スタッフ達も帰り、久しぶりに仁希と一杯やろうと言う事になり、彼女をホテルまで送っていく事にした。
 「明日は、僕が街を案内するから、九時に迎えに来る」
 「そんなのいいわ。お休みなんだから、ゆっくり休んで」
 「休みだから、僕が案内したいんだ。朝ご飯も少し我慢してて」
 「朝は食べないけど、起きられるかどうか解からない」
 「モーニングコールしてあげるよ」
 「ほんと?じゃあ、八時頃にお願い」
 彼女とのやり取りを、仁希は、”嘘だろ?”と言うような目をして聞いていた。
 ホテルに着いた。
 「仁希、少し待っていてくれ」と、降りようとしたら、
 「チェックインくらい一人で出来るわ。大丈夫よ」と彼女は降りてしまった。
 だが、俺は心配で車を出せなかった。

 見かねた仁希が
 「行って来たら?手間取っているみたいだよ」俺は、フロントに飛んで行った。


 「まったく。あれだけ予約は会社の名前でしてあるからと言ったのに。明日は、モーニングコールも何回かしないと駄目だな」

 あきれながらも兄貴は何だか、とても嬉しそうだった。
 「明日、早いなら兄貴の部屋にするか?」


 「あの人のせいなのか?ここ半年くらい前から、兄貴の様子が変わったのは?」
 「変わったかな?」
 「変わっただろ?エスコートはしてこないし・・。うまく言えないけど会う度に目が穏やかになって、何かあったのだろうとは思っていたけど、まさか女の人とはね」

 俺の過去を知っている仁希は、仁希なりに心配してくれていたんだと思う。

 「どこで知り合ったのか?」
 「どこに住んでいるのか?」
 「どういう人なのか?」
 俺を質問攻めにした。
 俺は、すべてに正直に答えた。

 「で?」
 「え?」
 「え?って、愛してるわけ?」
 「会うのは今日が二度目だよ」
 「こういうことって、付き合った期間や、会った回数じゃないだろ?あの人を愛してるわけ?」
<真珠の場合>
 彼女を愛してる?
 この感情は愛なのだろうか?

<仁希の場合>
 若かったとはいえ、あれだけ傷ついて以来、女性を愛せなかった兄貴が、まさかあの人に?どう考えても信じられない。
 だが、兄貴の変わりようからすると、本気みたいだ。
 本当にそうなら今度こそ幸せになって欲しい。
P9へ  トップへ P11へ
前へ  トップ  次へ