転移RNA(tRNA)・・・RNAとアミノ酸をつなぐ、アダプター。
参考
タンパク質の構造 :一次構造、二次構造、三次構造、四次構造、その他(ロイシンジッパー、Znフィンガー)
tRNAは、mRNAとアミノ酸をつなぐ、アダプター分子です。
RNAワールドにおいて、tRNA様のアダプター分子に、RNA (リボザイム) がアミノ酸を結合させていた、という説があり、
アミノ酸とtRNAをつなぐ、アミノアシルtRNA合成酵素( aaRS )は、最古のタンパク質の一つである可能性があります。
(反応にATPが必要ですので、aaRS誕生は、少なくともATP誕生以降と思いますが。)
この酵素は、触媒ドメインに、ロスマンフォールドと、逆平行βシートをもつため、
この2つは、最古のタンパク質の(部分)構造の一部の可能性も・・・ありそうですね。
また、aaRSのクラスIIに、グリシン、アラニン、アスパラギン酸と、
原初から存在したと考えられるアミノ酸(GADV仮説のアミノ酸のうち3種類)が含まれるので、
逆平行βシートの方が、起源が古いような気がします。
タンパク質の多くは、いくつかのドメインからできており、ドメインは、進化的に関連したタンパク質でみられることが多いです。
タンパク質の構造の基本的なものに、αヘリックスとβシート、がありますが、
溶液中では、αヘリックス構造をあまりとらないので、βシートの方が誕生は早そうです・・・
アミノアシルtRNA合成酵素の触媒ドメインも、βシートですね。
ただし、ヘリックス構造でも、コイルドコイルのように、
疎水性の部分を内側に向けて二量化すると、表側に疎水性の面がなくなり、安定するようです。
後、小さすぎて内側に疎水中心を持たないドメインでも、
Znフィンガーのように、金属イオンやジスルフィド結合、があると安定化します。
尚、これは、1つのαヘリックスと、2つの逆平行βシートからなります。
ちなみに、Zn world説(黄鉄鉱仮説の拡張版)、という説もあります。
転移RNA(運搬RNA、トランスファーRNA :tRNA)
73〜93塩基の長さの小さなRNAです。
リボソームのタンパク質合成部位で、mRNA上の塩基配列(コドン)を認識し、
対応するアミノ酸を合成中のポリペプチド鎖に転移させるためのアダプター分子です。
tRNA遺伝子
ゲノム中のtRNA遺伝子の数は、生物により様々です。
出芽酵母では275です。
線虫の核ゲノムには、全部で19,000遺伝子があり、そのうち659がtRNAをコードしています。
ヒトでは497個が知られており、アンチコドンごとに整理すると49種となります。
またヒトのゲノム中には、tRNA由来の偽遺伝子が324個見つかっています。
真核生物のtRNAは、RNAポリメラーゼIIIによって転写されます(mRNAは、RNAポリメラーゼIIです)。
その後Pre-tRNA スプライシングや、塩基修飾を経て、成熟型のtRNA分子になります。
tRNAの構造
D・アンチコドン・T、という3つのアームを持つ、
クローバーリーフという二次構造を持ち、これが折りたたまれてL字型になります。
L字の、長い側の先端には、アンチコドンがあり、mRNA上のコドンと対合します。
短い側の先端には、アミノ酸が結合し、ポリペプチド合成に用いられます。
tRNAの塩基は、化学修飾を受けているものも多く、メチル化は頻繁にみられます。
L字型の長い側の基部に相当し、アンチコドンアームに対して上流側のステムループです。
Dループ-Tループの相互作用は、三次構造形成に重要です。
アミノアシルtRNA合成酵素によって認識される部位の可能性があります。
修飾塩基として、ジヒドロウリジン(D)を含むことが多いです。
L字型の長い側の先端に相当するステムループであり、ループ中にコドンと対合するアンチコドンが存在します。
アンチコドンの1文字目には、様々な修飾塩基がみられ、コドン認識に重要な役割を担っています。
アンチコドンの3'側に隣接する37位も、頻繁に修飾を受けます。
L字型の関節部に相当し、アンチコドンアームに対して下流側のステムループです。
リボソームによって認識される部位の可能性があります。
典型的なtRNAでは、ループ中にTΨCという保存配列があり、
RNAにも関わらず、修飾塩基として、チミジン(T。正確にはリボチミジン( rT )または5-メチルウリジン( m5U ) )を含むことが多いです。
T、Ψ(シュードウリジン)とも、生物種によってはそれらの類縁体になっていることもあります。
セレノシステイン-tRNAと、ピロリジン-tRNA は、例外的に他のtRNAにない様々な特徴を持ちます。
L字型の短い側に相当します。
一次構造上の両末端が対合していますが、ゆらぎ塩基対を含む場合があります。
5'末端は、リン酸基を持ちます。
3'末端側は、CCAの3塩基が突出し、末端のアデノシン残基にアミノ酸が共有結合します。
CCA配列は、ほとんどの真正細菌ではtRNA本体と同様に遺伝子から転写されますが、
真核生物と古細菌では、転写後にCCA付加酵素によって付加されます。
古細菌では、クラスI-CCA付加酵素、
真核生物(と一部の真正細菌)では、クラスII-CCA付加酵素によって行われます。
I-U、I-A、I-C、G-U の塩基対で、熱力学的安定性はワトソン=クリック型塩基対( A-U、G-C )と同程度です。
遺伝暗号の適切な翻訳に非常に重要です。
アミノ酸の数(20)と、コドンの数(64)に差異がある遺伝暗号は、
差異をアンチコドン第1塩基に起こる、塩基対修正によって埋め合わせをしています。
修正塩基に、ヒポキサンチン(ヌクレオシド型はイノシン( I ) )、G-U 塩基対があります。
ヒポキサンチンは、ウラシル、アデニン、シトシンと塩基対形成が可能です。
ウラシルは、アデニンに加えて、グアニンとも塩基対形成が可能です。 Dアーム アンチコドンアーム Tアーム アクセプターステム
アンチコドン
mRNA上のコドンと対合する3塩基です。
しかしこの対応関係は、1対1とは限らず、1つのアンチコドンが同じアミノ酸をコードする複数のコドンを認識する場合があります。
1対1の場合、61種のtRNAが必要になりますが、通常はこれよりも少ない種類のtRNAしか存在しません。
アンチコドンの1文字目は、化学修飾により、イノシン( I )またはシュードウリジン(Ψ)になっている場合があります。
これらの修飾塩基は、複数の塩基と水素結合を形成できるため、こうしたtRNAは3文字目だけが異なる複数のコドンを認識できます。
tRNAは、特定のアミノ酸としか結合しませんが、遺伝暗号が縮重しているため、
異なるアンチコドンを持つtRNAが同じアミノ酸と結合する場合があります。
1つのアミノ酸に対して2種類以上のtRNAが存在し、
1つのtRNAは複数のコドンに対応できるため、
30から40種のtRNAが1つの翻訳系で使われます。
アミノアシル化
tRNAの3'末端にあるCCAのアデノシン残基には、tRNAごとに特定のアミノ酸が結合してアミノアシルtRNAとなります。
この反応をアミノアシル化といい、アミノアシルtRNA合成酵素( aaRS )によって触媒されます。
通常はアミノ酸ごとに1種類のaaRSが存在しており、
アンチコドンが異なる複数のtRNAを1種の酵素が認識してアミノアシル化を触媒しています。
コドンとアミノ酸の正確な対応には、tRNAとaaRSの特異的な相互作用が必須となります。
この対応関係は、アンチコドンだけを認識して決定しているわけではないようです。
アミノアシルtRNA合成酵素(aaRS、ARS) リガーゼ
特定のアミノ酸を、対応するtRNAにエステル結合させて、アミノアシルtRNAを合成する酵素です・・・
アミノアシルtRNAは、リボソームに運ばれて、tRNA部分の3塩基からなるアンチコドンが、
mRNAのコーディング領域のコドンと対合し、タンパク質合成に用いられます。
つまり、3塩基のコドンと1アミノ酸の対応付けが行われる場はリボソームであっても、
実際にコドンとアミノ酸の対応関係を示す遺伝暗号は、aaRSの特異性にもとづいて規定されていることになります。
通常の生物では翻訳に使用されるアミノ酸20種類に対し、それぞれ対応するaaRSを持っています。
3つの生物界 (真核生物、真正細菌、古細菌) の間で、一次配列上の特徴が分かれていることが多いです。
RNAワールドにおいて、tRNA様のアダプター分子に、RNA (リボザイム) がアミノ酸を結合させており、
aaRSは、基質特異性を厳密に維持しつつも、最古のタンパク質として多様な進化を遂げた、という説もあります。
分類
aaRSは、大きく2つのクラスに分けられます。
それぞれのクラスは、さらにIa、Ib、IcおよびIIa、IIb、IIcに分けられます。
クラスI
αヘリックスと平行βシートで構成される、ロスマンフォールド((モノ)ヌクレオチド結合モチーフ)からなる触媒ドメインに、
His-Ile-Gly-His (HIGH)モチーフを有し、
さらにC末端側のドメインとの間にLys-Met-Ser-Lys-Ser (KMSKS)モチーフをもちます。
多くの生物では、
バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、メチオニン、システイン、トリプトファン、チロシン、に対応するaaRSが、このクラスに属します。
尚、クラスIの、リジルtRNA合成酵素をもつ真正細菌、古細菌も存在します。
反応の第二段階において、tRNAの2'-OHにアミノ酸を結合させます。
クラスII
3つの特徴的なモチーフ (motif 1, 2, 3) を含む、逆平行βシートを触媒ドメインとします。
多くは、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、リジン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、プロリン、に対応するaaRSが、このクラスに属します。
反応の第二段階において、tRNAの3'-OHにアミノ酸を結合させます。
反応機構
aaRSは、2段階の反応でATPの加水分解と共役してアミノ酸をtRNAに結合させます。
ATPと対応するアミノ酸 (または前駆体) が、aaRSの基質結合部位に結合すると、
中間体である、アミノアシルAMP (アミノアシルアデニレート) が形成され、ピロリン酸 ( PPi ) が遊離します。
アミノ酸 + ATP → アミノアシルAMP + PPi
アミノアシルAMP-aaRS複合体に、適切なtRNAが結合すると、
アミノ酸のカルボキシ基が、tRNAの3'末端のアデノシン (A76) の2'-または3'-OHとエステル結合を形成し、
アデノシン一リン酸 ( AMP ) が遊離して反応が終結します。
アミノアシルAMP + tRNA → アミノアシルtRNA + AMP
以上より、アミノ酸 + ATP + tRNA → アミノアシルtRNA + AMP + PPi 、という反応式になります。
一次構造: ペプチドやタンパク質のアミノ酸配列です。
二次構造: αヘリックスやβシートなど、部分的な立体構造です。
三次構造: タンパク質の全体的な立体構造です。
四次構造: サブユニットから構成される多量体です。
タンパク質の構造でみられる、アミノ酸の繰り返し単位、または、特徴が共通して見られる単位や配列です。
タンパク質の配列や構造の一部で、他の部分とは独立に進化し、機能を持つものです。
ドメインは、コンパクトな三次元構造を作り、独立に折りたたまれ、自己安定化されることが多いです。
ジンクフィンガーのような短いドメインは、金属イオンや、ジスルフィド結合、によって安定化されます。
多くのタンパク質が、いくつかのドメインからなり、ドメインは、進化的に関連した多くのタンパク質の中にみられます。
フォールディング:タンパク質が特定の立体構造に折りたたまれる現象です。
アンフィンセンのドグマ: タンパク質は自発的に、熱力学的に最も安定な立体構造をとる、というものです。
自発的にフォールディングせず、シャペロンの補助を必要とするタンパク質もあります。
シャペロンは、他のタンパク質分子が正しい折りたたみをして機能を獲得するのを助けるタンパク質です。
熱ショックタンパク質、などがあります。
ヘリックス
πヘリックス・ωヘリックス
平面構造
超二次構造: αヘリックスやβシートといった二次構造の特定の組み合わせが、局所で集合して形成された構造です。
ヘリックス
右巻きラセン型です。(DNAの二重ラセンも右巻きです。)
骨格となるアミノ酸の全てのアミノ基は、4残基離れたカルボキシル基と水素結合を形成しています。
αヘリックスの水素結合は、βシートの水素結合よりも弱く、周囲の水分子の影響を受けやすいと言われています。
溶液中の短いポリペプチド鎖は、αヘリックス構造を取ることはあまりありません。
メチオニン、アラニン、ロイシン、グルタミン酸、リシンは、ヘリックスを作る傾向が強いですが、
プロリン、グリシン、チロシン、セリンはヘリックスを作りにくいです。
特にプロリンは、ヘリックス構造を壊したり、歪めたりしてしまいます。
またグリシンは、ヘリックスの形成を阻害します。
αヘリックスは、ヘリックスターンヘリックス、ジンクフィンガー、ロイシンジッパー、などの構造に含まれ、DNA結合モチーフとしての役割を持ちます。
2つまたは3つの平行βシートが、ラセン状になった構造です。
この構造は、ヘリックス内の水素結合、タンパク質間相互作用、金属イオンの結合などによって安定化されます。
二本鎖ラセン構造
2層のβシートをグリシンに富む6残基のループでつないだものです。
ループには、カルシウムイオンを結合するためのアスパラギン酸残基が必ず含まれます。
三本鎖ラセン構造
歪んだ三角柱を形成し、それぞれの面はヘリックス内水素結合に対し、平行になっています。
特徴的な6残基の繰り返し配列を持ちます。
3つのシートのうち、繰り返しモチーフを含む1つは、二本鎖ラセンを作る他の2つに対して曲がっているように見えます。
ループでつながった他の2つのシートは、任意の長さを持ち、別のドメインを持つこともあります。
右巻きのものは、ペクチン酸リアーゼや、P22ファージのタンパク質があり、
左巻きのものは、UDP-N-アセチルグルコサミンアシルトランスフェラーゼや、古細菌の炭酸脱水酵素などがあります。
他に、不凍液タンパク質があり、βヘリックス中のトレオニンが氷の表面に結合し、結晶の成長を妨げています。
コラーゲン中によく現れる構造です。
グリシン - プロリン - ヒドロキシプロリン、の3アミノ酸配列の繰り返しからなる、三本鎖ラセンから構成されています。
3本の鎖は、水素結合でつながっていますが、水素原子の供給源はグリシンのアミノ基であり、受容源は他鎖の残基のカルボキシル基です。
ヒドロキシプロリンのカルボキシル基も、水素結合に関与しています。
平面構造
隣り合ったペプチド鎖の間で、一方の主鎖の N-H の部分が、
隣接する主鎖の C=O の部分と水素結合を形成し、全体として平面構造を形成しています。
こうして形成される多くの水素結合により、安定で丈夫な構造となります。
βシートには平行型と、逆平行型が存在します。
βシートの中では、ペプチド鎖がほとんど伸びきっています。
シートの一方の面に現れるアミノ酸残基の多くが疎水性で、他方は親水性です。
βシート中に、プロリンなど、ある種の配列が現れると、そこでヘアピンターン(ペプチド鎖の向きの急転換)が起こります。
2つのβシートでヘアピン様の形を作った、最も単純なタンパク質モチーフの1つです。
このモチーフは、一次構造上で隣り合った2つのβシートが逆平行に配列し、
2から5アミノ酸残基からなる短いループでつながったものです。
βヘアピンは、単独か、水素結合でつながった形として現れます。
βシートの水素結合が部分的に破壊されたもので、βシートの水素結合に、ラセンの一部を挿入したものです。
最も基本的な機能は、突然変異などによって生じた余分な残基を収容し、タンパク質の機能を保つことです。
また免疫グロブリンタンパク質などでは、lgドメインの二量化を助けています。
さらにジヒドロ葉酸レダクターゼや、スーパーオキシドディスムターゼでは、
βバルジを含むループが活性部位を基質に近づける働きを担っています。
アミロイドーシス、ポリグルタミンやトランスサイレチンのリピートなど、
様々なタンパク質のミスフォールディング病の中間体となっていると考えられています。
アミロイドβは、アルツハイマー病患者の脳でみられる、アミロイドの主要成分です。
これらの変異タンパク質は、ランダムコイルやαヘリックスの構造を持ったタンパク質が、βシートに構造変化したものですが、
水素結合とのずれの角度から、αシートを中間体としていると考えられています。
リゾチームは、天然でαシート構造を持つ数少ないタンパク質です。
これは、実験環境下で自然にアミロイド繊維化するタンパク質で、
天然のαシート領域も、変異領域もリゾチームアミロイドの核となっています。
αシート構造とβシート構造が直接移り変わる機構、も提唱されています。
2つのCα原子が7Å以内に近づき、それらの残基がαヘリックスやβシートなど、通常の二次構造を取らなかったものです。
βターンは、最も良く見られるもので、3つ離れた残基同士で水素結合を形成しています。
γターンは、2つ、
αターンは、4つ、
πターンは、5つ離れた残基同士で水素結合を形成しています。
ωループは、内部に水素結合を持たない長いループの総称です。
超二次構造
2から7つのαヘリックスが、ロープのように巻いた形をしています。
αヘリックスは、平行、または逆平行に配置し、左巻きのスーパーコイルを形成しています。
右巻きのものも、天然に少数存在します。
H P P H P P P、という7残基の繰り返しを必ず含みます。(Hは疎水性アミノ酸、Pは極性アミノ酸)
ヘリックスと相互作用する領域には、ロイシンジッパーなどの疎水性残基が多いです。
原形質のような水溶液中で、2つのヘリックスを結合させる簡単な方法は、
疎水性残基同士を内側に向けて貼り合わせることです。
二量化すると、外側に疎水性の面がなくなるからです。
この構造を持つタンパク質には、遺伝子発現を制御するものや転写因子など、
重要な生物学的機能を持つものが多いです。
がん遺伝子由来のc-fos、junや、
筋肉中のトロポミオシンがあります。
ヘリックスターンヘリックス(ヘリックス・ループ・ヘリックス) ホメオドメイン
2つのαヘリックスが、短いペプチド鎖でつながった構造を持ち、DNAに結合する性質を持ちます。
DNAへの結合は、水素結合と、塩基部分のファンデルワールス力によります。
このモチーフは、Cro、CAP、λリプレッサーに存在する、20-25アミノ酸残基の共通配列として発見されました。
遺伝子発現を制御するタンパク質に多くみられます。
互いに垂直な、2つのαヘリックスからなります。
しばしばカルシウムイオンを結合した、12アミノ酸残基程度の短いリンカーループでつながっています。
ループ部分の5残基がカルシウムと結合し、ここにはアスパラギン酸やグルタミン酸などの酸性アミノ酸が非常に出現しやすいです。
ループ中の6番目の残基は、必ずグリシンです。
残りの残基は、疎水性アミノ酸であることが多く、疎水効果で2つのヘリックスを強固に結び付けています。
シグナル伝達タンパク質のカルモジュリンや、筋肉に含まれるトロポニンCでもみられます。
αフォールド
βフォールド
α/βフォールド
α+βフォールド
イレギュラードメイン
αフォールド
平行、または逆平行のいくつかのαヘリックスで構成される、小さなタンパク質の三次構造です。
3ヘリックスバンドル
三次構造のうち最も小さく、DNA結合タンパク質など、アクチンと結合するタンパク質によくみられます。
HIVにある40残基の修飾タンパク質も同じような構造を持ちます。
4ヘリックスバンドル
疎水性残基を内側に配して4つのヘリックスが、コイルドコイル構造を形成していることが多いです。
隣接するヘリックス同士は、荷電アミノ酸同士を塩橋で架橋して安定化されています。
隣接ヘリックスは、逆平行であることが多いですが、平行ヘリックスの組同士が逆平行になっている場合もあります。
2つのヘリックスからなるコイルドコイルは、それ自体で安定であるため、
Ropタンパク質のように、2つのヘリックスからなるコイルドコイルが2つ集まった形をしていることがあります。
シトクロム、フェリチン、成長ホルモン、サイトカインなどがあります。
4ヘリックスバンドルの配列に保存性は見られませんが、コイルドコイルの配列に近く、4つかそれ以上の疎水性残基が必ずあります。
All-α型の三次構造に分類されます。
通常8つのαヘリックスからなりますが、末端にさらにヘリックスを持つものもあります。
ヘモグロビンやミオグロビンの他、フィコシアニンなどでみられます。
60アミノ酸残基のヘリックスターンヘリックスからなり、3つのαヘリックスが短いループ領域でつながれています。
N末端側の2つのヘリックスは逆平行に並び、C末端側の長いヘリックスは軸に対してほぼ垂直に配置しています。
DNAと直接作用するのは、この3番目のヘリックスです。
DNA、RNAに結合し、転写因子でよくみられます。
このドメインは、主に真核生物に存在しますが、ラムダファージも高い相同性のタンパク質を持ちます。
真核生物のホメオドメインは、個々の組織や器官を作る遺伝子を協調して発現させ、細胞分化を引き起こします。
タンパク質フォールドの1つで、αヘリックスが曲線状に配列した構造です。
葉緑体の光捕集系複合体のサブユニットにみられます。
渦鞭毛藻のピペジニンや、クロロフィルを含むタンパク質や、
真核生物の核膜孔複合体を作るタンパク質のドメインにもみられます。
βフォールド
All-β型のタンパク質構造の1つで、7つ以下の逆平行βシートが、2つのβシートによって挟み込まれた構造をしています。
基本骨格は、2つのβシート層の間を行き来する構造です。
シートの交差はx字型になり、N末端側とC末端側のヘアピンが向き合う形になります。
大きなβシートがねじれてコイル状になり、両端が水素結合で結合した構造をしています。
βストランドは、通常は平行に配列しています。
この構造は、ポリンなど、細胞膜貫通タンパク質、リポカリンなどの疎水性リガンドと結合するタンパク質でみられます。
βシートでできた羽根4-8枚が、中央の軸の周りを円錐状に取り囲んだ形をしています。
それぞれの羽根は、4つの逆平行βシートからできていて、1つ目と4つ目のβシートは、ほぼ垂直になるくらいにねじれています。
酵素の活性中心は、たいてい中央の窪みにきますが、ここでは4枚の羽根がループでつながっています。
インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼは、6枚羽根のβプロペラです。
α/βフォールド
8つのαヘリックスと8つの平行βシートからなる、タンパク質フォールドです。
トリオースリン酸イソメラーゼ( Triosephosphate isomerase )の頭文字を取って命名されました。
主に酵素中で保存性の高い構造です。
αヘリックスとβストランドは、ソレノイドを形成し、ドーナツ型を作ります。
平行βストランドがドーナツの内側になり、αヘリックスが外側を取り囲みます。
αヘリックスとβシートからなる、馬蹄の形をしています。
20-30残基のアミノ酸の繰り返し配列で、疎水性のロイシンの割合が多いです。
それぞれの繰り返しは、βシート - ターン - αヘリックスの構造を持つことが多く、
これが内側をβシート、外側をαヘリックスとして馬蹄状に配列しています。
βシートの内側と、αヘリックスの外側は、溶媒に露出しているため、親水性の残基がきます。
シートとヘリックスの境界領域が疎水中心で、ロイシン残基が空間的に密に詰まっています。
このモチーフは、機能的な関連がない多くのタンパク質でみられます。
リボヌクレアーゼインヒビターや、トロポミオシン、トロポモジュリンがこのモチーフを持っています
4つのβシートが、2つのαシートに挟まれた形をしています。
αヘリックスとβシート両方の構造を持ち、酸化還元酵素活性を持ちます。
ジスルフィド結合の形成や、異性化を触媒する酵素に共通に含まれています。
全体がねじれて三葉結び目(さんようむすびめ)型を作る構造をしています。
このフォールド形成は、プロリンの異性化によって起こるようです
この構造は活性部位にあり、酵素の活性にとって重要な働きをしています。
多くはゆるい結び目ですが、
きつい結び目のものは、古細菌のRNA結合タンパク質、
サーマス・サーモフィルスの、メチルトランスフェラーゼや、転移RNA修飾タンパク質でみられます。
真核生物では見つかっていません。
α+βフォールド
長い対称的なヘアピンが周囲を一巻きし、
βストランドの両末端が、中央の2つのβストランドと水素結合を形成して、4つで逆平行βシートを作っています。
その周りに2つのαヘリックスが配置した構造をしています。
リボヌクレアーゼA(RNAアーゼA)
一本鎖RNAを切断するエンドヌクレアーゼの1つです。
2層のα+βからなり、2つに折りたたまれて、中央の溝がRNA結合部位になります。
N末端側の1番目の層は3つのαヘリックスからなり、
C末端側の2番目の層は2つのβシート中に2つのβヘアピンが配置した構造からなっています。
この酵素は、4つのジスルフィド結合を持ちます。
2つはフォールディングに必須です。
最後のジスルフィド結合は、ループのエントロピーに比べて、非常に結合を形成しやすく、
これは、この部分のβヘアピンの形成しやすさを反映する、ようです。
RNAアーゼAは、等電点が約8.63の塩基性のタンパク質であり、多数の陽電荷がRNAとの結合に関与します。
さらに、非常に極性が大きく、疎水性基が少ないため、構造の安定化のために4つもジスルフィド結合が必要となります。
がん遺伝子由来のタンパク質、SrcとFpsの共通配列として発見されました。
シグナル伝達に関わるタンパク質など、細胞間タンパク質が同様の構造を持ちます。
SH2は、標的遺伝子のモチーフに存在する、リン酸化されたチロシンを認識して、結合します。
リン酸化チロシンは、シグナル伝達の際にチロシンキナーゼによって生成されます。
この2つの関係は深く、真核生物の進化の過程で、チロシンキナーゼとSH2ドメインが同時期に出現します。
多くのシグナル伝達タンパク質が、細胞内局在や酵素活性の発現に対して、タンパク質-タンパク質相互作用による調整を受けています。
複雑なシグナルネットワークを構築するのに、生物がどのようにドメイン間の相互作用を利用したのか、という重要な概念につながりました。
SH2ドメインは、酵母には存在せず、進化上、原生動物と変形菌の間でできたと考えられています。
二次構造のモチーフの1つで、平行に並んだαヘリックスによる接着力を持ちます。
遺伝子発現の調整に関わるタンパク質など、二量化したドメインに共通してみられます。
このモチーフを持つタンパク質には、成長の調節を行う重要な転写因子である、
c-fosやc-junなど(AP-1)や、myc、max、mdx1などのmycファミリーがあります。
主に真核生物の特徴ですが、原核生物でもみられます。
Znフィンガー(ジンクフィンガー)
1つのαヘリックスと、2つの逆平行βシートからなり、DNAに結合する性質を持ちます。
小さくて疎水中心を持たないため、亜鉛イオンが安定化にとって重要です。
Cys-X2-4-Cys-X3-Phe-X5-Leu-X2-His-X3-His、という保存配列を持ちます。
C2H2クラスのジンクフィンガーでは、
βシートの2つのシステイン残基と、αヘリックスの2つのヒスチジン残基が、亜鉛イオンとの結合に関わっているようです。
多くの転写因子や調節タンパク質でみられ、
初期の神経の発達を調整する、ニューロン特異的な転写因子でもみられます。