存在し、様々なタンパク質とともに核様体を作っており、

細胞核の染色体と同様、核様体は、葉緑体DNAの複製,転写,分配の単位となっています。

ただし、ヒストンはなく、細菌のDNA結合タンパク質として知られる、HU, DPSなどのタンパク質も、ありません。

 代わりに亜硫酸元酵素が、DNA結合タンパク質として機能しているようです。

 

チラコイド膜には、光合成色素や、光合成の光に関わる反応に関する酵素があります。

 

藻類の葉緑体

ピレノイドという構造が、比較的共通します。

色素体の中に1から数個ある、丸い粒状のタンパク質で、光合成産物を貯蔵物質に変えるのに関与する、とされます。

緑藻類では、デンプン合成が行われます。

 

植物界のものと藻類とで大きく異なる点に、藻類の葉緑体が、三重以上の膜で覆われている点があります。

また、葉緑体のDNAがはっきりした塊に見える場合があります。

これらは、重複的な細胞内共生によるもの、と考えられています。

葉緑体 トップ

 

光化学反応(こうかがくはんのう)、明反応(めいはんのう) カルビン回路

酸素発生型光合成

酸素非発生型光合成

バクテリオロドプシン

 

光化学反応は、色素分子が光エネルギーを吸収し、励起された電子が、物質の酸化還元を引き起こす反応です。

緑色植物による、酸素発生型光合成の非循環的電子伝達系が、水の光分解、即ち酸素の発生、に関与する光化学系反応です。

 

光化学反応が行われるのは、葉緑体のチラコイド膜です。

葉緑体を持たない光合成原核生物では、細胞膜か、クロマトフォアで光化学反応が行われます。

 

なお、酸素発生型の光化学系複合体 ( I, II ) は、それぞれ、酸素非発生型の光化学系複合体、と相同性があると言われています。

 

クロロフィル分子が、光化学反応を起し、還元物質NADPHや、ATPの合成の源となります。

多数あるクロロフィル分子のうち、光化学反応を起すのは特定の分子(二量体)だけなので、クロロフィルの特別ペア ( special pair ) といいます。

これ以外は、集光色素または電子受容体などとして働きます。

光化学反応

 

酸素発生型光合成経路 分類へ

非循環的電子伝達系

循環的電子伝達系

 

水は、酸化還元電位の高い酸素原子と、それの低い水素原子の結合した安定な物質です。

光化学反応により、水を電子供与体として用い、酸素を発生し(水の光分解)、炭酸ガスを還元します。

 

光化学反応は、チラコイド膜に存在する、光化学系IIPSII)、シトクロムb6f、光化学系IPSI)、の3種のタンパク質複合体で構成されます。

PSIIとシトクロムb6f の間は、プラストキノン(PQ)、

シトクロムb6f PSIとの間は、プラストシアニン(PC)、で結ばれています。

 

チラコイド膜では、クロロフィルが、光エネルギーを使って水を分解し、プロトン(H+)と酸素分子(O2)、そして電子(e-)を作ります。

この時にできた電子によって、NADP+(酸化型)からNADPH(還元型)が作られます。

PSIIに光(hν)が当たることによって、H2OからNADP+に電子が流れ、プロトンがチラコイドルーメンに取り込まれます。

また、酸素発生複合体(OEC)によって、水が分解されて酸素が発生するときも、プロトンがチラコイドルーメンに取り込まれます。

 

チラコイド膜内外のプロトン濃度勾配による浸透圧エネルギーによって、ATP合成酵素が、アデノシン三リン酸 (ATP)を合成します。

 

収支式

12 H2O + 12 NADP+ 6 O2 + 12 NADPH + 12 H+(in)

72 H+(in) + 24 ADP + 24 Pi (リン酸) → 72 H+(out) + 24 ATP

 

生じたNADPHATPは、カルビン回路で使用されます。

酸素発生型

 

非循環的電子伝達系 

光化学系複合体II(光化学系IIPSII

シトクロムb6/f複合体

光化学系複合体I(光化学系IPSI

 

CFo-CF1 ATP合成酵素

 

1. PSIIにて、光エネルギーを吸収し、色素分子が励起されて酸化還元反応が起き、水が分解されて電子が引き出されます。この時に発生するプロトンはプロトン濃度勾配となります。

2.PSIIで供与された電子は、プラストキノンを通じてシトクロムb6/f複合体に伝達され、プロトンポンプとスカラー反応が起き、プロトン濃度勾配が形成されます。

3.電子は、シトクロムb6/f複合体からプラストシアニンを通じて、光エネルギーを受けて励起したPSIに伝達されます。

4.PSIで、再び電子は光エネルギーを受けて励起され、酸化還元電位の低いフェレドキシンに伝達され、フェレドキシンが還元されます。

5.還元型フェレドキシンは、PSIに含まれるフェレドキシン-NADP+レダクターゼ (FNR) で触媒され、光化学系の最終的な還元物質NADPHが生産されます。

6. 1.2.で発生したチラコイド内腔側に発生するプロトン濃度勾配を利用して、CFo-CF1ATP合成酵素で、ATPのリン酸化が行われます(光リン酸化)。

 

5.6.で合成されたNADPHと、ATPは、カルビン回路にて炭酸固定に用いられます。

 

収支式

12H2O + 12NADP+ 6O2 + 12NADPH + 12H+in

72H+in + 24ADP + 24Pi(リン酸) → 72H+out + 24ATP

非循環的電子伝達系

 

光化学系IIPSII)における反応 葉緑体 緑色非硫黄細菌

アンテナ色素タンパク質によって集光された680nmの波長の光で、反応中心のクロロフィルスペシャルペアP680が励起されます。

 

水の光分解を行って酸素を発生し、得られた電子を、プラストキノンに伝達してプラストキノンを還元(プラストキノール)します。

同時にプロトン濃度勾配の形成も行います。

 

PSIIは、紅色光合成細菌の反応中心と相同性が高い、とされます。

 

収支式

12H2O + 12プラストキノン (PQox) 24H+in + 6O2 + 12プラストキノールPQred、還元型プラストキノン)

非循環的電子伝達系

 

シトクロムb6/f複合体における反応 循環的電子伝達系

プラストキノールから電子を受け取り、電子伝達過程でプロトンポンプとスカラー反応が起こり、プロトン濃度勾配を発生します。

そして、最終的に酸化型プラストシアニン(PCyox)に電子を伝達して、還元型プラストシアニン(PCyred)にします。

 

シトクロムb6/f複合体は、呼吸鎖複合体IIIと類似しています。

 

収支式

12PQred + 24H+out + 24PCyox (Cu2+) 12PQox + 48H+in + 24PCyred (Cu+)

非循環的電子伝達系

 

光化学系I (PSI) における反応 循環的電子伝達系 葉緑体 ヘリオバクテリア

集光された700nmの波長の光で、クロロフィルスペシャルペアP700が励起されます。 

還元型プラストシアニンから受け取った電子を、フェレドキシンに伝達し、還元型フェレドキシンにします。

還元型フェレドキシン(Fdred)から、NADP+に電子伝達を行い、FNRによって触媒され、最終還元物質であるNADPHを生産します。

 

PSIは、緑色硫黄細菌の反応中心と相同性が高い、とされます。

 

収支式

24PCyred + 12Fdox (2Fe3+) 24PCyox + 12Fdred(2Fe2+)

12Fdred + 12NADP+ 12Fdox + 12NADPH(→カルビン回路

非循環的電子伝達系

 

CFo-CF1 ATP合成酵素における反応

ミトコンドリアのFo-F1 ATP合成酵素と同様、プロトン濃度勾配を利用してATP合成を行います。

ただし、この酵素で行われるリン酸化反応は、光リン酸化といいます。

 

収支式

72H+in + 24ADP + 24Pi 72H+out + 24ATP(→カルビン回路

非循環的電子伝達系 酸素発生型

 

循環的電子伝達系

PSIの反応を通じて、光リン酸化をより効率的に行う反応系です。

膜を介した物質輸送(能動輸送)などには、多量のATPが必要です。

ATP合成で、非循環的電子伝達系の補助的な役割を担う、と考えられています。

 

 電子伝達経路

1. PSIが、光エネルギーを受けて、初発電子受容体に電子伝達を行います。

2.初発電子受容体から、Fe-Sクラスターを経て、フェレドキシンに伝達されます。

3.フェレドキシンから、プラストキノンへ伝達されます。

4.プラストキノールは、シトクロムb6/f複合体で還元されます。

5.1.に戻ります。

 

シトクロムb6/f複合体を電子が通過するごとに、4プロトンがチラコイド内腔へ輸送され、プロトン濃度勾配を形成します。

酸素発生型 光化学反応

 

酸素非発生型光合成経路 分類へ カルビン回路

紅色光合成細菌(非循環的光リン酸化)

緑色硫黄光合成細菌(循環型光リン酸化)

 

光合成細菌は、主たる代謝として二酸化炭素を固定するか否か、で分類されています。

光合成独立栄養生物 - エネルギー源として光を利用し、炭素源として二酸化炭素を用います(紅色硫黄細菌、緑色硫黄細菌)。

光合成従属栄養生物 - エネルギー源として光を利用し、炭素源として有機化合物を用います(紅色非硫黄細菌、緑色非硫黄細菌)。

 

酸素非発生型光合成の、光化学反応系と炭素固定経路が、それぞれ、光化学反応カルビン回路、に対応します。

 

光化学系複合体は、通常1つしか持っておらず、

電子は、循環的に光化学系内を回転する(循環的光リン酸化)か、

非循環的に、酸素やNAD+に電子伝達されます(非循環的光リン酸化)。

 

また緑色硫黄細菌の光化学系は、緑色植物の光化学系Iと相同性が高く、

紅色細菌の光化学系は、光化学系IIと相同性が高いです。

 

光合成独立栄養生物の場合は、炭素固定経路には、カルビン回路を用いているケースが多いですが、

例外的に、還元的クエン酸回路を用いて炭酸固定を行うものもあります。

光化学系では、硫化水素などを酸化することで還元力を生んでいます。

 

光合成従属栄養生物の多くも、カルビン回路による炭素固定を行って独立栄養的に生育できることが知られています。

また、従属栄養的に生育する場合も、有機物代謝系より生じた余剰還元力の調整のために炭素固定を行います。

光化学系では、循環的光リン酸化によるATPの合成が行われています。

 

酸素非発生型光合成の電子伝達系

紅色非硫黄細菌が行うものは、最終電子受容体として酸素を用いる非循環的電子伝達系に対し、

緑色硫黄細菌では、循環的電子伝達系がみられます。

 

緑色植物との違いは、酸素を発生しない、ことに加えて、

光化学反応系の所在にあり、真正細菌では反応中心粒子が細胞膜に存在するために、呼吸鎖複合体との共同的な働きが行われます。

酸素非発生型 光化学反応

 

紅色光合成細菌の光化学反応 葉緑体 PSII

紅色非硫黄細菌の光化学系は、非循環的であり、酸素を最終電子受容体としますが、電子の一部は、NAD+に伝達されるものも存在します。

紅色非硫黄細菌はプロテオバクテリア門の様々な位置に散在しています。

 

電子伝達過程

1.バクテリオクロロフィルのスペシャルペア、P870が、光エネルギー(赤外線)を吸収し、電子が励起されます。

2.励起された電子は、バクテリオフェオフィチン(クロロフィル分子からマグネシウムイオンがとれて水素原子2つと置き換わったもの、酸化還元電位E0'= -0.4 - 0.6 V)に伝達されます。

3.電子は、QA(ユビキノン)、QB(ユビキノン)の順に電子伝達を受けます。

4.電子は、光化学系複合体に含まれないユビキノン-0.1V)に伝達され、2通りの電子伝達経路を経ます。

1.シトクロムbc1複合体 (呼吸鎖複合体III0.2V) に、電子伝達されます。

2.エネルギー依存性電子の逆行反応(プロトン濃度勾配のエネルギーを使います)により、NAD+ (-0.4V) に電子伝達されます。

5.シトクロムbc1複合体は、シトクロムc2 (0.4V) に電子伝達を行います。この時にプロトンキノンサイクル機構により、プロトン濃度勾配が生じます。

6.シトクロムc2複合体に伝達された電子も、2通りの経路を経ます。

1.シトクロムオキシダーゼ(呼吸鎖複合体IV)に電子伝達され、最終電子受容体の酸素に受け渡されます。

2.光化学反応複合体に再び戻り、反応中心粒子P870の電子を補完します(1. に戻る)。

 

紅色非硫黄細菌の光化学反応は、還元物質NADHの生産を直接行うことはなく、ATP合成が主目的と考えられています。 分類へ

 

尚、紅色硫黄細菌も光合成を行いますが、これは、ガンマプロテオバクテリア綱(サルモネラやコレラなど)クロマチウム目に属します。

電子供与体として、硫黄を使います。

ちなみに、ミトコンドリアは、アルファプロテオバクテリア綱に属します。 分類へ

酸素非発生型 

 

緑色硫黄光合成細菌の光化学反応 葉緑体 緑色非硫黄細菌 

緑色硫黄細菌のものは、循環的で、緑色植物のPSIに似ています。

違いは、バクテリオクロロフィルと、還元物質としてNADHを生産することです。

電子供与体として、硫化水素などの硫黄を利用します。

 

 ちなみに、深海熱水噴出孔(深さ2500m)から出るを利用しているものもあるようです。

 

電子伝達過程

1.バクテリオクロロフィルのスペシャルペア、P840が、光エネルギー(赤外線)を吸収し、電子が励起されます。

2.酸化還元電位の極めて低いバクテリオクロロフィルを、初発電子受容体 (A0E0'= -1.2V) として電子伝達を行います。

3.次にA1(バクテリオクロロフィル、-0.8V)、鉄・硫黄クラスター (-0.45V) を経て、フェレドキシン (鉄・硫黄タンパク質、-0.4V) に電子伝達されます。

4.フェレドキシンからNAD+へ電子伝達が行われ、還元物質NADHが生成され、呼吸鎖複合体Iで酸化を受けます。その際、プロトン濃度勾配が形成されます。

5.複合体Iからメナキノン (ビタミンK20.1V)シトクロムbc1複合体(呼吸鎖複合体III(0.15V) へ電子伝達されます。この時、再びプロトン濃度勾配が発生します。

6.シトクロムbc1複合体は、シトクロムc (0.2V) に電子伝達を行い、電子は再びP840に戻ります(1. に戻る)。

 

この反応系も、呼吸鎖の駆動に使用されており、ATP合成が主目的と考えらます。 分類へ 

酸素非発生型 光化学反応

 

バクテリオロドプシン

古細菌の高度好塩菌の紫膜にみられる膜タンパク質で、レチナール分子で光を吸収して、プロトン濃度勾配を形成するプロトンポンプです。

レチナール(ビタミンAアルデヒド)は、レチノール(同アルコール)と、レチノイン酸(同酸)とともに、ビタミンAに含まれます。

ヒトのロドプシンに似ますが、Gタンパクとは結合しません。

 

高度好塩菌には、光合成経路は存在せず、

反応素過程は、バクテリオロドプシンが単体で行い、電子伝達経路も存在ません。

 

形成されたプロトン濃度勾配は、ATP合成に用いられ、光リン酸化反応がみられます。

高度好塩菌は、有機物を酸化し、酸素を最終電子受容体としてATP合成を行う、通常の好気呼吸を行いますが、

飽和塩濃度では、酸素溶解度が低下することから、このような光化学反応を獲得した、と考えられています。 分類へ

光化学反応 トップ

 

カルビン回路 カルビン・ベンソン回路 シアノバクテリア (RubisCO)  非循環的電子伝達系 酸素非発生型 

炭酸固定反応系

多糖変換系

 

光合成反応における炭酸固定反応で、ほぼすべての緑色植物と光合成細菌がもっています。

カルビン回路は、チラコイド膜外部(葉緑体基質)で起こっています。

 

光合成細菌の場合は、細胞質基質で行われます。

 

光化学反応により生じた NADPH ATP によって回路が回転し、最終的にフルクトース-6-リン酸から糖新生経路に入り、葉緑体内で、多糖(デンプン)を生成します。

 この回路の中核である炭酸固定反応を担う、リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ (RubisCO) は、地球上で最も存在量が多い酵素、と言われています。

また、中間代謝物であるジヒドロキシアセトンリン酸は、葉緑体外部に輸送される炭素源の一つです。

 

反応自体は光がなくても進行するため、光化学反応(明反応)に対して、暗反応ともいいます。

ただし、酵素の一部は光によって間接的に活性化されるため、暗所では炭酸固定活性が低下します。

C3の化合物で行われるため、C3型光合成ともいいます。

 

カルビン回路と、光化学反応の収支式をまとめると、

6CO2 + 12H2O C6H12O6 + 6H2O + 6O2 、

となり、この式は、好気呼吸の収支式の逆反応です(炭素循環)。

カルビン回路

 

カルビン回路の反応

回転に13種類の酵素が関与する複雑な回路であり、

多糖に変換される系

再び炭酸固定反応に使用される系、

が共存しています。これらの系は共同的に動いています。

 

炭酸固定反応の主となる糖は、D-リブロース1,5-ビスリン酸、です。

 

多糖変換系収支式

6 CO2 + 12 NADPH + 18 ATP C6H12O6 + 12 NADP+ + 18 ADP + 18 Pi

この反応は、

6 CO2 + 12 NADPH + 18 ATP フルクトース1,6-ビスリン酸 + 12 NADP+ + 18 ADP + 16 Pi 、とも書けます。

二酸化炭素が6分子固定(系が6回転)されると、糖新生系に組み込まれるのに十分な炭素が供給されます。

カルビン回路

 

炭酸固定反応系

この反応には、糖の循環が必要で、以下の反応からなります。()内は、糖の炭素数です。

1.D-リブロース-1,5-ビスリン酸 (RuBPC5) + CO2 3-ホスホグリセリン酸×2  (C3×2)

2.3-ホスホグリセリン酸 (C3) + ATP 1,3-ビスホスホグリセリン酸 (C3) + ADP+ Pi

3.1,3-ビスホスホグリセリン酸 (C3) + NADPH グリセルアルデヒド-3-リン酸 (C3) + NADP+

 

グリセルアルデヒド-3-リン酸(G3Pを起点にして、4つの反応があります。

1. G3P (C3) + セドヘプツロース-7-リン酸 (C7) リボース-5-リン酸 (C5) + キシルロース-5-リン酸 (C5)

2. G3P (C3) ジヒドロキシアセトンリン酸 (C3)

3. G3P (C3) + ジヒドロキシアセトンリン酸 (C3) フルクトース-1,6-ビスリン酸 (C6)

4. G3P (C3) + フルクトース-6-リン酸 (C6) → エリトロース-4-リン酸 (C4) + キシルロース-5-リン酸 (C5)

 

1.の反応で生成する、リボース-5-リン酸キシルロース-5-リン酸は、リブロース-5-リン酸に変換されます。

リボース-5-リン酸 (C5) → リブロース-5-リン酸 (C5)

キシルロース-5-リン酸 (C5) → リブロース-5-リン酸 (C5)

 

リブロース-5-リン酸は、再び炭酸固定反応に組み込まれます。

リブロース-5-リン酸 (C5) + ATP リブロース-1,5-ビスリン酸 (C5) + ADP

 

2 の反応は、葉緑体外部へ輸送される、ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAPC3)を合成する反応で、輸送には3回転を要します。

また、3.は、多糖変換系に続く反応ですが、6回転分の炭素固定数に足りなければ、4 の反応へフルクトースが使用されます。

 

DHAPも、これを起点に以下の反応が起きます。

1.葉緑体外部への輸送

2.フルクトース1,6ビスリン酸合成反応(3 の反応)

3. DHAP (C3) + 4 由来のエリトロース4-リン酸 (C4) セドヘプツロース1,7-ビスリン酸 (C7)

 

セドヘプツロース1,7-ビスリン酸は、

セドヘプツロース-1,7-ビスリン酸 (C7) → セドヘプツロース-7-リン酸 (C7) + Pi、という反応に組み込まれ、

セドヘプツロース-7-リン酸は、G3Pの反応1.に組み込まれます。

カルビン回路

 

多糖変換系 炭酸固定反応系

これは、最後にデンプンになるために、回路から炭素が出て行く系の一つです。

他にDHAPの、葉緑体外部への輸送系も存在します。

 

以下の反応からなります。 C: X は、全体の炭素数です。

1.D-リブロース1,5-ビスリン酸×6 (C: 30) + 6CO2 3-ホスホグリセリン酸×12 (C: 36)

2.3-ホスホグリセリン酸×12 + 12ATP 1,3-ビスホスホグリセリン酸×12 (C: 36) + 12ADP

3.1,3-ビスホスホグリセリン酸×12 + 12NADPH G3P×12 (C: 36) + 12NADP+ + 12Pi

4. G3P×6 DHAP×6 (C: 18)

5. G3P×6 (C: 18)+ DHAP×6 (C: 18) → フルクトース1,6-ビスリン酸×6 (C: 36)

 

6.フルクトース1,6-ビスリン酸×6 → フルクトース6-リン酸×6C: 30 1 へ、C: 6 だけ糖新生系へ)

 

6.の反応以外は全て、炭酸固定反応系にあります。

カルビン回路 トップ

 

 参考

 光受容体タンパク質

植物の赤色光受容体タンパク質に、フィトクロム(発色団に、フィトクロモビリン(直鎖状のテトラピロール構造をもつビリン色素)、などを持ちます)、

青色光受容体タンパク質に、クリプトクロムプテリンフラビン、共にブテリジン置換体です。)と、フォトトロピンリボフラビン)、があります。

これらは、植物の光に基づく花芽形成などの調節に関与します。

 

ヒトの目に見える波長の電磁波を、可視光線)といいます。450-495 nm570-590 nm620-750 nm、です。

可視光線より波長が短いものを紫外線、長いものを赤外線といい、ヒトの目では見えません。(一部の昆虫などは、紫外線も見えます。) 

参考へ

 

 亜硫酸酸化酵素

 真核生物のミトコンドリアに存在する酵素です。

亜硫酸が硫酸に酸化されることで発生した電子は、シトクロムCを経由して電子伝達系へ移行し、ATP合成に使われます。

これは硫黄を含む化合物の代謝の最終ステップであり、硫酸が排泄されます。

モリブデン

 人体にとって必須元素で、これを含む酵素には、亜硫酸酸化酵素ニトロゲナーゼの他、

キサンチンオキシダーゼアルデヒドデヒドロゲナーゼなどがあります。

参考へ

 

 亜硫酸還元酵素

 鉄を含み、硫化水素と酸化型フェレドキシン及びH2Oから、亜硫酸と還元型フェレドキシン及びH+を生成します。 

 フェレドキシン

鉄硫黄タンパク質で、電子伝達体として機能し、光合成、窒素固定、炭酸固定、水素分子の酸化還元などの代謝系で用いられます。 

維管束植物の葉緑体DNAでは、亜硫酸還元酵素が、DNA結合タンパク質として機能しているようですが・・・

もともと、電子伝達系とDNAの機能調節は、共通していたのでしょうか?

 ・・・鉄、硫黄というと、黄鉄鉱による表面代謝説、がありますが・・・ 維管束 参考へ

 

 

ホーム