ウイルス・・・複製システムの起源?

 

 

 ウイルスという、生物と非生物の中間のようなものがあります。

 ウイルスは、遺伝子を持ち、他の生物の増殖システムを利用して増殖できるという、生物の特徴を持ちます。

 一方、細胞を構成単位としないため、非生物(生物学的存在)とされることもあります。

 

 ウイルスの起源は、新しいウイルス入門(P153-)、によると、

「もともとは細胞だった、細胞内の自己複製分子がウイルスになった、細胞とは別個に誕生した」、などの説があるようです。

ウイルスによる核形成仮説(同P177-)によると、細胞核は、DNAウイルス由来の可能性もあるようです。

 

 諸説あると思いますが、私は、ウイルス(ウイロイド)の一部が、生命の複製システムの起源

(すべてのドメインに感染可能なスプートニクヴィロファージは、2本環状鎖DNAですが、

DNAよりRNAの方が、起源の可能性が高いと思いますので、ウイロイドのような、環状一本鎖RNAが考えられます。)

と、考えてみたいです・・・

 

 確かに、巨大核質DNAウイルスのように、寄生に特化して複製システムを退化させた可能性もありますが、

 すべてのウイルスが寄生に特化したと思えませんし、(パンドラウイルスが更にゲノム数を減らすように進化?しても、

遺伝子数25563になるとは思えません。ましてや、ウイロイドは遺伝子を持っていません)、

 また、トランスポゾンが起源だと、カプシド蛋白など、宿主が持っていない遺伝子をどうやって獲得したのか、という疑問が生じます。

 

 と、少し興味をもったので、ウイルスについて調べてみました。

 

 ウイルスは、真核生物、真正細菌、古細菌、いずれのドメインにも発見されており、ウイルスの起源が古いことを示唆します。

 レトロウイルスと、トランスポゾンの類似性は、一部は機能性核酸が独立・進化した可能性を示唆します。

 パンドラウイルス2013年に発見されました。長さ1μm、幅0.5μmもあります。)や、メガウイルス等の巨大核質DNAウイルスは、

非常に巨大(マイコプラズマ等、一部の生物より大きいです。)で、複雑な構造を持ち、

一部は寄生に特化した生物の一群(新たな生物のドメインとなる可能性もあります。)であることを示唆します。

 

 ウイルスは、遺伝子を構成する核酸の種類によって、大きくDNAウイルスとRNAウイルスに分類されます。

更に、核酸が一本鎖か二本鎖か、一本鎖のRNAであればmRNAとしての活性を持つか持たないか(プラス鎖RNAかマイナス鎖か)、環状か線状か、等で細分類されます。

 

 ウイルスは、大きさが数十から数百nm10-9m)で、細胞(数から数十µm10-6m))の10-2から10-3程度と非常に小さく、

ウイルス核酸と、カプシドカプソメア、というペプチドが集合したタンパク質です。)から構成された粒子です。

細胞質はありません。ウイルス核酸とカプシドを併せたものをヌクレオカプシド、といいます。更に、エンベロープ等、ヌクレオカプシド以外の物質をもつものもあります。

ウイルスにとって必要な構造をすべて備え、宿主に感染可能なウイルス粒子を、ビリオン、といいます。

 

 ウイルス核酸は、基本的にDNARNAのどちらか一つです。

 ウイルスのゲノムは非常に小さく(最小のゲノムを持つウイルスは、ブタサーコウイルス1で、ゲノム数は1759bpです

・・・これは、DNAウイルスです。私は、最小のゲノムをもつものは、RNAウイルスと思っていました・・・最小のゲノムをもつウイロイドの核酸は、下記のようにRNAですが。

最大は、パンドラウイルス・サリヌスの2.5×106bpです。)、コードする遺伝子数も、3から100個程度と極めて少ないです。

(最小は不明です。最大は、パンドラウイルス・サリヌスで、2556個も遺伝子があります。)

 ウイルス遺伝子には、遺伝子(しばしば宿主と大きく異なります)を複製するための酵素の他、宿主細胞に吸着・侵入したり、

宿主の持つ免疫機構から逃れたりするための酵素等がコードされています。

 

 カプシドの内側に、ウイルス核酸と一緒にカプシドとは異なるタンパク質を含むものがあり、

タンパク質とウイルス核酸を合わせたものをコア、そのタンパク質をコアタンパク質、といいます。

 

 加えて、ウイルスは、自分自身ではエネルギー産生や増殖ができません

偏性細胞内寄生性、といいます。アルファプロテオバクテリア綱に属するリケッチア等、一部の生物にも同様の特徴を示すものがあります。

尚、ミトコンドリアは、アルファプロテオバクテリア綱に含まれる真正細菌に由来すると考えられています。)。

 

 ウイルスの増殖は、一段階増殖で行われ、宿主細胞表面へ吸着 → 細胞内へ侵入 → 脱殻 → 部品の合成 → 部品の集合 →宿主細胞から放出、のステップがあります。

 

 宿主細胞表面への吸着: ウイルスが宿主細胞に接触すると、ウイルスの表面にあるタンパク質が宿主細胞の表面の分子を標的にして吸着します。

細胞側にある標的分子をウイルスに対するレセプターといいます。

 

 細胞内への侵入: 宿主細胞自身が持つエンドサイトーシスの機構を利用してエンドソーム小胞として細胞内に取り込まれた後細胞質へ進入するもの、

吸着したウイルスのエンベロープが宿主の細胞膜と融合して粒子内部のヌクレオカプシドが細胞質内に送り込まれるもの、能動的にウイルス遺伝子を注入するもの、等があります。

 

 脱殻: 細胞内で一旦カプシドが分解され、ウイルス内部からウイルス核酸が遊離する過程です。脱殻が起こってから粒子が再構成までの期間には、暗黒期(エクリプス)があります。

 

 部品の合成: 部品となるウイルス核酸とタンパク質を別々に大量生産し、その後で組み立てる方式で行われます。

ウイルス核酸が、次代のウイルス(娘ウイルス)の作成のために大量に 複製されると同時に、宿主のmRNAからカプソマー等のウイルス独自のタンパク質が大量に合成されます。

 

 部品の集合とウイルス粒子の放出: ウイルス核酸とタンパク質は細胞内で集合し、カプソマーがウイルス核酸を包み込み、ヌクレオカプシドが形成されます。

完成したウイルスは、細胞から出芽したり、感染細胞が死んだりすることによって細胞外に放出されます。

一部は、出芽する際に被っていた宿主の細胞膜の一部をエンベロープとして獲得します。

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 ウイルスに関連して、サテライトとウイロイドがあります。

 

 サテライトは、感染性の核酸(DNAまたはRNA)で、宿主細胞内で単独で増殖できず、増殖にはヘルパーウイルスが同じ細胞に感染していることが必要です。

 サテライトのうち、コートタンパク質をコードし、独立したビリオンを形成するものをサテライトウイルスといいます。

 スプートニクヴィロファージなど、他のウイルスに寄生して害を与えるウイルスは、ヴィロファージという場合があります・・・

 なんと、スプートニクヴィロファージは、真核生物、真正細菌、古細菌のいずれのドメインにも感染する事の出来る遺伝子がコードされているようです。

しかも、核酸は、RNAではなく、2本環状鎖DNAです。

 

 ウイロイドは、塩基数が200400程度と短い環状の一本鎖RNAのみで構成され、維管束植物に対して感染性を持つものです。

 分子内で塩基対を形成し、生体内で棒状の構造をとります。

ウイルスと異なり、カプシド等、タンパク質でできた殻もなく、プラスミドのようにゲノム上にタンパク質をコードしていません。

 複製は、ローリングサークル様式という方法で行われ、核内や葉緑体内で複製されます。

 ウイロイドをRNA生物の生きた化石とみなして、ウイロイド様のものから生物が進化した、とする説もあります。

 

 尚、ココナッツカダンカダンウイロイドと、アボカドサンブロッチウイロイドのゲノム数は、246bpで、全生物・ウイルスの中で最小のゲノムをもちます。遺伝子は持ちません。

ウイルスのゲノム

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