旅行と言うほどでもないが、5〜6年前から常宿にしているホテルを予約した。
そう遠くない所にあるそのホテルは、以前、偶然見つけた。
大きなホテルではないが、なんとなく家庭的で、暖かい雰囲気のホテルだ。
気候も穏やかで、海が一望でき、四季折々の顔を見せてくれる。
心身ともに休めたくなった時、年に何度か利用していた。
ホテルのスタッフとも顔馴染みになっている。
その誰もが皆、驚いた。
俺が女性連れで来たからだ。
えりかと知り合う前の生活で、女と旅行もしたと言ったが、ここにだけは連れて来なかった。
別に、いつか愛する人と一緒に・・などと思って来なかった訳ではないが、今思うと、そうだったのかも知れない。
俺が行く時は、いつも同じ部屋をとってくれる。
この部屋はジャグジーからも海が一望できる、お気に入りの部屋だ。
ジャグジーで海を見ながら、そろそろ始まる夕焼けを、えりかにも見せたかった。
「ねえ?何人の女の人とここの海を見たの?」
「誓って言う。ここに連れて来たのはえりかが初めてだ」
「ふーん。じゃあ他の所には行ったんだ?」
「・・・誘導尋問だ・・」
「きれい・・・」
ここの海の夕焼けは格別だ。
ワインを抜き、えりかに内緒で作り替えた指輪を取り出した。