細胞膜・・・膜だけだった?原始生命体
参考 :分泌、イオノフォア、非リボソームペプチド
オパーリンが提唱した化学進化説によると、
高分子有機物が、コアセルベートというミセル化した脂質に包まれ、最初の生命が誕生した、とされます・・・
細胞膜は、細胞の内外をへだてる生体膜です。
これは、単なるリン脂質でできた膜ではなく、膜タンパク質や糖鎖も埋め込まれています。
原核生物にいたっては、エネルギー代謝は細胞膜で行うし、DNAも細胞膜にくっついています・・・
原初の生命体は、もしかすると、細胞膜(と膜に埋め込まれた物質)だけでできていたのでしょうか?(詳細不明)
尚、赤血球は、細胞核など、細胞内小器官がありません。
後、膜タンパクには、非リボソームペプチドという、リボソームを経由せずに合成されるタンパク質もあります・・・
原初の生命体は、現在の代謝の形を確立するまで、いろいろ試行錯誤していたのでしょうね・・・
もちろん、現在も試行錯誤していますが。
細胞の内外をへだてる生体膜です。
細胞膜は、細胞内外を単にへだてるだけではありません。
細胞膜によって、細胞は内部環境を一定に保つことができます(恒常性)。
更に、選択的透過バリアとして機能し、
特定の物質の進入を阻止したり、特異的チャンネルによってイオンなどの低分子を透過させたりする機能、
受容体を介して細胞外からのシグナルを受け取る機能、
細胞膜の一部を取り込んで細胞内に輸送する機能、
など、細胞にとって重要な機能を担っています。
細胞膜を構成する主要な成分は、リン脂質で、脂質二重層を形成します。
細胞膜には、膜タンパク質が存在します。
更に、多くの脂質や膜タンパク質には、糖鎖が結合しています。
細胞膜は、流動性を持ち、脂質や膜タンパクは動いています。
しかし、多くの膜タンパクは、細胞骨格タンパクや、他のタンパクと強く結びつき、細胞膜上の一定の場所に局在しています。
流動性は、膜の構成物質で決まります。
リン脂質を構成する炭化水素が短いほど、
また不飽和度(二重結合の数)が高いほど、
リン脂質の相互作用が低くなり、流動性は増します。
また、細胞膜の脂質分子間に存在するコレステロールが多いほど、流動性は低くなります。
尚、細菌の細胞膜にはコレステロールは含まれません。
細胞膜の外側の膜と内側の膜は、同じではありません。
糖脂質は、外側の膜にしか存在しません。
このような非対称性は、細胞内で膜が作られる時点で生じています。
細胞膜を構成する主な成分です。
リン脂質には頭部と尾部がありますが、
頭部はコリン、リン酸からなり、親水性です。
尾部は炭化水素からなり、疎水性です。
そのため極性を持つ液中では、尾部を内側に、頭部を外側にするように、脂質二重層を形成します。
脂質二重層の例外として、一部の古細菌の細胞膜は、
向かい合ったリン脂質の疏水鎖が連結し、脂質一重層になっているものがあります。
細胞または細胞小器官などの生体膜に付着しているタンパク質分子です。
脂質の中に埋め込まれたり、脂質自体に結合したりして存在します。
タンパク質全体の半分以上が膜と関係しています。
膜タンパク質は、膜との関係の強さによって2つに分類されます
内在性膜タンパク質
常に膜に付着しているタンパク質です。
膜貫通型タンパク質は、膜を完全に貫いています。
タンパク質の膜貫通部位は、βバレルまたはαヘリックス構造をしています。
αヘリックスは、外膜を含め全ての生体膜に存在します。
βバレルは、グラム陽性細菌の細胞壁、グラム陰性細菌の外膜と、ミトコンドリアや葉緑体の外膜にだけみられます。
表在性膜タンパク質
疎水性相互作用、静電相互作用など共有結合以外の力によって、
脂質二重層や内在性膜タンパク質と一時的に結合しているタンパク質です。
内在性のものも、表在性のものも、
翻訳後修飾で脂肪酸、フェニル基鎖、グリコシルホスファチジルイノシトールなどが付加され、
これらがアンカーとなって脂質二重層につなぎとめられます。
膜結合性タンパク質
非リボソームペプチドのようなタイプの、膜と相互作用を持つタンパク質も数多く存在します。
これらは膜貫通型チャネルを形成し、イオノフォアとしてイオンに膜を通過させたり、脂質二重層の表面と相互作用したりします。
これは、分泌タンパク質です。
糖鎖 細胞膜
各種の糖がグリコシド結合によって連結した化合物です。
結合した糖の数は、2から数万まで様々です。
糖鎖は糖同士だけでなく、タンパク質や脂質その他の低分子とも結合して、多様な分子を作り出します。
糖タンパク質や糖脂質は、生体内で重要な生理作用を担います。
アミロースやアミロペクチン、グリコーゲンなどは、
グルコースを多数結合させて、体内でのエネルギー源として保存しやすい形に蓄積したものです。
セルロースやキチンなどは、
丈夫な繊維になるため、動植物の体を構築する素材となります。
糖タンパク質の糖鎖には、
セリンやトレオニンのヒドロキシ基にα結合しているO-グリコシド結合糖鎖と、
アスパラギンのアミノ基にβ結合しているN-グリコシド結合糖鎖があります。
N-グリコシド結合糖鎖は、サイトソルと小胞体で合成され、
オリゴ糖転移酵素 ( OST ) によってタンパク質のアスパラギンに結合します。
この糖鎖には、熱ショックタンパク質のフォールディング に関わっているものもあります(シャペロン)。
O-グリコシド結合糖鎖には、ムチン型糖鎖、プロテオグリカン、糖脂質などがあります。
細胞表面にもシアル酸を含むガングリオシドなどの糖鎖が存在しており、
これらは細胞接着、抗原抗体反応、ウィルスの感染など、細胞のコミュニケーションに重要な役割を担います。
血液型(ABO式)の違いも、糖鎖の構造の差です。
また生理活性を持つ低分子の中にも糖鎖を持つものがあり、
DNAの特定の配置を認識して結合するなどして、その作用を補助しています。
糖鎖の重要な特性は、構造の多様性にあります。
タンパク質・DNAの素材であるアミノ酸や核酸塩基は、一列に並ぶことしかできませんが、
糖は多数のヒドロキシ基が全て結合に活用できるため、枝分かれして複雑な構造を作り出すことができます。
またグリコシド結合には、α・βの異性体があるため、糖鎖の数はさらに増えます。
糖の種類自体も、ペントース、ヘキソース、アミノ糖、ウロン酸類、デオキシ糖など、
バリエーションが多いため、糖鎖の種類は膨大なものになります。
このように、糖鎖は情報を担う分子となっています。
細胞が代謝産物を排出することです。
狭義には、分泌活動を専門的に行う腺細胞が集まって腺を形成し、分泌物を排出することを指し、
体外または体腔に出す外分泌と、
体液に出す内分泌に分類されます。
タンパク質の分泌 膜タンパク質
タンパク質は、最終的にエキソサイトーシスによって細胞外に分泌されますが、そのための特別なメカニズムがあります。
分泌されるタンパク質の多くは、ポリペプチド鎖N末端に疎水性の高いシグナルペプチド配列をもちます。
またポリペプチド全体に 散在するシグナルパッチ(高次構造上は1ヵ所に集まります)の形でラベルされているものもあります。
真核細胞
分泌メカニズムが高度に進化しており、以下のような経過をたどります。
シグナルペプチドをもつタンパク質は、
翻訳が開始されるとリボソームが粗面小胞体に結合し、
このタンパク質は翻訳されながら、Sec61複合体というチャンネルを通して、小胞体内腔に輸送されます。
シグナルペプチドがないタイプは、
翻訳後に類似の膜貫通メカニズムにより、ATPのエネルギーを用いて、小胞体内腔へ輸送されます。
以上のシステムは、ミトコンドリア、葉緑体、細菌の細胞膜にもあり、Sec分泌系といいます。
その後、シグナルペプチドタンパク質は、小胞に包まれてゴルジ装置に移動し、
糖鎖の付加や、
シャペロンによるフォールディング、
開裂による活性化、などの修飾を受けます。
そして、タンパク質は行き先ごとに仕分けされ、
細胞外に分泌されるものは、分泌小胞や分泌顆粒によって輸送され、濃縮されながら細胞膜へ向かって移動します。
最終的に顆粒は、細胞外シグナル(神経細胞で活動電位によってCa2+チャネルが開き、Ca2+レベルが上昇するなど)
に応答して細胞膜と融合し、内容物を細胞外に放出します。
すべての細胞は、常時働く分泌経路(デフォルト経路)を持っていますが、
外的条件や細胞の極性に応じて調節可能な分泌経路を持つ細胞もあります。
尚、低分子化合物も多くの場合、特異的タンパク質に結合して、分泌顆粒内で濃縮されて分泌されます。
原核細胞
細菌の細胞膜(グラム陰性菌では内膜)にも、真核細胞と同様のSec分泌系がありますが、
タンパク質は膜外に直接分泌され、小胞体やゴルジ装置などの複雑なメカニズムはありません。
しかしSec分泌系と別に、特有の分泌メカニズムがあります。
これらは外毒素の分泌や、グラム陰性菌の外膜を通しての分泌などに関与し、
また、鞭毛や線毛の構築にも、類似の機序があります。
生体膜で、特定のイオンの透過性を増加させる能力を持つ脂溶性分子であり、
主に細菌によって生産される抗生物質です。
キャリアーイオノフォア :特定のイオンと結合し、生体膜を通過することでイオンを通過させるもの。
チャネル形成イオノフォア :生体膜を貫通するチャネルを形成することで、チャネル内にイオンを通過させるもの。
生体膜を隔てたイオンの濃度勾配は、生体を維持する上で重要なものであるため、イオノフォアは生体に対して毒物となります。
非リボソームペプチド( NRPs ) 膜タンパク質
微生物や細菌の二次代謝産物の中で、アミノ酸が多数結合している構造のものです。
ペプチド結合を多数持つにも関わらず、リボソームを経由せずに合成されます。
リボソームで合成されるポリペプチドとは異なり、
非リボソームペプチド合成酵素( NRPS )により、アミノ酸から合成されます。
リボソームが、mRNAを設計図としてペプチド鎖を合成するのに対して、
NRPSには設計図がなく、各NRPSにより合成できる分子もあらかじめ決まっています。
非リボソームペプチドは、リボソームペプチドより非常に多様な分子構造を持っており、様々なNRPSにより合成されます。
NRPは環状構造または枝状構造を取ることが多く、
コドンにコードされていないアミノ酸
(D-アミノ酸や、N-メチル化、N-ホルミル化、グリコシル化、アシル化、ハロゲン化、ヒドロキシル化などの修飾を受けたアミノ酸)を含むことも多いです。
同じ配列のペプチドが二量体、三量体となり、非リボソームペプチドを形成することも多いです。
ペプチド鎖が環化されることもあり、オキサゾリンやチアゾリンといった酸化還元可能な分子も合成されます。
また時には脱水素化も行われ、セリンからデヒドロアラニンが合成されます。
他にもNRP合成酵素により、多様な反応・合成が行われています。
非リボソームペプチドは、非常に多様性を持った構造の分子であり、
毒性を持つものが多く、親鉄性を持ち、着色していることが多いです。
非リボソームペプチドの生合成は、
一つ以上の非リボソームペプチド合成酵素( NRPS )により合成されます。
NRPSの遺伝子は、微生物では1つのオペロンに、真核生物では遺伝子クラスター中にコードされています。
NRPSは、1つのアミノ酸導入に対して、1つのモジュールというブロックにより構成されています。
それぞれのモジュールは、ドメインという、NRP合成に必要な様々な役割を持つ部位の集合体によりできています。
モジュール
非リボソームペプチド合成酵素は、以下のモジュールの組み合わせにより構成されています。
このうち開始モジュールと、終結モジュールは、各酵素につきそれぞれ1つ、
伸長モジュールは、合成されるペプチド残基の数だけ存在しています。
開始モジュール :[ F / NMe ] - A - PCP -
伸長モジュール :- ( C / Cy ) - [ NMe ] - A – PCP - [ E ] -
終結モジュール :- ( TE / R )
N末端からC末端へ伸長します。
[ ] は任意、( ) はどちらか一方のみです。
ドメイン
必須
A :アデニル化部位
PCP :チオエステル化及びペプチド移動部位(4'-ホスホパンテテインを含む)
C :縮合部位(アミノ結合形成部位)
任意
F :ホルミル化部位
Cy :環化部位(チアゾリン・オキサゾリン形成部位)
Ox :酸化部位(チアゾリン・オキサゾリン→チアゾール・オキサゾール)
Red :還元部位(チアゾリン・オキサゾリン→チアゾリジン・オキサゾリジン)
E :エピマー化部位(L−アミノ酸→D−アミノ酸)
TE :チオエステル分解酵素による終結部位
R :末端還元部位(チオエステル→アルデヒド・アルコール)
開始段階
まずAドメインで、アミノ酸のカルボン酸がATPにより活性化され、アミノアシルAMPが合成されます。
続いてPCPドメインにより、
同じくPCPドメインに含まれている、4-ホスホパンテテインのセリン部位と、アミノアシルAMP、とがチオエステルを形成し、
アミノ酸が、PCPドメインに結合します。
このときFドメインや、NMeドメインを間に挟むと、
アミノ基に、ホルミル基やメチル基が導入された、修飾アミノ酸が導入されます。
伸長段階
各伸長モジュールにつき、アミノ酸が1つ付加し、鎖が伸長します。
前モジュールまでに伸長されてきたペプチド鎖のチオエステルと、
当該モジュールのPCP部位に結合したアミノ酸のアミノ基が、
Cドメイン上で反応し、アミド結合が形成されます。
これにより、ペプチド鎖が隣のモジュールのPCPドメイン上に移動します。
尚、Cドメインが、Cyドメインに置き換わることがあります。
Cyドメインは、アミド結合形成に加えて、
セリン、トレオニン、システインといったアミノ酸側鎖を、アミド結合を形成している窒素原子と反応させ、
オキサゾリジンやチアゾリジン骨格を導入する、といった役割を持ちます。
ここにEドメインが挿入されると、
L-アミノ酸の立体配置を逆転(エピマー化)させD-アミノ酸が合成され、鎖の伸長に用いられます。
終結段階
TEドメインは、伸長してきたペプチド鎖と、PCPドメイン間のチオエステルを解離させ、ペプチド鎖を切り出します。
その際に、ラクタムやラクトンの形成に伴い、環状分子を生成するTEドメインも多いです。
TEドメインの代わりに、Rドメインが用いられる場合は、
チオエステルが還元され、末端がアルデヒドやアルコールとなることで切り出されます。
修飾など
生成したペプチドは、グリコシル化、アシル化、ハロゲン化、ヒドロキシル化、などの修飾を受けることが多いです。
これらの修飾酵素は、通常NRP合成酵素と複合体を作り、同じオペロンや遺伝子クラスターにコードされています。
4-ホスホパンテテインのアシルCoAの部分が、PCPドメインに結合して初めて合成酵素に活性が生ます。
逆に、アシル部位が、PCPドメインから外れると酵素活性が失われます。
多くのドメインは基質特異性が非常に緩く、A-ドメインでアミノ酸配列を決定しているだけです。
即ち、A-ドメインが、リボソームペプチド合成のコドンに相当する部位に当たります。
非リボソームペプチド合成酵素( NRPS )による生合成の仕組みは、
ポリケチド(ポリケトン鎖からなる化合物)や、
脂肪酸の生合成と類似した部分を持っています。
このため、NRPSの中にはポリケチド合成酵素( PKS )のモジュールを含むものもあり、
アセテートやプロピオネートがペプチド鎖に挿入されます。
NRPSとポリケチド合成酵素が似ているため、
非リボソームペプチドと、ポリケチドとが融合した構造の二次代謝産物も多数存在します。
これはNRPモジュールと、PKモジュールとが連続していることを意味しています。
両酵素のPCPドメインの構造が似ているため、連続反応が可能ですが、縮合機構は全く異なります。