極限環境微生物・・・原始生命の生き残り?

 

 

 

極限環境微生物

深海生物

 

 

  

極限環境微生物は、深海など、想像を絶する環境で生活可能ですが・・・

原始地球の過酷な環境では、これが普通の環境だったのかもしれませんね。

 

生命の起源は、深海のアルカリ熱水孔Russell )という説があります・・・

この説では、プロトン駆動力が重要であるようです・・・

古細菌の高度好塩菌は、バクテリオロドプシンという、膜タパク質を持っていますが、

熱水出孔から出る光エネルギーで、プロトン濃度勾配を形成したのでしょうか?

 

尚、Alkaliphilus transvaalensis( 〜pH 12.5 )等、好アルカリ菌は、水素イオンの代わりにナトリウムイオンを利用します・・・

アルカリだと水素イオンが少ないため、

原始生命は、ナトリウムイオンを利用した化学浸透圧勾配をエネルギーに利用したのかもしれませんね(詳細不明)。

 

後、深海では、ウミユリやシーラカンス等、原始的な形態を持つ生物も生息しています。

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極限環境微生物

極限環境でのみ増殖できる微生物です。

ここでいう極限環境は、

ヒトや、ヒトがよく知る一般的な動植物、微生物の生育環境から逸脱するもの、です。

 

これらの微生物にとっては、逆にヒトの生育環境が極限環境になるかもしれません

 

放射線耐性菌や有機溶媒耐性菌は、これらの環境でのみ増殖できるわけではなく、

むしろ通常条件の方が適しています。

 

極限環境の条件等

酸素分圧

 

高温 :好熱菌

 

高pH :好アルカリ菌

 

低pH :好酸菌

 

高NaCl濃度 :好塩菌

 

高圧力 :好圧菌

 

 

有機溶媒 :溶媒耐性菌

 

放射線 :放射線耐性菌

 

極限環境微生物

 

 

古細菌は、膜構造などから極限環境に有利とされ、

メタン菌(一部好熱菌や好冷菌、好塩菌、高圧菌を含みます。強い偏性嫌気性菌ではあります)を除いて、

全種が1つ以上の極限環境に適応しています。

特に高温や強酸に強く、122 ℃や、pH - 0.06で生育できるものもあります(低温は- 2 ℃、アルカリ側はpH 12まで)。

逆に人間が生活するような環境(好気常温の真水又は土壌)で生育できる古細菌は、一部の未記載種を除き、未発見です。

 

真正細菌も、種類の多さ(種の数は古細菌の20倍以上)から多様な極限環境微生物を含みます。

 

一部の菌類や藻類も、高温や強酸、高NaCl濃度に耐えることができます。

 

これらの微生物の保持する酵素をイクストリーモザイムといいます。

極限環境微生物

 

 

酸素分圧

酸素は好気呼吸における最終電子受容体として用いられますが、同時に酸化力の強い毒素でもあります。

そのため、空気中の酸素分圧では生育不可能な微生物がいます。

 

分類

好気性

通常の20 %酸素存在下で生育可能な生物。

 

狭義には、地球上の空気の酸素存在比でないと生育できない偏性好気性を指します。

 

偏性好気性絶対好気性

1020%酸素存在下で生育可能な生物。

大半の多細胞生物、

一部の偏性好気性細菌や古細菌( Aeropyrum pernix 等)があります。

これらは酸素分圧が下がると、呼吸できなくなります。

 

通性好気性

20%酸素でも、それ以下の酸素分圧または完全嫌気でも増殖を示します。

大腸菌などの腸内細菌、出芽酵母等。

好気性細菌の多くはここに含まれるとされます。

 

微好気性

酸素分圧が210%の環境で至適生育を示します。

 

嫌気性

酸素の非存在下で生育を示す生物。

狭義には、偏性嫌気性を指します。

 

嫌気性生物では、酸素を最終電子受容体としない嫌気呼吸が行われています。

 

高等生物はほとんどいませんが、

一部の寄生生物等では嫌気的に生育するものも存在します。

 

偏性嫌気性

完全無酸素状態でないと生育を示さない生物。

細菌等、微生物が大半です。

極度に酸素を嫌う生物として、鉄細菌、硫酸還元菌、メタン菌等があります。

 

通性嫌気性

嫌気度の高い環境でよく生育する生物。

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温度

温度は、酵素活性の維持など、生化学反応に最も重要なパラメータです。

大半の高等動物では地球の平均気温18℃を中心に、比較的広範囲の温度に対応できますが、

極端な低温、高温条件では、酵素の変性などにより死滅します。

 

分類

 

好冷性

0℃付近でよく増殖し、20℃以上で増殖できません。

低温環境でも化学反応可能な低温性の酵素群や、

生体膜の流動性を保つための高度不飽和脂肪酸等を持ちます。

 

好冷性細菌の多くがここに含まれますが、

一部の高等動物(南氷洋に成育する魚など)などでも、20℃以上での成育が不可能なものも存在します。

 

中温性

2045℃に至適条件を示す生物。

大半の高等動物や腸内細菌が属します。

ヒトにとって、生物の通常状態と考えられる範囲です。

 

好熱性

4560℃に至適条件を示す生物。

一部のカビや好熱性細菌が含まれます。

広義には45℃以上に至適増殖を示す生物群を含みます。

 

高度好熱性

6080℃に至適増殖を示す生物。

好熱性にまとめられることが多いです。

一部のカビや好熱菌が含まれます。

 

超好熱性

80℃以上に至適増殖を示す生物。

大半が古細菌です。

高温に耐えうる強固なタンパク質と生体膜構造を持ちます。

最も高い生育温度は122Methanopyrus kandleri 20087月)です。

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水素イオン濃度( pH )

生化学反応の進行に重要なパラメータです。

酸化還元反応などは、酸塩基触媒によって容易に影響を受けます。

また、極端なpH存在下では、タンパク質の変性が起こります。

 

分類

 

好中性

pH59に至適増殖を示す生物。

大半の高等生物が含まれます。

生理学的条件は、ほぼこの範囲です。

 

好酸性

pH5以下に至適増殖を示す生物。

極端な酸性条件では、生化学反応の調節の乱れやタンパク質の変性がみられますが、

これらの条件に耐える好酸性菌などが含まれます。

 

Picrophilus oshimae ( 〜pH -0.06 )など、pH 0以下の条件で生育する生物(古細菌)も存在します。

 

好アルカリ性

pH9以上に至適増殖を示す生物。

Alkaliphilus transvaalensis( 〜pH 12.5 )などがあります。

 

好アルカリ菌は、水素イオンの代わりにナトリウムイオンを利用しています(pHが高いと水素イオンが少ないです)。

また水素イオンが少ないため、化学浸透圧説に基づくプロトン駆動力形成が困難であり、

独自のアルカリ適応機構を持ったATP合成システムを持つと考えられています。

 

更に、アルカリ条件に耐えうるタンパク質、生体膜脂質や化学浸透圧形成能を持ちます。トップ

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塩濃度(塩分)

塩濃度は浸透圧の維持のために、ある程度の濃度が必要です。

しかし、極端な低張液、または飽和に近い高張液に適応した生物も存在します。

 

分類

 

非好塩性

至適増殖NaCl 濃度が00.2M

ほとんどの高等生物や土壌細菌が含まれます。

 

単細胞生物体で低張液に対応するには、極めて有能な無機イオンポンプが必要です。

中には純水で生育する細菌もみられます。

 

低度好塩性

至適増殖NaCl 濃度が0.20.5M

海洋性の高等生物や細菌の多くが含まれます。

 

中度好塩性

至適増殖NaCl 濃度が0.52.5M

様々な含塩試料から分離される細菌が含まれます。

 

高度好塩性

広義では至適増殖NaCl 濃度が2.55.2M

狭義では古細菌の高度好塩菌ハロバクテリウム綱に属す生物です。

大半が高度好塩性古細菌で占められます。

真正細菌も見つかっていますが、3種のみです。

このような生物では酵素活性に塩を要求することも多いです。

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圧力(静水圧)

増殖パラメータに圧力を有する生物も存在します。

深海に生息している魚や微生物、小動物は高圧力下で良く生育します。

こうした生物は1気圧では正常な生育を示しません。

 

高い圧力( 2000atm以上 )は、高温を与えられたことと同じとされます。

 

また、発見された好圧性生物のほとんどは深海からスクリーニングされたため、

10℃以上で増殖できない好冷性生物でもあります。

 

ただし、Pyrococcus yayanossi 80-107°C15-150MPaで生育 )の様な、絶対好圧性の超好熱菌もいます。

 

好圧性

1気圧以上の圧力条件下に生育至適を持つもの。

 

絶対好圧性

大気圧下では増殖できません。

 

偏性好圧性

500気圧以上の至適増殖圧力を有します。

 

通性好圧性

500気圧の圧力下でも生育できます。

 

耐圧性

1気圧で至適増殖を示すが、ある程度の圧力( 500気圧 )に耐えます。

尚、500気圧というのは便宜的なものです。

 

好圧パラメータを示す生化学的資質の詳細は不明ですが、耐熱性パラメータに似る可能性があります。

しかし、耐熱性を保ちながら好冷性を確保するのは難しいようです。

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有機溶媒

有機溶媒は生物にとっては猛毒であり、

脂質二重層を破壊します。

またタンパク質も、変性して白濁します。

唯一安定なのは核酸のみです。

 

しかし、一部の細菌や酵母などでは、大量の有機溶媒存在下でも増殖可能なものがあります(有機溶媒耐性菌)。

 

有機溶媒をあえて好む生物は現在のところ存在しないとされますが、

有機溶媒耐性菌には有機溶媒を資化するものも存在します。

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放射線

放射線はDNAの変異源です。

 

大腸菌やヒトでは、30グレイの放射線量で死に至りますが、

デイノコッカス・ラディオデュランスは、5千グレイの放射線に対して耐性を持ち、増殖が可能です。

これは、極めて強力なDNA修復機構を所持していると考えられています。

 

古細菌のテルモコックス・ガンマトレランスは、

5千グレイの瞬間的な照射と、合計3万グレイまでのガンマ線に耐える事ができます。

これは、デイノコッカスよりも強いです。

 

放線菌、Rubrobacter radiotolerans P-1は更に強く、

1万グレイのガンマ線に耐え、1.6万グレイの照射でも37%生存します。

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深海生物

深海では、深海魚など表層とは全く異なった形態や生態をもつ生物が多く生息する他、

ウミユリやシーラカンスなど、原始的な形態を持つ生物も生息しています。

 

サクラエビ、ホッコクアカエビ(アマエビ)、タカアシガニ、ズワイガニ、タラ、キンメダイなど、身近な生物もいます。

 

光合成に必要な太陽光は深海まで届かず、植物プランクトンは深海には存在できません。

しかし、水深 1,000 m 程度までは、わずかに日光が届いており、それを感知できる大きな眼を持つものが多いです。

 

深海は高圧ですが、深海生物は体内の圧力が周囲の水圧と同じであるため押しつぶされることはありません。

 

微生物にとっても、深海は過酷な環境であり、深度の増加に伴い数が減少します。

 

光合成を行うシアノバクテリアは、いなくなります。

 

表層ではほとんど検出されない古細菌の割合が増加します

1,000 m 以下で細菌類と古細菌類の検出数がほぼ等しくなります)。

これらは、ほとんどが培養不可能種で、

マリアナ海溝で発見された Moritella yayanosii は、増殖に 500 - 1,100 気圧もの高い圧力を要求します。

 

 

深海では生物群集における生産者を欠くため、浅海での物質生産に依存します。

直接的利用と、間接的利用があります。

 

直接的利用は、深海生物が浅海に浮上して採餌を行うことで、

ハダカイワシなど中深層に生息する多くの深海魚は、夜間により浅い水域に移動して採餌を行います。

 

間接的利用とは、浅海の生物の遺骸や排泄物がデトリタスの状態になって沈み(マリンスノー)、

深海生物の餌として利用されるものです。

 

まれにクジラの死体が深海底に沈み、多くの動物の餌となっています(鯨骨生物群集)。

 

浅海では、光合成が行われますが、同時に無機窒素などの肥料分の消費も激しいです。

それらは消費者や分解者の活動で作られますが、不足気味です。

 

深海では、基本的には生産者が欠如し、消費者と分解者のみからなる生態系が作られています。

それを支えるエネルギーは、浅海での生産に依存しています。

深海では生産者が存在しないため、肥料分は蓄積されます。

 

海水の間での大きな流れはほとんど存在しませんが、

湧昇という、海水が浅海に吹き上がる流れがあり、

そこでは、肥料分の多い海水が供給されるため、非常に豊かな生物相を支えることができます。

 

深海での食物連鎖は、海の表層から降下してくる有機物のみに依存するものに加えて、

浅海の生産物に頼らない独立した生態系も存在します。

この生態系を化学合成生態系といいます。

 

海嶺や海底火山の周囲にある熱水噴出孔では、300 ℃ 以上もの熱水が噴き出しています。

その周囲には熱水中に含まれる硫化水素水素をエネルギー源にして生存する化学合成細菌や古細菌が繁殖しています。

 

これらを体内に共生させるチューブワーム(ハオリムシ)やシロウリガイ、

細菌を餌にするカイレイツノナシオハラエビ、

それらの生物を餌にするイソギンチャク、シンカイコシオリエビ、ユノハナガニ、ゲンゲ、などがあります。

 

生物の生息密度は、沿岸から離れた深海ほど低くなりますが、

熱水噴出孔の周囲は、高密度で生物が生息しています。

 

 

 深海

海面下 200 m より深い海です。区分 海水密度 塩濃度

平均水深は 3,729 m で、深海は海面面積の約 80 % を占めます。

 

深海は、高水圧低水温暗黒低酸素状態など、表層の生物にとっては過酷な環境で、

深海生物は独自の進化を遂げています。

 

海水は、水深 200 m までは自由に混ざり合いますが、

温度躍層をはさんで混ざることはありません。

そのため、ほぼ独立した海水循環システムが存在します。

 

水深数千mの深海でも秒速数 cm の海水の流れがあり、深層流といいます。

 

深層流は、地球規模の熱塩循環(平均 2,000 )を構成しています。

 

後氷期の初期、グリーンランドや北アメリカ氷床の融解によって低密度の淡水が大量に流入し、

北大西洋での深層水の形成や沈み込みを極度に阻害したとされ、

これがヨーロッパでヤンガードリアスイベントを引き起こした可能性があるようです。

深海

 

深海の区分

中深層 200 - 1,000 m

 

漸深層 1,000 - 3,000 m

上部漸深層 1,000 - 1,500 m

下部漸深層 1,500 - 3,000 m

 

深海層 3,000 - 6,000 m

 

超深海層 6,000 m 以深

 

深海帯水深 4,000 - 6,000 m は、地球の表面積のほぼ半分を占めます。

 

超深海帯は、海全体に占める割合は 2 % もありません。

 

世界最深地点は、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵で、海面下 10,920 m ± 10 mです。

深海

 

水温

上部漸深海帯では、水温が急激に降下し、

下部漸深海帯では、更にゆるやかに下降します。

深海帯では、水温はほとんど変化せず、水深 3,000 m 以深では水温は 1.5 ℃ 程度で一定になります。

 

低緯度海域では、水深 200 - 1,000 m 付近で、水温が急激に変化する温度躍層が存在し、

中緯度海域では、暑い時期だけ生まれます。

高緯度海域では、存在しません。

 

水深 300 m 付近まで、混合層という海水が上下に移動できる領域があり、

低緯度海域の赤道直下では 30 ℃ 付近、

中緯度海域は 10 - 20 ℃ 、

高緯度海域は表層から深海まで 2 - 3 ℃ 前後で一定となっています。

 

低・中緯度の両海域では、 1,000 m より深い深海は 2 - 3 ℃ 前後で一定となります。

深海

 

水圧

水深が深くなるほど大きな水圧がかかり、10 m ごとに 1 気圧ずつ増えます

深海

 

海水密度

海水は、塩分など様々な物質が溶けているため、純水より密度は高く 1.024 - 1.028 g/cm3 です。

 

海水密度は、塩分濃度などと共に温度にも影響を受けます。

 

密度も水温同様に緯度と深度で異なっており、

低緯度海域では、水深 300 - 1,000 m 付近で密度が急激に変化する密度躍層が存在し、

中緯度海域では、夏だけ生まれます。

高緯度海域では、存在しません。

 

水深 300 m 付近まで、混合層という海水が上下に移動できる領域があり、

ここでは低緯度海域では 1.024 g/cm3 付近、

高緯度海域は表層から深海まで 1.028 g/cm3強で一定であり、

中緯度海域は両者の中間となります。

2,000 m より深い深海は、1.028 g/cm3強の一定となります

深海

 

塩分濃度

緯度によって異なり、表層近くでは 3.3 - 3.7 % ですが、

深度が深くなると、緯度に関係なく 3.5 % 前後です。

 

北と南の回帰線付近が、最も塩分濃度が高く、

高緯度では薄くなり、特に北極では 3.3 % を下回るまで薄くなります。

赤道付近では 3.5 % 付近となります。

 

水深 300 - 1,000 m 付近で、塩分濃度が急激に変化する塩分躍層があります。

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太陽光

光合成に利用可能な太陽光は、水深数十 m 程度までしか届かきませんが、

水深 1,000 m 程度までは、わずかに日光が届いています。

 

赤い光は、青い光より多く水分子に吸収されるため、10 m より下ではものがすべて青く見えます

400 m を限界にヒトの視覚では知覚できません。

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酸素

水深 600 - 1,000 m 付近には、溶存酸素量が極端に少ない酸素極小層があります。

これは上層から降下してくる有機物を細菌が分解するときに水中の溶存酸素を使うため、

酸素が激減し、生物の姿もまばらになります。

 

ここを過ぎると溶存酸素量がわずかに増え、生物の密度も上がります。

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