非生物から生物へ・・・種々有機反応。
ホルモース反応 :ホルムアルデヒドから、核酸の構成糖(リボース)などを生成する反応です。
ストレッカー反応 :アルデヒドまたはケトンと、アンモニア、シアン化水素との反応により、各種アミノ酸を生成する反応です。
リン酸 :核酸やATPを構成したり、タンパク質の機能を調節したりします。
参考、有機合成反応
核酸塩基の一つ、アデニンは、シアン化水素とアンモニアを混合して加熱するだけで合成されるため、
原始の地球でもありふれた有機物であったと考えられています。
2011年、NASAの地球上における隕石の研究は、
宇宙空間において核酸の原料であるアデニン・グアニンなどの有機分子が合成されている可能性を示唆しました。
タンパク質を構成する、グリシン、アラニン、グルタミン酸といったアミノ酸も、
1969年にオーストラリアに飛来したマーチソン隕石中に、発見されています。
グリコールアルデヒドは、天の川でも地球から2.6万光年離れた所で確認されています。
更に、2012年には、原始星でも発見されました。
また、ホルムアルデヒドも、宇宙空間で分光学的に観測されています。
その他、有機物質は、地球外でも結構あるようです。星間分子一覧。
さて、低分子有機物質から、生命のもととなる、核酸の構成糖や、
タンパク質を構成するアミノ酸を合成する反応、についてです。
また、リン酸は、核酸の構成成分であり、タンパク質の機能を調節するためにも重要です。
更に、人体の構成成分は、海水のそれに似ているといわれていますが、
リンは、人体を構成する成分の中では、海水に含まれる量が少ない点が興味深いです。
ホルモース反応は、ホルムアルデヒドから糖を合成する化学反応です。
ホルモースとは、ホルムアルデヒドとアルドースを組み合わせて作られた語です。
ホルムアルデヒドは、最も簡単なアルデヒドで、分子式は CH2O。酸化メチレンともいいます。
アルドースは、鎖の末端にアルデヒド基を1つ持つ単糖類で、グリセルアルデヒドが、最も単純なアルドースです。
アルドースは、ロブリー・ドブリュイン=ファン エッケンシュタイン転位により、ケトースへ異性化します。
この反応は、単純なホルムアルデヒドから、RNAを構成するリボースのような複雑な糖を生成するため、
自然発生説の問題にとって重要な反応です。
反応機構
反応は、塩基と水酸化カルシウムのような二価金属によって触媒されます。
反応の中では、
レトロアルドール反応(アルドール反応の逆反応)、
アルドース・ケトース異性化、が起こっています。
ホルモース反応の中間体は、グリコールアルデヒド、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、種々テトロースです。
反応は、2分子のホルムアルデヒドが縮合して、グリコールアルデヒドが形成することにより始まります。
グリコールアルデヒドは、アルデヒド基とヒドロキシル基の両方を持つ最も単純な分子で、
グリシンを含む多くの前駆体から形成します。
解糖系の、フルクトース-1,6-ビスリン酸上のケトラーゼの反応によって形成することができ、
ペントースリン酸経路中で、チアミンピロリン酸によって輸送されます。
グリコールアルデヒドは、別の当量のホルムアルデヒドと、アルドール反応を起して、グリセルアルデヒドを生成します。
グリセルアルデヒドは、炭素数3のアルデヒド、二価アルコールで、最も単純なアルドースです。
自然界には通常D体が存在します。 ホルモース反応
グリセルアルデヒドは、異性化により、ジヒドロキシアセトンを生成します。
ジヒドロキシアセトンは、グリセルアルデヒドとともに最小の単糖で、最も単純なケトースです。
不斉炭素を持たず、単糖の中で唯一光学活性がありません。
これは、グリセルアルデヒドとともに、過酸化水素、第一鉄(二価鉄塩)などの触媒を用いた、
グリセリンの穏やかな酸化により生成されます。
リン酸基の結合したジヒドロキシアセトンリン酸は、解糖系や、カルビン回路の中間代謝物です。
ジヒドロキシアセトンは、グリセルアルデヒドと反応して、リブロース、更に異性化してリボースを生成します。
リブロースは、ケトース、五炭糖です。
1位と5位にリン酸基のついたリブロース-1,5-ビスリン酸は、
光合成のカルビン回路において、二酸化炭素を固定する重要な働きをしています。
また、5位にリン酸基のついたリブロース-5-リン酸は、
ペントースリン酸経路で作られ、核酸を構成するリボースを作る原料となります。
リボースは、アルドース、五炭糖で、
核酸塩基と結合してヌクレオシドを形成し、リボ核酸の構成糖となっています。
生体内では、ペントースリン酸経路や、カルビン回路で作られます。
また、ジヒドロキシアセトンは、ホルムアルデヒドと反応して、エリトルロース(ケトテトロース)、異性化してアルドテトロースを生成します。
1位にアルデヒド基を持つアルドテトロースと、2位にケトン基を持つケトテトロースが存在します。
ケトテトロースは、天然に生成するのはD-エリトルロースのみです。
アルドテトロースは、2個のキラル中心炭素を持ち、4種の立体異性体が可能ですが、
アルドテトロースは、レトロアルドール反応により、2分子のグリコールアルデヒドに分離します。
尚、「原始スープ中でのケイ酸塩」によると、ケイ酸塩により、高温でなくともホルモース反応が進行できるようです。
ケイ酸塩を利用する生物として、珪藻があります。
尚、ケイ素は、炭素と同じ14族元素ですが、炭素が有機化合物を形成するのに対して、(酸化)ケイ素は岩石を形成します。
ストレッカー反応 (ストレッカーのアミノ酸合成)
アルデヒドまたはケトンと、アンモニア、シアン化水素、との反応により、アミノ酸を合成する反応です。
生命の発生以前に、この反応によってタンパク質の素となるアミノ酸が作り出された、という説があります。
まず、アルデヒドとアンモニアから、イミン( R'-C(=NR'')-R )ができます。 シッフ塩基
イミンに、シアン化物イオン ( CN- ) が求核反応を起こして、アミノニトリルが生成します。 ニトリル
これを単離せず、ワンポットで加水分解(濃塩酸で加熱などの条件)することで、目的のアミノ酸を得ます。
アルデヒドとしては、芳香族・脂肪族どちらの誘導体も使用可能です。
不斉ストレッカー反応
窒素原子上に電子求引基を付けてイミンを安定に単離しておき、
ここに不斉触媒存在下で、シアン化物イオン(CN−)を作用させる方法が多いです。
2012年に、単純なBINOL(1,1'-ビ-2-ナフトール)由来の触媒が、
キラルのシアニドアニオンの生成に利用できることが発見されたようです。
BINOLは、遷移金属触媒を用いた不斉合成によく用いられる有機化合物です。
リン酸(オルトリン酸)は、リンのオキソ酸の一種で、化学式がH3PO4、で表される無機酸です。
低分子化合物の代謝において、リン酸が付加した化合物(リン酸エステルなど)が中間体として用いられることが多いです。
また、タンパク質の機能調節と、それによるシグナル伝達においても、リン酸化は重要です。
リン酸は、3価の酸であるため、水と反応すると電離して、3つの水素イオン(H+)を放出します。
共役塩基は、幅広いpHに渡って存在することができます。
この性質を利用し、リン酸塩としたものが緩衝液に用いられています。
リン酸骨格をもつ他の類似化合物群(ピロリン酸など)は、リン酸塩類と呼ばれ、
リン酸化物に水を反応させることで生成します。
リン酸塩類には、DNAやRNA、アデノシン三リン酸などのリン酸化された糖があります。
リン酸イオン溶液は、無機リン酸( Pi )と呼ばれ、ATPや、核酸の官能基として結合しているもの、です。
リン酸イオンは、正四面体型構造です。
リン酸の、
第一段階電離により、リン酸二水素イオン(H2PO4−)、
第二段階解離により、リン酸水素イオン(HPO42−)、
第三段階解離により、リン酸イオン(PO43−)、を生成します。
縮合リン酸
リン酸を加熱すると、脱水反応が起こります。
150℃で、無水物となり、
200℃で、2つのリン酸が反応し、徐々にピロリン酸(二リン酸)が生成します。
300℃以上では、1つのリン酸ユニットにつき1つの水分子が脱離して、
メタリン酸(ポリリン酸、示性式:(HPO3)n)が生成します。
いずれも、複数のPO4四面体を、酸素原子を架橋として連結した構造であり、
ポリリン酸は、一般的にPO4四面体が環状に連結した、シクロリン酸です。
尚、リンに関して、ウィッティヒ反応という反応があります。
グリニャール試薬 :R−MgX。カルボニル化合物と反応すると、アルキル基が付加したアルコールが生成されます。
アルドール反応 :カルボニル化合物が、アルデヒドまたはケトンと反応してβ-ヒドロキシカルボニル化合物を生成する反応です。
アルドール縮合 :β-ヒドロキシカルボニル化合物に脱水反応が起こり、α,β-不飽和カルボニル化合物を生成する反応です。
マイケル付加 :α,β-不飽和カルボニル化合物に、カルバニオンを付加する反応です。
ロビンソン環化反応 :α,β-不飽和ケトンと、カルボニル化合物から、6員環のα,β-不飽和ケトンを生成する反応です。
マンニッヒ反応 :ホルムアルデヒドと、カルボニル化合物、第二級アミンなどが反応して、β-アミノカルボニル化合物を生成する反応です。
ケト-エノール互変異性化 :ケト(ケトン、アルデヒド)と、エノールの間の互変異性です。
ロブリー・ドブリュイン=ファン エッケンシュタイン転位 :アルドース-ケトース間の異性化反応です。
ウィッティヒ反応 :リンイリドと、カルボニル化合物から、アルケンを生成する反応です。
クネーフェナーゲル縮合 :活性メチレン化合物を、アルデヒドまたはケトンと縮合させて、アルケンを生成する反応です。
クライゼン縮合 :2分子のエステルが、塩基の存在下に縮合して、β-ケトエステルを生成する反応です。ディークマン縮合、シュトッベ縮合
バイヤー・ビリガー酸化 :ケトンと過カルボン酸から、カルボン酸エステル( COO )にする酸化反応です。
フリーデル・クラフツ反応 :芳香環に、アルキル基やアシル基が求電子置換する反応です。
ディールス・アルダー反応 :共役ジエンに、アルケンが付加して6員環構造を生じる反応です。
ローゼムント合成 :ピロールと、アルデヒドに、酸を作用させて、ポルフィリン誘導体を得るものです。
ベックマン転位 :ケトンのオキシムから、N-置換アミドを得る転位反応です。
シュミット反応 :酸性条件下において、アジ化水素( HN3 )で反応させた時に起こる転位反応です。
メイラード反応 :還元糖と、アミノ化合物から、褐色物質を生み出す反応です。
ピナコール転位 :1,2-ジオールが、酸触媒下に脱水と同時に置換基の転位を起こし、カルボニル化合物を生成する反応です。
クレメンゼン還元 :ケトンやアルデヒドのカルボニル基を還元して、メチレン基( CH2 )にする化学反応です。
ウォルフ・キッシュナー還元 :ケトンやアルデヒドのカルボニル基を、ヒドラジンによって還元してメチレン基( CH2 )にする化学反応です。
ヴィルゲロット反応 :芳香族ケトンを、カルボン酸アミドにする、転位反応です。
不斉合成 :光学活性(キラル)な物質を、作り分けることです。BINOL、BINAP
カップリング反応 :2つの化学物質を、選択的に結合させる反応です。
ハロゲン化アルキルに、エーテル溶媒中で金属マグネシウムを作用させると、
炭素-ハロゲン結合が、炭素-マグネシウム結合に置き換わり、グリニャール試薬が生成します。
これは、R−MgX(R は有機基、X はハロゲン)と表される、有機マグネシウムハロゲン化物で、
この有機基は、強い求核試薬 (R− )としての性質を示します。
ホルムアルデヒドと反応させ、酸で処理すると、第一級アルコールが生成します。
アルデヒドと反応させると、第二級アルコールが生成します。
ケトンと反応させると、第三級アルコールが生成します。
ちなみに、マグネシウムは、解糖系の酵素に必須です。
α位に水素を持つカルボニル化合物が、アルデヒドまたはケトンと反応して、
β-ヒドロキシカルボニル化合物が生成する、求核付加反応です。
アルデヒド同士がこの反応を起こすと、アルドールを生成します。
酸または塩基が触媒として用いられます。
酸触媒を用いた場合や、
塩基触媒で温度が高い場合で、生成したβ-ヒドロキシカルボニル化合物のα水素がある場合、
引き続いて脱水反応が起こり、α,β-不飽和カルボニル化合物(エノンなど)が生成します。
脱水反応まで起こり、α,β-不飽和カルボニル化合物が生成した場合、
この一連の反応を、アルドール縮合といいます。 ホルモース反応
α,β-不飽和カルボニル化合物(アルドール縮合などで得られます。)に対して、
カルバニオンなどの求核剤を、1,4-付加させる反応です。 不斉合成
α,β-不飽和ケトンと、カルボニル化合物が、酸または塩基を触媒として反応し、
6員環のα,β-不飽和ケトンが生成する反応です。
この反応は、縮環した6員環を含むステロイドやテルペノイドの合成に重要な反応です。
(生体では、これらは、アセチルCoAから合成されます。)
反応の機構は、カルボニル化合物から生成したエノラートが、
α,β-不飽和ケトンにマイケル付加し、1,5-ジカルボニル化合物が得られます。
これが、分子内アルドール縮合することにより、6員環のα,β-不飽和ケトンが生成します。
エノラートは、エノールのヒドロキシ基の水素原子が、プロトンとして解離することによって生成する陰イオンです。
ケト(カルボニル化合物。ケトン、アルデヒド)と、エノールの間の互変異性です。 メイラード反応
エノールは、アルケン(C = C)の二重結合の片方の炭素に、ヒドロキシ基が置換したアルコールです。
ケト-エノール互変異性化は、酸/塩基の両方に触媒されます。
酸触媒の場合、カルボニル基の酸素原子に水素化がおこり、カチオン中間体が生成し、α炭素が水素を失ってエノールを与えます。
塩基触媒の場合、塩基がα炭素の水素を引き抜いてエノラートを生成し、カルボニル基の酸素原子に水素化が起こり、エノールを与えます。
エノール型は、一般に不安定であり、ケト型になりやすいです。
解糖系の最終段階で、ホスホエノールピルビン酸からピルビン酸が生成される時、
まず、エノール型のピルビン酸が生成され、速やかにケト型に異性化されます。
α水素を持たないカルボニル化合物(主にホルムアルデヒド)と、
α水素を持つカルボニル化合物、第一級または第二級アミンが反応して、
β-アミノカルボニル化合物(マンニッヒ塩基)を生成する反応です。
ウィッティヒ試薬というリンイリドと、カルボニル化合物から、アルケンを生成する化学反応です。
イリドは、正電荷を持つ原子と、負電荷を持つ原子(一般に炭素)が、共有結合で隣接した構造をもつ化合物です。
ウィッティヒ試薬は、トリフェニルホスフィンと、ハロゲン化アルキルとの反応で合成されるホスホニウム塩を、
塩基で処理して脱ハロゲン化水素することで生成します。 パラジウム
活性メチレン化合物 (E−CH2−E') を、アルデヒドまたはケトンと縮合させて、アルケンを生成する手法です。
触媒として塩基が用いられます。
2分子のエステルが、塩基の存在下に縮合して、β-ケトエステルを生成する反応です。
分子内にエステル結合を2つの持つ分子が、分子内でクライゼン縮合して、
環状のβ-ケトエステルを生成する反応を、ディークマン縮合といいます。 ラクトン
コハク酸(エタン-1,2-ジカルボン酸)のジエチルエステルを、弱塩基で特異的に修飾する反応を、シュトッベ縮合といいます。
ケトンと過カルボン酸を反応させると、
ケトンのカルボニル基の隣に酸素原子が挿入されて、カルボン酸エステル( COO )が得られる酸化反応です。
環状ケトンに対してこの反応を行うと、1つ環員数が大きくなったラクトン(環状エステル)が生成します。
芳香環に、アルキル基またはアシル基が、求電子置換する反応です。
- アルキル化反応は、無水の塩化鉄(III)や塩化アルミニウムなどの強力なルイス酸触媒を使用して、芳香環へアルキル基の導入する反応です。
- アルカノイル化反応(アシル化)は、塩化アルミニウムなどにより、カルボン酸塩化物を用いて、芳香環にアシル基を導入する反応です。
共役ジエンに、アルケンが付加して6員環構造を生じる反応です。ジエン合成とも呼ばれます。
エチレンと1,3-ブタジエンから、シクロヘキセンを生成する反応などがあります。
共役ジエンに対して反応するアルケンのことを、ジエノファイル(親ジエン体)といいます。
親ジエン体には、1,4-ベンゾキノン、などがあります。 キノン
ピロールと、アルデヒドに、酸を作用させ、縮合環化した生成物としてポルフィリン誘導体を得るものです。
ポルフィリンは、ピロールが、4つ組み合わさってできた環状構造(テトラピロール)を持つ有機化合物で、
中心部の窒素は、鉄やマグネシウムなどと、錯体を形成します。
ポルフィリンや類似化合物の金属錯体には、ヘム、クロロフィル、シアノコバラミン(ビタミンB12)、などがあります。
ケトンのオキシムから、N-置換アミドが得られる転位反応です。
環状ケトンのオキシムに対する反応は、もとのケトンのカルボニル基の隣にNHを挿入して、
1つ環員数の大きいラクタム、を合成する反応です。
この反応は、6-ナイロンの原料となる、ε-カプロラクタムを得る合成法として重要です。
酸性条件下において、アジ化水素( HN3 )で反応させた時に起こる転位反応です。
カルボン酸とアジ化水素を反応させると、カルボン酸アジドを経て、イソシアン酸エステル( R−N=C=O )が生成します。
ケトンとアジ化水素を反応させると、カルボニル基の隣にNHが挿入されたカルボン酸アミド( R-C(=O)-N R' R'' )が生成します。
この反応は、ベックマン転位と似ています。
アルデヒドに対してアジ化水素を反応させた場合、ニトリル( R−C≡N )が生成します。
第三級アルコールやアルケンのように、
酸性条件でカルボカチオンを生成する基質と、アジ化水素を反応させると、N-アルキルイミン( R'-C(=NR'')-R )が生成します。
塩基を触媒としたアルドース-ケトース間の異性化反応です。
反応物と生成物の化学平衡は、濃度、溶媒、pH、温度に依存します。
この反応では、アルドースとケトースの平衡混合物が得られ、
グリセルアルデヒドとジヒドロキシアセトンのそれは、グリセロースといいます。
還元糖と、アミノ化合物(アミノ酸、ペプチド及びタンパク質)を加熱した時などにみられる、
褐色物質(メラノイジン)を生成する反応で、非酵素的アミノカルボニル反応の一種です。
味噌や醤油の色素形成、パンやご飯の「お焦げ」の形成、チョコレート臭、などに関与します。
また、糖尿病でみられる褐色斑の原因となる色素には、AGEsが含まれていますが、これらはメラノイジンの前駆物質と考えられています。
初期段階
アミノ化合物と、還元糖が縮合し、シッフ塩基を形成します。
シッフ塩基の二重結合( -N=C- )は転位し(アマドリ転位)、エノール型の1,2-エナミノール、を生じます。
これは、互変異性化した、ケトン型との間で平衡状態となっています(ケト-エノール互変異性)。
生成物は、還元性を示す反応性が高い物質です。
中期段階
アマドリ転位生成物が、1,2-エナミノールなどを経由して分解していく過程で、多くは脱水反応です。
この段階で、反応性に富んだ、ケトアルデヒドや、フルフラール(2位がアルデヒド基で置換されたフラン)等を生成します。
最終段階
アマドリ転位生成物などの反応中間体や生成物と、各種アミノ酸やペプチド、タンパク質などが重合して、
メラノイジンを生成する反応ですが、詳細不明です。
1,2-ジオールが、酸触媒下に脱水と同時に置換基の転位を起こし、
カルボニル化合物を生成する反応です。
ピナコールからピナコロン(ピナコリン)への転位などがあります。
ケトンやアルデヒドのカルボニル基を、亜鉛アマルガムを用いて、
塩酸などの強酸性の溶媒中で還元してメチレン基( CH2 )にする化学反応です。
改良法に、無水酢酸、ジエチルエーテル等の溶液中で、亜鉛粉末を加えて行うものがあります。
ケトンやアルデヒドのカルボニル基を、ヒドラジンによって還元してメチレン基( CH2 )にする化学反応です。
改良法に、エチレングリコール中で、水酸化カリウムを触媒として行う反応や、
ジメチルスルホキシドを溶媒として使用する反応があります。
芳香族ケトンを、カルボン酸アミドに変換する、転位反応です。
フェニルアルキルケトンを、多硫化アンモニウムと加熱すると、
カルボニル基がアルキル基の末端まで移動して酸化され、カルボン酸アミドが生成します。
軸不斉を持つため、二つの光学異性体があり、それらは光学分割することができます。
重要な不斉配位子である、BINAPの原料でもあります。
BINOLのラセミ体は、2-ナフトールから、塩化鉄(III)を酸化剤として用いて合成することができます。
反応は、2-ナフトールのヒドロキシ基で鉄と錯体を生成した後に、
2-ナフトールの環がラジカル的にカップリングすることで起こります。
光学活性なBINOLは、ラセミ体のBINOLの光学分割などで得ることができます。
シクロヘキセノンや、マロン酸ジメチルとともに、不均斉マイケル付加、に利用されています。
2つの化学物質を選択的に結合させる反応です。
結合する2つのユニットの構造が等しい場合はホモカップリング、
異なる場合はクロスカップリング(ヘテロカップリング)といいます。
ジアゾニウム( −N+≡N を含む有機窒素化合物)と、
電子豊富な芳香環との間で起こるジアゾカップリングで、芳香族アゾ化合物が生成されます。
ヘック反応(溝呂木・ヘック反応)は、パラジウム錯体を触媒として塩基存在下、
ハロゲン化アリールまたはハロゲン化アルケニルで、アルケンの水素を置換する反応です。
根岸カップリングは、有機亜鉛化合物と、有機ハロゲン化物を、
パラジウムまたはニッケル触媒のもとに縮合させ、C-C 結合生成物を得る反応です。
鈴木・宮浦カップリングは、パラジウム触媒と、塩基などの求核種の作用により、
有機ホウ素化合物とハロゲン化アリールとをクロスカップリングさせて、
非対称ビアリール(ビフェニル誘導体)を得る化学反応です。
など、があります。
窒素原子に炭化水素基が結合したイミンです。
イミンは、R'-C(=NR'')-R と表される、炭素-窒素二重結合、を持つ化合物です。
アニリン誘導体から誘導されるシッフ塩基(フェニル基を持ちます)は、 アニール ともいいます。
シッフ塩基形成について。
まず、芳香族アミンとカルボニル化合物から、求核付加反応により、ヘミアミナールが形成されます。
ヘミアミナールは、続く脱水によってシッフ塩基に変わります。
尚、ヘミアミナール(α-アミノアルコール)は、
アルコールのうち、ヒドロキシ基が結合している炭素上に、アミノ基も存在しているものです。
R−C≡N で表される構造を持つ化合物です。
−C≡Nは、シアノ基(ニトリル基)といい、強い電子求引基です。
ニトリルを強い酸性条件、または塩基性条件下で加水分解するとカルボン酸となります。
また、水素化リチウムアルミニウムなどで還元すると一級アミンができます。
シアノ基は、電子求引性を持つので、α位に水素を持つニトリルに強塩基を作用させると、
プロトンが引き抜かれてカルバニオンができます。
ここに求電子剤を反応させることで、炭素-炭素結合ができます。
分子内に >C=N−OH 、構造を持つものです。
窒素に結合している炭素に、有機基と水素が結合している場合をアルドオキシム(アルドキシム)、
有機基が2個結合している場合をケトオキシム(ケトキシム)といいます。
オキシムは、酸または塩基性条件下で、ケトンまたはアルデヒドと、ヒドロキシルアミンとの反応によって合成されます。
オキシムが加水分解を受けると、ケトンまたはアルデヒドと、ヒドロキシルアミンとなります。
水素化アルミニウムリチウムなどの還元によって、1級アミンとなります。
アルドオキシムは、無水酢酸などを用いた脱水反応によって、ニトリルになります。
ケトオキシムは、強酸の作用でベックマン転位を起してアミドとなります。
これが環状ケトンであれば、ラクタムとなります。
カルボキシル基とアミノ基が脱水縮合して環状構造をとった、分子内環状アミドです。-CO-NR-、構造を持ちます。
β-ラクタムは、β-ラクタム系抗生物質の主要構造です。
尚、分子内環状エステルは、ラクトン、といいます。 ディークマン縮合
12員環以上の大環状ラクトンを、マクロライド、といいます。
2つのケトン構造を持つ環状の有機化合物です。
他に、ユビキノンや、ビタミンKがあり、生物学的にも重要な物質です。
緩衝作用がある溶液(少量の酸や塩基を加えたり、多少濃度が変化したりしても pH が大きく変化しない溶液)で、
弱酸とその共役塩基や、弱塩基とその共役酸を混合したもの、です(酸と塩基)。
白金族元素で、様々な反応の触媒として用いられます。
ホスフィン錯体が、カップリング反応や、ヘック反応などC-C結合生成反応の触媒に用いられる他、
自動車の排気ガス浄化用の触媒(三元触媒)や、
エチレンからのアセトアルデヒドの合成(ワッカー酸化)の触媒などで、使用されます。