細胞骨格・・・細胞の形態維持や運動に関わる、小器官

 

 

細胞骨格

真核生物の細胞骨格 :アクチンフィラメント、中間径フィラメント、微小管

原核生物の細胞骨格 :アクチン様タンパク( MreB ParM SopA 等)、クレセンチン、FtsZ

 

参考 :アクチン、チューブリン、分子クラウディング効果、アナログ、ホモログ

 

 

細胞骨格は、細胞質内に存在する、繊維状の細胞小器官です。

細胞の形態を維持し、細胞内外の運動に重要です。

 

真核生物では、各種膜系の移動や、細胞小器官の配置等にも関係します・・・

原核生物にも存在し、細胞分裂や、細胞極性、等に重要です。

 

アクチンは、ATPにより、

チューブリンは、GTPにより、

重合と脱重合を行い、変化しています・・・

 

転写は、ほとんどアデニンから始まり、

転写終結に関係するρ因子のサブユニットは、ATPアーゼですが、アクチンと関係するのでしょうか?

 

また、翻訳には、GTPが使用されますが、チューブリンと関係するのでしょうか?

尚、高等生物の翻訳装置は、細胞骨格に結合していますね。

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細胞骨格

真核生物の細胞骨格 :アクチンフィラメント、中間径フィラメント、微小管

原核生物の細胞骨格 :アクチン様タンパク、クレセンチン、FtsZ

 

細胞骨格は、細胞質内に存在する、繊維状構造の細胞小器官です。

細胞の形態を維持し、

細胞内外の運動に必要です。

 

細胞内での各種膜系の変形や移動、

細胞小器官の配置、

細胞分裂、筋収縮、繊毛運動等の際に起こる細胞自身の変形を行うのに重要です。

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真核生物の細胞骨格

アクチンフィラメント

中間径フィラメント

微小管

 

細胞骨格は、細胞の構造と形態を保ちます。

アクチンフィラメントと中間径フィラメントは、張力に抵抗し、

微小管は、圧力に抵抗します。

 

アクチンフィラメントと中間径フィラメントは、鉄筋に当たり、

微小管は、鉄骨に相当します。

 

太さは、アクチンフィラメント( 直径59nm )< 中間径フィラメント( 直径812nm )< 微小管( 直径約25nm )。

 

また、細胞質基質にある高分子の、分子クラウディング効果を増加させます。

真核生物

 

 

アクチンフィラメントマイクロフィラメントアクチン様タンパク

直径は59nmで、最も細い細胞骨格です。

2つのアクチン鎖が、より合わさって構成されています。

 

細胞の形を決定しており、細胞質流動や、細胞分裂での収縮に関与します。

 

細胞膜の直下に集中しており、

張力への抵抗

細胞の形態保持、

細胞質突起の形成 (仮足や微絨毛等。ただし機構は異なります)

細胞間や、細胞-基質間の接着、等の役割を果たしています。

 

更に、シグナル伝達や、

細胞質分裂 (特に分裂溝生成時)にも重要です。

 

アクチン・ミオシン共同体は、細胞質流動を形成します。

真核生物

 

 

中間径フィラメント中間フィラメント、10 nmフィラメント クレセンチン

直径812nmで、アクチンフィラメントよりも丈夫な、細胞質中の構成要素です。

アクチンフィラメントと同様に、張力に抵抗することで、細胞の形態を保つ働きがあります

 

中間径フィラメントは、細胞内部の3次元構造を構成し、

オルガネラを固定し、核ラミナやサルコメアの要素となります。

 

細胞間や、細胞-基質間接着にも関わります。

 

ラミン                      :核膜を形成します。

ビメンチン                 :繊維芽細胞等でみられます。

ケラチン                   :皮膚細胞、髪や爪の細胞でみられます。

ニューロフィラメント     :神経細胞に存在します。

真核生物

 

 

微小管 FtsZ

中空な管で、直径は約25nm( 内径は約15nm )。

 

圧力に抵抗します。

 

共通構造としては、α及びβチューブリンが互い違いに結合した、プロトフィラメント13本からできています。

GTPの重合によって、非常に動的なふるまいをします。

 

中心体(微小管形成中心)から伸長します。

 

3つ組み9本(星形)のセットで中心小体を形成し、

2つ組み9本と、中央の2本の微小管(車輪型)のセット( 9 + 2 )で、繊毛や鞭毛を形成します。

 

それぞれの2つ組みは、ダイニンタンパク質によって連結されます。

 

鞭毛と繊毛は、細胞の構造体であり、微小管から構成されるので、これらは細胞骨格の一部と考えることもできます。

 

細胞内輸送(ダイニンやキネシンと協調して働きます。ミトコンドリア等のオルガネラや、小胞を輸送します)

繊毛や鞭毛の軸糸になります。

植物の細胞壁を統合します。

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原核生物の細胞骨格

アクチン様タンパク

クレセンチン

FtsZ

 

原核生物に存在する、繊維性の生体構造です。

 

細胞分裂、防御、形態、細胞極性の決定に重要です。

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アクチン様タンパク アクチンフィラメント

MreB

ParM

SopA

その他MamK・クレンアクチン)

 

MreB

真核生物におけるアクチンアナログと考えられている、原核生物のタンパク質です。

 

MreB とアクチンとの一次構造の類似性は低いですが、

立体構造と、重合して線維を形成するという機能は、非常に似ています。

 

球菌でない原核生物のほとんどが、MreB によって、細胞の形を保っています。

 

細胞膜の直下に、細胞の全長に及ぶ繊維構造からなる、ラセン状のネットワークを形成します。

 

ペプチドグリカン合成酵素の局在や活性に影響を与える作用と、

細胞膜直下で線維構造を形成して、細胞の形態を決定しています。

 

MreB は、カウロバクター・クレセンタスCaulobacter crescentus )で、

細胞分裂の前に、通常のラセン状ネットワークの形態から凝縮し、分裂面の隔壁に環を形成します。 クレセンチン

 

細胞極性のある真正細菌では、極性決定にも重要です。

アクチン様タンパク

 

ParM

構造的にはアクチンに似ていますが、

機能面では、チューブリンに似ています。

 

ParM 両方向に重合し、動的不安定の性質を示します。

どちらの振る舞いも、チューブリンの重合の性質と同じです。

 

R1プラスミドの分配に関わるシステムを構成しています。

ParM は、DNA結合タンパク質である ParR に付加し、

ParR は、R1プラスミドの parC 領域にある直接反復配列に対して特異的に結合します。

この結合が ParM フィラメントの両端で起こり、フィラメントが伸張することでプラスミドが分離されます。

 

以上は、真核生物の染色体分離に相当します。

ParM が、紡錘体中のチューブリン、

ParR が、動原体複合体、

parC が、染色体のセントロメア、に相当します。

アクチン様タンパク

 

SopA

Fプラスミドの分離において、

SopAが、細胞骨格繊維

SopB が、動原体、

Fプラスミドの SopC 配列が、セントロメア、に相当します。

アクチン様タンパク

 

その他

磁性細菌が持つ、MamK等があります。

 

クレン古細菌のテルモプロテウス目が持つ、クレンアクチンは、

アクチンの祖先型とみなされており、機能はMreBと同様です。

アクチン様タンパク 原核生物

 

 

クレセンチン

真核生物の中間径フィラメントアナログです。

中間径フィラメントとの配列相同性が高く、更に、立体構造も似ています。

 

三日月形のバクテリアである、C. クレセンタスCaulobacter crescentus )でみられます。

 

クレセンチンは、creS 遺伝子にコードされます。

creS 遺伝子の塩基配列レベルでは、

サイトケラチン19の配列とは、25% が一致し、40% の領域で相同性が認められます。

核ラミンAとは、24% が一致、40% の領域で相同性があります。

 

クレセンチンは、ラセン状やビブリオ様の細菌の形態を保つ役割もしていますが、機序は不明です。

 

クレセンチン繊維は、直径約 10nm で、真核生物の中間径フィラメントの直径範囲( 8 - 15nm )です。

 

クレセンチンは、原核細胞の長軸方向に、端から端までの連続した繊維の形態をとり、

C. クレセンタスでは、屈曲の内側に位置しています。

 

MreB とクレセンチンは、ともに、C. クレセンタスの形態を保つ上で必要です。

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FtsZ 微小

原核生物の細胞骨格タンパク質です。

真核生物のアクチン・ミオシン収縮環に類似しています。

 

FtsZ の機能は、アクチンと近いですが、

真核生物におけるチューブリンホモログです。

FtsZ とチューブリンでは、一次構造の関係性は弱いですが、立体構造は非常に似ています。

更に、チューブリンと同様、FtsZ の単量体は、GTPの存在下で 、GTP を加水分解して他の FtsZ と重合します。

この機構はチューブリンの二量体化と類似しています。

FtsZは、GTPの存在下で繊維構造を作ります。

 

細胞分裂中にFtsZ最初に分裂位置に来るタンパク質であり、

新たな細胞壁を構成するための他のタンパク質を補充するのに必須です。

 

クレンアーキア及びタウムアーキアを除く、ほぼすべての原核生物

ミトコンドリアや、葉緑体の分裂にも使用されます。

 

細胞分裂時に分裂部位に形成される、Zリングを構成します。

Zリングは、非常に動的な構造であり、伸張・収縮する原繊維の束です。

しかし、Zリングの収縮機構や、いくつの原繊維がリングを構成しているのか等は、不明です。

 

FtsZ は、細胞骨格であると同時に、組織化タンパク質としても機能しており、細胞分裂に不可欠です。

細胞分裂時に、最初に隔壁の構成を行い、

他の細胞分裂関連タンパク質を同所に集める働きを持ちます。

 

尚、 FtsZ は、細胞内共生による細胞小器官の獲得に伴い、

ホモログだけではなく、 FtsZ 自体も真核生物のゲノムにも含まれているようです。

 

シアノバクテリアが持ち込んだとされる、葉緑体型 Fts Z は、

植物の細胞核ゲノムにコードされており、

原核生物の場合と同様に、葉緑体の分裂リングの形成を担います。

 

αプロテオバクテリア由来のミトコンドリア型 FtsZ も、

単細胞紅藻のシアニディオシゾンや、一部の黄金色藻で、報告されています。

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参考

アクチン

チューブリン

分子クラウディング効果

アナログ

ホモログ

 

 

アクチン 細胞骨格 アクチン様タンパク

ラセン状の多量体を形成して、アクチンフィラメントを形成する球形のタンパク質です。

 

細胞質基質内では、アクチンは種間での差異が少なく、非常に保存されたタンパク質で、藻類とヒトの間で5%しか違いません。

 

分子量が約42,000の球形アクチンは、G-アクチンといいます。

G-アクチンが多数重合した糸状の重合体は、F-アクチンといい、アクチンフィラメントになります。

 

アクチンフィラメントは、3種の細胞骨格の中でも最も細く、直径6 - 7nmです。

F-アクチンは、G-アクチンが右巻き2重ラセン構造でつながり、13個( 36nm )程で半周期となります。

 

G-アクチンの重合による成長と、脱重合による消失は、それぞれ特定の片側端部で行われるため、

微小管と同様に、アクチンフィラメントには方向性があり、

成長側を、+端(プラス端)、

消失側を、−端(マイナス端)といいます。

 

G-アクチンの細胞内濃度が、重合反応と脱重合反応を律速しており、

2つの反応が等しくなるG-アクチンの濃度を臨界濃度といいます。

 

臨界濃度は、+端で0.1μM、−端では0.6μMであり、

この間の濃度では、

+端の方が、臨界濃度が低いため重合が進み、

−端では、脱重合進みます。

このため定常状態では+端で伸張し、−端で短縮しています(トレッドミリング)。

 

アクチンは主にATPと結合しますが、ADPとも結合します。

ATPとアクチンの複合体は、ADPとアクチンの複合体よりも速く重合し、遅く脱重合します。

 

このアクチンの重合である核形成の過程は、3つのGアクチン単量体が三量体へ合体する事に始まります。

 

ATPの付いたアクチンは、+端へ結合し、

その後ATPが加水分解されることで、隣のユニットとの結合長が短縮して、繊維は不安定になります。

 

ADPの付いたアクチンは、−端から脱重合し、

ADP結合アクチンの増加により、結合したADPATPへの交換を刺激してATP結合アクチンを増やします。

 

この速い代謝回転が、細胞の動作に重要です。

参考

 

 

チューブリン 細胞骨格 ParM

真核生物の細胞内にあるタンパク質で、微小管や中心体を形成しています。

 

分子量約5万のα-チューブリンとβ-チューブリンがあり、

これらが1個ずつ結合したチューブリンダイマーが直線上に重合し、微小管のプロトフィラメントを構成します。

 

プロトフィラメントが管状に 11 - 16本程度結合したものが、微小管です。

 

チューブリンはGTP結合タンパク質であり、GTPの結合・加水分解により、微小管の伸長と短縮が調節されます。

 

中心体には、γ-チューブリンがあって、微小管形成において重要な役割を演じています。

 

原核生物には、チューブリンと似た分子構造を持つ FtsZ があります。

参考

 

 

分子クラウディング効果 真核生物

タンパク質等の高分子が高濃度にある状態で、溶媒中の分子の性質が変化することです。

高い濃度により、溶媒内の高分子の占有体積が減少し、その結果、活量が増大します。

参考

 

 

アナログ アクチン様タンパク クレセンチン

祖先を異にする、または進化的な関係は不明ですが、同じ機能を担う相似の遺伝子です。

参考

 

 

ホモログ FtsZ

共通の祖先を持つ相同な遺伝子です。

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