そこで、このような使用法を考えてみました。
箸墓の前方部から宮内庁が採集した、壺型土師器に、三角縁神獣鏡を鏡面を上にしてセットします。
箸墓出土の壺型土師器と復元された特殊器台に三角縁神獣鏡をセットする
この土師器は焼成前穿孔という形式で、底にあらかじめ穴が空けられています。(*1)だから、紐を使って鏡を固定することができ、横にしても大丈夫です。それを、同じく箸墓の後円部の出土品から復元した特殊器台の上にのせてみます。それをズラリ、箸墓の前方部の頂上に並べてみます。壮観です。
箸墓前方部に並べた特殊器台セット
こういう復元はあまり見たことがないので、なんとなく違和感があります。しかし、発掘された甕棺などには、既存の甕を2つあわせている例があります。それは、本来的な用途からの応用だと考えられます。だから、こういう工夫もありえたと思います。
小川氏は想定されていませんが、箸墓の東上方から見れば、春分と秋分、そして五月上旬から夏至までの田植え時期の太陽の運行をすべて観測できます。
▼井寺池堤防からの箸墓と日没(2002年3月23日)
春分と秋分は穴虫峠への日没として観測でき、適切な田植えの時期は、三角縁神獣鏡に反射した朝日をとおして観測できるのです。
農耕のスケジュールをすべて、その場所から管理できることになります。
これが、三角縁神獣鏡が大型の凸面鏡である理由ではないでしょうか。朝日を確実に遠方の観測地点に反射するには、大型の凸面鏡が適していたのです。そして箸墓のクビレ部と前方部との標高差は、この反射光を容易に観察するための設計だったと理解できます。
特殊器台 |
赤土山古墳から発掘された特殊器台列 | 焼成前穿孔 (桜井市埋蔵文化 センターの展示) |
(*1)笠野毅「大市墓の出土品」『書陵部紀要27号』