プロテオバクテリア・・・ミトコンドリアの起源

 

 

 

プロテオクテリア

 

参考 :リゾビウム、紅色細菌、リポ多糖

 

 

プロテオバクテリアは、真正細菌最大の多様性を持ちます。

 

ミトコンドリアは、アルファプロテオバクテリア綱のリケッチアに近い細菌が起源と考えられています。

 

ペラジバクターは、リケッチア目の中でも最も祖先的な位置から派生する生物です。

長さ、0.37 - 0.89 µm 、直径 0.12 - 0.20 µmと、最小クラスですが、

プロテオロドプシンという、光依存性プロトンポンプの遺伝子も持つようです。

尚、ペラジバクターに感染するウイルスHTVC010P )もあるようです。

 

アルファプロテオバクテリア綱には、

光合成を行うものもあります。

リゾビウム属には、マメ科の根に共生し、窒素固定を行うものがあります。

 

他のプロテオバクテリア綱には、熱水噴出口や、深海に生息するものもあります。・・・

謎が深まるばかりです。

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プロテオバクテリア

真正細菌最大の多様性を持ちます。

窒素固定に関わる細菌など、自由生活性のものも多く含まれています。

 

リポ多糖からなる外膜を持ち、グラム陰性です。

 

鞭毛によって動き回るものが多いですが、不動性のものや、滑走性のものもあります。

滑走性のものとして、粘液細菌という、集合して多細胞性の子実体を形成する独特な細菌があります。

 

通性嫌気性または偏性嫌気性で、従属栄養性が多いですが、例外も多いです。

 

互いに縁遠い、様々な属が光合成を行います(紅色細菌)。

 

下位分類rRNA配列により、7つに大別)

 

アルファプロテオバクテリア綱

光合成性の属の大部分、

C1化合物を代謝する属、

植物や動物の共生体(リゾビウム目など)、

病原体であるリケッチアなどが含まれています。

 

更に、真核細胞のミトコンドリアは、このグループに由来すると考えられています。

 

ベータプロテオバクテリア綱

好気性や通性の細菌からなり、

化学合成無機栄養性(アンモニア酸化をするニトロソモナスなど)や、

光合成性Rhodocyclusや、Rubrivivax属 )のものも含まれています。

 

アンモニアを酸化して亜硝酸を生じるため、様々な植物の窒素固定に重要です。

 

多くは下水や土壌で発見されます。

 

この綱の病原体としては、ナイセリア科や、バークホルデリア属があります。

 

ガンマプロテオバクテリア綱

腸内細菌科、ビブリオ科、シュードモナス科などを含みます。

一部、光合成細菌紅色硫黄細菌)も含まれています。

 

デルタプロテオバクテリア綱

好気性の群や、

子実体を作る粘液細菌、

硫酸還元細菌(デスルフォビブリオ等)、

硫黄還元細菌、があります。

 

その他、

三価鉄還元性のGeobacter

栄養共生性のPelobacterSyntrophusなど、

様々な生理条件を好む偏性嫌気性の群があります。

 

イプシロンプロテオバクテリア綱

湾曲または、ラセン形をした種が含まれます。

 

人や動物の消化管に棲息する共生体(牛のWolinella)、

病原体(ヘリコバクター、カンピロバクター)、

熱水噴出口に住む好熱菌、があります。

 

ゼータプロテオバクテリア綱

深海に生息する鉄酸化細菌、Mariprofundus ferrooxydansのみが記載されています。

 

オリゴフレクスス綱

サハラ砂漠の砂れきから発見されたOligoflexus tunisiensisのみが記載されています。

プロテオバクテリア トッ

 

 

参考

リゾビウム

紅色細菌

リポ多糖

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リゾビウムRhizobium プロテオバクテリア 紅色細菌

窒素固定を行う、グラム陰性の土壌細菌の属です。

リゾビウムは、マメ科の植物の根に内共生します。

 

植物細胞の根粒の中でコロニーをつくります。

空気中の窒素をアンモニアに変換し、

植物のために、グルタミンやウレイド基などの有機窒素化合物を生産します。

植物は、光合成で作られた有機物をバクテリアに供給します。

 

アグロバクテリウム

リゾビウム属のうち、植物に対する病原性を持つものです。

植物細胞に感染してDNAを送り込む性質があります。

 

A. tumefaciens は、

Tiプラスミドという、巨大なプラスミドを持ちます。

その一部であるT-DNAというDNA断片を植物細胞に注入し、

T-DNAは、相同組換えにより、植物細胞のゲノムに挿入されます。

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紅色細菌(狭義。紅色光合成細菌) プロテオバクテリア

光合成細菌のうち、酸素を発生せず、カロテノイドの蓄積により、赤色や褐色を呈するものです。

 

紅色光合成細菌は、紅色細菌のうち光合成能や、光合成器官、光合成色素を有するものです。

 

狭義の紅色細菌は、更に、紅色硫黄細菌紅色非硫黄細菌に区分されます。

 

紅色光合成細菌は、多系統群であるため、一般化は困難ですが、

光合成に関連した特徴は、紅色硫黄細菌でも、紅色非硫黄細菌でも似ています。

これは、光合成能が遺伝子の水平転移によって伝播されたことも一因と考えられています。

光合成的生育を行うのは、嫌気条件下のみです。

 

紅色硫黄細菌は、絶対嫌気性のものが多いです。

 

紅色非硫黄細菌は、通性嫌気性で、

好気条件下では酸素呼吸によって生育できるものが多いです。

好気条件では、光合成色素や光合成に関与するタンパク質の合成は、好気条件下では行われず、

生育環境が嫌気的(酸素欠乏状態)になって初めて合成が開始されます。

 

カロテノイド類の種類や量などによって、紫、赤、橙、褐色など、様々な色調を呈します。

 

光化学反応中心と光捕集系は、内膜上に存在しており、

種によっては内膜を陥入させる等して、光合成に利用できる面積を増やしているものもいます。

 

光合成の際、プロトン輸送が起こりますが、

プロトンが蓄積するのは、内膜と外膜の間の空間です。

 

光化学反応中心キノン型で、酸素発生型光合成における光化学系IIに相当します。

 

反応中心の色素は、バクテリオクロロフィル a ですが、

例外的にB. viridisでは、バクテリオクロロフィル b を用いています。

 

光捕集系は、膜貫通性の LHI LHII を持っています。

 

紅色細菌は、硫黄粒を生じるか否かを基準に2科に分類されていました。

硫黄粒の有無は、光合成の電子供与体として、硫化物イオンを用いるかどうかを反映しています。

 

しかし16S rRNA系統解析によると、狭義の紅色細菌は多系統群で、

多くの非光合成性の細菌からなる、巨大な系統の中に散在しています。

 

ミトコンドリアが含まれるアルファプロテオバクテリア綱の紅色細菌

ロドスピリルム目

ロドスピリルム科 : Rhodospirillum, Rhodocista

アセトバクター科  Rhodopila

 

ロドバクター目

ロドバクター科    Rhodobacter, Rhodovulum

 

リゾビウム目

Bradyrhizobiaceae          Rhodopseudomonas

Hyphomicrobiaceae         Rhodomicrobium, Blastochloris, Rhodoplanes

Rhodobiaceae                Rhodobium

 

好気性光合成細菌

普通の紅色細菌とは逆に、嫌気条件では生育せず、

好気条件で、はじめてバクテリオクロロフィル a や、カロテノイドを合成し、

紅色細菌とよく似た光合成装置を使って、光合成を行う細菌があります。

 

やはり、プロテオバクテリア門の様々な位置に散在しています。

 

アルファプロテオバクテリア綱の好気性光合成細菌

ロドスピリルム目

アセトバクター科  Acidiphilium

 

ロドバクター目

ロドバクター科    Roseobacter

 

スフィンゴモナス目

スフィンゴモナス科: Erythrobacter

 

光化学系

光化学反応中心コアは、L及びMサブユニットによるヘテロダイマーであり、

ほとんどの反応中心色素(スペシャルペアー)は、バクテリオクロロフィル a ですが、

B. viridis では、バクテリオクロロフィル bです。

 

反応中心タンパク質には、

酸化還元活性を持つ分子(バクテリオクロロフィル、バクテリオフェオフィチン、ユビキノン)

が並び、電子移動経路を形成しています。

 

実際電子移動に携わるのは、一方の電子移動経路( A-branch または L-branch )のみで、

 

クロロフィル2量体P870

アクセサリークロロフィルBA

 

フェオフィチンHA

 

ユビキノンQA

ユビキノンQB

の順に、酸化還元活性分子が並び、電子移動経路を形成しています。

 

他方の経路( B-branch または M-branch )では、電子移動は起こりません。

 

キノン間の電子移動反応QAQBには、プロトン移動反応がカップリングしており、

プロトンが、溶液からタンパク質中の複数のアミノ酸残基を経て、QBのカルボニル基へ移動します。

キノン1分子には、カルボニル基が2対存在するため、キノン分子は2回プロトンを蓄えることができます。

つまり、2回の電子移動反応に関わり、最終的にジヒドロキノンQBH2となります。

参考

 

 

リポ多糖 LPS

グラム陰性菌細胞壁外膜の構成成分で、脂質多糖から構成される物質(糖脂質)です。

LPSは内毒素(エンドトキシン)で、他の生物の細胞に作用すると、多彩な生物活性を発現します。

 

LPSの生理作用発現は、宿主細胞の細胞膜表面に存在するToll様受容体 4 ( TLR4 ) を介して行われます。

 

LPSは、リピドAという脂質に、多分子の糖からなる糖鎖が結合した構造をとります。

 

グラム陰性菌細胞壁の一番外側の部分には、外膜という脂質二重膜が存在しており、

LPSは、リピドAの部分が、この脂質二重膜の外層を形成する分子として脂質層に入り込み、

糖鎖の部分が細胞外に突き出す形で、細胞表面に存在します。

 

糖鎖部分は、

コア多糖(コアオリゴ糖)と、

O側鎖多糖O抗原)から構成されます。

 

 

O側鎖多糖は、

3 - 5種類の6炭糖や5炭糖からなる基本構造が、4 - 40回繰り返した構造を持ちます。

O抗原という細菌の表面抗原の本体で、構造は菌株ごとに異なります

O側鎖は、ファージに対する受容体にもなります。

親水性が高いです。

 

コア多糖は、

5炭糖、6炭糖の他に、細菌に独特な7炭糖や8炭糖などから構成される糖鎖です。

O側鎖とは異なり、構造は菌種によってほぼ一定です。

コア多糖は、疎水性の高い糖類からなり、O側鎖部分が短い場合には、細菌表面は疎水性になります。

 

寒天培地上のコロニーは、

細菌表面の親水性が高い場合、表面が平滑で光沢を持つもの( SSmooth )に、

疎水性が高い場合、表面が粗いもの( RRough )となることが知られており、

多糖の構成は、コロニー性状にも影響します。

 

リピドAは、LPSの脂質部分に当たり、

リン酸基が結合したグルコサミン2分子がグリコシド結合したものに、

脂肪酸鎖が複数結合した化学構造をとります。

 

LPSの生理活性の発現には、リピドA部位が重要です。

リピドAの構造中に含まれる脂肪酸鎖は、細菌種により異なります。

 

LPSは、細胞壁から容易には遊離せず、細菌の細胞が融解・破壊されることで遊離して、毒性を発揮します。

そのため、細菌が外に分泌する毒素(外毒素)ではなく、分泌されない内毒素ともいいます。

LPSは熱的・化学的にも安定しており、不活化には250℃で30分間の加熱が必要です。

 

遊離したLPSは、標的細胞の細胞膜に存在するTLR4を介して、作用を発現します。

 

TLRファミリーは、炎症性サイトカインの発現に関与し、自然免疫に重要です。

細胞外ドメインは、ロイシンリッチリピート ( LRR ) という構造を持ちます。

LRRは、ロイシンが規則的に配置されているロイシンリッチモチーフ( LRM の繰り返し構造により構成されます。

細胞内ドメインToll / IL - 1R 相同領域TIRドメイン )と呼ばれ、

IL-1受容体ファミリーに属する分子と相同性を持つ領域です。

細胞内シグナル伝達経路は、

TLR4LPSが結合すると、アダプタータンパク質である、ミエロイド系分化因子88MyD88 )を介して

セリン / スレオニンキナーゼである、IL-1受容体関連キナーゼIRAK )を活性化します。

更に、IRAKの下流にあるアダプタータンパク質、TRAF-6 を介して

炎症反応に関与するNFκB や、

MAPキナーゼファミリー、等の活性化を引き起こし、転写活性を示します。

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