「ここは?」
 「俺の部屋。さあどうぞ」
 風呂は沸いていたが、部屋はまだ暖まっていなかった。

 冬の雨は身体の芯まで冷える。
 温まって来るようにと彼女をバスルームへ案内した。
 彼女はそれに従った。
 その間にワインと少しつまみを用意した。

 「じゃあ俺も温まってくるか」



 彼女は外を見ていた。
 俺は、カーテンを閉めながら

 「この部屋へ入った、初めての女性に」とワインを勧め、電話を一本入れた。

 ホテルをキャンセルした。
 今日も明日も、彼女を帰すつもりなどなかったから。

 外はまだ雨が降っていた。

 今夜の俺たちを、隠してくれるかのような激しい雨だった。
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