元素合成 ・・・物質の起源について

 

 

  地球の歴史以前にさかのぼりますが・・・

 

 質量が大きい恒星でみられる、CNOサイクル、という核融合反応があります。

これに登場する元素水素、炭素、窒素、酸素)は、まさに地球の生命を構成する物質ですね。

ヘリウムは、希ガスで反応しないため生命を構成する物質に採用しなかったのでしょう・・・

 

 CNOサイクルがあった、ということは・・・太陽系ができる前に、第2世代(以降)の質量が大きい恒星があった、ということでしょうか。

 

 

 元素合成(原子核合成、核種合成)とは、核子(陽子と中性子)から、新たに原子核を合成するものです。

 

  ビッグバン理論によると、プランク時代の10-35秒後相転移によってインフレーション、と呼ばれる宇宙の急激な膨張が起こりました。

 インフレーション終了後、宇宙の物質要素はクォークグルーオンプラズマと呼ばれる状態で存在していました。

 

 宇宙の温度が2Kまで冷えた時に相転移が起こり、クォークグルーオンプラズマから核子(陽子と中性子)が生成されました。

 ビッグバンから3分から20までの間に、陽子と中性子が生成され、更に、リチウム7とベリリウム7までの原子核が生成されました。

しかし、リチウム7や、ベリリウム7は不安定であるため、すぐに崩壊しました。           ビッグバン原子核合成

ヘリウムより重い元素の合成は、恒星での核融合や核分裂により作られます。          恒星内原子核合成

また、より重い元素は、ほとんどが超新星爆発により生成されます。                      超新星元素合成

その他、宇宙線による核破砕、による元素合成があります。

  今日、地球上にある多くの元素は、これらの元素合成から作られたものです。

 

しかし、2003年からの、宇宙背景放射を観測するWMAPの観測によって、宇宙全体の物質エネルギーのうち、

74%暗黒エネルギー22%暗黒物質で、水素やヘリウムは、4%ぐらいしかないことが分かってきましました。

・・・私達が分かっている物質はほんのわずかですね・・・一体暗黒エネルギーなどは何でしょう・・・

トップ

 

ビッグバン原子核合成

 ビッグバン開始後3分後から20分後までの、17分間に生じた原子核合成です。

 

ビッグバンから3分後中性水素(軽水素)(1H)の原子核(陽子)と中性子が、

安定して存在する温度にまで下ったため、ビッグバン原子核合成が開始しました。

 

まず、陽子と中性子が衝突して重水素(2H)が作られました。

重水素に中性子が捕獲されると、三重水素(3H)が作られるか、または三重水素がータ崩壊

(電子と反電子ニュートリノが放出されて、中性子が陽子に変化します。)して、ヘリウム3(3He)となりました。

さらに中性子を捕獲してヘリウム4(4He)までは簡単に作られました。

 この中で軽水素が最も安定であり、またヘリウム4も安定であるので、この2つの核種が蓄積します。

 

 しかし、質量数5の安定な核種は存在しないので、宇宙の初期における原子核合成はこれ以上進みません。

 

 ごく少数、リチウム7(7Li)や、ベリリウム7(7Be)が作られましたが、

質量数8の安定な核種は存在しないので、これ以上進むことはまずありません。

 

三重水素、ベリリウム7、ベリリウム8等の不安定原子核や放射性原子核は、

形成されたとしても、崩壊するか、他の原子核と融合して安定な原子核を作るのに用いられました。

 

ビッグバンから20分後には、宇宙の温度は核融合が起こる程度にまで低下したため、この合成過程が終了しました。

この時点で元素の存在比は固定し、三重水素等の放射性同位体が崩壊するだけになりました。

 

 ビッグバン原子核合成の結果、約75%の水素1、約25%のヘリウム4

0.01%の水素210-10以下の痕跡量のリチウムとベリリウム、が生成されました。

 

重元素は理論的には生成しません。(%は、質量を表します。)

 

 これらの原子核は、互いの重力により集まって、ビッグバンから1億年後1世代の星を構成する原子核となりました。

トップ

 

  恒星内元素合成

水素よりも重い元素が恒星によって生成される核融合反応です。

ヘリウム4から鉄56までの原子核が作られます。

ただし、超新星爆発の時に行われる元素生成については、超新星元素合成と呼ばれます。

 

星間ガスに密度の高い部分ができて重力が強くなると、その重力によって周囲の物質を集積していきます。

物質が集まって圧力が上がると温度が高くなります。

 

原始星の中心温度が250 Kを超えると、最初の核融合が起こります。

 この時は、重水素による核融合D-D反応)が発生しますが、重水素は存在量が少ないため、反応はまもなく停止します。

 

 中心の温度が1,000K(太陽の中心は1,500Kです。)を超えて、恒星と呼ばれるようになると、

軽水素からヘリウム4が生成される核融合が起こります。

 

これには、陽子-陽子連鎖反応と CNOサイクル、があります。

 陽子-陽子連鎖反応p-pチェイン)は、軽水素(陽子、p)同士が直接反応する水素核融合です。

太陽のような質量の小さな恒星や、炭素などの重元素に乏しい恒星で起こります。

 

 CNOサイクルは、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O) を触媒とした水素核融合です。

主に触媒元素が豊富にある大質量星で起こります。

 

星の中心温度が2,000Kを超えると、陽子-陽子連鎖反応よりCNOサイクルのほうが優勢になります。

 軽水素は、恒星の原料である星間ガスに大量に含まれているため、核融合は安定します。

この時期が恒星にとって一番長く、この反応が行われている恒星は、主系列星と呼ばれます。

 

この後、徐々に反応が進んでヘリウムが蓄積されてくると、ヘリウム同士の核融合(ヘリウム燃焼過程)が始まります。

最初、ヘリウム4同士の合成でベリリウム8までの元素が生成されますが、

ベリリウム8は非常に不安定で、半減期1×1016から2.6×1016秒で二つのヘリウム4に戻り、

それ以上の質量の元素を合成することはできません。

 

このとき太陽質量の0.47倍よりも重い恒星の場合は、恒星内部にヘリウム4が蓄積し、

重力により収縮してコアの温度が上がります。

 

1K程度になると、ベリリウム8が崩壊するまでのごくわずかな間に

3つのヘリウム4が融合して、安定な炭素12が生成されます(トリプルアルファ反応)。

安定な炭素12の生成により、その後の核反応プロセスが続いていくことが可能になります。

 

 太陽質量の5倍以上の恒星の場合、6Kを超えると、炭素燃焼過程が起こります。

炭素とヘリウムとの反応(アルファ反応)で、酸素、ネオン、マグネシウム、(ナトリウム)が生成されます。

 

 さらに、太陽質量の8倍以上の恒星の場合、12Kを超えると、ネオン燃焼過程が起こります。

この過程で、酸素とマグネシウムが生成しますが、数年でコア中のネオンは全て消費されます。

 

15Kを超えると、酸素燃焼過程が起こります。

この過程は、約6ヶ月から1年続き、ケイ素が豊富なコアを形成します。あと、リンや硫黄も生成されます。

 

太陽質量の8 - 11倍以上の恒星の場合、27-35Kを超えると、ケイ素燃焼過程が起こります。

ケイ素の燃焼は、燃料を使い果たした恒星の終末プロセスで、この過程はわずか2週間です。

 

ケイ素の燃焼まで進行した恒星は、

内側から、鉄の核、ケイ素の球殻、酸素の球殻、ネオンの球殻、炭素の球殻、ヘリウムの球殻、水素の最外層

からなる、タマネギ状の構造になり、中心以外の各層で核融合が進行します。

 

 しかし、核融合に必要な高温高圧が供給できなくなると、その時点で核融合は止まり、恒星としての元素合成は終了します。

 珪素28と鉄56は、全ての元素の中でも原子核が非常に安定しているため(尚、最も安定な核種はニッケル62です)、

珪素と鉄に変換が終わると、恒星はそれ以上核融合を続けることができなくなり、元素合成は終了します。

 

ケイ素の燃焼は、ヘリウムの原子核を捕獲するアルファ反応によって進行し、連鎖的に新しい元素が作られます。

 

尚、イオウ32、アルゴン36、カルシウム40、チタン44、クロム48、鉄52、ニッケル56など、

ヘリウムの原子核(アルファ粒子)の整数倍である元素を、アルファ元素といいます。

 

ケイ素燃焼プロセスは約1日で終了し、ニッケル56を生成して停止します。

大質量星では、数分でニッケル56(陽子28)がβ崩壊を起こして、コバルト56(陽子27)に崩壊します。

更にコバルト56がβ崩壊を起こして、56(陽子26)に崩壊します。

 

ケイ素の燃焼が完全に完了した恒星は、 恒星は数分で収縮を始めます。

コアの温度と圧力は上昇しますが、新しいエネルギー源がないために収縮は急速に進行し、

数秒で重力崩壊を起こし、ついにはII型の超新星になり、爆発を起こします。

 

太陽程度の大きさの星は、赤色巨星になった後に炭素の合成程度で核融合を止めて白色矮星になり、元素合成を終了します。

更に重く大きい星になると、元素合成は更に進行し、多くの元素が生成されます。

 太陽の8倍以上の質量がある場合、恒星は、超新星爆発を起こします。

この時、中性子捕獲などによってさらに元素が合成されます(超新星元素合成)。

 

 また、太陽より30倍以上の重さになると重力崩壊中に特異点が発生して、ブラックホールが形成されると考えられています。

 

 尚、ビスマス209までの重元素は、漸近巨星分枝星内で、

千年単位もの時間をかけて、中性子捕獲を行うことでも合成されます(Sプロセス( Slow Process ))。

トップ

 

超新星元素合成  恒星内原子核合成

 超新星によって、新たに元素が生成されるものです。

 

 超新星爆発は、現在我々が住んでいる銀河系の中で、100年から200年に1の割合で発生しているようです。

また、平均すると1つの銀河で40年に1回程度の割合で発生すると考えられています・・・結構、ありますね。

 

 超新星は、星の生涯を終える際に行う爆発であり、主に2通りあります。

 

 1つは、白色矮星が、赤色巨星など隣の恒星の物質を吸い上げてチャンドラセカール限界に達して爆発するものです。

 

 もう1つは、質量の大きい恒星が赤色巨星となり、核融合によってニッケル56を合成する段階になります。

 

ニッケル56は、ベータ崩壊を経て56に変化しますが、これは非常に安定です。

 しかし、中心温度が100Kを超えると、鉄の光分解が起こります。

これは、吸熱反応であるため中心の温度が下がり、それにより圧力も下がります。

 圧力が下がると星は収縮しますが、収縮により温度が上がって更に光分解が進みます。

この過程が繰り返されることにより、恒星は重力崩壊します。

 中心部に物質が落下し、原子核に電子が取り込まれて陽子がニュートリノを放出して中性子ができます。

中心に中性子の塊ができて、自身の縮退圧で支えられるようになると、

外層から落下してきた物体は中性子の塊の表面で跳ね返され、恒星は衝撃波により超新星爆発を起こします。

  この時に残った中性子の塊は、中性子星となります。

 

  超新星爆発での原子核合成ですが、

 鉄56より重い核種は、中性子捕獲とベータ崩壊によって作られます。

 一つは、Sプロセスで、ビスマス209までの重元素が合成されます。

 もう一つは、超新星爆発で起きる、R過程( Rapid Process )で、

中性子捕獲の過程を経て、ニッケル(鉄)56以上の原子量の元素が生成されます。

この過程は、1秒から数秒の間に起こります。

 

 超新星爆発は大量のエネルギーを放出し、恒星が発生する温度よりも高温となります。

 このような超高温では、吸熱反応である鉄以上の原子量の元素の合成が可能であり、

原子量245までの元素、カリフォルニウムまでの元素を合成できると考えられます。

 

 しかし、生成された重い核種の多くは不安定で、すぐに崩壊して(鉄56などの安定な)軽い核種へと移行します。

 R過程の生産物は、一部は超新星から放出されますが、

残りは中性子星の残りやブラックホールの一部として使い尽くされると考えられています。

 

その他、Rp過程や、P過程ガンマ過程)でも重元素が生成されます。

 

 このプロセスにより合成された原子核は、2世代の星を構成する原子核となります。

トップ

 

 宇宙線による核破砕

 宇宙線による核破砕は、最も軽い核種の一部を作ります。

 ヘリウム3とリチウム、ベリリウム、ホウ素は、核破砕により生成したと考えられています。

 

・・・太陽系ができる前に、どれほど多くの星が、誕生しては消えていったのでしょう・・・

トップ

 

 

ホーム