現生人類を含む、霊長類(サル目)は、
哺乳類の中の有胎盤類(全部で18目あります。)の一つです。
霊長類は、北アメリカで誕生したようです。
氷河期には、絶滅の危機に陥りますが、
生き残ったものはアフリカで進化し、現生人類が誕生しました。
有胎盤類は、北方真獣類、アフリカ獣類、異節類、に分類されます。
北方真獣類は、更に真主齧類(ネズミやウサギ、サル)と、
ローラシア獣類(モグラやコウモリ、牛、クジラ、馬、犬)に分類されます。
真主齧類は、真主獣類(霊長類、ツパイ類、ヒヨケザル類)と、
グリレス類(ネズミ類とウサギ類が含まれます。)に分類されます。
霊長類の進化は、約6500万年前、白亜紀末期頃に始まったと考えられています。
霊長類の最古の化石は、白亜紀末期の北アメリカ西部から発見されており、プレシアダピス類といいます。
ただし、直接の祖先ではなく近縁という説もあり、偽霊長類ともいいます。
プレシアダピス類は、樹上生活をしており、リスぐらいの大きさで、
長い尾と物をつかむことができる手を持ち、葉や果実を食べていたと考えられています。
即ち、霊長類は北アメリカで誕生し、
新生代の暁新世と始新世の温暖な時代にユーラシアとアフリカに広まったようです。
暁新世になると、霊長類は、オモミス類とアダピス類が登場しました。
オモミス類は、後の直鼻猿類(真猿下目とメガネザル下目)に、
アダピス類は、曲鼻猿類(マダガスカルのキツネザル、東南アジアのロリス、アフリカのガラゴ)に進化したと考えられています。
オモミス類とアダピス類は北アメリカとヨーロッパに生息していましたが、
北アメリカの霊長類は、寒冷化による森林の減少で絶滅し、
旧世界を舞台に霊長類の進化が進み、
約6300万年前に、直鼻猿亜目と、曲鼻猿亜目の分岐が起こったと考えられています。
直鼻猿亜目は、その後、真猿下目(狭鼻下目と広鼻下目)と、メガネザル下目に分岐します。
哺乳類は2色型色覚であることが多いですが、
この時、真猿下目のメスが、3色型色覚を再獲得(後にオスも獲得しました)したと考えられています。
3000万年から4000万年前に、真猿下目から、狭鼻下目(旧世界サル、大型類人猿、人類)と、
広鼻下目(新世界サル)に分岐したと考えられています。
白亜紀半ば以降、気候が徐々に寒冷化していましたが、
3400万年前、漸新世初期に、最初の南極の氷が形成され、新生代後期氷河時代に入りました。
この時、アフリカと南アジア以外の霊長類は絶滅しましたが、生き残った集団は、現生の全霊長類の祖先となりました。
2800万年から2400万年前に、狭鼻下目が、ヒト上科(テナガザル、オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ヒト)と、
オナガザル上科に分岐したと推定されています。
2200万年前、中新世初期、東アフリカの樹上生活に適応した初期の狭鼻猿類は、その後の多様化のきっかけとなりました。
2000万年から1600万年前に、ヒト上科から、ヒト科(オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ヒト)と、
テナガザル科に分岐したと推定されています。
1300万年前、ヒト科から、ヒト亜科(ゴリラ、チンパンジー、ヒト)と、
オランウータン亜科に分岐したと推定されています。
約1200万年前から更に寒冷化が進行し、
約350万年前には北半球にも氷冠が形成されました。
656万年前±26万年に、ヒト亜科から、
ヒト族(チンパンジー、ヒト)と、ゴリラ族が分岐しました。
487万年前±23万年(800万から700万年前に分岐したという説もあります。)に、
ヒト族から、ヒト亜族とチンパンジー亜族に分岐したと推定されています。
ヒトのDNAはチンパンジーのDNAと98.4%同一です。
人類とチンパンジーの共通の祖先は、プロコンスルと考えられています。
プロコンスルは、霊長目ドリオピテクス科(プロコンスル科とも)に属し、
東アフリカの中新世中期初頭の地層から化石が発見されました。
プロコンスルは、外見上、尾を持たないという共通点が見られます。
ヒト亜族になると直立二足歩行が可能となりました。
ヒト亜族のうち最も初期のものは、約700万年前に生息したサヘラントロプス・チャデンシスと考えられています。
610万から580万年前のケニヤの地層から、
オロリン属(オロリン・トゥゲネンシスの1種のみが属しています。)と呼ばれる化石が発見されました。
オロリン属は、森林に住んでいた可能性があるようです。
約580万から約440万年前、アルディピテクス属が現れました。
アルディピテクスは、エチオピアに生息していた原始的な猿人の一種で、
アルディピテクス・カダッバと、アルディピテクス・ラミドゥスの2種からなります。
アルディピテクス・カダッバは、カダバ猿人とも呼ばれ、約580万から520万年前のエチオピアに生息していました。
アルディピテクス・ラミドゥスは、ラミドゥス猿人とも呼ばれ、約440万年前に生息していました。
以後の猿人と違い、まだ足の指が手の指の様に物をつかめる構造になっていました。
約400万年から約200万年前に、アウストラロピテクスが、アフリカで現れました。
アウストラロピテクスは、いわゆる華奢型の猿人で、
身長は120から140cm、脳容積は500cc程度(現生人類の約35%)であり、
チンパンジーとほとんど変わりませんが、骨格から、直立二足歩行を行っていたと考えられています。
約440万から390万年前に、A.アナメンシス、
約390万から300万年前に、A.アファレンシス、
約330万から240万年前に、A.アフリカヌスが現れました。
アウストラロピテクス属から、
ホモ属(ヒト属:ホモ・ハビリスなど)と、パラントロプスに進化したと考えられています。
パラントロプスは、硬い植物性の食物などを常食としていたと考えられていますが、約100万年前に絶滅しました。
ホモ属(ヒト属)は、直立二足歩行していたヒト亜族のうち脳が発達した種を意味します。
ホモ・サピエンス以外の種は全て絶滅しました。
ヒト属の最初の種は、約240万から140万年前に生息していたホモ・ハビリスと考えられています。
ホモ・ハビリスは、鮮新世後期か更新世初期に南アフリカと東アフリカに出現しました。
約250万から200万年前にアウストラロピテクスの一つから分化したと考えられています。
ホモ・ハビリスは、アウストラロピテクスよりも小さな臼歯と大きな脳を持っており、
石と、動物の骨から道具を製造したと考えられています。
190万から160万年前に、ホモ・ルドルフエンシスと、ホモ・ゲオルギクスが生息していました。
ホモ・ルドルフエンシスは、ケニヤから発見されました。
ホモ・ハビリスの一種である可能性がありますが、詳細は不明です。
ホモ・ゲオルギクスは、グルジアから発見されました。
ホモ・ハビリスとホモ・エレクトスの中間か、ホモ・エレクトスの亜種と考えられています。
ホモ・エレクトスは、約180万から7万年前まで生息していました。
150万から100万年前、更新世初期に脳がより大きくなり、
精巧な道具を作ったホモ・ハビリスの子孫がアフリカ、アジア、ヨーロッパの各地に分散していきました。
180万から125万年前までの初期段階は、別の種ホモ・エルガスター、
またはホモ・エレクトスの亜種ホモ・エレクトス・エルガスターと扱われることがあります。
ホモ・エルガスターは、発話を行った初めてのヒト科動物とされます。
ホモ・エレクトスは、直立二足歩行していた事が明らかな最初の人類の祖先です。
直立二足歩行は、しっかりはまる膝蓋骨と大後頭孔(脊椎が入る頭骨の孔)の位置の変化によって可能になりました。
加えて彼らは肉を調理するために火を使った可能性があります。
ホモ・エレクトスの有名な例は北京原人です。
ただし、北京原人は現生人類の直接の祖先ではありません。
60万から40万年前に、ホモ・ハイデルベルゲンシス(ハイデルベルク人)が生息していました。
ホモ・ハイデルベルゲンシスは、現生人類の直接の祖先と考えられています。
ホモ・フローレシエンシス
10万から12万年前、ホモ・フローレシエンシスが生息していました。
ホモ・フローレシエンシスは、現代人と祖先を共有しますが、
現代人の系統とは分かれて独自の進化の過程をたどったと考えられています。
ホモ・フローレシエンシスの女性は、身長1m、脳容量は380cm3で、
チンパンジー並みに小さく、小人症を患ったホモ・サピエンスという説もあります。
ホモ・ヘルメイは、ホモ・ハイデルベルゲンシスから進化した人類ですが、
ホモ・ハイデルベルゲンシスに含むという説もあります。
また、進化段階が原人であるホモ・ハイデルベルゲンシスから旧人に進化したホモ・サピエンス、
または原サピエンスへの移行型人類として別種に扱うこともあります。
25万から3万年程前に、ホモ・ネアンデルターレンシスが生息していました。
ミトコンドリアDNAの配列の解析の結果は、現生人類の直接の祖先とは違うようです。
つまり、二つの種は、約66万年前に祖先(ホモ・ハイデルベルゲンシス?)を共有した異なる種となります。
しかし現生人類とホモ・ネアンデルターレンシスとの間に、混血の痕跡があるとする説もあります。
ホモ・ネアンデルターレンシスは約3万年前に絶滅したと考えられていましたが、
2005年にイベリア半島南端のジブラルタルの沿岸の洞窟から、
ホモ・ネアンデルターレンシスが使用していた特徴的な石器類や、
洞窟内で火を利用していた痕跡が見つかりました。
この遺跡は、放射性炭素による年代分析で2.8万から2.4万年前のものと推定されています。
ホモ・サピエンス・イダルトゥ
16万年前、ホモ・サピエンス・イダルトゥが、エチオピアで生息していたと考えられています。
亜種として扱われていますが、解剖学的には現代人であり、最も古い新人段階の現代人です。
彼らの直接の子孫がネグロイドであり、モンゴロイド・コーカソイドはネアンデルターレンシスとの混血種であるようです。
これによると、イダルトゥは系統的にネグロイドに属することになります。
25万年前、現生人類のホモ・サピエンスが現れ、現在に至っています。
現代人と上記イダルトゥには亜種レベルの相違があるとみなして、
亜種ホモ・サピエンス・サピエンス、として扱うこともあります。
47万年から66万年前に、ホモ・ネアンデルターレンシスとの共通祖先から、
古代型サピエンスが分岐したと考えられています。
40万年前から25万年前の中期更新世の第二間氷期までの間に、
旧人段階であったホモ・サピエンス(ホモ・ヘルメイ?)が、頭骨の拡張と石器技術が発達したようです。
移行を示す直接の証拠は、ホモ・エレクトスがアフリカから他の地域へ移住した間に、
アフリカで種分化が起きたことで、エレクトスからホモ・サピエンスが分かれたことを示唆します。
その後、アフリカとアジア、ヨーロッパでエレクトスがホモ・サピエンスに入れ替わったと考えられています。
このホモ・サピエンスの移動と誕生のシナリオは、単一起源説(アフリカ単一起源説)といいます。
約7万年前から1万年前までの期間は、最終氷期(ヴュルム氷期)といいます。
この時期まで生存していたホモ属の傍系の種(ホモ・エルガステル、ホモ・エレクトスなど)は絶滅しました。
現生人類も激減し、遺伝子の解析によると、
現世人類は極めて少ない人口(1000組から1万組ほどの夫婦)から進化したと推定されています。
現在、人類の総人口は70億人を超えていますが、
人類の遺伝的多様性が他の種に比べると非常に小さいことを確認されています。
これはボトルネック効果によると考えられており、
現生人類が各地に分散したのが比較的最近である可能性、
火山噴火(トバ山噴火等)による気候変動がおこって人口が激減した可能性、などがあります。