「おー」感嘆の声が上がった。

 それを聞くためだけにパーティに出ているのかも知れない。
 と言ってもそれは俺にではなくエスコートしてきた女に対してのものである。
 今日の連れは最近売れ出したモデルのA子だ。

 いつの頃からか俺がエスコートして来た女は有名になるなんて、まことしやかに囁かれ、女たちはこぞってエスコートされたがり、事実、有名になった女優、歌手、モデルもかなりいる。
 噂が噂を呼び、エスコートして行くと注目を浴びる。
 その後は彼女たちの実力や努力の世界ではあるが、とりあえず注目を浴びる事が第一歩だ。

 だが、エスコートは一度きりだ。
 次のパーティでは別の女をエスコートして行く。
 それは、俺が決めた事ではなく、自然にそうなった。
 彼女達は俺を足がかりとして昇って行く。
 今日も部屋まで送って、俺の役目は終る。

 だから、悪く言うと俺は女に不自由はしたことはない。
 食事でも買い物でも旅行でも、女が行きたいと言う所に連れて行く。

 だが、女に不自由はしないが、愛を感じた事もない。


 会場がどよめいた。
 仁希だ。
 そう言えばドラマのロケに行くと言っていたな。

 「兄貴!久しぶり」
 俳優の、Luiji(ルイジ)だ。

   僕はLuiji。
   本名、馬場仁希(ばば ひとき)
   学生の頃からのモデルを経て、俳優となった。
   自分で言うのもなんだが、一応、主役を務める。
   時代劇をやる事となり、ロケに来た。
   挨拶がてらパーティに顔を出した次第だ。


 仁希と知り合ったのは10年くらい前だろうか。
 デビュー当時からなぜか気があって、弟のように可愛がってきた。
 仁希も、実の兄のように慕ってくれていた。
 連れの女を仁希に紹介した。
 これで彼女はまた箔をつけた。

 俺のことは何でも解かっている仁希ですら
 「兄貴はいいなぁ、いつも違う女連れで」と小声で、冷やかし半分に笑った。

 その時、携帯がなった。
 俺のではない。
 あっ、さっきの彼女の携帯だ。
 とっさに出てしまった。
P1へ  トップへ P3へ
前へ トップ  次へ