DNA複製と、その起源について
DNA複製は、細胞分裂の時DNAが複製されて、数が2倍となる過程ですが・・・
どうやって、以下のような精巧なものができたのか、とても不思議です。
DNA(RNA)複製の起源について・・・
原初のDNA複製方式は、ファージなどでみられる、ローリングサークル型複製、に似たものでしょうか?
これは、一本鎖環状RNAで、最小のゲノムを持つ、ウイロイドでも採用されている複製様式です。
尚、この様式では、プライマーは不要です。
RNAワールド仮説によると、初期の生命は、RNAがDNAの役目を担っていた、とされますので、
RNA複製機構の方が、DNA複製機構より先にできたと思われます。
実際、現在みられるDNA複製も、プライマー、というRNAがないと開始できません。プライマー合成は、プライマーゼが行います。
また、複製時には、必ず二量体(二重らせん)になっています。(一本鎖DNAまたはRNAも、複製時は二量体になっています。)
二量体は、自発的になることも可能ですが、二量体を解離するにはヘリカーゼが必要です。
尚、分かれた一本鎖DNAは、再会合しようとするため、これを防ぐために、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)があります。
つまり、原初のRNA複製装置?は、プライマーゼ、RNAヘリカーゼ、一本鎖RNA結合蛋白を含む、プライモソーム、のようなもの、だったのでしょうか?
まぁ、一本鎖RNA結合蛋白は、当初はなくとも、効率は悪いと思いますが、低分子のRNA程度なら、なんとか複製できるような気もしますが。
また、ヘリカーゼとイニシエータータンパク質は、水素結合を切断するという点で似ていますので、この二つは何か関係するかもしれません。
あと、RNA複製装置(酵素)は、ローリングサークル型複製でみられる、リラクセーズから進化したかもしれません・・・
リラクセーズは、トポイソメラーゼの祖先型酵素かもしれませんが。
また、ポリメラーゼは、プライマーゼから進化したような気がします。(詳細不明)
もっとも、プライモソームも非常に複雑な構造ですので、さらに原始的な複製装置(のもと)があったと思いますが・・・
どうやって、非常に巨大で複雑なRNA複製に関する酵素が誕生したのでしょうか???
また、エネルギーとして、ATPを利用するので、プライモソームは、ATP登場以降にできたと思います。
後、核酸の構成成分である、ATPをエネルギー源に使うというのは、実に合理的で、非常に興味深いです。
あと、DNAリガーゼは、DNA鎖の末端同士をリン酸ジエステル結合(ホスホジエステル結合)でつなぐ酵素ですが、
真正細菌のDNAリガーゼは、ATPではなくNAD+が必要である点も、興味深いです。
(原初は、RNAリガーゼと思いますが。また、NADにもヌクレオチドが含まれています。)
複製機構について
尚、二本鎖DNA をdsDNA、一本鎖DNAをssDNA、といいます。
複製されるssDNAを親鎖、DNA複製によって新しく合成されたssDNAを娘鎖といいます。
また、DNA複製により生じた染色体の個々を姉妹染色分体といいます。
複製は、DNA上の特別な塩基配列である複製起点から開始されます。
複製起点周辺で部分的に二重らせんが解かれ、親鎖2本のssDNAが現れます。
直ちに、ssDNAに様々な酵素複合体が結合し、プライマーがssDNA上に合成されます。
複製開始の、
第1段階は、二重らせんを解く、イニシエーターによる巻き戻しです。
第2段階は、娘鎖合成の足がかりとなる、プライマー合成です。
最終段階は、親鎖への娘鎖伸長に関わるタンパク質の集合、です。
イニシエーターによる巻き戻し
レプリコンには、複製起点を含めたレプリケーターという塩基配列が存在します。
レプリケーターは、比較的結合が弱い塩基対であるアデニンとチミンが多いATリッチ配列を含み、
イニシエーターというタンパク質が、レプリケーター内の複製起点に結合するとATリッチ配列の巻き戻しが起こります。
巻き戻しは、二重らせん構造を維持する水素結合の切断です。
イニシエーターには、
複製起点への結合によるレプリコンの点火、
複製開始に必要な他の因子をレプリケーターに引き寄せる、
などの役割があります。
プライマー合成
プライマーは、プライマーゼにより親ssDNA上に合成される、短いRNAです。
プライマーとssDNAが結合したものを、プライマー・鋳型接合体といいます。
プライマーの3'末端には三リン酸があり、DNAポリメラーゼは、このリン酸基を分解することで生じるエネルギーを用いて、
プライマーと結合しているssDNA領域の手前と相補的なデオキシヌクレオチド三リン酸を生成してプライマー末端に結合させます。
以後、DNAポリメラーゼは、娘鎖の3'末端にある三リン酸の分解エネルギーを利用して娘鎖の伸長を進めます。
娘鎖伸長に関わるタンパク質が親鎖に集合
複製装置が、親ssDNAに結合します。
複製装置は、DNAポリメラーゼに加えて、DNAへリカーゼ、プライマーゼ、DNAトポイソメラーゼ、などの酵素と、
DNAクランプ、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)などのタンパク質からなります。
DNAポリメラーゼによる娘鎖の合成です。
イニシエーターにより、複製起点で最初の巻き戻しが起こった後、DNAヘリカーゼにより、巻き戻しの範囲が拡大し、
最終的に複製終結点 (停止点)まで進みます。
巻き戻しは可逆反応であるため、別れたssDNAは再び二重らせんを構築しようとします(再会合)。
再会合を防ぐため、親鎖が巻き戻されるとすぐに一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)が結合します。
複製起点では親鎖の巻き戻しと同時に、それぞれの親ssDNAで複製装置による娘鎖の合成が始まります。
さらに親鎖が巻き戻ると、これと同時にほどけた親鎖に沿って複製が進行します。
複製は巻き戻しと同じ速度で行われ、ほどけている親鎖で、伸長中の娘鎖と対になっていない部分や複製途中の部分は非常に短いです。
dsDNAは10 bp(10塩基対)ごとに1巻きのらせん(ターン)であるため、10 bp巻き戻すたびに、縦軸を中心に1回転します。
DNAは、自由に回転できないため、二重らせんをほどく時、dsDNAによじれ(正の超らせん)が生じるという問題が発生します。
よじれが長くなると、巻き戻しに対する抵抗となり、複製フォークの進行を止めてしまいます。
そのため、よじれ解消の機構(スイベル)があり、DNAトポイソメラーゼにより行われます。
DNAポリメラーゼは、プライマーの3'末端と結合している親ssDNA上の塩基の隣接塩基を識別し、
それと相補的なデオキシヌクレオチドをプライマーの末端に付加します。
その後、DNAポリメラーゼは親ssDNA上を5'から3'の方向へ移動しながら、相補的な塩基を娘鎖末端に付加していきます。
同時に、娘鎖は親鎖と二重らせんを形成します。
これと並行して、二重らせんのままの未複製部分は順次ほどかれていきます。
これが繰り返され、最終的に完全に複製した娘鎖が出来上がります。
DNAポリメラーゼは単独でDNAと長時間結合できません。
DNAクランプは、DNAと非常に安定に結合しており、DNAポリメラーゼとも強固に結合してDNAから離れないようにします。
DNAポリメラーゼとDNAとの結合はしばしば切れますが、DNAポリメラーゼはDNAクランプに固定されているため、すぐに合成を再開します。
DNAへのDNAクランプの装着および取り外しは、クランプローダーが行います。
DNAは、半不連続的複製により、娘鎖はリーディング鎖と、ラギング鎖に分かれます。
複製の方向は、DNAポリメラーゼの特性により、親鎖の5'から3'への方向に限られます。
リーディング鎖合成では、プライマーが1つだけ合成されて、複製フォークの拡大で露出した未複製の塩基を1つのDNAポリメラーゼが複製し続けます。
ラギング鎖合成では、露出した未複製の塩基と反対の方向へとDNAポリメラーゼが進んでいくため、
複製フォークが何bpか拡大するたびに、プライマーが合成する必要があります。
いくつものプライマーから岡崎フラグメントの合成が繰り返され、岡崎フラグメントが連結・統合して、ラギング鎖が完成します。
DNAは紫外線や化学物質による損傷の危険性に常にさらされています。
弛緩状態のssDNAは、dsDNAと比べて切断された時の修復がはるかに難しく、修復の際にしばしば変異を起こします。
リーディング鎖とラギング鎖は同時に合成されますが、これは染色体中にssDNAが存在する時間を短くするため、という説があります。
娘鎖が完成するためには、DNA複製開始の土台として合成されたプライマーRNAをDNAに変換する必要があります。
この過程を、ニックトランスレーションといいます。
まず、RNアーゼHがプライマーを発見し、除去します。
ただし、娘DNAの末端に結合した(プライマーの末端であった)リボヌクレオチドは除けないので、
末端のリボヌクレオチドは DNAとRNAを5'末端から分解する5'エキソヌクレアーゼが除去します。
こうして、娘鎖に紛れたRNAの除去が完了します。
次に、プライマーの消失により生まれた隙間(ギャップ)をDNAが埋めます。
まずDNAポリメラーゼにより、ギャップをDNAで埋めます。
しかし、ここで埋まるDNAとギャップ端だったDNAはつながらず、娘鎖に切れ目(ニック)が残ります。
ニックは、DNAリガーゼで連結され、プライマーRNAは完全にDNAと置き換わります。
複製終結点に複製フォークが到達すると、終結段階が始まり、複製が完了します。
この段階で、レプリソームはDNAから解離します。
複製フォークが複製終結点に到達しても、複製が完了していない領域が残っているため、修復合成が行われます。
まず、未複製のds DNAが解かれます。
一本鎖になった領域でDNA合成が行われ、2本のds DNAが完成します。
細菌の環状DNAは、DNA複製完了時に2つの娘鎖がカテナンを形成するため、DNAを娘細胞に分配できません。
そのため、II型DNAトポイソメラーゼにより脱カテナン化が行われます。
真核生物の線状ゲノムでも、1つの複製終結点を目指して互いに近づく隣接レプリコンの間に、
カテナンと似たdsDNAのからまりが生じるため、脱カテナン化が必要です。
また、真核生物の線状ゲノムでは、DNAポリメラーゼは、親鎖の3’側の最末端領域を複製できません(末端複製問題)。
そのため、新生DNAの娘鎖は5’末端が欠けており、親鎖よりも短くなってしまいます。
これを解決するため、テロメラーゼという酵素が、鋳型鎖なしに親鎖の3’末端を伸長させます。
次に、本来よりも長くなった3‘末端にプライマーが置かれ、DNAポリメラーゼにより複製します。
ヘリカーゼ 伸長段階 プライマーゼ プライマー クランプローダー 複製装置へ
核酸のリン酸エステル骨格に沿って動きながら核酸をほどく酵素で、すべての生物に必須と考えられています。
DNAの二本鎖をほどくものをDNAヘリカーゼ、
RNAの二次構造をほどくものをRNAヘリカーゼ、
構造上ヘリカーゼに似ていますが、DNA上を動くだけで核酸をほどかないものはDNAトランスロケースといいます。
ヘリカーゼは、ATPやGTPを加水分解して得られるエネルギーを使って塩基間の水素結合を解消し、
DNAの二重らせんや、二次構造を取ったRNAなどをほどく働きがあります。
ヘリカーゼは、片方の鎖に沿って種類毎に決まった方向に動きながら働きます。
様々な過程で核酸をほどく必要があるため、1つの生物には多くのヘリカーゼがあり、
DNAヘリカーゼは、大腸菌で14、ヒトで24、が知られています。
逆に、ヘリカーゼの機能は、直接的なものから間接的なものまで様々です。
DNAヘリカーゼの場合、直接的にはDNAの複製の際に二本鎖のDNAを一本鎖にすることによって、
DNAポリメラーゼがDNAに結合しやすくするという役割を果たしています。
ヘリカーゼは単に鎖が分かれるのを待っているのではなく、積極的に鎖を開く働きをしています。
ヘリカーゼの一次構造にはいくつか保存的なモチーフがあり、
ATP結合やATP加水分解、核酸への結合、核酸上での移動などに関わると考えられています。
逆に多様性のある領域は、ヘリカーゼ特有の機能に関わると考えられます。
ヘリカーゼは、6つのスーパーファミリーがあります。
最初の2つは基本的には単量体で機能しますが、会合して協調的に働くこともできます。
残り4つはドーナツ上の6量体または12量体で機能します。
全てに共通するモチーフは、1/H1/A・2/H2/B・6/Rの3つです。
スーパーファミリー1
全て核酸の2本鎖をほどくヘリカーゼです。
スーパーファミリー2
最も数が多く、DEADボックスRNAヘリカーゼ、Rec Qファミリー、Snf 2ファミリーなどのサブファミリーに分かれています。
1本鎖または2本鎖の核酸上を移動する能力があり、ヘリカーゼ活性を持つものが多いです。
単量体で機能しますが、会合して協調的に働くこともできます。
スーパーファミリー3
ウイルスで、複製・部位特異的組み込み・ウイルス粒子組み立てなど様々な機能を担っています。
スーパーファミリー4
DnaB-likeファミリー。細菌やファージのDNA複製に関与するものが多いです。
スーパーファミリー5
Rho-likeファミリー。Rho(大腸菌。転写終結因子)。
スーパーファミリー6
MCM(大腸菌)。
プライマーゼ 複製開始
DNA複製において、RNA 断片(プライマー)を合成する酵素です。
複製フォークにおいてDNAヘリカーゼに結合し、ラギング鎖に対して11塩基ほどのプライマーを合成し、岡崎フラグメント合成の足がかりとなります。
DNAポリメラーゼは、既にある核酸断片を延長することしかできないため、プライマー生成は DNA 複製において必須です。
RNA プライマーは、複製の進行とともに除去されますが、
直鎖状染色体の最も末端部分(テロメア)は、プライマーが除去された後、DNAポリメラーゼは複製できません(末端複製問題)。
これを解消するための酵素を、テロメラーゼといいます。
DNA ポリメラーゼ 複製開始 伸長段階 DNAクランプ クランプローダー 末端複製問題
1本鎖の核酸を鋳型として、それに相補的な塩基配列を持つ DNA 鎖を合成する酵素です。
一部のウイルスを除くすべての生物に幅広く存在します。
DNA を鋳型としてDNA を合成する DNA 依存性 DNA ポリメラーゼと、
RNA を鋳型として DNA を合成する RNA 依存性 DNA ポリメラーゼの、2つのタイプがあります。
前者はDNA複製やDNA修復において中核的な役割を担う酵素です。
後者はセントラルドグマの範疇から逸脱する位置にある酵素で、逆転写酵素やテロメラーゼがあります。
DNAポリメラーゼは、DNA鎖の3'末端の水酸基に新たなヌクレオチドを付加する活性を持ち、これによってDNA鎖は5'→3'の方向に伸長します。
一からDNA合成を開始できるDNAポリメラーゼは知られておらず、ヌクレオチドを付加するためのプライマーが必要です。
DNA複製の際には、DNA依存性RNAポリメラーゼの一種であるプライマーゼが短い RNA 鎖を合成し、プライマーとして用いられます。
エラー訂正機能(校正)が備わっている場合があり、
正しくない塩基対が認識されると、3'→5'エキソヌクレアーゼ活性によって1塩基が除去され、その後DNA合成が再開されます。
DNAポリメラーゼの構造は、よく保存されており、生物種による差異はあまりありません。
しかし、レトロウイルスは、逆転写酵素を持っています。
DNA 合成に必要な要素
OH 基 : RNA プライマーの 3' OH 基によって供給されるため、プライマーがないと DNA 合成開始が不可能です。
基質 (デオキシヌクレオチド) : DNA の材料となるのに加えて、次のヌクレオチド取り込みのために、OH 基を供給する役割もあります。
鋳型となる核酸 : DNAポリメラーゼによってDNA鎖が伸長する方向は5'→3' で、分解する方向は両方あります。(DNAse I/II, endo-/exo-nuclease)
尚、DNAポリメラーゼには、亜鉛が含まれます。また通常はマグネシウムイオンが必要です。
遺伝子ファミリー
DNAポリメラーゼは、ファミリー A - E 、X 、Y 、RT の7つのファミリーがあります。
このうちA・B・Cは、それぞれ大腸菌のpol I・pol II・pol IIIに対応するファミリーとして設定されたものです。
ファミリーA
DNA複製やDNA修復に関わる酵素が含まれます。
複製系の酵素には、T7 DNAポリメラーゼや、ミトコンドリアのDNAポリメラーゼ γ があります。
修復系のものには、大腸菌のDNAポリメラーゼIなどがあり、 除去修復や岡崎フラグメントの処理に関わります。
ファミリーB
ほとんどが複製系の酵素で、真核生物のDNAポリメラーゼα、δ、ε、などを含み、それぞれ複製の開始、ラギング鎖の合成、リーディング鎖の合成を行います。ζもあります。
古細菌から発見されたPol B1, Pol B3も、同様の複製系酵素と考えられています。
このファミリーの酵素は強い3'-5'エキソヌクレアーゼ活性があり、複製が正確なことが特徴ですが、αとζに関しては例外で校正活性を持ちません。
ファミリーC
細菌の染色体複製に関わる酵素です。
大腸菌のDNAポリメラーゼIIIのαサブユニットはヌクレアーゼ活性がなく、別のαサブユニットが3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を提供しています。
ファミリーD
古細菌の持つ複製系の酵素の一つで、主にラギング鎖の複製を行うと考えられています。
他のファミリーとは配列上の相同性が認められません。
ユリアーキオータ門固有と考えられていましたが、ナノアーキオータ門、タウムアーキオータ門、コルアーキオータ門もファミリーDを持つことが明らかとなり、
ラギング鎖の複製もファミリーBで行う好熱性クレンアーキオータ(狭義のクレンアーキオータ)の方が、古細菌の中では例外的な様です。
ファミリーE
クレンアーキオータ門の古細菌から発見されたポリメラーゼです。
ファミリーX
真核生物のpol β、pol σ、pol λ、pol μなどで、末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)を含みます。
pol βは、傷害塩基を修復する塩基除去修復系において必要です。
pol λとpol μは、DNA二重鎖切断を修復する非相同末端結合に関わります。
TdTは、リンパ組織におけるVDJ組換の際に数塩基を追加して免疫学的多様性を増大させることに関わります。
出芽酵母の唯一のPol4もまた、非相同末端結合に関わります。
真核生物の PolX は 3'-5' エキソヌクレアーゼ活性を持ちませんが、原核生物の PolX には 3'-5' エキソヌクレアーゼ活性を持つものが多いです。
ファミリーY
無損傷のDNAに対する忠実度が低く、逆に損傷を受けたDNAでも複製できます。
損傷乗り越え複製(TLS)によってエラーなしに、またはエラーを無視して複製できるようになりますが、後者の場合変異率は上昇します。
ファミリーRT
RNA 依存性 DNA ポリメラーゼ(逆転写酵素)で、レトロウイルスや、真核生物のテロメラーゼがあります。
典型的な組成
原核生物
真正細菌
Pol I: DNA修復に関わります。5'→3'と3'→5'の両方のエキソヌクレアーゼ活性を持ちます。
Pol II: 損傷DNAの複製に関わります。3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を持ちます。
Pol III: DNA複製に関わる中心的なポリメラーゼ。3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を持ちます。
Pol IV: ファミリー Yに属するポリメラーゼ。
Pol V: ファミリー Yに属するポリメラーゼ。
Pol X: ファミリー X に属するポリメラーゼ。大腸菌は持ちません。
古細菌
クレンアーキオータ
Pol BI : ファミリー B。複製に関与?Pol εとの相同性があります。
Pol BII : ファミリー B。複製に関与?Pol αやδなどと相同性があります。
Dbh : ファミリー Yに属するポリメラーゼ。
Dpo4 : ファミリー Yに属するポリメラーゼ。
ユリアーキオータ
Pol BI: ファミリー B。リーディング鎖でのDNA複製に関与?
Pol D: ファミリー D。複製系酵素。ラギング鎖でのDNA複製に関与?
真核生物
15以上あります。
Pol α: 最初はプライマーゼとしてRNAプライマーを合成し、その後DNAポリメラーゼとして働きます。
約20塩基合成すると、ラギング鎖ではPol δに、リーディング鎖ではPol εに交替します。
Pol β: DNA修復に関わります。
Pol γ: ミトコンドリアDNAを複製します。
Pol δ: ラギング鎖でのDNA複製に関わる中心的なポリメラーゼ。効率が良く3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を持ちます。
Pol ε: リーディング鎖でのDNA複製に関わる中心的なポリメラーゼ。効率が良く3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を持ちます。
Pol η・Pol ι・Pol κ・Rev1・Pol ζ: 損傷乗り越え複製に関わります。
真核生物のDNAポリメラーゼは、5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を持たないためプライマーの除去ができず、別個に酵素を必要とします。
鎖伸長に関わるポリメラーゼ(γ・δ・ε)だけが3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を持っています。
2本鎖DNAの一方または両方を切断して再結合する酵素です。
2本鎖DNAの二重らせんが更に巻かれたり、逆にほどかれたりすると、DNA分子全体にひずみが生じます。
これらを DNA超らせん構造(右巻きを正の超らせん(ほどけにくくなります)、左巻きを負の超らせん(ほどけやすくなります)。
転写、複製、修復などの際には、二重らせん構造にひずみが生じるため、トポイソメラーゼがそのひずみを解くことが必須です。
DNAの組換えや、ウイルスDNAが染色体に組み込まれる時などにも必要です。
トポイソメラーゼは大きく2つの型(I 型と II 型)に分類され、
更に反応機序の異なる2つのサブクラスに分類されます(IA, IB と IIA, IIB)。
一部の細菌と古細菌は、水平遺伝子移行によって、いくつかのトポイソメラーゼ遺伝子を交換しているようです。
T 型トポイソメラーゼ
DNAの2本鎖のうち一方が切断され、その切れ目の間をもう一方の鎖が通過します。
切れ目が再結合すると、リンキング数は一つ変化します。
反応はATPを要求しません。
主に複製や転写の際に生じるDNA超らせんを緩和する働きをもちます。
一部の耐熱性細菌と耐熱性古細菌は、リバースジャイレースという特殊な IA 型トポイソメラーゼを持ちます。
これはDNAヘリカーゼ様のドメインを持ち、ATP 依存的に正の超らせんを導入する能力を持ちます。
II 型トポイソメラーゼ
2本鎖が同時に切断され、その切れ目の間を別の2本鎖が通過します。
切れ目が再結合すると、リンキング数は二つ変化します。
反応は ATPを要求します。
超らせんの緩和に加えて、複製後に生じる娘2重鎖DNA間の絡まり(カテナン)の解消も担います。
カテナンの解消は、真核細胞では トポイソメラーゼII (topo II) 、細菌では トポイソメラーゼIV (topo IV) により行われます。
また、大腸菌を含む多くの細菌は DNA ジャイレースがあり、
負のDNA超らせんを導入することで、DNAをコンパクトにすると同時に、ほどけやすくします。
DNAリガーゼ 伸長段階
DNA鎖の末端同士をリン酸ジエステル結合でつなぐ酵素です。
生体内では主としてDNA複製とDNA修復に寄与しています。
DNAの3'末端(アクセプター)と、DNAの5'末端(ドナー)との間にリン酸ジエステル結合をつくります。
真核生物やファージの酵素では、反応にATPを必要とし、以下のように進行します。
1. ATPが酵素の活性中心のリジン残基に結合してAMPとなり、ピロリン酸が放出されます。
2. AMPがDNA5'末端のリン酸基に転移され、ピロリン酸結合を生じます。
3. 5'末端のリン酸基と3'末端の水酸基との間にリン酸ジエステル結合を生じ、AMPが放出されます。
大腸菌など真正細菌のDNAリガーゼは、ATPではなくNAD+を補酵素として要求し、ピロリン酸の代わりにニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)が放出されます。
DNAリガーゼは、二重らせん構造の中で隣り合う3'-水酸基と5'-リン酸基の間をリン酸ジエステル結合でつなぎます。
これ以外の組み合わせでは反応せず、通常は一本鎖DNAに対して作用することはありません。
T4ファージのT4 DNAリガーゼは、効率は低いもののDNA/RNAハイブリッドに対して作用することもでき、
DNAリガーゼだけでなくRNAリガーゼとしても機能することができます。
またミスマッチ塩基を含むようなDNAに対して作用することができ、相補部位のない独立したDNA分子2つを結合することもできます。
非常に効率は低いですが、一本鎖DNAですら結合することができます。
テロメラーゼ 終結 プライマーゼ DNA ポリメラーゼ 末端複製問題
真核生物の染色体末端(テロメア)にある反復配列を伸長させる酵素です。
テロメア伸長のテンプレート(鋳型)となるRNA構成要素(TERC : TR)、
逆転写酵素活性を持つ触媒サブユニット(TERT)、
その他の制御サブユニット、
によって構成されています。
逆転写酵素の活性部位は、RNA型トランスポゾンがコードするものと相同性があります。
細胞周期のS期(DNA合成期)にテロメアに誘導されて機能します。
テロメラーゼの活性は、種類によって異なります。
真核単細胞生物は、ほぼ活性を持ちます。
真核多細胞生物は、生殖細胞は活性を持ちますが、体細胞での活性は様々です。
ヒトでは生殖細胞・幹細胞以外でのテロメラーゼ活性はほとんどありませんが、
魚類・マウス・チンパンジーでは、体細胞での活性が観察されています。
植物は、ほとんどの体細胞が活性を持ちます。
RNA依存性DNAポリメラーゼです。
逆転写反応を触媒する酵素で、一本鎖RNA を鋳型として DNA を合成(逆転写)します。
この酵素の発見により、遺伝情報が RNA から DNA へも伝達されうることが明らかとなりました。
RNAウイルスであるレトロウイルスや、
DNAウイルスであるB型肝炎ウイルス、の増殖に必須の因子です。
リボヌクレアーゼ (RNase) 伸長段階 ニックトランスレーション
ヌクレアーゼの一種で、リボ核酸を分解して、オリゴヌクレオチドまたはモノヌクレオチドにする反応を触媒する酵素です。
あらゆる生物に存在する酵素で、
内部からRNAを分解するエンドリボヌクレアーゼ、
外側から分解していくエキソリボヌクレアーゼ、があります。
塩基の種類を問わないリボヌクレアーゼT2、
ピリミジン塩基のある部分だけ切断するリボヌクレアーゼA、
グアニンの部分のみを分解するリボヌクレアーゼT1、などがあります。
mRNAなどの必要なRNAは、リボヌクレアーゼインヒビターというペプチドによってリボヌクレアーゼによる分解をまぬがれています。
RNase H
DNA/RNAハイブリッド二本鎖を形成しているRNAを切断し、一本鎖DNAを生じるリボヌクレアーゼです。
RNase Hは、非特異的なエンドヌクレアーゼであり、加水分解によってRNA切断を触媒し、5'末端リン酸化物を生じます。
酵素に結合した二価金属イオンは、活性を助けます。
一般的に、一本鎖環状DNAをゲノムとする ファージが行う複製様式です。
大腸菌ファージ、φX174について。
一本鎖DNAは複製が開始されると、二重らせんとなります。この二本鎖DNA状態を、複製型(rRF I)といいます。
複製型のうち、もともとのゲノムを(+)鎖、新しく合成されたものを(−)鎖といいます。内側は(-)鎖、外側は(+)鎖です。
まず、エンドヌクレアーゼ活性があるAタンパク質が、 (+)鎖の複製起点にニック(切れ目)を入れ、その後、Aタンパク質はニックの5'末端に残ります。
dsDNAにニックを入れ、生じた5‘末端に結合する酵素を、リラクセーズ (弛緩酵素)といいます。
ニックの(+)鎖3’末端は、(+)鎖伸長のためのプライマーとなり、(−)鎖を鋳型として新たな娘ssDNAが合成されていきます。
一方、5’末端は、伸長に連れて (−)鎖から離れます((+)鎖のssDNAを、テールといます)。
やがて娘鎖の伸長は、一周して複製起点に到達し、(+)鎖全体がテールとなります。
Aタンパク質は、5'末端と同時に3'末端にも連結しており、複製フォークが複製起点を過ぎる頃、Aタンパク質も複製起点近くにあります。
テール末端のAタンパク質は、再び複製起点を認識して(+)鎖を娘鎖から切り離します。
(−)鎖から離れて遊離した(+)鎖は、環状となり、ゲノムDNAが複製されます。
尚、娘鎖と(−)鎖の二本鎖は、その後も複製型DNAとして再利用されます。
複製フォーク 複製装置
複製前のdsDNAが、2つのssDNAにほどかれている分岐点です。
巻き戻しを経て生まれる、部分的なssDNAの領域です。
1つの複製起点によって巻き戻しが及ぶ範囲で、DNA複製の単位です。
レプリコンは原核細胞の染色体に1つしかありませんが、真核細胞の場合は複数存在します。
複製の開始位置の分散は、DNA複製の早期終結に寄与していると考えられています。
DNA合成開始に必要な、短いRNAを、プライマーといいます。 複製開始
プライモソームは、プライマー合成に必要なタンパク質群で、プライマーゼ(DnaG)、ヘリカーゼ(DnaB)などがあります。
DNAヘリカーゼによってほどかれた部分的ssDNA上に形成された、DNA複製に関与する因子から構成される複合体です。
プライモソーム(プライマーゼ、ヘリカーゼなど)に加えて、DNAポリメラーゼ、DNAクランプ、DNAトポイソメラーゼなどの酵素、
一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)などのタンパク質からなります。
複製装置の中で構成因子は、非常に協調的に機能します。
細菌の大部分では、プライモソームを含む複製に関与する因子が全て複製フォークに集まり、複合体はそこに固定されます。
このような複製装置はレプリソームといいます。
一方、真核生物と一部の細菌では、レプリソームは形成されずに、数百から数千の複製装置が形成されます。
鋳型DNAは、複製されるために複製装置へと移動します。
複製装置は、複製されているDNAに対して、動かない存在であるため、複製工場ともいいます。
リーディング鎖とラギング鎖それぞれの複製装置は、互いに協調しているようです。
複製工場はまた、複製後に姉妹染色分体を娘細胞に分配するための引き離しに不可欠な、姉妹染色分体同士のもつれの解消を実行します。
複製後に姉妹染色分体はコヒーシンによって連結されるため、もつれの解消は複製中にしかできません。
複製装置が核内で固定されている理由は、複製フォークが自由に動くと、染色体の連環の形成を誘導して有糸分裂分離を阻害するため、と考えられています。
DNAクランプ (スライディングクランプ) 伸長段階
DNA複製の伸長段階に関わるタンパク質の一つです。
ドーナツ状で、中央の穴(約35オングストローム)にDNAポリメラーゼが複製したdsDNA(約20オングストローム)を通します。
通したDNAとの間には水分子1-2個が層を作るだけの余地があるため、DNAクランプはDNAから離れることなくDNA上を滑って動きます。
DNAポリメラーゼは、単独でDNAと長時間結合することができず、平均20〜100bpほどしか合成できません。
加えて、DNAポリメラーゼが遊離してから再びDNAに戻るのに1分ほどかかります。
DNAクランプはDNAと非常に安定に結合しており、更にDNAポリメラーゼとも強固に結合してDNAから離れないようにし、
DNAポリメラーゼの活性における持続時間(連続反応性、プロセッシビティー)を維持します。
DNAポリメラーゼとDNAとの結合はしばしば切れますが、DNAポリメラーゼはDNAクランプに固定されているため、すぐに合成を再開します。
DNAクランプは、DNAポリメラーゼを迅速に分離させる機構もあります。
真核生物などでは多くのレプリコンを、多数のDNAポリメラーゼで複製しています。
DNAポリメラーゼの仕事は、すでに娘鎖またはプライマーRNAが合成された後の二重らせん領域(岡崎フラグメントの末端など)に到達したときに終了します。
dsDNAと結合したDNAポリメラーゼは、立体構造を変化させ、DNAクランプとの化学親和力を著しく下げることで、直ちにDNA から離れます。
DNAクランプは、DNAポリメラーゼを放出した後もDNAからしばらく離れず、複製後のDNAに働く他のタンパク質の留め金となります。
また、岡崎フラグメントの修復に関わる真核生物のタンパク質も、DNAクランプと結合することで正しく機能します。
DNAクランプと結合するタンパク質は、5アミノ酸残基からなるクランプ結合配列(Gln-Leu-Ser/Asp-Leu-Phe)を持っています。
DNAクランプは特にラギング鎖において多数必要となるため、複製フォークにおいて大多数のDNAクランプが集合します。
毎秒1分子というDNAクランプの集合の頻度は、岡崎フラグメントの形成頻度(毎秒0.5〜1フラグメント)とほぼ一致するため、
集合したDNAクランプは、各々異なる岡崎フラグメントに結合すると考えられています。
DNAクランプは、ウイルスや細菌から、ヒトまで非常に広範囲に存在し、機能や構造はとても似ています。
どの生物も、6回回転対称性を持ち、直径も約35オングストロームと同じです。
ただし、構成するサブユニットの数などは異なります。
クランプローダー 伸長段階
DNAへのDNAクランプの装着と取り外しを行います。
大腸菌のものは、γ複合体で、5本のサブユニットからなります。
2つのτタンパク質を含み、それぞれ脱着に関わる部位と柔軟なポリペプチドにより連結しています。
5本のサブユニットに、βクランプ(大腸菌のDNAクランプ)が結合します。
βクランプは閉じた環状構造をしていますが、γ複合体と結合している間これを開き、離れると閉じます。
これにより脱着を行いますが、その時期は制御されています。即ち、
DNA上にプライマーが形成されると、装着します。
βクランプが、DNAポリメラーゼ(pol V)の他、ヌクレオソーム集合因子やDNA修復タンパク質と離れると、取り外します。
一方、τタンパク質は、DNAポリメラーゼとDNAヘリカーゼに結合します。
これはレプリソームが形成されている限り、即ちレプリコンの複製が終わるまで続きます。
半保存的複製 伸長段階
合成された2本の二重らせんDNAが、1本の娘鎖と1本の親鎖から構成されている、DNA複製様式です。
半不連続的複製 伸長段階
2本の親鎖のうち一方を連続的に、もう一方を半不連続的に合成するDNA複製様式です。
これは、DNAポリメラーゼがデオキシヌクレオチドの付加を、3'末端にしか行えないために起こります。
つまり、複製の方向は親鎖の5'から3'への方向に限定されます。
リーディング鎖 伸長段階
半不連続的複製により、連続的に合成された娘鎖です。
半不連続的複製により、不連続的に合成された娘鎖です。
DNA複製途中のラギング鎖でみられる、短いDNA断片です。
ssDNAと結合して、DNAの再会合を防ぐタンパク質です。
DNAと結合したSSBは、遊離SSBと結合しやすくなり、SSB結合が繰り返されて、複製バブル全体をSSBが覆います。
また、SSB間の結合は、個々のSSBのDNAへの結合を安定化させます。
SSBが直接結合するDNAの部位は塩基でないので、塩基間の水素結合により娘鎖を伸長させていく複製装置の邪魔をすることはありません。
さらに、DNAを伸びた状態にする効果もあるので、娘鎖合成やプライマー合成の鋳型になりやすくします。
ニックトランスレーション 伸長段階
娘鎖が完成するために、プライマーRNAをDNAに変換する過程です。
まず、RNアーゼHがプライマーを発見し、除去します。
これは、リボヌクレオチド間の結合切断しかできないため、
娘DNAの末端に結合した(プライマーの末端であった)リボヌクレオチドは除去できません。
末端のリボヌクレオチドは 5'エキソヌクレアーゼが除去します。
この酵素はDNAとRNAを5'末端から分解します。
こうして、娘鎖に紛れたRNAの除去は完了します。
次に、プライマーの消失により生まれた隙間(ギャップ)を、DNAポリメラーゼにより合成されたDNAで埋めます。
しかし、DNAポリメラーゼは、認識した3'末端に新しいデオキシヌクレオチドの5'末端をつなげるだけなので、
補完DNAの3'末端と、最終的にぶつかるDNAの5'末端との結合はできません。
そのため、ここで埋まるDNAとギャップ端だったDNAはつながらず、娘鎖に切れ目(ニック)が残ります。
残ったニックは、DNAリガーゼ(DNA連結酵素)で連結されます。
上記4つの酵素により、プライマーRNAは完全にDNAと置き換わります。
よじれ解消機構(スイベル:よりもどし) 伸長段階
自由に回転できないDNAは巻き戻しによるよじれのために、さらに大きならせん(DNA超らせん、DNAスーパーコイル)が生じます。
DNAらせんは右回りであるため、複製フォークの進行方向で形成される超らせんも右回りです(正の超らせん)。
正の超らせんが長くなると巻き戻しに対する抵抗となり、複製フォークの進行を止めてしまいます。
そのため、DNAトポイソメラーゼにより、スイベルを行います。
尚、DNAの超らせんのない状態を弛緩型 といいます。
2つの環状高分子が絡まった状態です。
尚、カテナンを合成する反応に、メタセシス反応があります。これは、二種類のオレフィン(エチレン)間で結合の組換えが起こる反応です。
メタセシス反応は、カルベン錯体により触媒されます。
カルベンは、価電子を六個しか持たず、電荷を持たない二配位の炭素で、最も単純な構造のものは、メチレンです。
脱カテナン化 終結段階
細菌の環状DNAは、DNA複製完了時に2つの娘鎖がカテナンを形成するため、DNAを娘細胞に分配できません。
複製フォークが複製終結点に到達した後、2本の2重鎖DNAが完成します。
しかし、2つのDNAは互いにらせん状に巻きついたトーラスという構造を介して連結しています。
修復合成が完了した後、脱カテナン化を担うのが、II型DNAトポイソメラーゼです。
大腸菌やサルモネラ菌では、DNAトポイソメラーゼ W (topo W、decatenase) により行われます
真核生物の線状ゲノムでも、1つの複製終結点を目指して互いに近づく隣接レプリコンの間にカテナンと似た2重鎖DNAのからまりが生じます。
真核生物では、DNAトポイソメラーゼ II (topo II) により行われます。
DNAポリメラーゼは、プライマーの3’末端がないとデオキシヌクレオチドの重合ができません。
そのため、直鎖状DNAをもつ真核生物では、親鎖の3'側の最末端領域を複製できず、娘鎖は親鎖より短くなってしまいます。
つまり、合成が終わり、プライマーが除去された後、新生DNAの娘鎖は5’末端が欠けています。
そこで、テロメラーゼが、親鎖の3’末端を鋳型鎖なしに伸長させます。
次に、本来よりも長くなった3’末端にプライマーが置かれ、DNAポリメラーゼが複製して娘鎖は本来の長さになります。