脊索動物・・・骨と脳とえらの意外な関係

 

 

脊索動物    

脊索        (脊椎)

神経管     ・脊髄

鰓(えら)   胸腺副甲状腺

咽頭弓     : 顎

 

参考 : 甲状腺、甲状腺ホルモン、カルシトニン、パラトルモン

 

 

脊索動物は、ヒトを含む脊椎動物と、原索動物を合わせたものです。

棘皮動物を、起源とするようです。

 

脊椎動物の特徴は、脊索神経管鰓裂、ですが、

脊索は、脊椎動物では、脊椎骨。正確には、体節から発生して、脊索と置き換わります)

神経管は、中枢神経系と脊髄

鰓裂は、えらになります・・・

 

骨と脳とえら・・・一見、無関係にみえますが・・・

 

脊索は、神経系を誘導する形成体で、神経管を誘導します。

ヒトの脳では、神経管から終脳胞が発達し、将来の大脳になります。

 

は、脳の保護に加えて、赤血球(呼吸)リンパ球(免疫)産生カルシウムの貯蔵、にも関係しています。

 

神経管からは、神経堤細胞が、将来の咽頭にあたる領域に遊走して、咽頭弓を形成します。

咽頭弓は、鰓裂の間にあり、顎口類第1咽頭弓は、(あご)となります。

尚、えらは、プランクトン等をろ過し、食物として消化管に取り込む働きもあります・・・

それで、顎となったのでしょうか?

 

ヒトの咽頭弓は、嚥下の他、聴力、発声、表情にも関わります・・・

「ことば」に関係する、大脳のブローカ野とウェルニッケ野は、

音を認識するだけでなく、顔面、舌、口唇、喉頭の筋肉を制御する機能も持ちます・・・

咽頭弓との関わりが深そうですね。

 

鰓裂は、呼吸ガス交換)以外にも役割があり、

陸上動物では咽頭嚢となり、胸腺や、副甲状腺に分化します・・・

胸腺は、免疫系に、

副甲状腺は、カルシウムイオン濃度の調節に関係します・・・

 

胸腺は、T細胞の分化や成熟等、免疫系に関わります。

ちなみに、顎口上綱で、ニューロンの髄鞘化と、獲得免疫システムを持つようになりました・・・

神経と免疫の進化は、同じ時期ですね。

免疫グロブリンをもつのは、軟骨魚類以上の脊椎動物のようです。

 

尚、より原始的な免疫とされる自然免疫は、細胞膜表面に存在するToll様受容体 4 ( TLR4 ) を介して行われます。

(自然免疫系は、植物にもあるようなので、少なくとも真核生物の起源あたりまで、さかのぼれそうです。)

TLR4は、グラム陰性の、細胞壁外膜の構成成分である、リポ多糖 LPS を認識して作用します。

LPSは、脂質多糖から構成される物質(糖脂質)です。

 

副甲状腺は、魚類のえらの、イオン濃度を調節する機能が、引き継がれていますが・・・

魚類のえらにある、塩類細胞には、体と水の間での浸透圧差に対抗して、NaイオンやClイオンを能動輸送します・・・

神経細胞の機能には、ナトリウムやカリウムといったイオンが重要ですが・・・塩類細胞は、実は神経細胞の祖先細胞???

 そういえば、ナトリウムとカリウムは、同じ1族元素ですね・・・何か関係するのでしょうか??

 

ちなみに、記憶や学習に関わる、NMDA型グルタミン酸受容体は、カルシウムイオンも重要です・・・

普段は、細胞外からのマグネシウムイオンで、活動を阻害されているのはなぜでしょう・・・

カルシウムとマグネシウムも、同じ2族元素というのは興味深いですね。

尚、カルシウムは、細胞内では、小胞体ミトコンドリアに蓄えられており、細胞内の情報伝達に重要です。

 

しかし、神経伝達物質に、なぜ、グルタミン酸を選んだのでしょうか・・・

グルタミン酸は、α-ケトグルタル酸アンモニアからも合成されます・・・

生命に有害なアンモニアを細胞外に排出するついでに?情報伝達に利用したのでしょうか???

ちなみに、魚類のえらには、アンモニア排出の役割もあります。

 

そういえば、α-ケトグルタル酸は、クエン酸回路の一員です・・・

この回路は、ミトコンドリアにあります・・・

神経細胞とミトコンドリアは関係するのでしょうか?

そういえば、塩類細胞には、ミトコンドリアが多く含まれていますが、何か関係するのでしょうか???

 

と、骨と脳とえらは、密接に関係していますね。

 

 

後、脊索動物には、内柱があり、脊椎動物では、甲状腺になっています。

甲状腺からは、甲状腺ホルモンや、カルシトニンが分泌されます。

甲状腺ホルモンは、チロシンヨウ素から生成されます・・・

 

チロシンは、メラニン色素カテコールアミンの前駆体でもあります・・・

 

ヨウ素は、ハロゲンで、他に塩素があります・・・特徴といえば、ヨウ素は常温では固体ということでしょうか?

また、5周期の元素でもありますが、この周期の元素で、他に生体で使われているのは、モリブデンぐらいですが・・・

モリブデンを含む酵素には、亜硫酸酸化酵素やニトロゲナーゼの他、

キサンチンオキシダーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、等がありますが・・・よくわかりません。

なぞは、深まるばかりです。

 

尚、カルシトニンは、パラトルモンと拮抗します。

 

 

その他、脊索動物には、筋節もありますが、詳細不明です。

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脊索動物

ヒト等、脊椎(背骨)をもつ動物である脊椎動物と、

それと近縁な動物群である、原索動物(ナメクジウオ等の頭索動物と、ホヤ類等の尾索動物(被嚢動物))、

を合わせたものです。

 

分類上は、脊索動物門、として取り扱われます。

 

内骨格を獲得した動物群で、知能・スケールの両面で、非常に進化した動物群です。

 

分子進化的な解析では、

尾索動物と脊椎動物が姉妹群、

頭索動物は、それらの祖先的な系統関係となることが示されています。

 

石灰索動物は、カンブリア紀中期〜デボン紀中期の海成層から発見される化石生物であり、棘皮動物に非常に近縁です。

 

脊索動物と棘皮動物の、胚の体腔発達における類似性から、

脊索動物が、棘皮動物を起源とすると示されており、

石灰索動物は、その化石証拠とされています。

 

石灰索動物である、スティロフォラの仲間は、棘皮動物のような石灰板で覆われた、頭部と尾部を持ちます。

頭部には、、肛門、口、生殖腺が存在し、内部にはが存在します。

尾部前端には、神経索と脊索があります。

 

以上より、石灰索動物は、脊索動物門の一亜門と考えられています。

 

三胚葉動物は、前口動物と、後口動物に分けられますが、

脊索動物は、後者に含まれます。

 

現在は、半索動物と棘皮動物が、単系統であり、

脊索動物は、その姉妹群ということで、共通見解が得られています。

 

特徴

体の構造は、左右対称です。

 

単一の背側神経管(体の背側にある中空の神経索。上皮性)があります。

脊椎動物では、ここから中枢神経系(と脊髄)が、分化します。

 

神経管の腹側に、脊索があります。

 

咽頭部に、鰓裂があります。

ただし、陸棲の脊椎動物では、鰓裂は、発生時に咽頭裂または咽頭嚢としてみられるのみで、 

その後は、頭頚部の諸器官(副甲状腺胸腺等)になり、成体ではみられません。 咽頭弓

 

咽頭部の腹側に、内柱と呼ばれる器官があります。

脊椎動物は、内柱が二次的に甲状腺になっています。

 

筋節myomereV字型の筋肉が胴から尾にかけて並び、節状に連なったもの。発生時に現れる筋節myotomeではありません))をもちます。

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脊索

脊索動物でみられる、柔軟な棒状体です。

 

中胚葉由来の細胞から構成され、胚の初期の軸を規定します

 

原索動物では、成体まで維持するものがあります。

 

脊椎動物では、胚発生の過程において、

体節から発生した脊椎骨が、脊索に置き換わるために、脊索は、消失することも多いです。

 

ヤツメウナギ等では、脊椎が形成された後、成体でも残ります。

 

脊索の出現は、神経管と同期しています。

神経溝の腹側の内胚葉は、軸方向に肥厚します。

この肥厚は溝を作り、その縁が近づいていき、内胚葉から分離して、細胞の棒状の塊(脊索)とります。

 

脊索は、神経系を誘導する形成体と考えられています。

 

脊索は、始め神経管と卵黄嚢の内胚葉の間にあります。

しかしすぐに、内側へ成長し、それを囲む中胚葉によって分離されます。

 

神経管と脊索を囲む中胚葉から、頭蓋骨と脊椎、そして脳膜と脊髄が発生します。

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脊椎動物において、骨格を構成する組織です。

 

進化の過程では、カルシウム調節器官として発達してきたようです。

 

脊椎動物では、胚発生の過程で、脊椎骨が、脊索に置き換わります。

脊椎の中に、脊髄があります。

 

骨膜骨質骨髄からなります。

 

体の保護や支持、運動、         

栄養(カルシウム等)の貯蔵、  副甲状腺

血球(赤血球・リンパ球等)産生、胸腺

等の役割があります。

 

主成分は、リン酸カルシウムです。

骨質には、無機物、

骨髄腔には、脂肪が貯蔵されています。

 

骨の有機成分は、主にタイプIコラーゲンです。

タイプIIは、軟骨に分布します。

 

骨髄の骨髄幹細胞から、血球が産生されています。

 

破骨細胞骨芽細胞の働きによって、骨は吸収と再構築が行われ、一定の量に保たれています(骨のリモデリング)。

 

骨の再生産、カルシウムの保持・放出は、パラトルモン等によって制御されます。

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神経管 ヒトの脳 咽頭弓

脊索動物発生過程で出現する、神経系の原基です。

 

発生初期の神経胚に出現し、

胚の背面の外胚葉が溝状に陥没(神経板)し、

溝の両側が上に伸びて(神経溝)互いに接触し、

そのまま筒状に閉じて、管状構造を形成したものです。

 

脊索動物の脳脊髄といった中枢神経系は、神経管を出発点として発生します。

そのため、成体の中枢神経は、

表面が、神経細胞の集中した灰白質

下層が、神経線維からなる白質からなりますが、

その内側に、脳室のような空洞を持ち、筒状の基本構造を残しています。

 

また、末梢神経は、神経管から伸び出した細胞が、全身に伸び進んでいくことで形成されます。

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無脊椎動物の脳

脊椎動物の脳

ヒトの脳

 

動物の頭部にある、神経系の中枢です。

 

狭義には、脊椎動物のものを指しますが、

広義には、無脊椎動物の頭部神経節も含みます。

 

脊髄とともに中枢神経系をなし、

脳は、運動・知覚等神経を介する情報伝達の最上位中枢です。

 

ヒトの感情や思考にも関わると考えられています。

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無脊椎動物の脳

扁形動物門以降の生物は、集中神経系、つまり神経節(神経の集まった部分)を(しばしば頭部に)持ちます。

 

頭部神経節が、他の神経節に比べて顕著に発達している場合、脳神経節)といいます。

 

節足動物や頭足類では、非常に発達しており、機能的にも脊椎動物の脳と遜色ない程度に分化しています。

 

一方、無脊椎動物の脳神経節は、

系統発生的には、原索動物を除いて、脊椎動物の脳と直接の関連はないことに注意が必要です。

 

扁形動物プラナリア等)

かご状神経系をもち、最前部に発達した神経節としての、脳があります。

 

尚、nou-darakeという、FGF受容体様タンパク質は、頭部以外での脳分化を抑制する機能を持ちます。

 

昆虫

昆虫の脳は、大きく、視葉と、中央脳の2つに分かれます。

 

視葉は、複眼の直下にある構造であり、視覚情報を処理します。

 

中央脳は、更に、前大脳、中大脳、後大脳の3つの部分に分かれます。

これらは、はしご状神経系の、単独の神経節に由来する領域です。

前大脳は、キノコ体、中心複合体等、感覚情報の高次処理に携わると考えられている領域(ニューロパイル)も含みます。

キノコ体は、多くの昆虫で嗅覚情報処理を担っていますが、ミツバチ等では、視覚系の神経経路も入射します。

 

中大脳は、触角の嗅覚受容細胞で受容した嗅覚情報を一次的に処理する触角葉と、

触角からの機械感覚を処理する領域を含みます。

 

後大脳は、食道下神経節を含む領域であり、一部の昆虫では味覚情報が入射します。

中大脳と後大脳の間には、食道孔が存在し、食道が両者の間を貫いています。

 

昆虫の中枢神経系には、脳の他、胸腹部神経節と、両者をつなぐ神経束が含まれます。

 

頭足類

頭足類の脳は、食道上塊と、食道下塊2つに分けられ、両者の間には食道が存在します。

巨大な視葉では、視覚情報処理の多くを行っています(脳とみなされないこともあります)。

 

原索動物

脊椎動物と同様の管状神経系をもち、神経管から分化する、神経索が存在します。

 

神経索は、中枢神経系に含まれ、感覚細胞は最前部に集中し、脳室と呼ばれるものが存在(ナメクジウオ等)しますが、

明確な脳構造は、ホヤの幼生等を除いてみられません。

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脊椎動物の脳

神経管から発生します。

 

尚、脳は、頭蓋骨で保護されています。

 

脊椎動物の系統樹上の比較では、

脳全体において大脳の占める割合が、新しい世代の生物ほど大きいという傾向があります。

 

特に、ヒトの脳は、大脳が大きく、しかも大脳皮質が大小の溝(脳溝)によって非常に面積が広いです。

 

脳溝と、それに挟まれた脳回の区別がある大脳(有回脳)は、哺乳類の中でも霊長目等、ごく一部しかありません。

 

哺乳類のうち、霊長目の進化の過程で、脳容積が拡大しました。

 

ヒト科の動物種(絶滅種も含む)の脳容積

種類

分類

脳容積(ml

オランウータン

ヒト科

411

ゴリラ

ヒト亜科

500

チンパンジー

ヒト族

394

アウストラロピテクス・アフリカヌス

ヒト亜族

441

ホモ・ハビリス

ヒト属

640

ホモ・エルガスター

ヒト属

700-1100

ホモ・エレクトス

ヒト属

1040

ホモ・ハイデルベルゲンシス

ヒト属

1100-1400

ホモ・ネアンデルターレンシス

ヒト属

1450

ホモ・サピエンス・サピエンス

ヒト属

1350

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ヒトの脳

神経管から発生します。

 

脊髄延髄、中脳、橋では、

中心管は、神経管内であまり発達せずに、原型をとどめたままです。

 

一方、先端部の終脳では、

発生の間に中心管は、複雑に拡大して広い脳室を形作り、

皮質も、複雑に隆起や回転運動を起こしながら変形して、各頭葉が形成されます。

 

初期の脳形成は、中心管の前方がふくらんで形成される、前・中・後脳胞3脳胞から出発します。

先端部の前脳胞は、

更に前方から、終脳胞と間脳胞とに分かれます。

 

終脳胞は、以下のように、著明に変化します。

 

上方への隆起

中心部を除く、神経管の左右の天井が、上方へ隆起することにより、左右の頭頂葉が作られます。

この隆起運動の結果、本来の中心管天井部は、左右の半球の奥深くに隠れてしまいます(後に、脳梁が左右に走行します)。

 

神経管内の空所は、先端部から両脇に伸び上がり、左右側脳室(第一・第二脳室)ができます。

側脳室へ通ずる、旧中心管からの通路が、室間孔となります。

 

前方への回り込み

上方に隆起した終脳胞の左右の壁は、前方へも伸び出し、前頭葉側脳室前角が作られます。

正中部がそのまま残ることは同様なので、神経管最前端部は、突出した前頭葉の間に、終板として残ります。

 

後方への伸びと、側方への回転運動

頭頂方向へ隆起した神経組織は、更に後方へ伸びながら、元の神経管の側壁を越えて下側へ回り込みます。

このようにして、後頭葉側頭葉が作られると共に、側脳室後角下角が作られます。

 

間脳胞は、

終脳に比べると、あまり変化せず、神経管の原型を維持しつつ、左右大脳半球の基部に位置して、視床・視床下部を形成します。

中心管は、正中面に薄く上下にのみ伸びて、第三脳室となります。

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(えら) 咽頭弓

軟体動物のえら

節足動物のえら

脊椎動物のえら

 

 

えらは、水中で生活する動物が、水中に溶けている酸素を取りこみ、体内の二酸化炭素を排出して呼吸ガス交換)を行うための器官です。

脊索動物

 

 

軟体動物のえら

外殻はみえませんが、外套膜に囲まれて、外部に通じている腔所である外套腔内に、えらを持ちます。

通常、外套腔内に開口した、肛門の両脇に対をなして、えらがあります。

 

二枚貝(アサリやハマグリ等)では、

外套腔に通じる、水管取水管、出水管)が目立っています。

水管は、外套膜の後端がのびたもので、筋肉が発達しています。

二枚貝は、砂の中等にもぐって生活していますが、

水管によって、外套腔の中のえらに、新鮮な水を送っています。

二枚貝のえらは、呼吸だけでなく、水中の餌をこし取って食べる役割も兼ねています。

尚、マテガイ等は、自切能力があり、捕食者に食いつかれると、水管だけが切り離されます。

 

頭足類(タコやイカ等)は、

えらが12です。

尚、原始的な形態を保つオウムガイは、24枚のえらを持ちます。

胴と頭の間から、えらのある外套腔へ海水を取りこみ、漏斗から水を吐き出します。

敵に襲われた時は、漏斗から勢いよく水を噴き出すことで、すばやく飛び退くことができます。

えら

 

 

節足動物のえら

甲殻類のえら

昆虫類のえら

鋏角類のえら

 

節足動物は、体節ごとに関節肢を持ちますが、これがえらとして発達する例が多いです。

 

特に、腹部の付属肢が、えらになる例が多いです。

節足動物のえら

 

甲殻類のえら

甲殻類は、基本的に胸部付属肢の外側にある外骨格が、突出して、えらとなっています。

これは、本来は付属肢が二枝型であり、その外枝が、えらに特化したものに由来します。

 

オキアミは、体外にえらが露出しています。

 

エビやカニ等は、胸部の背甲が、脚の付け根のえらを取り囲み、この中の空洞で保護しています。

えらが体外に露出していないので、狭い隙間や砂の中にもぐる生活に有利になっています。

 

スナガニやアカテガニ等、成体が陸上生活をするカニは、

えらで呼吸した水を、いったん口から吐き出し、胴体の横を伝わせて、脚の付け根部分から再び水を取り入れる循環を行っています。

節足動物のえら

 

昆虫類のえら

本来、昆虫類は、陸上に適応した動物で、

気門で取り入れた空気を、気管で全身に運ぶことにより呼吸します。

 

水生昆虫のゲンゴロウ等も、水面に尾部を出して、息継ぎが必要です。

 

しかし、トンボ等は、水生昆虫として水中で生活する幼虫期に、えら呼吸をします。

えらは、気管鰓と呼ばれ、体表の突起の中に、空気の入った気管が入り込んだ構造になっています。

 

気管鰓の中の気管内部にある空気と、昆虫が生息する水の間で、酸素と二酸化炭素のやり取りが起こり、

気管内の空気と全身の組織の間で、ガス交換が行われます。

 

ムカシトンボ亜目等は、目立ったえらを持ちませんが、

直腸の内壁が気管鰓となっており、尾部から水を吸いこみ、直腸内で気管との間でガス交換を行っています。

 

昆虫としては例外的に、ユスリカの幼虫(赤虫)等一部の水生昆虫は、

血鰓という、気管が中になく、血液が循環する、えらを持っています。

えらの中の血液と体外の水との間で、ガス交換が行われ、

酸素や二酸化炭素は、血液によって運搬されます。

足動物のえら

 

鋏角類のえら

現生の鋏角類では、カブトガニが、書鰓という、えらを持っています。

 

尚、現生のクモ類の多くは、腹部腹面に、書肺という呼吸器を持ちます。

節足動物のえら えら

 

 

脊椎動物のえら

魚類のえら

両生類のえら

有羊膜類のえら

 

脊索動物のえらは、咽頭の両側に、何対かのスリット(鰓裂・さいれつ)が開いたものが基本形です。

 

鰓裂と鰓裂の間の部分を、鰓弓といいます。

鰓弓同士が向かい合った面には、突起が密生しており、その中に血管がたくさん入り込んでいます。

口から取り入れた水を、鰓裂に通過させる時に、ガス交換が行われます。

 

ホヤやナメクジウオ、多くの魚類では、同時に水中のプランクトン等をろ過し、食物として消化管に取り込みます。

脊椎動物のえら トップ

 

魚類

魚類のえらは、ガス交換に加え、浸透圧調節、アンモニア排出の役割を果たしています。

 

ヤツメウナギ等の無顎類では、

頭部の後ろに鰓孔(さいこう)が1-7対あり、それぞれにえらを備えています。

口腔内と鰓孔は、つながっていません

 

サメやエイ等の軟骨魚類には、

5-7対の鰓裂があります。

鰓裂は、口腔内とつながって、換水を行うことができます。

鼻の穴とは別に、目の後ろに噴水孔(ふんすいこう)という穴があり、ここから水が出入りします。

 

硬骨魚類では、

1対の鰓蓋(えらぶた、さいがい)が発達し、4対のえらを覆っています。

口と鰓蓋を交互に開閉させることで、水流を起こし、呼吸が効率よく行われます。

硬骨魚のえらは、血管が通っている赤い弁状の器官(一次鰓弁(さいべん))が、鰓弓にたくさん並ぶ構造となっています。

一次鰓弁の両脇に、無数の二次鰓弁というヒダがあり、ここでガス交換が行われています。

 

尚、硬骨魚の鰓弁の反対側には、鰓耙(さいは)という、櫛(くし)状の器官があります。

これは、イワシやアユ等の、プランクトン食性の魚で発達しており、

吸い込んだ水の中から、餌のプランクトンをこしとる役割を果たします。

 

魚類のえらには、塩類細胞という細胞が多く存在します。 有羊膜類のえら 副甲状腺

これは、体と水の間での浸透圧差に対抗して、

NaイオンやClイオン等の塩類を能動輸送する、生命維持に欠かせない細胞です。

 

細胞膜上に、各種のイオンチャネルやポンプを備えており、

能動輸送を行うエネルギーの供給装置として、ミトコンドリアが多数存在します。

このような細胞は、MRC(ミトコンドリア・リッチ・セル)とも呼ばれ、軟骨魚類の直腸腺もこれに属します。

 

海水魚と淡水魚では、塩類細胞の形が異なっています。

海水魚では、海水中へ塩分を放出し、

淡水魚では、逆に淡水中の塩分を積極的に取り入れ、

どちらも体内の浸透圧を一定に維持するのに寄与しています。

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両生類

有尾類(イモリ等)では、

幼生時に、鰓弓の外面の体表が伸びた、外鰓(がいさい、そとえら)があります。

 

成長して肺が形成されるとともに、外鰓は消失しますが、

ウーパールーパーのように、成長しても外鰓が消えず、終生水中で生活するものもいます。

 

無尾類(カエル)では、

卵から孵化した直後は、外鰓がありますが、

オタマジャクシになると、えらは、鰓蓋(えらぶた)の内側に取り込まれ、目の後ろに、えら穴が開きます。

成体になると、えらが消失します。

 

尚、ハイギョ等の原始的な硬骨魚類も、

稚魚時には外鰓を持ち、

成長して肺が形成されるとともに、外鰓は消失または縮小します。

脊椎動物のえら

 

有羊膜類

胚や胎児の時期は、羊膜で呼吸を行い、

誕生後は、終生肺呼吸を行うので、えらは退化消失しています。

 

しかし、発生途中の胚では、一時的に鰓弓が出現し、これが胸腺等、様々な器官の原基となります。

 

ヒトを含む陸生脊椎動物では、えらが退化していますが、

硬骨魚でのえらを形成する遺伝子が、副甲状腺を形成します(岡部ら)。咽頭嚢 咽頭弓

 

つまり、魚類のえらの、イオン濃度を調節するという機能が、引き継がれています。

えら 脊椎動物のえら トップ

 

 

咽頭弓内臓弓) 脊索動物

脊椎動物の発生において、咽頭部に生じる、支柱状の形態物で、

脊椎動物に特徴的な、頭頸部の構造へと分化します。

 

鰓裂と鰓裂の間の部分です。

 

広義には、鰓弓(さいきゅう)ともいいますが、

1咽頭弓が鰓へと発生する動物はいないため、第3咽頭弓を第1鰓弓ということもあります。

 

1咽頭弓は、顎骨弓とも呼ばれ、顎口類では、となります。

 

外側は、外胚葉上皮、

内側は、内胚葉上皮に覆われており、

内部は、神経堤細胞と、中胚葉の間葉が満たしています。

 

頭部神経堤細胞が、背側から腹側へと遊走するのに伴って、各々の弓が伸長します。

 

脊椎動物の胚発生において、神経管が完成するに伴い、背側から神経堤細胞が遊走し始めます。

 

腹側へと移動する頭部神経堤細胞は、分節し、

頭部中胚葉を同時に引き込んで、将来の咽頭にあたる領域において、咽頭弓を形成します。

 

発生が進むと、各咽頭弓は伸長し、最終的には腹側で左右1対ずつの弓が合一して、籠状の咽頭を形成します。

 

各咽頭弓の間には、スリットが残りますが、これを咽頭裂と呼び、将来の鰓裂になります。

 

陸上生活を行う多くの四肢動物では、鰓裂はなく、各弓の間は、咽頭の内外で、溝状の構造として残ります。

外胚葉上皮が、溝状にくぼんだ構造は、咽頭溝といいます。

内胚葉上皮が、体の外側へ向かって嚢状に膨出した構造を、咽頭嚢といいます。

 

咽頭弓に由来する構造物

咽頭弓の発生様式は、基本的なボディプランとして、脊椎動物の各系統で保存的ですが、

 

サメで上顎を構成する、口蓋方形軟骨は、哺乳類の場合、槌骨や砧骨になっています。

円口類は顎を持たないため、1咽頭弓は、顎と全く別の構造を作る等、例外もあります。

 

尚、ヒトでは、5咽頭弓は、ほぼ欠如しています。

ヒトの咽頭弓

骨格

神経

その他

1咽頭弓

咀嚼筋)、鼓膜張筋聴力)等

上顎骨下顎骨槌骨砧骨

三叉神経

 

2咽頭弓

表情筋表情)、鐙骨筋聴力)、茎突舌骨筋)等

鐙骨

顔面神経

 

3咽頭弓

茎突咽頭筋

舌骨大角等

舌咽神経

胸腺副甲状腺

4咽頭弓

輪状甲状筋発声)、口蓋帆挙筋嚥下

甲状軟骨(軟骨)等

迷走神経

副甲状腺

6咽頭弓

食道の横紋筋

輪状軟骨等

迷走神経

 

咽頭弓  トップ

 

 

副甲状腺上皮小体) 脊索動物 

ヒトでは2対存在する、内分泌腺です。

 

第三咽頭嚢由来の外上皮小体と、

第四咽頭嚢由来の内上皮小体、に分けられます。

 

甲状腺に隣接していますが、直接関係はありません。

 

血液中のカルシウムイオン濃度をモニターし、不足した場合には、パラトルモンを放出します。 

リン酸の濃度も調節します。

 

発生学的には魚類のえらに対応します。 有羊膜類のえら

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胸腺 有羊膜類のえら

T細胞の分化、成熟等、免疫系に関与する、一次リンパ器官です。

 

胸骨の後ろ、心臓の前にあります。

 

胸腺は、被膜の中に胸小葉があり、

小葉は、更に皮質髄質に分かれます。

 

胸腺に存在する細胞

上皮細胞                      :各種のホルモンを分泌します。

胸腺細胞(リンパ球

大食細胞(マクロファージ)   :胸腺内に散在し、退化リンパ球を食べます。

樹状細胞

 

胸腺の原基は、発生の過程において、第3咽頭嚢に由来します。 咽頭弓

 

はじめ、胸腺の原基は、上皮細胞のみから構成されていますが、

ここに、血流を介して、リンパ球の前駆細胞が入り込んで増殖し、

原基は、網目構造をつくります。

 

尚、リンパ球白血球)は、骨髄で産生されます。

 

成熟した胸腺において、

外側の部分である皮質は、上皮細胞が形成する網目の中に、リンパ球(胸腺細胞)が詰まっています。

このリンパ球は、免疫応答を起こせない、未熟なものがほとんどです。

 

内側の髄質は、皮質に比べて、上皮間の結合が粗く、リンパ球成分は少ないです。

しかし、これらは、成熟したリンパ球で、やがてT細胞として末梢に出ていきます。

リンパ球の他に、

マクロファージ(大食細胞)や樹状細胞といった、抗原提示細胞や、

上皮細胞の変化した、胸腺小体(ハッサル小体)、が認められます。

 

胸腺では、正の選択と負の選択によって、適切なリンパ球だけを末梢に送り出しています。

 

正の選択では、皮質の上皮に発現するMHC分子と、これに結合した自己ペプチド抗原に対して、

適度な親和性があるTCRT細胞抗原レセプター)を有する胸腺細胞が、選択的に増加します。

 

負の選択では、自己MHCと自己抗原に強い親和性をもつ自己反応性の細胞が、髄質内で消去されます。

 

胸腺には、血液‐胸腺関門があり、

T細胞産出の場である皮質に、余計な抗原が侵入するのを防いでいます。

 

成熟した個体では、十分なT細胞のプールができ、末梢でもリンパ球が増殖を行っています。

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参考

甲状腺

甲状腺ホルモン

カルシトニン

パラトルモン

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甲状腺

頚部前面にある内分泌器官で、

甲状腺ホルモンカルシトニン等を分泌します。

 

脊索動物内柱由来で、内胚葉から形成されます。

 

副甲状腺に隣接しています。

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甲状腺ホルモン (サイロイドホルモン)

甲状腺から分泌され、細胞の代謝率を上昇させる働きをもつ、ホルモンです。

 

チロシンが、2つ縮合し、34個のヨード(ヨウ素)が付加して生成されます。

 

トリヨードサイロニン(トリヨードチロニン、T3)と

サイロキシン(チロキシン、T4)、があります。

 

甲状腺ホルモン受容体は、核内受容体であり、

ホルモンと受容体が結合すると、DNAに結合し、特定のRNA転写活性を調節します。

 

生存に非常に重要で、

恒温動物では、全身の細胞で、呼吸量、エネルギー産生量が増大し、基礎代謝量を維持・促進します。

魚類(サケ科)では、海への降下時、海水適応を起こします。

両生類では、幼生から成体への変態を促進します。

鳥類では、季節ごとの換羽を起こします。

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カルシトニン

哺乳類では、甲状腺の傍濾胞細胞、

哺乳類以外では、鰓後体C細胞等から分泌されます、

32アミノ酸からなるペプチドホルモンです。

 

骨からのカルシウムの放出を抑制し、骨へのカルシウムとリン酸の沈着を促進します。

尿中へのカルシウムとリン酸の排泄を促進する作用もあります。

血中カルシウム濃度を減少させるように働きます。

 

カルシトニン受容体は、細胞膜上にある、膜7回貫通のGタンパク質共役受容体で、

Gsサブユニットを介して、アデニル酸シクラーゼと結合しており、カルシトニンが結合すると、細胞内cAMPが増加します。

 

パラトルモンと拮抗します。

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パラトルモン(副甲状腺ホルモン、 PTH) 

副甲状腺から分泌される、

84アミノ酸からなるポリペプチドホルモンです。

 

血中カルシウム濃度を増加させるように働きます。

血清リン濃度の制御も行います。

 

カルシトニンと拮抗します。

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