元素について

 

 

元素は、周期表で、原子番号順(陽子の個数順)に配列しています。

周期表の横方向を周期、縦方向をといいます。

 

典型元素(周期表の1族、2族と、12族から18族の元素)と、

遷移元素(第3族から第11族元素)、があります。

 

典型元素は、金属、非金属ともにありますが、周期が小さいほど共有結合性が強く、大きいほど金属結合性が強い傾向があります。

遷移元素は、すべて金属です。内殻のd軌道(またはf軌道)に、不対電子や空軌道を持つ電子構造をもちます。

内殻が閉殻になっていないため、原子番号が増えても最外殻の電子(価電子)は増えません。

 

第 1族元素    : 水素と、アルカリ金属(水素・リチウム・ナトリウム・カリウム・ルビジウム・セシウム・フランシウム)

第 2族元素    : ベリリウムとマグネシウム、アルカリ土類金属(アルカリどるいきんぞく)(カルシウム・ストロンチウム・バリウム・ラジウム)

 

第 3族元素    : スカンジウム族。希土類元素(レアアース:スカンジウム・イットリウム・ランタノイド)とアクチノイド

第 4族元素    : チタン族元素。チタン・ジルコニウム・ハフニウム・ラザホージウム

第 5族元素    : バナジウム族。バナジウム、ニオブ、タンタル、ドブニウム

第 6族元素    : クロム族。クロム・モリブデン・タングステン・シーボーギウム

第 7族元素    : マンガン族。マンガン・テクネチウム・レニウム・ボーリウム

第 8族元素    : 鉄族元素と白金族1。鉄・ルテニウム・オスミウム・ハッシウム

第 9族元素    : 鉄族元素と白金族2。コバルト・ロジウム・イリジウム・マイトネリウム

第10族元素   : 鉄族元素と白金族3。ニッケル・パラジウム・白金・ダームスタチウム

第11族元素   : 銅族。銅・銀・金・レントゲニウム

 

第12族元素   : 亜鉛族。亜鉛・カドミウム・水銀・コペルニシウム

第13族元素   : ホウ素族。ホウ素・アルミニウム・ガリウム・インジウム・タリウム・ウンウントリウム

第14族元素   : 炭素族。炭素・ケイ素・ゲルマニウム・スズ・鉛・フレロビウム

第15族元素   : 窒素族。窒素・リン・ヒ素・アンチモン・ビスマス・ウンウンペンチウム

第16族元素   : 酸素族。酸素・硫黄・セレン・テルル・ポロニウム・リバモリウム

第17族元素   : ハロゲン。フッ素・塩素・臭素・ヨウ素・アスタチン・ウンウンセプチウム

第18族元素   : 希ガス。ヘリウム・ネオン・アルゴン・クリプトン・キセノン・ラドン・ウンウンオクチウム

 

その他

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元素

宇宙での存在比

現在、宇宙の大きさが確定していないため、各元素の絶対量を決定できず、存在比のみが推計されています。

ビッグバンで生成された水素、次いでヘリウムの存在比が多く、リチウム、ベリリウム、ホウ素の比率は極端に低いです。

炭素以下は、原子番号の増加とともに比率が下がっていく傾向がありますが、

原子番号が偶数の元素は、隣り合う奇数の元素よりも存在比が多いです。

 

また中性子捕獲による元素合成では、原子核に存在する数によって安定する中性子の魔法数が影響を及ぼします。

これは中性子数が50, 82, 126 等になると、さらに中性子を捕獲して原子量を高める反応が鈍くなるもので、

ストロンチウム(陽子:中性子=3850)、バリウム5682)、82126)元素が比較的多くなります。

 

地球での分布・存在比 

存在比で酸素が最も多く、宇宙に多い水素やヘリウムの比率は低いです。

金属類も多く、ケイ素、マグネシウム、鉄などが上位を占めます。

尚、硫黄は硫化鉄状で広範囲に分散しているため、存在比は不明です。

 

人体での存在比

水を構成する水素酸素が圧倒的に多いです。

人体での存在比は、海水との相関性が指摘されています。

唯一の例外はリンです。

微量ながら酵素の活性に必要な微量元素もあります。

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第1族元素 第 2族元素 第11族元素 第17族元素

水素・リチウム・ナトリウム・カリウム・ルビジウム・セシウム・フランシウム、があります。

価電子は最外殻のs 軌道にある電子です。 s 軌道は1電子のみが占有します。

典型元素で、1価の陽イオンになりやすいです。

水素だけが共有結合性を示し、他は金属結合性を示します。

 

 水素を除いた元素はアルカリ金属といい、単体では最外殻s軌道電子が自由電子として振舞うため金属的な性質を示します。

 アルカリ金属は、比較的融点が低く、軟らかくて軽い金属です。LiNaKは比重が1以下で、水に浮きます。

反応性は高く、周期表の周期が大きくなるほど激しく反応する傾向がみられます。

 いずれも炎色反応を示します。

 

水素は、アルカリ金属元素とは性質が非常に異なります。

その違いは、電子配置の閉殻構造の有無によります。

水素の陽イオンであるプロトンは、むき出しの正電荷であるため、イオン化エネルギーが非常に大きく、閉殻構造がないため安定化しません。

アルカリ金属元素の場合、一価の陽イオンが生成すると閉殻構造をとるため非常に安定化します。

 

リチウムは、アルカリ金属ですが、一部他と異なった性質があります。

リチウムはイオン半径が小さいために、電荷 / イオン半径比が他のアルカリ金属元素と比較して著しく大きくなるため、

同様に電荷 / イオン半径比の大きなマグネシウムイオン2)に似た性質を示します。

リチウムだけが、窒素と直接反応して窒化リチウム (Li3N)を生成します(他のアルカリ金属元素は、窒素と反応しません)。

また、リチウムの硫酸塩は、ミョウバンを形成しません。(他は、ミョウバンを形成します)。

 

 尚、水素は、水の構成成分であり、人体に最も多く存在します。DNA鎖は水素結合により結びついています。

 ナトリウムは、細胞の浸透圧を一定に保ったり、神経細胞での活動電位発生(シグナル伝達)に関与したりします。

 カリウムは、気孔の開閉に重要です。

 ナトリウムは細胞外に、カリウムは細胞内に多く含まれます。

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 第2族元素 第12族元素 第17族元素

ベリリウム・マグネシウム・カルシウム・ストロンチウム・バリウム・ラジウム、があります。

sブロック元素で、価電子は最外殻のs軌道にある電子です。

典型元素で、2価の陽イオンになりやすいです。

一部は炎色反応を示します。

 

カルシウム・ストロンチウム・バリウム・ラジウムをアルカリ土類金属といいます。

(ベリリウムとマグネシウムは、アルカリ土類金属に含みません)

 

2族元素は、閉殻構造の遮蔽を受けない核電荷が、同一周期の1族元素より大きいため、

アルカリ金属よりも原子間の結合が強く、単体の融点はアルカリ金属より高いです。

また、陽イオンのイオン半径は、相当する1族元素よりも小さいです。

2族元素塩の結晶格子も相対的に小さく、結合は強いです。

2族元素塩の溶解性も、1族元素塩に比べ小さいです。

 

切断面は、銀白色の金属光沢をもちますが、

周期が大きくなるほど原子半径が大きくなり、s軌道電子の束縛は緩やかで、金属性が強くなります。

 

ベリリウムは、化合物中において共有結合性が強く表れ、アルカリ土類金属とは少し化学的性質が異なります。

両性金属のひとつです。

 

マグネシウムは、ベリリウムとアルカリ土類金属の中間的な性質を持ち、グリニャール試薬など有機金属試薬として有用な性質があります。

 

2族元素の酸化還元電位は低いため、還元力は強いです

しかし、ベリリウムやマグネシウムは、強固な酸化皮膜で覆われて不動態を形成するため、強い還元作用が表面には現れにくいです。

一方、それ以外のカルシウム、ストロンチウム、バリウムは、水などのプロトン性溶媒と反応して、1族元素と比べて穏やかな反応で水素を発生します。

 

尚、マグネシウムは、解糖系で重要な酵素や、光合成で重要なクロロフィルにも含まれます。

カルシウムは骨の成分であり、筋収縮にも関係します。

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第3族元素

IUPACが周期表の公式な標準を定めていないため、異なる定義があります。

1.スカンジウム (21Sc)、イットリウム (39Y)、ランタン (57La)、アクチニウム (89Ac)

2.スカンジウム (21Sc)、イットリウム (39Y)、ルテチウム (71Lu)、ローレンシウム (103Lr)

3.スカンジウム (21Sc)、イットリウム (39Y)、ランタノイド (57La-71Lu)、アクチノイド (89Ac-103Lr)

4.スカンジウム (21Sc)、イットリウム (39Y)

 

3.のグループについて。これは、スカンジウム族ともいいます。

スカンジウム、イットリウム、ランタノイドアクチノイドは含みません)は、希土類元素(レアアース)といいます。

 

遷移元素です。(dブロック元素、fブロック元素

 (n-1)d1ns2の電子配置を持ちます。

 

3価の陽イオンとなりやすいです。

+3価(または+2価)の状態を取りやすく、化学的性質もよく似ていますが、

スカンジウムは、ある程度アルミニウムと似ており、共有結合半径やイオン半径は、他のランタノイド元素よりも小さいです。

イットリウムの共有結合半径とイオン半径は、ジスプロシウムホルミウムとほぼ同じで、水酸化物の塩基性など化学的性質もよく似ています。

 

アクチノイドも、ランタノイドと性質がよく似ていますが、+5価以上の高次酸化状態を取りやすい傾向があります。

 

またランタノイドやアクチノイドのイオンは、有色のものが多く、イオンの大半が常磁性を示します。

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第4族元素

チタン・ジルコニウム・ハフニウム・ラザホージウム、があります。チタン族元素ともいいます。

 

遷移元素です。

価電子にs22電子を持つ電子構造をもちます。

 

金属元素(遷移金属)で、単体では全て融点が1800℃以上です。

いずれも原子価殻に4つの電子を持ち、4価の陽イオンになりやすいですが、それ以外の価数の化合物にもなることができます。

チタンジルコニウム、ハフニウムは、酸化数が+4の状態が最も安定です。

 

単体金属は、銀白色の金属光沢を持ち、融点が高い性質を持ちます。

常温では、表面の酸化皮膜の不動態を形成するので、耐食性があります。

高温では、酸素(〜約500K)、ハロゲン(〜約600K)、水素と窒素(〜約1000K)、二酸化炭素とホウ素(〜約1300K)、と反応します。

 

無機酸に溶けにくく、アルカリ溶液とは反応しません。

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第5族元素

バナジウム、ニオブ、タンタル、ドブニウム、があります。バナジウム、ニオブ、タンタルはバナジウム族元素ともいいます。

 

遷移元素です。

価電子と内殻電子の電子構造は、周期により異なります。

 

 いずれも硬く強い金属で、融点、沸点も高く、酸にも侵されにくいです。超硬材料や、触媒などに利用されます。

不動態皮膜を形成するので、常温では耐食性があります。

高温では、多くの非金属元素と反応し、酸化物、炭化物(MC)、窒化物(MN)、硫化物を形成します。

 

いずれも、酸化数-1から+5の多様な化合物、イオンを形成します。

 

尚、ホヤやテングタケは、体内にバナジウムを多く持っています。

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第6族元素

クロム・モリブデン・タングステン・シーボーギウム、があります。クロム族元素ともいいます。

 

価電子と内殻電子の電子構造は、周期により異なります。

 

遷移元素です。

単体での融点、沸点が非常に高く、硬いです。

 

クロムは、岩石圏の0.02%を占め、-2,-1,0,+1,+2,+3,+4,+5,+6、の酸化数状態をとります。

3Cr(+3)の酸化状態は、自由エネルギーが最も低く極めて安定あり、6Cr(+6)は、酸化力が強く、容易に還元されます。

単体のクロムは、塩酸または硫酸に対して徐々にイオン化して溶解しますが、不動態を形成するため、硝酸とは反応しません。

 

モリブデンやタングステンは、高次の酸化数状態が安定で、酸化力の弱い酸とは容易に反応しません。

モリブデンは、岩石圏の1.5×10-3%を占め、-2, 0,+1,+2,+3,+4,+5,+6、の酸化数状態をとります。

タングステンは、岩石圏の1.6×10-3%を占め、0, +2,+3,+4,+5,+6の酸化数状態をとります。

 

高温では反応性は増大し、単体のクロム、モリブデン、タングステンは、酸素、硫黄、窒素、炭素、ハロゲンと反応します。

 

尚、モリブデンは、硝酸還元酵素に含まれ、窒素固定に重要です。

6価クロムは、毒性があります。

 

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第7族元素

マンガン・テクネチウム・レニウム・ボーリウム、があります。マンガン族元素ともいいます。

 

価電子と内殻電子の電子構造は、d5s2構造をとります。

最外殻のs軌道と、一つ内側のd軌道を占有する電子の和が7個になります。

従って、最大の原子価は、7価ですが、通常は、2価、3価の場合が多いです。

錯体化合物を含めると、s 電子とd 電子を全て与えた+7から-1価の状態まで取ります。

 

遷移元素です。

 

マンガンは、存在量も多い(地殻の0.085%)元素で、単塩は、+2, +4,+6,+7の状態を取ります。

Mn(+2)の自由エネルギーは著しく低く、Mn(+2)の状態が最も安定です。

高次酸化状態のマンガンの化合物は、酸化剤として有用であり、単体は還元剤として有用です。

反応性は高く、ハロゲン、酸素、硫黄、炭素、窒素、などと化合物を形成します。

 

テクネチウムとレニウムとは、性質が似ています。

テクネチウムは、全ての同位体が放射性であり、天然にはウランが自発核分裂して生じる 99Tc(半減期2.14×105年)が痕跡量存在するだけです。

レニウムは、モリブデンの鉱石中にごく少量含まれます。

テクネチウムとレニウムの単塩は、酸化数 +4, +5, +7の状態を取りやすいです。

酸化物、硫化物、ハロゲン化物を与えます。

 

尚、マンガンは、アルギナーゼという酵素に含まれます。

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第8族元素

鉄・ルテニウム・オスミウム・ハッシウム、があります。

 

長周期表の第8族〜第10族元素は、最外殻の4s電子を2つ持ち、同一周期元素の化学的性質が似ています

4周期の26Fe27Co28Ni鉄族元素といい、共通して、強磁性体です。

5周期と第6周期の44Ru45Rh46Pd76Os77Ir78Pt白金族元素といいます。

 

価電子と内殻電子の電子構造は、周期により異なります。

 

遷移元素です。

 

は、最も広く岩石圏に分布する金属で(5.1%)、酸化物、硫化物などとして多くの岩石に含まれます。

単体は、強磁性体で、酸化されて酸化物を形成しやすく、ニッケル同様に微粉末にすると室温で自然発火します。同じく高温で炭素、リン、硫黄と反応します。

イオン化傾向も大きく、不動態を形成しないので、多くの酸と水素を生成しながらイオン化します。

 

ルテニウムオスミウムは貴金属で、他の白金族元素と共に産出し、白金族元素は合わせて岩石圏の2×10-6%を占めます。

空気酸化されにくく、ほとんどの酸に侵されませんが、熱時に王水でイオン化して溶解します。

 

尚、生命は、黄鉄鉱パイライトFeS2 )上で生じた物質からしたとする説あります。

電子伝達系の酵素にも含まれます。

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第9族元素

コバルト・ロジウム・イリジウム・マイトネリウム、があります。

 

価電子と内殻電子の電子構造は、周期により異なります。

 

遷移元素です。

 

コバルトは、鉄族元素で、岩石圏に広く分布しますが(10-3%)、他の金属と共存することが多いです。

単体は、強磁性体であり、高温で発火して酸化物を形成し、同じく高温で炭素、リン、硫黄と反応します。

酸化状態は、-1, 0, +1, +2, +3, +4が知られていますが、+2価は多くの単塩化合物があり、+3価は少数の単塩化合物があります。

+2,+3価の場合も含めて、種々の酸化数の錯体化合物があります。

 

ロジウムイリジウムは、白金族元素です。

単体は、非常に空気酸化されにくいです。

酸化状態は、-1, 0, +1, +2, +3, +4, +6がありますが、加えてイリジウムは、+5価の化合物もあります。

ロジウムは、+1+3価を取る化合物が多く、

イリジウムは+1+3+4価を取る化合物が多いです。

ロジウムとイリジウムは、他の白金族元素と異なり、オキソアニオンや高原子価酸化物を形成しません。

 

尚、ビタミンB12は、コバルトの錯体です。

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第10族元素

ニッケル・パラジウム・白金・ダームスタチウム、があります。

 

遷移元素です。

価電子と内殻電子の電子構造が周期により異なります。

 

ニッケルは、鉄族元素で、岩石圏で、0.016%を占めます。

酸化数は、-1,0,+1,+2,+3,+4を取ることが知られていますが、多くは+2価の化合物です。

ニッケル62は、最も安定な核種です。

 

パラジウム白金は、白金族元素です。

パラジウムは0, +2, +4価、白金は0, +2, +4, +5, +6を取ることがありますが、多くは、+2, +4価の化合物です。

 

パラジウムと白金は、炭素化合物と安定なπ錯体を形成し、接触水素添加反応など触媒反応に利用されます。

クロスカップリング反応では、主にパラジウム触媒が利用されます。

ニッケルも性質が似ていることから、これらの反応に安価なニッケル触媒が利用されることもあります。

 

尚、ニッケルは、ウレアーゼ(尿素分解酵素)や、ヒドロゲナーゼなどに含まれます。

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第11族元素

銅・銀・金・レントゲニウム、があります。銅族元素貨幣金属ともいいます。

 

価電子と内殻は(f14d10s1構造をとり、内殻は閉殻の電子配置をとっています。

 

遷移元素です。

 

11族元素は、第1族元素と同じ価電子の構成を持ち、+1価のイオンを形成しますが、

d 軌道電子の空間分布が上位のs軌道よりも広がるため、s 電子への核電荷の遮蔽が弱くなり、強く原子核に束縛されます。

その結果、+1価のイオンを形成しやすいこと以外は、物理的性質が異なります。

 

単体の金属結合には、s 電子だけでなく、d 電子も関与するため、昇華エンタルピーや融点は、第1族元素よりもかなり高いです。

更に、イオンが水和によってほとんど安定化されないこともあり、

腐食されにくさや、電気分解に際して陽極に析出しやすいなど、貴金属性を示す要因になっています。

 

天然における存在量は、7×10-3%, 2×10-5%, 5×10-7%(岩石圏の存在比)であり、単体(特に金)で産出することもあります。

 

金はランタニド収縮の影響により、金属半径は銀とほとんど変わりません。

 

イオンは、+1, +2, +3を取りますが、銅、銀が+2価が比較的安定であるのに対して、金は、+3価が安定です。

イオン半径は小さいです。

塩(非錯塩)の多くは、水に難溶性で、比較的水溶性が高いのは、錯塩を除くと、Ag(+1)塩のみです。

幾つかの錯塩は水溶性を示し、特に無機シアンイオン(CN-)と第11族元素のイオンとの錯塩は水に対する溶解性が大きいです。

他にアンモニアやアミンなどとも錯体を形成します。

 

尚、銅とスズの合金である青銅は、人類が初めて利用した金属です。

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第12族元素

亜鉛・カドミウム・水銀・コペルニシウム、があります。亜鉛族元素ともいいます。

 

価電子と内殻は、(f14 d10 s2 構造をとり、内殻と副殻が閉殻の電子配置をとっています。

最外殻にns2電子配置を持ちます。

内部のd殻は満たされていますがd 軌道の対称性から外部の影響によって分極を起しやすく、これが亜鉛族特有の化学的特性をもたらします。

一般にDブロック元素ですが、遷移金属の性質は示さず、典型元素の金属としての性質を示します。

 

電子配置はアルカリ土類金属と似ていますが、性質は安定なイオンが2価までであること以外、共通点はありません。

亜鉛族の原子価軌道の内側は、(n-1 d10軌道であり、アルカリ土類金属の場合の希ガス配置とは異なります。

 

共通点は少なく、蒸気圧が高く、揮発性が高い、ことです。

亜鉛は、両性金属の一つです。

 

亜鉛カドミウムは、卑金属で、性質がよく似ており、イオン半径も近く、結晶中で同形置換の形で共存していることも多いです。

水銀は、金属としては唯一常温で液体であり、貴金属(イオン化傾向が水素より小さい金属)に分類されることもあります。

 

尚、亜鉛は、Znフィンガーというドメインに含まれます。

DNA合成で重要な酵素などにも含まれます。

 

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第13族元素 第 3族元素 第15族元素

ホウ素・アルミニウム・ガリウム・インジウム・タリウム・ウンウントリウム、があります。ホウ素族元素ともいいます。

アルミニウム・ガリウム・インジウム・タリウムを、土類金属といいます。

 

価電子にs2p13電子を持つ電子構造をもちます。

 

13族元素を中心に持つ化合物は、オクテット則を満たさず、電子不足化合物となることが多いです。

電子不足化合物は、ルイス酸として塩基と錯体を形成すると、オクテット則を満たす安定化合物を形成します。

 

原子半径、イオン半径は、周期が大きくなるにつれて大きくなりますが、ホウ素が非常に小さいのに対し、土類金属は他の典型元素と同程度です。

典型元素で、一部は炎色反応を示します。

 

ホウ素は、半金属で、安定な陽イオンを形成せず、共有結合化合物を形成し、高融点や高い硬度を持つ化合物が多いです。

 

土類金属アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム)は、金属としての性質を示します。

3価の陽イオンを形成しますが、タリウムは、3価より1価の陽イオンが安定です。

 

アルミニウムは、両性金属で、種々の金属と合金を形成し、軽金属の中心となる元素です。

また、酸素との親和性が高く、強固な酸化皮膜が不動態を形成します(アルマイト)。

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第14族元素 第15族元素

炭素・ケイ素・ゲルマニウム・スズ・鉛・フレロビウム、があります。炭素族元素等ともいいます。 青銅

 

価電子にs2p24電子を持つ電子構造をもちます。

共有結合性化合物の炭素と金属であるの間の元素は、両者の性質を兼ね備えつつ、周期が大きくなるにつれて金属的な性質が増大します。

典型元素で、一部は炎色反応を示します。

 

炭素ケイ素は、共有結合化合物です。

炭素は、単体がカテネーション性(鎖状構造をとる性質)を示し、4価の共有結合も持つため、多様な炭素骨格を形成して多くの有機化合物を形成します。

ケイ素では、単体より酸化物の方が強くカテネーション性を示し、酸化ケイ素は、多彩な岩石ケイ酸化合物)を形成します。

 

ケイ素、ゲルマニウム、スズは、電気伝導性からは半導体に分類され、

特にケイ素とゲルマニウムは、真性半導体といいます。

ケイ素、ゲルマニウムとスズは、半金属であり、βスズは金属結合性を示すのに対し、αスズは共有結合性を示すなど、状況に応じて二面性を示します。

スズや鉛は、両性金属の一つです。

と鉛化合物は、共有結合的性質をほとんど示しません。

 

スズや鉛は、2価の陽イオンが酸化的に安定であるのに対して、

ゲルマニウムは、4価のイオンを生成しやすいです。

 

スズと2価のスズ化合物は、温和な還元剤として利用されますが、4価の鉛化合物は酸化力が強く酸化剤として利用されます。

 

尚、炭素は、多数の有機化合物を形成し、生命の主要な構成成分となっています。

ケイ素は、生物との関わりは薄く、放散虫・珪藻・シダ植物・イネ科植物などにおいて、二酸化ケイ素の形で骨格に利用する程度です。

しかし、ケイ酸塩により、高温でなくともホルモース反応が進行できるようなので、原初では、生命反応に関わっていた・・・かもしれません。

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第15族元素

窒素・リン・ヒ素・アンチモン・ビスマス・ウンウンペンチウム、があります。窒素族元素ニクトゲン等ともいいます。

 

価電子に ns2np3 5電子を持つ電子構造をもちます。

 

典型元素で、一部は炎色反応を示します。

窒素のみ常温で気体であり、他は固体です。

窒素リンの価電子は、混成軌道を形成し、共有結合物質として振舞います。

 

一方、ヒ素より周期の大きい単体は、半金属です。

ヒ素、アンチモン、ビスマスは、混成軌道を形成するより、

2つの電子が占有した s 軌道と、1つずつ電子が存在する3つのp 軌道として振舞うので、酸化数は+3+5が安定です。

 

15族元素と第13族元素の化合物から形成される半導体を、III-V族半導体といいます。

また、真性半導体に第14族元素を微量ドーピングすることで、N型半導体を形成します。

 

 尚、窒素やリンは、タンパク質や核酸等に含まれ、生体で重要な元素です。

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第16族元素

酸素・硫黄・セレン・テルル・ポロニウム・リバモリウム、があります。酸素族元素硫黄族元素(カルコゲン)ともいいます。

 

価電子は、最外殻のs軌道と p 軌道にある電子です。

s 軌道は 2 電子が占有し、p 軌道は 4 個の電子が占有しており、二価の陰イオンになりやすいです)。

 

 典型元素です。

 酸素のみ気体であり、硫黄、セレン、テルル、ポロニウムは固体です。

硫黄 、セレン、テルルは、性質が似ているため、カルコゲンともいいます。(酸素は性質が異なるため、含みません)。

金属元素と化合物を形成し、種々の鉱石の主成分となっています。

ポロニウムは、放射性元素で天然での存在量は少ないです。

単体は、電気陰性度が大きく、反応性の高い元素群であり、周期が増大すると金属性が増しますが、

酸素からセレンは共有結合物質であり、テルルとポロニウムは半金属です。(セレンは半金属に分類されることもあります。)

 

 尚、酸素は、水の構成成分であり、人体に多く含まれます。

 硫黄は、メチオニンやシステインに含まれます。また、ジスルフィド結合を形成します。

 セレンはセレノシステインとしてタンパク質に組み込まれ、グルタチオンペルオキシダーゼなど、セレノプロテインとして働きます。

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第17族元素

フッ素・塩素・臭素・ヨウ素・アスタチン・ウンウンセプチウム、があります。ハロゲン( X ともいいます。

 

価電子は最外殻のs軌道とp軌道にある電子です(s軌道は2個の電子が占有し、p軌道は5個の電子が占有しており、一価の陰イオンになります)。

典型元素です。

フッ素、塩素、臭素、ヨウ素は、性質がよく似ており、アルカリ金属アルカリ土類金属と典型的な塩を形成します。

電気陰性度が大きく、非常に反応性に富みます。

フッ素は、最も強い酸化剤の一つです。

塩素は、水圏に大量に存在します(クラーク数)が、地殻中の存在比では、フッ素>塩素>臭素>ヨウ素です。

アスタチンは、放射性物質で、半減期が数時間しかないため、天然にはほとんど存在しません。半金属に分類されることもあります。

 

一般的に分子量の大きなものほどファンデルワールス力が増大し、常温、常圧で、

フッ素は薄黄色の気体、

塩素は淡黄緑色の気体、

臭素は赤褐色の液体、

ヨウ素は黒紫色の固体、

アスタチンは固体で、

ヨウ素やアスタチンの固体は、金属光沢を持ちます。

 

 尚、塩素は、食塩(塩化ナトリウム)の成分です。

塩素単体では、強い酸化力と殺菌力があるため、漂白剤や消毒剤として使用されます。

 ヨウ素は、殺菌作用があるため消毒薬(ヨードチンキ)の材料です。

また甲状腺ホルモンは、ヨウ化化合物です。

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第18族元素

ヘリウム・ネオン・アルゴン・クリプトン・キセノン・ラドン・ウンウンオクチウム(未承認)、があります。希ガス(稀ガス、貴ガス)ともいいます。

 

典型元素です。

最外殻電子が閉殻となっているため、化学的に非常に不活性です(不活性の度合いは He Xe の順に弱くなります)。

アルゴンは、空気中に0.9%含まれます。これは二酸化炭素 (0.03%) 30倍であり、それほど稀ではありません。

ヘリウムを除いて、常圧かつ凝固点以下で、弱いファンデルワールス力による結晶(単原子分子による分子性結晶)を形成します。

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 その他

価電子

不対電子

磁性 : 常磁性、強磁性、キュリーの法則

イオン化エネルギー

イオン化傾向

電気陰性度

遮蔽効果

オクテット則

炎色反

両性金属

半金属

半導体

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価電子

原子内の最外殻の電子殻をまわっている電子です。

原子の化学結合や物性に密接に関係します(例外もあります)。

その他

 

不対電子

分子や原子の最外殻軌道にある、対になっていない電子です。

不対電子があると反応性が高いです。また磁性の特性も決めます。

その他

 

磁性 第 3族元素 第 8族元素 第 9族元素 第10族元素

物質が原子または原子よりも小さいレベルで磁場に反応する性質です。

 

外部磁場がない時には磁化を持たず、磁場があるとその方向に弱く磁化する磁性を、常磁性といいます。

常磁性の物質の磁化率(帯磁率)χは、温度Tに反比例します(キュリーの法則)。

 

磁気モーメントが全体として一定方向にそろっており、磁場がなくても磁性をもち、永久磁石となり得るものを、強磁性といいます。

強磁性物質は、キュリー温度キュリー点)より高温の状態では強磁性を失います。

室温で強磁性を示す単体の物質は少なく、鉄、コバルト、ニッケル、ガドリニウム(ランタノイドの一種です。18℃以下)です。

その他

 

イオン化エネルギー

原子、イオンなどから電子を取り去ってイオン化するために要するエネルギーで、原子が電子とどれだけ強く結び付いているかの目安となります。

第 1族元素のイオン化エネルギーが最低で、第18族元素が最高です。

その他

 

イオン化傾向

溶液中(水溶液中)における、元素(金属)のイオンへのなりやすさの相対尺度です。

溶液中に、ある単体と別の元素のイオンとが存在する時、両者の間で酸化還元反応が生じると、

一方は酸化されてイオン化するのに対して、もう一方は還元されて単体として析出します。

イオン化傾向が大きいほど、イオンは酸化(電子を放出します)されてイオン化しやすくなり、

小さいほど、イオンは還元(電子を受け取ります)されて金属として析出しやすくなります。

 

異なる2種類の金属と電解液とを組み合わせると、電池ができます。

このとき、イオン化傾向の大きい方(酸化還元電位がより低い方)の金属が負極となり、

小さい方(電位が高い方)が正極となります。

また、イオン化傾向の差が大きいほど、電池の起電力(取り出せる電圧)は大きくなります。

その他

 

電気陰性度 第16族元素 第17族元素

分子内の原子が電子を引き寄せる強さの相対的な尺度で、χで表されます。

フッ素(4.0)が最も大きく、以下、酸素、窒素、塩素・・・です。

その他

 

遮蔽効果(しゃへいこうか) 第 2族元素 第11族元素

1つ以上の電子殻をもつ原子において、電子と原子核の間の引力が見かけ上減少しているように見える効果です。

その他

 

オクテット則  第13族元素

原子の最外殻電子の数が8あると化合物やイオンが安定に存在する、という経験則です。

ただし、多くの例外があります。

その他

 

炎色反応 第 1族元素 第 2族元素 第13族元素 第14族元素 第15族元素

アルカリ金属やアルカリ土類金属、銅などの塩を炎の中に入れると、各金属元素特有の色を示す反応です。

原子化した金属原子は、熱エネルギーによって電子が励起し、外側の電子軌道に移動します。

励起した電子は、エネルギーを光として放出することで基底状態に戻りますが、この時、元素に特徴的な輝線スペクトルを示します。

炎色反応は、比較的低温で熱励起され、発光波長が可視領域にある元素が、微粉末や塩化物のような原子化されやすい状態になっている時にみられます。

その他

 

両性(金属第 2族元素 第12族元素 第13族元素 第14族元素

酸とも塩基とも反応する物質です。

亜鉛、スズ、鉛、アルミニウム、ベリリウムなどがあります。

その他

 

半金属 第13族元素 第14族元素 第15族元素 第16族元素 第17族元素

金属と非金属の中間の性質を示す物質です。

ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルルがあり、

セレン、ポロニウム、アスタチンを加えることもあります。

脆性、半導体性、金属光沢、酸化物の示す両性などが特徴的です。

その他

 

半導体 第14族元素 第15族元素

電気をよく通す導体(良導体)と、通さない絶縁体、の中間的な性質を示す物質です。

その他

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 参考: 完全図解周期表第2版(Newton別冊)など。

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