ゴルジ体・・・糖鎖付加工場
ゴルジ小胞と小胞輸送
ゴルジ体の機能
グリコシル化 : N-結合型 ・ O-結合型 ・ GPIアンカー ・ C-マンノシル化
メイラード反応 : 初期段階 ・ 中期段階 ・ 最終段階
ゴルジ体は、真核生物の細胞小器官で、タンパク質等の糖鎖修飾などを行います。
原核生物には、ゴルジ体がないようですが、糖鎖は原核生物にもあります・・・
ゴルジ体の起源は一体何でしょう?
ゴルジ体は、小胞体や、核膜、細胞膜など、他の膜系とつながっています・・・
グリコシル化は、ゴルジ体だけでなく、粗面小胞体でも行われています。
ゴルジ体は細胞分裂時に、全体が数百の小胞に分断されます・・・核膜と似ていますね・・・
尚、グリコシル化は、酵素が必要ですが、
酵素がない場合も、メイラード反応により糖化が起こります・・・
元々糖化は、メイラード反応で行われていたのでしょうか?(詳細不明)
真核生物の細胞にみられる細胞小器官です。
へん平な袋状の膜構造が重なっており、
細胞外へ分泌されるタンパク質の糖鎖修飾や、
リボソームを構成するタンパク質のプロセシングに機能します。
ゴルジ体は、ゴルジ偏平嚢の層が重なって形成されます。
ゴルジ偏平嚢は、直径0.5μmの偏平な袋状の膜構造で、20〜30nmの間隔で層をなします。
ゴルジ体の形態は、様々です。
各膜胞の辺縁部やゴルジ体両面の層は、網目状となっており、
小胞体や、核膜、細胞膜など、他の膜系とつながっています。
多くは、軽く湾曲して、背腹が明確です。
ゴルジ体の分布も様々で、
動物細胞では、核に近接して存在し、中心体付近に位置します。
植物細胞では、独立した細胞小器官として存在します。
小胞体の近くにあることが多く、
小胞体側の網目構造をシス・ゴルジ網 ( CGN )、
反対側の網目構造をトランス・ゴルジ網 ( TGN ) といいます。
ゴルジ体の成層部分は、小胞体側からシス嚢、中間嚢、トランス嚢の三つの部分に分類されます。
成層部分をまとめてゴルジ層板ともいいます。
小胞体側にあたるシス側と、その反対側であるトランス側で、
膜タンパク質の酵素活性などが異なり、役割も分かれています。
ゴルジ体は細胞分裂時に、全体が一旦数百の小胞に分断され、
細胞全域に均等に分布した後、分裂終了後に改めて集合、再構成されます。
ゴルジ体の各層・網間では、
常にゴルジ小胞の生成(出芽)、交換と、取込み(融合)を繰り返しており、
これを通じて各層間の物質の授受が行われています。
同様に、周辺の細胞小器官との物質の授受(特に小胞体-CGN 間)や、
TGN からの分泌小胞、分泌顆粒、リソソームや、エンドソームの形成等も行います。
ゴルジ小胞の交換は、小胞輸送といいます。
小胞輸送の機能としては、小胞体からゴルジ体を通じて細胞内外に分泌される方向が主で、通常の輸送経路といいます。
分泌タンパク質等は、小胞の内腔に取込まれるか、膜タンパク質として輸送されます。
これと平行に逆方向の輸送を行う経路も存在し、返送経路といいます。
小胞体タンパク質が、輸送経路によりゴルジ体へと移行した場合、
ゴルジ体では、小胞体タンパク質に存在する小胞体保留シグナルを認識し、
ゴルジ小胞に集めて返送経路に乗せ、小胞体に返します。
小胞体保留シグナルは、シグナルペプチドの一種で、
ペプチドのC末端に存在するLys – Asp – Glu – coo - 配列で、KDEL配列ともいいます。
実際には、小胞体やCGNの膜タンパク質として存在するKDEL受容体により行われます。
返送される小胞体タンパク質の中には、結合タンパク質があり、
タンパク質としての折り畳みに問題があるペプチドを識別し、結合します。
小胞体からゴルジ体へと誤って輸送された未熟なタンパク質などを、小胞体に送り返します。
小胞の輸送には、
常時一定の速度で行われるバルク輸送と、
外部からの刺激によって始まる調整的なものがあります。
バルク輸送の速度は、粗面小胞体にタンパク質を注入し、その半分の量が細胞外へ運び出される時間で、
1〜3時間程度ですが、ごく短いペプチドでは10分程度と速いです。
分泌小胞は、バルク輸送に、
分泌顆粒は、調整的輸送の時に出現します。
分泌タンパク質や細胞外タンパク質の糖鎖修飾や、
リボゾームタンパク質のプロセシングなど、
小胞体(粗面小胞体)により生産された各種前駆体タンパク質の化学的修飾を行うとともに、
各々のタンパク質を分類し、分泌顆粒、リソソームまたは細胞膜に、それぞれ振り分ける働きをもちます。
また、分泌顆粒そのものの生成(ゴルジ小胞)も行い、細胞外へ分泌します。
更に、脂質の輸送も行っているようです。
各層の機能と特徴
CGN : リソソームタンパク質にある糖鎖のリン酸化、小胞体タンパク質の選別・回収
シス嚢 : マンノースの除去。
中間嚢 : マンノースの除去、N-アセチルグルコサミンの付加。N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼI、NADPアーゼ
トランス嚢 : ガラクトースの付加。Galトランスフェラーゼ、チアミンピロフォスファターゼ、硫酸化、リン酸化
TGN : N-アセチルノイラミン酸の付加。タンパク質の選別。ジアリルトランスフェラーゼ、酸性ホスファターゼ、H+ポンプ
タンパク質の修飾
小胞体から送られてきたタンパク質に糖鎖を付加します。
付加は糖残基1つずつ行われ、2〜10個の付加が行われます。
タンパク質の親水性を高めるのが目的とされます。
小腸で、タンパク質に脂質を付加し、リポタンパク質の形に変換します。
他の細胞への脂質輸送を行う際に有用とされます。
多糖類の合成
粘液の分泌の際に必要な、ムコ多糖類の合成を行います。
植物細胞では、細胞壁の形成に必要な多糖類である、セルロース、ヘミセルロース及びペクチンの合成も行います。
低分子化合物の分泌
神経細胞での、カテコールアミンの分泌に関与しています。
タンパク質の選別
主にTGNで、細胞内外へと輸送されるタンパク質の選別が行われます。
グリコシル化 : N-結合型 ・ O-結合型 ・ GPIアンカー ・ C-マンノシル化
メイラード反応 : 初期段階 ・ 中期段階 ・ 最終段階
グリコシル化(糖鎖付加)
タンパク質または脂質に、糖類が付加する反応です。
この反応は、細胞膜の合成や、タンパク質分泌における翻訳後修飾の重要な過程の1つで、
多くは粗面小胞体で行われます。
グリコシル化は、メイラード反応とは対照的に、酵素によって管理されています。
グリコシル化には、N-結合型グリコシル化と、O-結合型グリコシル化の2つのタイプが存在します。
アスパラギン側鎖のアミドのN原子への付加は、N-結合型グリコシル化、
セリンとトレオニン側鎖のヒドロキシ基のO原子への付加は、O-結合型グリコシル化です。
多糖類鎖は、標的のタンパク質の様々な機能を発現します。
多糖類がアスパラギンのアミドに結合されることによって、
タンパク質が安定となり、糖タンパク質を分泌します。
グリコシル化は、細胞間の接着にも関係します。
グリコシル化の共通点。
グリコシル化は1つの酵素で起こります。
供与体分子は、ヌクレオチドに活性化された糖です。
過程は、特定の領域で行われます。
真核生物のタンパク質の折りたたみにとって重要です。
この過程は、真核生物と、多くの古細菌で起こりますが、ごく稀に真正細菌でも起こります。
N-結合型タンパク質糖鎖では、14糖鎖の前駆体は、標的タンパク質のポリペプチド鎖のアスパラギンへ付加されます。
前駆体の構造は、一般的な真核生物では、
3分子のグルコース、
9分子のマンノース、
2分子のN-アセチルグルコサミン、を含みます。
この複合体は、キャリアー分子であるドリコールリン酸に結合して、ポリペプチド鎖の適した位置へ運搬されます。
N-結合型糖鎖には、主に高マンノース型糖鎖と、複合型糖鎖の2種のタイプがあります。
高マンノース型糖鎖は、2分子のN-アセチルグルコサミンと、多数のマンノース残基からできています。
複合型糖鎖は、多種の糖と、2分子より多くのN-アセチルグルコサミンを持ちます。
タンパク質は、異なる部分で両方の型のグリコシル化ができます。
糖鎖が高マンノース型糖鎖か、複合型糖鎖かどうかは、
ゴルジ体の糖タンパク質に影響を受けやすいため、それに依存すると考えられています。
オリゴ糖鎖は、オリゴ糖トランスフェラーゼ( OST )によって、
トリペプチド配列がAsn - X - SerまたはAsn - X - Thrのアスパラギン残基に結合されます(Xはプロリン以外のアミノ酸)。
この配列は、シークオン配列として知られます。
結合後、タンパク質は正確に折りたたまれ、3つのグルコース残基は鎖から除去され、
タンパク質は小胞体から運び出されます。
生成した糖タンパク質は、余分なマンノース残基を除去するゴルジ体へ輸送されます。
十分に成長した高マンノース型糖鎖(N-結合型オリゴ糖)は、5〜9分子のマンノース残基を含んでいます。
さらに、マンノース残基が除去され、3分子のマンノースと、2分子のN-アセチルグルコサミン残基を含む核構造へ誘導し、
ガラクトース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、フコース、シアル酸で延長されると、複合型糖鎖となります。
O-N-アセチルガラクトサミン ( O-GalNAc )
O-結合型グリコシル化は、タンパク質処理の後期段階にゴルジ体で起こります。
これは、UDP-N-アセチル-D-ガラクトサミン:ポリペプチド N-アシルガラクトサミニルトランスフェラーゼによる、
セリンまたはトレオニンへの、N-アセチルガラクトサミンの付加反応で、
他の炭水化物(例えばガラクトースやシアル酸)がその次に続きます。
この過程は、グリコサミノグリカン鎖( GAG )の付加を含む、プロテオグリカンにとって重要です。
それらの付加は、通常はセリンO-糖タンパク質で、
2つの主な機能のうち、1つの機能を持つと考えられています。
1つの機能は、細胞外マトリックスを形成するための分泌作用で、
プロテオグリカンなどにより、細胞同士を接着します。
もう一つは、粘膜の分泌作用で、炭水化物が高濃度になった、粘液を分泌します。
O-フコース
ノッチタンパク質のEGF様反復配列のコンセンサス配列が、-C2-X-X-G-G-S/T-C3- の場所に付加します。
C2とC3は、それぞれ2番目と3番目に保存されたシステイン、
Gは、グリシン、
S/Tは、O-フコースが結合するセリン/トレオニン、
Xは、任意のアミノ酸です。
この反応は、GDP-フコースタンパク質O-フコシルトランスフェラーゼ1( POFUT1 )と
GDP-フコースタンパク質O-フコシルトランスフェラーゼ2( POFUT2 )、の2つの酵素で行われます。
O-フコースには、順番にN-アセチルグルコサミン( GlcNAc )、ガラクトース、シアル酸の3つの単糖が結合します。
トロンボスポンジン反復配列では、グルコースが1つ付加します。
2種類のフコシルトランスフェラーゼは、小胞体に配置されており、
グリコシルトランスフェラーゼは、ゴルジ体に配置されています。
O-グルコース
ノッチタンパク質のEGF様反復配列のコンセンサス配列が、-C1-X-S-X-P-C2- の場所に付加します。
C1とC2は、それぞれ1番目と2番目に保存されたシステイン、
Sは、O-グルコースが付加するセリン、
Pは、プロリン、Xは任意のアミノ酸です。
また、O-グルコースにはα1,3結合で1〜2個のキシロースが結合しています。
O-N-アセチルグルコサミン ( O-GlcNAc )
O-GlcNAcトランスフェラーゼによって、セリンまたはトレオニンへ付加されます。
O-GlcNAcは、セリンとトレオニンに生じますが、
セリン/トレオニンには、リン酸化も起こります。
セリン/トレオニンにリン酸化が起こるとO-GlcNAc修飾は生じず、
逆にO-GlcNAcが現れるとリン酸化は起こりません。
つまり、リン酸化とO-GlcNAcは拮抗関係にあります。
これはリン酸化/脱リン酸化が、細胞内シグナルの調節になるため、非常に重要です。
GPIアンカー(グリコホスファチジルイノシトール)
真核細胞の細胞膜の外面に、様々なタンパク質をつなぎ止める基です。
膜貫通タンパクを膜に固定するペプチドドメインも同じ役割を持っています。
これにつなぎ止められるものには、酵素、受容体、免疫系タンパク質、認識抗原などがあります。
GPIアンカーは、
ホスファチジルイノシトールに、N-アセチルグルコサミン残基とマンノース残基3分子が線状にグリコシド結合し、
非還元末端のマンノースには、ホスホエタノールアミンがリン酸エステル結合し、
そのアミノ基には、タンパク質のC末端がアミド結合した構造をしています。
タンパク質と結合したGPIアンカーは、糖タンパク質と同じように細胞膜の外面にあります。
これは、GPIアンカーがゴルジ体から放出された分泌小胞の膜の内面にあり、
それが細胞膜まで運搬されると、小胞の内膜が細胞膜の外面になるように融合するためです。
GPIアンカーと結合する前のタンパク質は、C末端側に20〜30の疎水性アミノ酸残基(シグナルペプチド)を持っています。
これはGPIアンカーと結合する時に除去されます。
GPIアンカーと結合したタンパク質は、
後にホスファチジルイノシトールに特異的なホスホリパーゼによって処理されると、細胞膜から切断されます。
タンパク質との結合は、粗面小胞体で起こり、タンパク質は膜融合で細胞膜の外側を向きます。
マンノースは、トロンボスポンジンタンパク質のトリプトファンへ付加します。
糖が、反応しやすい窒素や酸素ではなく、炭素へ結合し、
アスパラギン/セリン/トレオニンではなく、トリプトファンに結合する、例外的な修飾です。
アミノカルボニル反応の一種で、非酵素的反応です。
還元糖と、アミノ化合物(アミノ酸、ペプチド及びタンパク質)を加熱した時にみられる、
褐色物質(メラノイジン)を生成します。
メラノイジンは、酸素や窒素を含む、多様な高分子化合物からなる混合物です。
それ自身がフリーラジカルですが、同時にラジカル・スカベンジャーとしての作用も持ちます。
中性〜塩基性で、褐色色素の生成が促進されます。
反応中間生成物から分岐して、ストレッカー分解反応へと向かう経路もあります。
この反応で、アルデヒドや、ピラジン(ピリミジンとピリダジンの異性体。)を生成します。
初期段階
アミノ化合物と還元糖が縮合し、シッフ塩基という窒素配糖体を形成します。
シッフ塩基の二重結合(-N=C-)は転位し(アマドリ転位)、
エノール形の生成物(1,2-エナミノール)を生じます。
1,2-エナミノールは、互変異性化したケトン型構造との間で平衡状態となっています(ケト-エノール互変異性)。
生成物は、還元性を示す、反応性の高い物質です。
中期段階
アマドリ転位生成物が、脱水反応などを経て分解していく過程です。
生成物は、非常に強い反応性を持ちます。
最終段階
アマドリ転位生成物などの反応中間体や生成物と、
各種アミノ酸やペプチド、タンパク質などが重合してメラノイジンを生成する反応ですが、詳細は不明です。