小胞体・・・タンパク質や脂質等の合成工場

 

 

 

小胞体 :粗面小胞体、滑面小胞体

 

参考 :シトクロム、シトクロムP450、小胞体ストレス、ユビキチン、プロテアソーム

 

 

小胞体は、真核生物の細胞小器官で、一重の生体膜に囲まれた膜系です。

原核生物にはありません(リボゾームはあります)。

 

核膜の外膜とつながっており、

輸送小胞により、微小管を通じて、ゴルジ体等、他の細胞内小器官や、細胞膜とも連絡しています・・・

膜系は、元々同じ膜だったのでしょうか・・・

イグニコックス属という、古細菌は、

ATP合成酵素を持つ外細胞膜と、

ペリプラズムに、エネルギー代謝系と、(内膜から派生する)小嚢、を持っており、

真核生物と似ているようですね。

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小胞体

粗面小胞体

滑面小胞体

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真核生物の細胞小器官で、一重の生体膜に囲まれた、板状または網状の膜系です。

核膜の外膜とつながっています。

 

粗面小胞体では、

ゴルジ体やリソソーム、小胞体、細胞膜等を構成するタンパク質や、分泌タンパク質が合成されます。

 

滑面小胞体では、脂質が合成されます。

 

その他、

小胞体内では、シトクロムや、シトクロムP450等が局在し、様々な物質の代謝を行っています。

 

カルシウムを貯蔵する役割もあり、シグナルに応じて、Ca2+濃度の調節を行っています。

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 粗面小胞体rER

リボゾームが付着している小胞体です。

リボソーム中にはRNAが多く含まれるため、粗面小胞体は好塩基性に染色されます。

 

粗面小胞体は、核膜の外膜と連続しています。

 

分泌タンパク質、膜タンパク質、リソソーム酵素は、粗面小胞体膜上の付着リボソームで合成されます。

 

リボゾームで合成されたタンパク質は、

小胞体膜の膜貫通タンパク質である、トランスロコン(透過装置)から小胞体内に輸送されます。

 

小胞体内では、生成されたタンパク質の折りたたみや切断、ジスルフィド結合、糖鎖付加等を行い、

タンパク質の正しい高次構造を形成します。

 

その後、タンパク質は、小胞体から出芽する輸送小胞によって、

主にゴルジ体を経由して、他の細胞小器官や細胞膜に輸送されます。

 

正しい高次構造を形成できないタンパク質は、

分子シャペロンが、凝集体形成を阻止し、高次構造形成を試みます。

 

最終的に正しい高次構造を形成できなかった異常タンパク質は、トランスロコンを通じて小胞体外へ出され、

ユビキチン - プロアソーム系によって分解されます。

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 滑面小胞体 sER

リボソームが付着していない小胞体です。

細管状の網目構造をとります。

 

粗面小胞体とゴルジ複合体シス網との移行領域、

粗面小胞体との連続部位に存在します。

 

トリグリセリド、コレステロール、ステロイドホルモン等、脂質の合成や、

Ca2+の貯蔵等を行います。

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参考

シトクロム

シトクロムP450

小胞体ストレス

 

ユビキチン

プロテアソーム

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シトクロム cyt 小胞体

酸化還元機能を持つヘム鉄を含有する、ヘムタンパク質です。

ヘムは、と、ポルフィリンからなります。

好気呼吸に重要である他、

光合成や、嫌気呼吸を行う生物からも発見されています。

 

尚、シトクロムP450は、モノオキシゲナーゼ酵素)であり、シトクロムではありません。

 

膜結合型シトクロムは、

真核生物では、ミトコンドリア内膜、細胞質内膜系等、膜に存在しています。

原核生物では、細胞膜に存在します。

 

植物等光合成を行う生物では、葉緑体、色素顆粒にも存在します。

 

可溶型のシトクロムもあり、細胞質に存在しています。

 

分類

シトクロムa(フォルミルポルフィリン鉄)           : シトクロムa1、シトクロムa3

シトクロムb(プロトポルフィリン鉄)                 :シトクロムb2、シトクロムb5、シトクロムb559、シトクロムb563

シトクロムc(メソポルフィリン誘導体鉄)          :シトクロムc1、シトクロムf

シトクロムd(ジヒドロポルフィリン鉄)

 

役割

シトクロムはヘム鉄を含むため、酸化還元電位が高く、多くは、電子伝達系に存在しています。

 

特に呼吸鎖複合体IIIは、本体がシトクロムの複合体(シトクロム bc1 複合体)であり、

複合体IVでは、シトクロム c を酸化して電子伝達を行います。

 

光合成においても、シトクロムb6 / f 複合体(呼吸鎖複合体III類似)として存在し、同様に酸化還元反応に寄与しています。

 

嫌気呼吸では、硝酸還元硫酸還元等で、電子供与体として機能しています。

 

またヘム鉄にはFe2+(還元型)と、Fe3+(酸化型)が存在し、

これらが可逆的に変換することにより、電子伝達を可能にしています。

 

様々な酸化還元電位を持つシトクロムの存在は、生物体での高いエネルギー効率に寄与しています。

 

更に、ミトコンドリアのシトクロム c は、アポトーシスにも関与します。

参考

 

 

シトクロムP450 P450CYP(シップ)) 

酸化還元酵素ファミリーに属する酵素です。

様々な基質を酸化し、多くの役割があります。

 

細胞内の小胞体に多く、一部はミトコンドリアに存在します。

 

シトクロムとは、構造的特徴や、反応過程で酸化・還元を受ける点で似ていますが、

シトクロムは、一般に酵素でなく、電子伝達タンパク質であり、機能が異なります。

 

肝臓で解毒を行う酵素であり、更に、

ステロイドホルモンの生合成、脂肪酸の代謝や、植物の二次代謝等、様々な反応に関与しています。

 

大腸菌等、一部の細菌を除く、大部分の生物が、この遺伝子を持ちます。

 

シトクロムP450は、約500アミノ酸残基からなり、活性部位にヘムを持ちます。

保存されたシステイン残基水分子が、ヘムの原子にリガンドとして配位します。

基質が酵素に結合すると、水が外れ、酸素が結合できるようになります。

 

NADPH等の電子供与体と、酸素を用いて、基質を酸化します。

 

機能

異物代謝(解毒作用等)

シトクロムP450の基質は脂溶性で、蓄積すると毒になるものが多いです。

基質を水酸化して、排出されやすい水溶性の物質に変えます。

 

コレステロール生合成等

CYP51は、最も基本的な分子種とされ、

多くの生物で、ステロイド生合成の基本となるステロール14α-脱メチル化酵素活性を持ちます。

真菌では、生存に必要なエルゴステロールの合成に関与します。

 

動物のステロイドホルモン合成においても、エストロゲン合成に関わるCYP19アロマターゼ)等があります。

プロスタサイクリン(プロスタグランジンPG I2)等の合成にも関与します。

参考

 

 

 小胞体ストレス

正常な高次構造に折りたたまれなかったタンパク質(変性タンパク質:UP )が小胞体に蓄積し、

細胞への悪影響(ストレス)が生じることです。

 

小胞体ストレスは、細胞の正常な生理機能を妨げるため、細胞には障害を回避し、恒常性を維持する仕組みが備わっています。

 

小胞体ストレスに対する細胞の反応を、小胞体ストレス応答 ( UPR ) といい、情報は小胞体ストレスシグナルによって伝達されます。

 

小胞体ストレスの原因となる変性タンパク質は、遺伝子変異、ウイルス感染、炎症、有害化学物質等により生じます。

変性タンパク質は、小胞体ストレスセンサーIRE1α、ATF6Perk 等)によって感知され、小胞体ストレス応答を誘導します。

 

小胞体ストレス応答は、

翻訳量を低下させることで、小胞体におけるタンパク質の折りたたみを軽減したり、

分子シャペロンの量を増やすことで、折りたたみ機能を向上させたり、

変性タンパク質の除去効率をあげたりすることで、小胞体ストレスを取り除くよう働きます。

 

変性タンパク質が過剰に蓄積し、小胞体ストレスの強さが細胞の回避機能を越えると、

アポトーシス誘導因子が活性化され、細胞死(アポトーシス)が誘導されます。

参考

 

 

ユビキチン

76個のアミノ酸からなるタンパク質で、

異常タンパク質の分解、DNA修復、翻訳調節、シグナル伝達等、様々な生命現象に関わります。

 

真核生物はすべて、ほとんど同じアミノ酸配列をもっています。

 

原核生物では、

古細菌は一部からユビキチンをもつものが発見されていますが、

真正細菌には存在しません。

 

新生タンパク質の約30%は、フォールディングが異常なタンパク質(ミスフォールドタンパク質)とされます。

ユビキチン化は、ミスフォールディングタンパク質や、不要になったタンパク質を、細胞から除去するために重要です。

 

異常なタンパク質は、

まず、hsp90等の分子シャペロンが修復を試みます。

修復が不可能な場合、

小胞体から細胞質に輸送されてユビキチン化を受け、プロテアソームによって分解されます(小胞体関連分解 ( ERAD ) )。

 

また、細胞周期の制御にも重要です。

 

 標的タンパク質に対するユビキチンの付加は、3つの酵素、

ユビキチン活性化酵素 ( E1 )、ユビキチン結合酵素 ( E2 )、ユビキチン転移酵素(ユビキチンリガーゼ) ( E3 ) 、によって行われます。

参考

 

 

プロテアソーム

タンパク質の分解を行う、巨大な酵素複合体です。

プロテアソームは、目的タンパク質を特異的に分解し、細胞内から除去することを目的としています。

 

一方、リソソームは、タンパク質を分解して他の新しいタンパク質を合成するための材料を供給します。

 

プロテアソームは、全ての真核生物と古細菌が有しています。

真核生物の細胞では、細胞質と核内のいずれにも分布しています。

 

26Sプロテアソームは、

プロテアーゼ活性を持つ、筒状の20Sプロテアソームに、

フタのような役割を果たす、19S複合体2つ結合したもので、ダンベル型ともいいます。

 

20Sプロテアソームの両端に、11S複合体がそれぞれ結合したものは、フットボール型といいます。

 

20SプロテアソームCP

α17の7分子から構成されるαリングと、

β17の7分子から構成されるβリングが、

αββαの順に積み重なった、筒状構造をしています。

 

空洞になった部分は、タンパク質分解の場となっており、

β1、β2、β5が、

それぞれトリプシン様、キモトリプシン様、ペプチジルグルタミルペプチド加水分解活性という、異なる触媒活性を発揮します。

 

20Sプロテアソーム単体の状態では、αリングが閉じており、基質が中に入ることはできません。

20S プロテアソーム分子集合は、分子シャペロンにより、正しく形成されます。

 

19S複合体RP PA700

筒状の20Sプロテアソームの両端に結合し、フタのような役割を果たします。

19S複合体は、更に基部( base )と、蓋部( lid )に分けられます。

 

基部は、Rpt16Rpn12の計8分子のタンパク質から構成され、

20Sプロテアソームのαリング開口制御

標的タンパク質のアンフォールディングに関わります。

 

蓋部は、Rpn3,59,11,12の計8分子のタンパク質から構成され、

脱ユビキチン化反応に関わります。

 

基部蓋部のつなぎ目には、Rpn10サブユニットがあり、

ちょうつがいの役割や、標的タンパク質の認識・捕捉に関わります。

 

11S複合体PA28

19S複合体と同様に、20Sプロテアソームの両端に結合する能力を有する8量体です。

ATPase活性を有するサブユニットは含まず、

短いペプチドの分解に寄与します。

 

 

ユビキチンにより標識されたタンパク質をプロテアソームで分解する系は、

ユビキチン-プロテアソームシステムと呼ばれ、

細胞周期制御、免疫応答、シグナル伝達といった、細胞中の様々な働きに関わります。 粗面

 

1. 標的タンパク質が、ユビキチンにより標識されます。

2. 標的タンパク質に結合したユビキチン鎖が、19S複合体に結合します。

3. 標的タンパク質からユビキチン鎖を切り離します。切り離されたユビキチンは再利用されます。

4. 標的タンパク質の立体構造を解き(アンフォールディング)、20Sプロテアソーム内に送り込みます。

5. βリング内部のプロテアーゼ活性により、標的タンパク質は分解されます。

 

尚、オルニチンデカルボキシラーゼは、例外的にユビキチン非依存的に分解されます。

 

細胞周期の制御に関与しているp53も、ユビキチン非依存性の分解経路が存在します。

 

プロテアソームは、細胞周期・シグナル伝達の制御においても重要な役割を果たしています。

 

細胞周期におけるプロテアソームの関与

G1Sの進行には、サイクリンE / CDK 2 が寄与しています。

G1期には、

サイクリンEの発現が上昇して、細胞周期の回転を進めますが、

S期に入ると、

サイクリンEはリン酸化を受け、プロテアソームにより分解を受けます。

 

細胞周期の回転に関与するユビキチンリガーゼとして、APC / C と、SCF があります。

APC / C は、Mの回転に関与し、

SCFは、その他の時期に関与しています。

 

MDM2 は、サイクリン / CDK2の抑制に働くp53の分解に関与しています。

 

NF-κBは、

炎症関連遺伝子の活性化に関与するタンパク質(転写因子)です。

通常 IκB により、核内に移行せず、細胞質に保持されています。

しかし、炎症性刺激や酸化ストレス等の刺激により、IκBがリン酸化されると、

IκBはユビキチン‐プロテアソーム系を介した分解を受けます。

IκBが外れてフリーになったNF-κBは、核内移行した後にDNAとの相互作用により転写を行います。

 

低酸素誘導因子 ( HIF-1α )は、

低酸素状態において誘導されるタンパク質(転写因子)です。

正常酸素状態では、HIF-1αは、プロリン残基が水酸化を受け、プロテアソームによる分解へ導かれます。

 

古細菌のプロテアソーム

既知の古細菌は、全てプロテアソームを持ちます。

 

真核生物と同様、タンパク質分解を担っています。

 

ユビキチンシステムの遺伝子も、一部の古細菌から見出されていますが、詳細不明です。

 

20Sプロテアソームの構造は、真核生物型とほぼ同一です。

ただし、サブユニット構造は、非常に単純です。

 

尚、真正細菌では、

アクチノマイセス目が、古細菌のものに似たプロテアソームを有しています。

アクチノマイセス目は、真正細菌のタンパク質分解システムも同時に備えており、 

真正細菌の中でアクチノマイセス目のみがプロテアソームを持っているのかは、不明です。

参考 トッ

 

 

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