次の日、仁希に電話した。
仁希達が泊っているホテルに、偶然 T さんも泊っていて、先生と三人で遅い朝食を摂っているところだと言っていた。
「えりかさん、調子悪いんだって?病院へ行ったのか?どうだったんだ?」
「食べ過ぎで胃を荒らしたみたいだ。それで頼みがあるんだが、夕方ここのホテルで式を挙げるから、立ち会ってくれないか?」
「式って?何の?」
「結婚式だよ。俺達の」
「結婚式?食べ過ぎで、何でいきなり結婚式なんだ?」
「気分が悪かったのは、胃が荒れてたせいなんだが、パパとママが結婚してないと・・」
「パパとママって?誰が?え?兄貴、まさか?」
「そう、そのまさか」
「そうかー。兄貴、良かったな。おめでとう」
「ありがとう。仁希、それでもう一つ頼みがあるんだ。この子の名付け親になってくれないか?」
「何言ってるんだよ、兄貴。そんなの駄目だよ。兄貴が付けるべきじゃないか」
「俺達は、お前からいっぱい幸せをもらった。その俺達よりもっと幸せな子になって欲しいから、お前に名付け親になって欲しいんだ。えりかも解かってくれた」
「仁希さん、お願いします。私達、仁希さんにサインをもらう度に幸せになったわ。この子にも、生まれて初めてのサインを仁希さんにお願いしたいの。この子の心にもいっぱいサインして、幸せにしてやって欲しいの」
「でもなー、そんなこと・・・」
「頼むよ!」
「よし、解かった。飛びきり幸せなのを考えるよ」
「ありがとう。予定は冬だが、いつになるか、明日になるかも分からないから」
「おめでとう。私達も立ち会っていい?」と先生の声も聞こえた。
にぎやかに食事を摂って「お先に」と先生が席を立って行った。