その時、後ろのテーブルに有名なお笑いのTさんが座った。

 それに気付いたえりかさんは、いきなり、Tさんに目隠しをし「だぁれだ?」と言った。
 さすがの兄貴も驚き「こら失礼だぞ」と言ったが、Tさんは「僕の心を盗んだ、涙の君」とジョークで返した。

 「覚えていてくれたの?」
 「覚えてるで。彼氏とはうまいこといってるか?」
 「紹介するわ」

 兄貴も僕もTさんとは初対面ではない。

 「あれ?森村社長とLuijiさんやないですか。お久しぶり」
 「その節は、彼女がお世話になったそうで。ありがとうございました」
 「え?あの時の涙の主は社長?社長、ホモになったんじゃ、いや失礼!けど社長、あきませんで、夜中の電車で泣かせる様なことしたら。抱きしめよか思いましたで」

 Tさんもテレビのロケでここに来たと言っていた。
 えりかさんは、Tさんにも指輪を見せ、嬉しそうに話した。
 
 「祝いせなあかんな。何が欲しい?何でも言うてみ」
 「うーん、じゃあ○○ボ」
 「○○ボか、ちょっときついなぁ」
 「冗談よ。何も欲しい物はないです」
 「他の物やったらなんでもええで。買ったるから」
 「じゃぁ、二つでもいい?」
 「ええよ。何?」
 「一つ目は、知り合いにとっても幸せなカップルがいると、心の隅で覚えていてもらう権利。二つ目は、その事をネタにして喋らないと言う約束」
 「うーん。どっちも難しいなぁ」
 「じゃぁ要らない」
 「わかった。解かった。約束する」
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