家についてすぐに俺は、携帯を鳴らした。
 だが、やはり彼女は出なかった。
 メールにした。
 (今、着きました。今日はありがとう)
 (お疲れ様。今日は本当にありがとうございました。早く身体休めて下さい)
 (大丈夫。話が出来て楽しかった。又メールしてもいいかな?)
 (ありがとう。おやすみなさい)
 それからの毎日は、俺の今までの人生を否定するかのような日々だった。

 自分から電話をし、メールを打ち、仕事中に思い出し笑いをして、スタッフにからかわれ、だがそのどれもが嫌ではなかった。


 又、パーティの日が来た。
 会場に着くと誰もが驚きを隠せないという感じだった。
 一番、驚いたのは俺自身かもしれない。

 女をエスコートせずにやって来たのだから。

 仁希も来ていた。
 俺を見つけた仁希は飛んで来て、
 「どうしたんだ?兄貴?」
 「どこか悪いのか?」
 「何かあったのか?」
 とたて続けに訊ねた。

 「ドタキャンされちゃって」と変な嘘をついた。
<仁希の場合>
 「ドタキャンされちゃって」そんな訳ないだろ?
 電話すればすぐ控えてる子がいるだろ?

<真珠の場合>
 「ドタキャンされちゃって」そんな訳ないだろ?
 俺は自分からエスコートを断った。
 女には散々文句を言われたが、何だか嫌になった。
 俺を足がかりに有名になってくれるのは構わないが、愛を感じていない女をエスコートしていくのが、何故だか嫌になった。
 子供じみた事をと、思ったりもしたが・・。

 今までの生き方を恥じたり、不幸だと思ったことはなかった。
 自分なりに精一杯努力もしたし、頑張った。
 だから今の俺がいる。
 そう思っている。

 だが今までの、女性に対する気持ちや行動は恥じている。
 これからは正直に生きようと思っている。

 何度かエスコートをせずに出席していると、 
 “社長も歳には勝てないな”
 “どうもゲイになったらしい”
 と勝手な噂が耳に入ってきたが、むしろ俺は、女のことで注目されなくなってホッとしている。

 それどころか毎日が充たされていると実感できる。
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