ミトコンドリア・・・真核生物のエネルギー産生器官となったバクテリア。
参考 :アーケゾア、ステロイド、ヘム、リンゴ酸、グリオキシル酸、ミトコンドリアのシャトル系、
アミノ基転移、S-アデノシルメチオニン、メチルトランスフェラーゼ、ペルオキシソーム、細胞融合
ミトコンドリアは、ほとんど全ての真核生物の細胞に含まれる細胞小器官ですが、
元々は、αプロテオバクテリアの一種で、それが真核細胞に共生したもののようです。
そのためか、独自のDNA(mtDNA)を持ちます・・・
真核生物の起源を考える上で、興味深いです。
ミトコンドリアの数は、1細胞あたり1つの場合もありますが、
多い場合では数千個のミトコンドリアが絶えず分裂と融合を繰り返しているものがあります。
尚、真核細胞本体も分裂に加えて、融合するものがあります・・・
真核細胞も原初は、融合を繰り返して巨大化したのでしょうか?
また、どれぐらいの大きさの時に、ミトコンドリアが共生したのでしょうか?
二重の生体膜からなります。外膜の起源は、真核生物の細胞膜と成分比が同じのため、細胞内膜系と考えられていますが・・・
ミトコンドリア外膜にあるポリンというタンパク質は、グラム陰性菌の外膜にも存在します。
また、グラム陰性菌は、細胞膜が二枚あり、膜の間にペリプラスムという領域が存在します・・・
αプロテオバクテリアの細胞膜の成分比は知りませんが、元々の、共生菌の膜でもよさそうな気がしますが・・・
好気呼吸の場ですが、なぜ解糖系がなくなってしまったのでしょう・・・
宿主の真核生物が解糖系を持っていたから、という説が有名ですが、
解糖系で産生するNADH(内膜を透過できません)を取り入れるのに、シャトル系を作りだすのも結構大変と思いますが・・・
すでにシャトルを持っていたのでしょうか?
リケッチア目の中でも祖先的なペラジバクターは、プロテオロドプシンという、光依存性プロトンポンプの遺伝子も持つようですが・・・
ミトコンドリアは、卵子の細胞質に約25万存在します。
精子鞭毛基部にもわずかに存在しますが、一般的に精子由来のものは受精前後に排除されます。
そのため、卵子の中にあったミトコンドリアだけが細胞分裂後も引き継がれることになり、
mtDNAは、常に母性遺伝すると考えられています・・・
なぜ精子由来のミトコンドリアは排除されるのでしょう・・・
卵子のmtDNAが異常をきたす可能性を考えると、精子由来のmtDNAを受け入れた方が適応的のような気がしますが・・・
もともと、最近なので、自然免疫系で排除されるのでしょうか?
また、mtDNAの多くの遺伝子は、細胞核にコードされており、遺伝子産物がミトコンドリアへと輸送されます。
これは、進化の過程で遺伝子が細胞核へ移動した、という説がありますが・・・
ペラジバクターに感染するウイルスがありますので、ウイルスにより、遺伝子が移動する可能性はありますが、
遺伝子が移動したというより、元々持っていた遺伝子が核遺伝子にあったため、不要になりなくなった、と考えた方がシンプルのような気がします・・・
あと、mtDNAの大部分は、基本単位が何度も繰り返す線状反復構造になっています・・・ローリングサークル型複製に何となく似ているような気がします。
謎は、深まるばかりです。
ミトコンドリアは、好気性細菌でリケッチアに近いαプロテオバクテリアが真核生物に共生したもののようです。
これは、細胞核DNAにコードされているシトクロムcだけでなく、
mtDNAにコードされているリボソームRNAの配列を使った系統解析でも、αプロテオバクテリア起源、とされます。
原始的なmtDNAを持っている原生生物は、レクリノモナスです。
そのmtDNAは、約70kbの環状DNAで、
タンパク質とRNAを合わせて98遺伝子がありますが、そのうち18個は他のmtDNAには見付かりません。
加えて、細菌と同様のRNAポリメラーゼ遺伝子群が存在します。
一方、他の生物では細胞核から輸送されているようなタンパク質をコードする遺伝子がmtDNAに存在しています。
リケッチアは、
細胞内寄生体であること、
TCA回路を持ち、好気呼吸ができますが、解糖系を持たないこと、
細胞膜にADP/ATP輸送体を持っていること、
ゲノムが小さくAT含量が高いことなど、ミトコンドリアと共通した特徴を持っています。
発疹チフスリケッチアのゲノム解析によると、
上記のレクリノモナスのmtDNAと共通する遺伝子や、配置順が保存された遺伝子群などが発見されました。
しかし、ADP/ATP輸送体については、起源が異なるようです。
ペラジバクター(英)は、
リケッチア目の中でも最も祖先的な位置から派生する生物です。
これは、αプロテオバクテリアのSAR11に属すグラム陰性細菌です。
自己複製可能な生物の中では最小であるものの一つで、長さ、0.37 - 0.89 µm 、直径 0.12 - 0.20 µmです。
世界中の海水及び淡水に多数存在し、自由生活性で浮遊性です。
ゲノムは、自由生活をする生物の中では最小クラスで (1,308,759 bp) 、
遺伝子数は、1,354オープンリーディングフレーム(1,389 遺伝子)です。
しかし、20種類のアミノ酸すべてと、ほとんどの補因子の代謝経路を持ちます。
プロテオロドプシン(英)という、光依存性プロトンポンプの遺伝子も持つようです。(古細菌の高度好塩菌は、バクテリオロドプシンを持ちます。)
ncRNAには、SAM-Vリボスイッチ(英)や、 SAM
リンゴ酸シンターゼ(リンゴ酸)上のグリシン賦活性(activated)リボスイッチ?があります。
ペラジバクターに感染するウイルス(ファージ。HTVC010P)もあるようです。
尚、ペロミクサ(肉質虫)や、微胞子虫などは、ミトコンドリアを持っていません。
アーケゾア仮説という仮説がありましたが、現在では否定されています。
ミトコンドリアのDNAは、母親のmtDNAを引き継ぐため、これにより現生人類の起源をたどると、
大昔のアフリカにいた女性が、現生人類全てのミトコンドリアについての「母親」である、という仮説があります。
この女性は、「ミトコンドリア・イブ」と呼ばれています。
尚、その他の遺伝情報についてすべてこの女性に由来するということではなく、
全人類の起源が一人の女性であるわけでもありません。
ミトコンドリアは外膜と内膜という二枚の脂質膜に囲まれており、
内膜と外膜に挟まれた空間を膜間腔、
内膜に囲まれた内側をマトリックス、といいます。
外膜の組成は、細胞膜と同様にタンパク質とリン脂質の重量比が約1:1です。
外膜には、ポリンという膜タンパク質が大量にあり、
分子量5000以下の分子が自由に透過できるようなチャネルを形成しています。
これより大きなタンパク質が自由に出入りすることはなく、
ペプチド配列中に移行シグナルが存在している場合にのみ細胞質側から取り込まれます。
外膜の進化的起源は、真核生物の細胞内膜系と考えられ、
現在でも小胞体膜と物理的に関係して、カルシウムシグナルの伝達や、脂質の交換を行っています。
尚、ポリンは、ミトコンドリア、葉緑体の他、グラム陰性菌の外膜に存在するタンパク質です
また、グラム陰性菌は、細胞膜が二枚あり、膜の間にペリプラスムという領域が存在します。
ちなみに、リケッチアは細胞壁にペプチドグリカンをもたないため、
ペニシリンなど、β-ラクタム系の細胞壁のペプチドグリカンを合成阻害する抗生物質は、無効です。
膜間腔はミトコンドリアの外膜と内膜にある空間ですが、
外膜が低分子を自由に透過させる性質があるため、
イオンや糖などの組成は細胞質と同等になっています。
一方、タンパク質の組成は細胞質とは異なっており、
外膜が破壊されて膜間腔に存在するタンパク質が細胞質へと漏れ出すと、アポトーシスが引き起こされます。
ミトコンドリアのシトクロムcが、アポトーシスに関与することが知られています。
内膜 ステロイド
酸化的リン酸化に関わる呼吸鎖複合体などの酵素群が規則的に配列しています。
外膜とは対照的に基本的には不透性で、内外で物質を輸送するためには、
それぞれの物質に対して特異的な輸送体が必要です。
呼吸鎖複合体は、内膜をまたいでプロトン勾配を形成し、
それによって生じる膜電位が物質輸送やATP合成に関与します。
その他マトリックスへのタンパク質輸送装置や、
ミトコンドリアの分裂・融合に関わるタンパク質群などが存在し、
ミトコンドリアを構成する全タンパク質の約2割(150以上)が含まれています。
タンパク質とリン脂質の重量比は、約3:1です。
内膜の進化的起源は、内膜に特徴的なリン脂質カルジオリピンの存在から、共生細菌の細胞膜由来とされます。
一般的に内膜は内側へ向かって陥入して、クリステ(稜)という構造をとります。
これによって内膜の表面積、更にはATP合成能の増大に寄与しています。
外膜と内膜の表面積の比は、細胞のATP需要と相関しており、肝臓では約5倍、筋細胞では更に大きいです。
クリステの形状は様々であり、平板状、管状、団扇状、などがあります。
多細胞動物や陸上植物では、ミトコンドリアの長軸に直交する平板状をしています。
しかし、真核生物全体では、管状のものが一般的です。
内膜に囲まれた内側です。
TCA回路や、
β酸化など、
ミトコンドリアの代謝機能に関わる酵素群が数多く存在します。
ここにはmtDNAが含まれています。
その遺伝子発現を担うために、リボソーム、tRNA、転写因子や翻訳因子などが存在します。
ミトコンドリア全タンパク質の6〜7割もあります。
ミトコンドリアの主な機能は、電子伝達系での酸化的リン酸化によるATPの産生(ADPのリン酸化)です。
細胞の様々な活動に必要なエネルギーのほとんどは、直接、または間接的にミトコンドリアからATPの形で供給されます。
それ以外にも多様な機能を持っており、
細胞周期やアポトーシスの調節、
カルシウムや鉄の細胞内濃度の調節、などにも関わるとされています。
もっとも、ミトコンドリアがすべての機能を行っているのではなく、ある機能は、ある特定の細胞でのみ働きます。
ATP産生は、ミトコンドリアの主な機能で、これに関わる多くのタンパク質が内膜やマトリックスに存在しています。
細胞質には解糖系があり、グルコースを代謝することでピルビン酸とNADHを生じます。
酸素が十分に存在しない場合には、解糖系の産物は嫌気呼吸により代謝されます。
しかしミトコンドリアでの好気呼吸により、非常に効率よくATPを得ることができます。
嫌気呼吸では、1分子のグルコースから2分子のATPしか得られませんが、
好気性呼吸では、38分子のATPが合成できます。
ATP産生には、ピルビン酸だけでなく、脂肪酸を利用することもできます。
植物のミトコンドリアは、酸素がなくても、亜硝酸を利用してある程度のATP産生が可能です。
ピルビン酸とNADHの輸送と、クエン酸回路(TCA回路)・電子伝達系
細胞質での解糖系
解糖系は、細胞質基質で起こります。
真核生物では、解糖系で得られた物質(ピルビン酸とNADH)を、
TCA回路や電子伝達系の反応がおこるミトコンドリアに輸送し、好気呼吸を行います。
ミトコンドリアへの輸送
細胞質の解糖系で生成されたピルビン酸は、
ピルビン酸共輸送体( ピルビン酸 / H+ )により、細胞質からミトコンドリアへ輸送されます。
同じく細胞質で生成されたNADHは、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルにより、ミトコンドリアへ輸送されます。
なお、H2O、O2、CO2、NH3は、ミトコンドリア内膜を通過することができます。
ピルビン酸は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体により脱炭酸してアセチルCoAが生成します。
この反応は、ミトコンドリアのマトリックスで起こります。
ここで生成したアセチルCoAは、TCA回路に入ります。
TCA回路の酵素群は、ほとんどがマトリックスに存在していますが、
コハク酸デヒドロゲナーゼ (ユビキノン)だけは例外で、内膜で呼吸鎖複合体IIとしても働きます。
TCA回路はアセチルCoAを酸化して二酸化炭素を生じ、
その過程で3分子のNADHと1分子のFADH2、1分子のGTPを生成します。
二酸化炭素は、ミトコンドリア外に排出されます。
NADHやFADH2のもつ還元力は、内膜にある電子伝達系で数段階を経て酸素に渡されます。
これら高エネルギー分子は、マトリックスのTCA回路からだけでなく、細胞質の解糖系からも生じます。
細胞質で生じた還元等量は、
マロン酸-アスパラギン酸対向輸送系や、
リン酸グリセロールシャトル系を通じて電子伝達系に供給されます。
内膜の電子伝達系には、
NADHデヒドロゲナーゼ (ユビキノン)、
シトクロムc還元酵素、
シトクロムc酸化酵素が存在しており、
プロトン( H+ )を膜間腔へくみ出します。
尚、この過程で、不十分な反応により、活性酸素種を生じてしまうことがあります。
これがいわゆる酸化ストレスで、ミトコンドリアの機能低下や老化に関与していると考えられています。
プロトンが膜間腔へくみ出されることにより、内膜の内外でプロトン濃度の差(電気化学的勾配)が生じます。
くみ出されたプロトンは、ATP合成酵素を通じてマトリックスへ戻ることができ、
この時にそのポテンシャルを使ってADPと無機リン酸(Pi)からATPを生成します。
生成されたATPは、ATP/ADPトランスポーターによりミトコンドリアから細胞質へ輸送され、細胞の活動エネルギー源となります。
細胞内に取り込まれた脂肪酸は、
ミトコンドリア外膜の細胞質側に存在する酵素、
アシルCoAシンテターゼ(脂肪酸チオキナーゼ)により触媒され、活性化されます。
脂肪酸 + CoA + ATP ⇔ 脂肪酸アシルCoA + AMP + PPi
この反応は2つのステップで起こります。
まず脂肪酸のカルボン酸イオンがATPのリン酸と置換することで、
脂肪酸アシルアデニル酸と、ピロリン酸 (PPi)が生成します。
次に補酵素Aのチオール基がアシル基の炭素を求核攻撃し、脂肪酸アシルCoAと、AMPを生成します。
生成した脂肪酸アシルCoAは、ミトコンドリア内膜に運搬されてβ酸化を受けるか、細胞質での膜脂質の合成に利用されます。
ミトコンドリア内膜は、アシルCoAを直接透過しないため、
カルニチン(膜中に保持されている補因子様のアミノ酸誘導体)が、脂肪酸アシル運搬体の役割を果たします(動植物共通)。
脂肪酸アシルCoAは、カルニチンと一時的に結合し、脂肪酸アシルカルニチンを生成します。
この反応は、ミトコンドリア外膜に埋め込まれたカルニチンアシルトランスフェラーゼI により触媒されます。
脂肪酸アシルカルニチンは、アシルカルニチン/カルニチントランスポーターを介する促進拡散により
内膜を通過し、マトリックス内に移行します。
そして脂肪酸アシル基が、内面に局在する酵素カルニチンアシルトランスフェラーゼII の触媒により、
カルニチンからミトコンドリア内に存在する補酵素Aに転移されることで、脂肪酸アシルCoAが再生します。
遊離のカルニチンは、アシルカルニチン/カルニチントランスポーターを介して再び膜間スペースへと移動します。
このような脂肪酸アシルCoAも輸送系をカルニチンシャトルといいます。
ミトコンドリア内に入った脂肪酸アシルCoAは、マトリックス内の酵素によってβ酸化を受けます。
β酸化 マトリックス
4段階の反応の繰り返しからなり、一順する毎に、
脂肪酸アシル鎖のカルボキシ末端から、2つの炭素がアセチルCoAとして分離していきます。
炭素数が奇数の脂肪酸は、( 炭素数 × 1/ 2 )個のアセチルCoAを生じます。
炭素数が奇数の脂肪酸も同じように反応が進み、アセチルCoAの他、炭素数3個のプロピオニルCoA を生じます。
段階1:FADによる酸化
アシルCoAデヒドロゲナーゼによる酸化反応です。
この反応においてα炭素とβ炭素の間に二重結合が形成され、trans-Δ2エノイルCoAができます。Δは、二重結合の位置です。
二重結合が形成されることで、電子がこの酵素の補欠分子族であるFADに移ります。
そして、電子伝達フラビンタンパク質 (ETF) と結合した別のFADがこの電子を捕捉し、電子伝達系複合体IIに送られます。
段階2:水和
エノイルCoAヒドラターゼが触媒する反応により、二重結合にH2Oが付加され、β-ヒドロキシアシルCoA となります。
この反応は立体特異的に進み、L体のみが生成します。
段階3:NAD+による酸化
3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ が触媒する反応によってL-β-ヒドロキシアシルCoAが酸化され、β-ケトアシルCoA が生じます。
この酵素は、β-ヒドロキシアシルCoAのL体のみに作用します。
この反応により、NAD+に電子が移り、NADHが生成しますが、その電子は電子伝達系複合体Tに渡されます。
段階4:チオール開裂
前3つは比較的安定なC-C結合を不安定化させるための反応です。
β-ケトアシルCoAチオラーゼの触媒する反応により、β-ケトアシルCoAと補酵素Aがチオール開裂を起こし、
2炭素分短くなった脂肪酸アシルCoAとアセチルCoAが生成されます。
補酵素Aのチオール基 (-SH) が、β-ケトアシルCoAのカルボニル炭素を求核的に攻撃することでα-β炭素間が開裂します。
炭素鎖が短くなった脂肪酸アシルCoAは、次のβ酸化での第1段階の基質となり、
脂肪酸アシル鎖の部分がすべてアセチルCoA (またはプロピニルCoA)に酸化されるまで、反応が繰り返されます。
ミトコンドリアのマトリックスで生成されたアセチルCoAは、TCA回路でエネルギーに変換されます。
膜間腔のプロトンは、ATP合成に関与することなく、
促進拡散によってマトリックスに戻ることがあります(プロトンのリーク・ミトコンドリアの脱共役)。
この時、蓄積されていた電気化学ポテンシャルは、熱として解放されます。
これは、サーモゲニンなどのプロトンチャネルが媒介しており、非ふるえ熱産生に関わります。
サーモゲニンは、若齢や冬眠中の哺乳類に見られる褐色脂肪組織のミトコンドリアに存在します。
アポトーシス 膜間腔
アポトーシスは、多細胞生物でみられる、プログラムされた細胞死です。
DNA損傷などのストレスは、p53や、アポトーシスを調節するBcl-2ファミリータンパク質を介して、ミトコンドリアの膜電位を変化させ、
その結果、ミトコンドリアからシトクロムcが漏出し、アポトーシスを引き起こします。
シトクロムcは、細胞質に存在するApaf-1やカスパーゼ-9と結合して、アポトソームという集合体を形成します。
これによって活性化されたカスパーゼ-9が、下流のエフェクターを活性化していきます。
カルシウム貯蔵 外膜
細胞内のカルシウム濃度は、様々な機構によって制御されており、
細胞中の情報伝達に重要な役割を果たしています。
カルシウムの貯蔵場所は、主に小胞体ですが、
ミトコンドリアにも一過的なカルシウム貯蔵能があり、小胞体とミトコンドリアは協調しています。
カルシウムは、内膜になるカルシウム輸送体によりマトリックスへ取り込まれます。
これはミトコンドリアの膜電位に依存しています。
カルシウムの放出は、ナトリウム・カルシウム対向輸送か、
カルシウム依存性カルシウム放出系によって行われます。
これによってセカンドメッセンジャー系が起動され、神経伝達物質やホルモンの放出が行われます。
ミトコンドリアゲノム ミトコンドリアDNA(mtDNA) ミトコンドリア・イブ マトリックス
mtDNAは、αプロテオバクテリアから受け継がれたものであり、
複数の遺伝子がまとめて転写され、それが遺伝子ごとに切断されポリアデニル化されて成熟mRNAとなること、
翻訳の開始にフォルミル化メチオニンが利用されること、
細胞核に存在するような、スプライソソーム型のイントロンが存在しないこと、
など遺伝子発現は細菌と共通した特徴を持ちます。
mtDNAは、
GC含量が低く(20 - 40%)、
ゲノムのサイズは数十kb程度のDNAであり、
電子伝達系に関わるタンパク質、リボソームRNAやtRNAなど数十種類の遺伝子があります。
しかしDNA分子の大きさや形状、コードされている遺伝子の数や種類などは、生物によって様々です。
最も小さなmtDNAは、アピコンプレックス門の原虫がもつ、わずか6 kbの線状ゲノムです。
電子伝達系に関わる3つのタンパク質遺伝子と、断片化されたリボソームRNA遺伝子群のみが存在します。
最も大きなmtDNAは、マスクメロンのもつ2400kbもある巨大なゲノムです。
ただし遺伝子数は、100弱に過ぎず、大量の反復配列や、グループ2イントロンなどの非遺伝子領域が大部分を占めます。
ヒトを含む多細胞動物のmtDNAは、16 kb前後の単一環状DNAで構成されています。
遺伝子は37あり、
呼吸鎖複合体とATP合成酵素のサブユニットが13、
tRNAが22、
rRNAが2、です。
環状のmtDNAを持つ生物はごく一部に限られ、
多くの生物では環状の基本構造から、連続的に複製されており、
その結果mtDNAの大部分は、基本単位が何度も繰り返す線状反復構造になっています。
また少数派ではありますが、常に線状のミトコンドリアを持つ生物もあります。
ミトコンドリアの遺伝暗号表は、細胞核や一般の原核生物で利用されている普遍暗号表と比べて若干の差があります。
例えば、通常では終止コドンであるはずのUGAが、トリプトファンをコードしています(例外も多いです)。
ミトコンドリアでは、しばしばRNA編集が行われます。
高等植物のミトコンドリアでは、DNA配列上のCGGがmRNAではUGGと編集されてトリプトファンをコードします。
ミトコンドリアの機能に関わる全ての遺伝子が、ミトコンドリアゲノムに存在しているわけではありません。
ミトコンドリアゲノムは、細菌のゲノムと比べると遺伝子数が極端に減少しており、
大多数の遺伝子は、細胞核にコードされており、遺伝子産物がミトコンドリアへと輸送されます。
マイトソームなどのように、全てのDNAを完全に失ったようなミトコンドリアも存在しています。
一方、レクリノモナスは、他の生物では細胞核から輸送されているタンパク質をコードする遺伝子が、未だにmtDNAに存在しています。
1つのミトコンドリアには、2〜10コピーのDNA分子が存在します(異数性)。
その全てが完全に同じ情報を持つわけではなく、異質のDNA分子を複数含んでいるようです。
真核生物のうちミトコンドリアを持たないグループです。
以前、原核生物は進化の上で、まず核を獲得し、その後ミトコンドリアを獲得した、という仮説(アーケゾア仮説)がありました。
しかし、現在では、アーケゾアのいずれも、ミトコンドリアを持つ生物を祖先に持つ2次的にミトコンドリアを失った生物で、
加えて別々の系統から進化(退化)したことが判明しており、この仮説は否定されています。
ステロイドは、ステロイド核(シクロペンタノ-ペルヒドロフェナントレン核)という、
3つのイス型六員環と、1つの五員環がつながった構造を持っています。
ステロイドホルモンは、ステロイド骨格を持つホルモンで、ヒトでは副腎皮質等で合成されます。
コレステロールからプレグネノロンという前駆体を経由して生合成されます。プレグネノロンへの変換が律速段階です。
ステロイドホルモンは、脂溶性であるため細胞膜を通過することができ、細胞内にある受容体と結合して作用します。
コレステロールは、ステロイドのアルコール(ステロール)で、アセチルCoAから生成されます。
コレステロールは、ミトコンドリア内膜へ、ステロイド産生急性調節タンパク質(STAR)によって運ばれ、
CYP11A1(コレステロール側鎖切断酵素)によってプレグネノロンに変換されます。
プレグネノロンは、プロゲステロン、コルチコイド、アンドロゲン、エストロゲンのステロイドホルモン生成に関わる、プロホルモンです。
ヘムは、2価の鉄原子と、ポルフィリンからなる錯体です。
ポルフィリンとヘムの生合成の律速酵素は、ヘム合成の第1段階の反応を触媒する、アミノレブリン酸シンターゼです。
この酵素は、ミトコンドリア内に存在し、グリシンとスクシニルCoAがD-アミノレブリン酸へ縮合することを触媒します。
第2段階で、D-アミノレブリン酸がミトコンドリアから細胞質に移行し、ピロール環を持つポルフォビリノーゲン(PBG)となります。
その後、第6段階で、細胞質で生成したコプロポルフィリノーゲンIIIが、ミトコンドリア内に移行し、
コプロポルフィリノーゲン酸化酵素によってプロトポルフィリノーゲンIX となります。
プロトポルフィリノーゲンIXは、プロトポルフィリンIXとなります。
第8段階で、鉄付加酵素によりプロトポルフィリンIXに鉄が配位したものがヘムです。
ミトコンドリア内で生成されたヘムは、細胞質に出て、アポタンパク質と結合してヘムタンパク質となります。
尚、シトクロムは、酸化還元機能を持つヘム鉄を含む、ヘムタンパク質です。
ミトコンドリアからシトクロムcが漏出すると、アポトーシスを引き起こします。
リンゴ酸(2-ヒドロキシブタン二酸) ペラジバクター リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル
クエン酸回路では、フマル酸にH2Oが付加して、(S)-リンゴ酸が生成します。
(S)-リンゴ酸は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼによって酸化され、オキサロ酢酸となります。
この酵素は逆反応も触媒するので、オキサロ酢酸からもリンゴ酸が生成します。
オキサロ酢酸は、ピルビン酸や、ホスホエノールピルビン酸からも生成されます(補充反応)。
また、アスパラギン酸からアミノ基転移反応によっても生成されます。
つまり、これらからも、オキサロ酢酸を経て、リンゴ酸が生成されます。
更に、リンゴ酸は、リンゴ酸シンターゼによってアセチルCoAとグリオキシル酸からも生成されます。
1分子の中にアルデヒド基とカルボキシル基を持つカルボン酸です。
グリオキシル酸回路などで、生成されます。
グリオキシル酸回路は、微生物の一部や植物にみられる代謝回路です。
この回路は、異化反応回路よりも同化反応回路としての意味合いが強いようです。
植物では、グリオキシソームと、ミトコンドリアで発現しています。
多くの酵素がクエン酸回路と共通しています。
二酸化炭素を生成せず、NADHをあまり生み出さない所がクエン酸回路と異なります。
グリオキシソーム内での反応
1.2-オキソグルタル酸 + アスパラギン酸 → グルタミン酸 + オキサロ酢酸 (AST)
2.オキサロ酢酸 + アセチルCoA → クエン酸 + 補酵素A
3.クエン酸 → イソクエン酸
4.イソクエン酸 → コハク酸 + グリオキシル酸
5.グリオキシル酸 + アセチルCoA → リンゴ酸 + 補酵素A
ミトコンドリア内での反応
1.コハク酸 + FAD → フマル酸 + FADH
2.フマル酸 + 水 → リンゴ酸
3.リンゴ酸 + NAD → オキサロ酢酸 + NADH
4.オキサロ酢酸 + グルタミン酸 → アスパラギン酸 + 2-オキソグルタル酸 (AST)
反応で生成したグリオキシル酸は、アセチルCoAとの反応により、リンゴ酸となります。
つまり、アセチルCoA二分子からオキサロ酢酸を作ることになります。
ピリドキシン(ビタミンB6)は、グリシントランスアミナーゼにより、グリオキシル酸のグリシンへの転換を促進します。
真核生物における酸化的リン酸化のため、解糖系で生成した電子を半透過性のミトコンドリア内膜を通して移動させるシャトルです。
電子は、ミトコンドリアの電子伝達系に入ってATPを生成します。
ミトコンドリア内膜は、電子伝達系の主要な還元剤であるNADHを通さないため、シャトル系が必要です。
これを回避するために、リンゴ酸が膜を通過して還元剤を運びます。
シャトル系において、ミトコンドリアと細胞質基質の2カ所に存在します。
2種類のリンゴ酸脱水素酵素は、その位置と構造が異なり、この過程において、逆方向の反応を触媒します。
まず細胞質基質に存在するリンゴ酸脱水素酵素は、オキサロ酢酸とNADHから、リンゴ酸とNAD+を生成します。
この過程で、2つの電子がオキサロ酢酸に結合してリンゴ酸を生成します。
次に、リンゴ酸-α-ケトグルタル酸アンチポーターが、
リンゴ酸を細胞質基質からミトコンドリアのマトリックスに運び、同時にα-ケトグルタル酸をマトリックスから細胞質基質に運び出します。
リンゴ酸がミトコンドリアのマトリックスに入ると、
ミトコンドリアのリンゴ酸脱水素酵素によってオキサロ酢酸に変換され、
同時にNAD+が2つの電子を得て還元され、NADHとH+が生成します。
その後、オキサロ酢酸は、ミトコンドリアのアスパラギン酸アミノ基転移酵素によってアスパラギン酸に変換されます。
アスパラギン酸はアミノ酸であるため、オキサロ酢酸にアミノラジカルが結合する必要があります。
これはグルタミン酸によって供給され、グルタミン酸は同じ酵素によってα-ケトグルタル酸に変換されます。
グルタミン酸-アスパラギン酸アンチポーターは、
グルタミン酸を細胞質基質からマトリックスに運び、
アスパラギン酸をマトリックスから細胞質基質に運び出します。
アスパラギン酸は、細胞質基質に到着した後、細胞質基質のアスパラギン酸アミノ基転移酵素によってオキサロ酢酸に変換されます。
以上より、
細胞質基質のNADHは酸化されてNAD+になり、ミトコンドリアのマトリックスのNAD+は還元されてNADHになります。
その後細胞質基質のNAD+は、次の解糖系によって還元されうる状態になり、
マトリックスのNADHは、ATPを合成するため電子を電子伝達系に渡すのに用いられます。
解糖系により細胞質基質で生成したNADHを、ミトコンドリアの酸化的リン酸化の経路に入れ、ATPを生成します。
動物、菌類、植物で見られます。
細胞質の酵素、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ1(GPDH-C)が、1分子のNADHをNAD+に酸化することによって、
ジヒドロキシアセトンリン酸を、グリセロール-3-リン酸に変換します。
グリセロール-3-リン酸は、ミトコンドリアの膜結合性酵素である、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ2(GPDH-M)の働きによって、
ジヒドロキシアセトンリン酸に戻ることができ、この際に1分子のFADがFADH2に還元されます。
FADH2はその後、ユビキノンをユビキノールに還元し、酸化的リン酸化の経路に入る。この反応は不可逆です。
アミノ酸と、α-ケト酸(カルボキシル基に隣接したケトン基を持つ基質)
の間で起こる、アミノ基をアミノ酸からα-ケト酸へ転移する反応です。
アミノ酸は対応するα-ケト酸に変換され、一方α-ケト酸は対応するアミノ酸へと変換されます。
非必須アミノ酸合成に重要です(尚、原核生物は、全てのアミノ酸を自分自身で作ることができます)。
アミノ基転移は、
グリシントランスアミナーゼ(グリシンとα-ケトグルタル酸を、グリオキシル酸とグルタミン酸に相互変換します。)、
アラニンアミノ基転移酵素(ALT、GPT。アラニンとα-ケトグルタル酸を、ピルビン酸とグルタミン酸に相互変換します。)、
アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST、GOT。オキサロ酢酸とグルタミン酸を、アスパラギン酸とα-ケトグルタル酸に相互変換します。)、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル
システイントランスアミナーゼ(3-メルカプトピルビン酸とグルタミン酸を、システインとα-ケトグルタル酸に相互変換します。)、
など、転移酵素の一種である、アミノ基転移酵素(トランスアミナーゼ・アミノトランスフェラーゼ)で触媒されます。
補酵素は、ピリドキサールリン酸 (PLP) です。
アミノ酸のすべてのアミノ基転移、いくつかの脱炭酸及び脱アミノを行う補酵素です。
PLPのアルデヒド基は、アミノトランスフェラーゼのリシンのε-アミノ基と結合して、シッフ塩基を形成します。
基質アミノ酸のα-アミノ基と反応すると、リシン残基の活性部位のε-アミノ基と移し替えられます。
S-アデノシルメチオニン(SAM、活性メチオニン。英) ペラジバクター メチルトランスフェラーゼ
アデノシンとメチオニンから合成される補欠分子族の一種で、メチル基供与体として働きます。
アデノシンとメチオニンは、メチルスルホニウム結合を介して結合していますが、この結合は高エネルギー結合であり、
このメチル基がコリン・クレアチニンなどのメチル化合物生成に利用されます。
メチル基を供与体から受容体へ転移させる転移酵素です。
メチル化は、DNA中の核酸塩基または、タンパク質中のアミノ酸で起こります。
メチル基の供与体として、S-アデノシルメチオニン(SAM)の硫黄原子に結合した活性メチル基を用います。
DNAメチル化は、元のDNA配列を変更せずに、遺伝子発現の制御を可能とします。
メチル化はシトシン上で起こります。
部位特異的メチルトランスフェラーゼは、いくつかの制限酵素と同じDNA標的配列を持ちます。
メチル化により制限酵素が結合・認識できないため、酵素的切断からDNAを保護できます。
これは メチル化によって自身のDNAを保護すると同時に、
異質なDNAを除去する制限酵素を使うバクテリア制限修飾系において有用です。
タンパク質のメチル化は、N末端上またはタンパク質の側鎖上の窒素原子上で起こり、通常不可逆的です。
これは、アミノ酸(タンパク質)の多様性に寄与します。
ほぼ全ての真核細胞が持つ細胞小器官で、多様な物質の酸化反応を行っています。
一重の生体膜に包まれた、直径0.1 - 2μmの器官で、多くは球形です。
哺乳類の細胞では、一細胞内に数百から数千個が存在します。
ペルオキシソームの関わる代謝経路には、
長鎖脂肪酸のβ酸化、コレステロールや胆汁酸の合成、アミノ酸やプリンの代謝などが知られ、
これらは内腔に含まれるオキシダーゼによって行われます。
この時、活性酸素の一種である過酸化水素が発生しますが、カタラーゼによって分解されます。
植物には、グリオキシソーム(緑葉ペルオキシソーム)というペルオキシソームが存在します。
これは、植物の貯蔵組織に見られ、グリオキシル回路で種子に含まれる脂質からグルコースを産生します。
緑葉ペルオキシソームは、葉緑体近傍に存在し、葉緑体・ミトコンドリアとともに光呼吸の代謝を担っています。
二つ以上の細胞から、一つの雑種細胞が形成される現象です。
細胞融合は、筋肉、骨や栄養膜細胞の分化、胚発生と形態形成の期間に起こり、
生体の成長において、細胞の機能を維持するために必須です。
また、受精時の生殖細胞や、溶解ウイルス感染でもみられるようです。