(家に電話を入れてからずっと連絡を待っているが、一向に電話はかからない・・えりかさん、お願いだよ、兄貴の所へ来てやって)

 その時、病室のドアが開き、えりかさんが立っていた。
 彼女もきっと苦しんでいたのだろう。
 やつれてしまっていた。

 ベッドのそばに座らせると、彼女は兄貴の手を握り
 「どうしてこんな事に、ごめんなさい!お願いだから起きて」
 と泣きながら、何度も何度も繰り返した。


 「仁希、来てくれてたのか、忙しいのに毎日すまない。えりかの夢を見ていたよ。“起きて”って泣いてるんだ、おかしいだろ?」 
 「兄貴、夢じゃないさ、ほら」

 「えりか・・」

 「何やってるのよ、こんなになって。馬鹿なんだから・・・ごめんなさい、本当にごめんなさい」
 「人の事言えるのか?こんなにやつれて・・ご飯食べてたのか?ちゃんと寝てないんだろ?俺こそごめん」
 「私、もっとわがままになる。自分のことしか考えない」そう言ってkissをした。
 「こら、仁希の前だぞ」
 「仁希さんの前だろうと、誰の前だろうと構わない」

 そう言ってkissする二人に、思わず目をそらし、出て行こうとした時、
 「仁希助けて」と兄貴が叫んだ。
 彼女を片手で支えていた。
 彼女は、気を失ってしまったみたいだ。
 あわててソファーに寝かせた。

 兄貴は、“これがさっきまで生きる気力を無くしていた人か?”と思う位の勢いで、点滴を引き抜き、ベッドから飛び降り、ナースコールで叫んでいた。

 駆けつけた看護士さんに
 「食べてないだろうし、寝てないだろうし、えりかを助けて!」
 「とにかく検査して、処置をしますから。貴方も早く治さないと彼女の看病が出来ないですよ」と怒られていた。
P24へ  トップへ P26へ
前へ  トップ  次へ