バイオフィルム・・・微生物がつくる環境

 

 

バイオフィルム

EPS(細胞外多糖)

クオルモン

クオラムセンシング

フェロモン

 

 

バイオフィルムは、

微生物により形成される構造体で、細胞外多糖( EPS )が主成分です。

台所のヌメリ等があります・・・微生物が作り出す環境ですね。

 

多糖といえば、細胞壁の成分ですが、バイオフィルムは、細胞壁の延長みたいなものでしょうか?

細菌の場合ペプチドペプチドグリカン)もありますが・・・

EPSの成分に、タンパク質もあるようですね。

 

バイオフィルム内では、様々な微生物が存在し、

種々の情報伝達を行いながら、コミュニティを形成していると考えられています・・・

生物群集の、微生物版ですね・・・

細胞の集団とみると、一種の多細胞生物といってもよさそうです・・・

多細胞生物では、多数の細胞の生活の場となるマトリックスが重要ですが・・・

マトリックスは、バイオフィルムから進化したのでしょうか?

 

 

クオラムセンシングは、

自分と同種の菌の生息密度を感知して、物質の産生をコントロールする機構です。

 

情報伝達物質として、クオルモン等がありますが、

これは、同種の真正細菌だけでなく、異種の微生物にも作用するようです。

しかも、真核生物ともコミュニケーションを行っているようです・・・

 

 

バイオフィルム内では、原核生物である細菌の形態が異なる場合があります・・・

 

クオルモンは、濃度により、遺伝子発現を調節しますが・・・

多細胞真核生物の形態形成における、モルフォゲンも、濃度に応じて細胞分化を決定しますが、何か関係するのでしょうか?

 

尚、真核生物は、単細胞である襟鞭毛虫ホロゾア)で、すでに細胞形態に分化がみられますね。

 

群体性の襟鞭毛虫が、多細胞動物の起源、という説がありますが、

クオラムセンシングは、群体、更には、多細胞化に関係するのでしょうか?

 

ちなみに、遺伝子の爆発的多様化は、

カンブリア爆発3億年前に起こっていたようです(分子からみた生物進化P244も参考になります)・・・

原核生物でも情報交換していますから、多細胞化の遺伝子の元?は、もっと古そうな気もしますが???

 

襟鞭毛虫に、多細胞生物特有の遺伝子と考えられていた、

チロシンキナーゼ(細胞間情報伝達)等の遺伝子が存在するそうですが・・・(P231

チロシンキナーゼ等と、真正細菌クオルモン(の受容体?)と関係があるのでしょうか?

 

尚、クオルモンに、アシルホモセリンラクトンがありますが、

ホモセリンイソスレオニン)は、セリンメチレン基が挿入されたα-アミノ酸です。

DNAにコードされていませんが

メチオニントレオニンイソロイシンの生合成中間体でもあります。 クオラムセンシング

 

ちなみに、陸上植物の起源は、緑藻のようです。

最も近縁な接合藻類単細胞)にも、

多細胞に特有の細胞間情報伝達に関与する遺伝子族があるようです。(P330

 

真核藻類の中で最も古く分岐したのは、灰色植物のようです(原始紅藻という説もあります)

灰色植物は、

プラスチド細胞壁が残っています

遊泳細胞には、二本の鞭毛があります。(動物や襟鞭毛虫の鞭毛は一本ですが、襟鞭毛虫は元々二本のようです。)

細胞壁は、あるものとないものがあります。

細胞核分裂は、核膜が消失する開放型の分裂です・・・

 

植物と動物の違いは、プラスチドの有無?と思いたくなりますが・・・

ハテナのような、細胞分裂の時、葉緑体を失うことがあるものもあります・・・

盗葉緑体現象という、餌藻類の葉緑体を細胞内に取り込み、一次的に保持する現象もあります・・・

まさに、「ハテナ」です。

 

原核生物でも、情報交換をしているので、

襟鞭毛虫真核藻類共通祖先真核生物の祖先?原核生物?)も、情報交換をしていた可能性がありますが・・・

クオラムセンシングで情報伝達していたのでしょうか???

真核生物は、古細菌クレンアーキオータ)に近縁ですが・・・

古細菌も情報伝達しているのでしょうか?

 

 

あと、昆虫は、フェロモンにより、情報伝達しています・・・

無脊椎動物の昆虫にも、社会があるようです。

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バイオフィルム (菌膜)

微生物により、形成される構造体です。

 

基質とがあれば、自然界にも広く存在します。

 

バイオフィルムの内部と外部では、微生物の生息密度が異なります。

水中では、生息密度に数百〜数千倍の差があるといいます。

 

バイオフィルム内では、嫌気性菌や好気性菌といった細菌に加えて、

原生動物、藻類等、多様な生物が生息しており、

様々な情報伝達を行いながら、コミュニティを形成していると考えられています。

 

形成後のバイオフィルムは、安定したものではなく、常に変化しています。

 

自然界における物質の転換や浄化作用にも、関与していると考えられています。

 

異種微生物間の情報伝達物質として、クオルモンがあるようです。

 

バイオフィルムの多くは、立体的な構造を持ちますが。

栄養状態、温度、光等、様々な条件により、規模や形態が異なります。

 

基質に付着した細菌は、細胞外多糖( EPS )を分泌します。

 

EPSは、バリアーや運搬経路の役割を果たし、環境変化や化学物質から、内部の細菌を守ります。

こうして、生息密度の高い閉鎖的なコロニーが形成され、恒常性が保たれます。

 

コロニー内にも環境条件の違いが存在し、種の棲み分けもみられます。

 

バイオフィルムの形成

 裸の基質。

 有機物やイオンが付着し、コンディショニングフィルムという膜ができます。

 細菌が付着し始めます。

 定着と脱離を繰り返しながら、徐々に生息数を増やします。

 EPSによる、コロニーが形成されます。

 

微生物とコロニーの変遷

 細菌付着。

 EPS分泌開始。

 バイオフィルム形成。

 バイオフィルムが厚みを増し、コロニー巨大化。

 内部が過密になると、コロニーの破壊、細菌放出。

 

細菌が付着と脱離を繰り返しながら、徐々にバイオフィルムが形成されます。

 

バイオフィルムのコロニーには、複数種の微生物が生息し、動的平衡を保ちます。

生息する微生物は、環境により異なりますが、細菌類以外の微生物が生息している場合も多いです。

単一種のみで形成されるコロニーは、自然界には稀です。

 

形成後のバイオフィルムも、常に脱離や溶菌が起こっているため、安定したものではありません。

 

ある程度大きくなると、コロニーが崩壊し、細菌が放出されます。

 

コロニー内での細菌の生活

コロニー内に、細菌が高密度に生息しているため、生活型は、コロニー外と異なります

 

EPSや構造の隙間を利用して、物質のやり取りを行う、と考えられています。

 

EPSは、構造の支持体や防護膜として機能するだけではなく、

養分の運搬・保持、酵素の伝達等、内部環境の恒常性を保つ役割も担います。

 

また、バイオフィルム内に暮らす細菌は、EPSを通じて情報伝達物質のやり取りを行うと考えられています。

こういった作用により、バイオフィルム内の環境は、外部と大きく異なります。

 

そのため、バイオフィルムの内部では、細菌の形態が相変異により、異なる場合があります。

 

細菌の構成種にも、違いがみられます。

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Extracellular polymeric substances (EPS 細胞外多糖 )

EPSは、微生物により、周囲の環境に分泌される高分子重合体です。

バイオフィルム形成と、細胞が表面に付着するために重要です。

 

EPSは、多糖(細胞外多糖)とタンパク質から構成されていますが、

DNA脂質、腐植物質( humic substances )等、他の大きな分子を含みます。

 

EPSは、単糖と、非炭水化物(酢酸ピルビン酸コハク酸リン酸)からなります。

 

EPSは、バイオフィルムの特性を決定する基本要素と考えられています。

 

EPSは、バイオフィルムの全有機物質の50 - 90%を構成します。

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クオルモン

クオラムセンシングの制御因子菌体密度感知シグナルオートインデューサーオートレギュレーターともいいます。

 

動物や植物の体内で働くホルモン

昆虫が個体間で情報を伝達するフェロモン等に対して、

細菌が菌密度に応じた振る舞いを制御するのに利用する、細胞間シグナル分子です。

 

クオルモンは、細菌の振る舞いを変化させる、代表的な情報伝達物質です。

 

真正細菌は、クオルモンを細胞外に分泌しており、菌密度に比例して、クオルモンの濃度が増減します。

クオルモンの濃度が一定以上に達すると、細菌の各種遺伝子の発現を誘導します。

 

クオルモンの化学構造は、分泌する細菌によって異なり、

同じ細菌でも複数種のクオルモンを分泌し、それぞれ誘導する遺伝子が異なります。

 

クオルモンには、アシルホモセリンラクトンや、脂肪酸エステル、遊離脂肪、ペプチド等、様々な化学構造のものが知られています。

 

クオルモンは、同種の細菌だけでなく、異種細菌とのコミュニケーションにも利用されている可能性があるようです。

 

ある細菌の分泌するクオルモンは、他細菌のクオルモン受信を妨げる等、

一種の攪乱(かくらん)物質として機能する現象が知られています。

 

更に、異種細菌間のコミュニケーションだけでなく、真核生物とのコミュニケーションにも利用されているようです。

 

細菌から真核生物へ、真核生物から細菌へ、情報伝達物質を介して、様々な影響を及ぼしあっているようです。

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クオラムセンシング

一部の真正細菌にみられる、自分と同種の菌の生息密度を感知して、それに応じて物質の産生をコントロールする機構のことです。

 

発光バクテリアの一種であるVibrio fischeri等が行います。

 

クオラムセンシングは、クオルモンのやりとりによって、

細菌が自分と同種の細胞が周辺にどれくらいの菌数、密度で存在しているかの情報を感知し、

その情報に基づいて特定の物質の産生を行う機構です。

 

クオラムセンシングは、ミクソバクテリア属やストレプトマイセス属の細菌で発見されました。

 

クオラムセンシングによって産生される物質は、その菌種によって異なりますが、

様々な酵素や毒素がクオラムセンシングにより、制御されています。

 

V. fischeriの発光現象、

セラチアの赤色色素、

緑膿菌のバイオフィルム形成等があります

 

クオラムセンシングには、共通の情報伝達機構が存在します。

クオラムセンシングを行う細菌は、細胞内で、オートインデューサークオルモン)を産生しています。

 

オートインデューサーは、細胞内で転写制御因子に作用して、特定のタンパク質合成を促進する働きを持っていますが、

自分自身の細胞内で働くだけでなく、菌体外に分泌され、それが他の細胞内に取り込まれることによって、その細胞にも作用します。

 

少数の菌だけが生息している環境では、

細胞内で合成されたオートインデューサーは、細胞外に拡散し、細胞内濃度は低下します

このため、このような環境では、オートインデューサーによる転写促進は強く働きません。

 

多数の菌が生息している環境では、

環境中にオートインデューサーが多く分泌されるため濃度が上がり、細胞内濃度も上昇します

そのため、オートインデューサーによってコントロールされている転写が促進され、

その濃度が一定以上になった時に、特定の物質産生が起きます。

 

クオラムセンシングを行う細菌のうち、グラム陰性菌の多くでは、

N-アシル-L-ホモセリンラクトン( AHL )という物質が、オートインデューサーとして働くようです。

AHLには、様々な長さのアシル鎖があり、菌種ごとに利用されています。

 

尚、AHLの合成自体も、AHLによって促進され、正のフィードバックを受けています。

 

クオラムセンシングの機構によって、

細菌は、ある程度以上の菌数(密度)に増殖するまで特定の物質産生を抑え、

その後、十分な菌数が確保された時点から、物質産生を行うことで、

環境中での生存や増殖が有利になるよう、利用していると考えられているようです。

 

個々の細菌は弱いため、菌数が少ない段階では、目立った行動を起こさずに増殖を続け、

安定した増殖が見込める状態になると、一気に繁殖するという戦略をとっていると考えられています・・・

増えすぎて生活しづらくなったため、脱出する気もしますが。

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フェロモン クオルモン

動物または微生物が、体内で生成して体外に分泌後、

同種の他個体に、一定の行動や発育の変化を促す生理活性物質です。

 

フェロモンは、臭いによる情報伝達とは異なり、

極めて低濃度で、効果が発現するものが多いです。

ホルモン等と共通の性質です。

 

昆虫の行動は、本能行動であり、

ごく限られた刺激に対して、限られた反応を返すように組み立てられている傾向があり、

その中で、フェロモンの果たす役割は大きいです。

 

社会性昆虫における、社会構造を維持するための役割等があります。

 

哺乳類や爬虫類についても、一部臭腺からのフェロモンの存在が確認されています。

また、ヒトに対するフェロモンも存在するようです。

 

フェロモンの種類

リリーサーフェロモン :他個体に特異的な行動を触発させます。

性フェロモン

成熟して交尾が可能なことを他の個体に知らせます。

また、それを追って異性を探し当てるのに使われます。

 

道標フェロモン

餌の在り処等、目的地から巣までの道のりにフェロモンを残し、その後を他の個体にたどらせます。

 

集合フェロモン

交尾や越冬等のために、仲間の集合を促します。

 

警報フェロモン

外敵の存在を、仲間の個体に知らせます。

 

プライマーフェロモン :受容した個体の内分泌系に影響を与えるものです。

女王物質

ハチやアリ等、社会性昆虫は、階級分化物質や女王物質によって、階級社会の形成と維持をしています。

女王バチが発する女王物質は、他の雌での卵巣発育が抑えられて、働きバチとしての行動を起こすようにするよう働きます。

 

女王が死んだ場合、この物質の供給が途絶えるので、働き蜂や幼虫の中から生殖能力のあるものが現れ、新たな女王となる場合もあります。

 

性周期同調フェロモン

ヒトで初めて発見されたフェロモンです。

 

腋下部から分泌される無臭のフェロモンで、それを嗅ぐと、月経の周期が変化するようです(寄宿舎効果、ドミトリー効果)。

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