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抗生物質

イラスト2 (この文書は、2009年3月に会員様へ送付した内容を一部改訂したものです)

何の薬?

抗生物質と言う名はどこかで耳にされた人も多いと思います。

風邪の時やケガをした時によく処方される薬で、熱を下げる薬とか、腫れをひかせる薬と思っている人も少なくありません。

しかし、それらは抗生物質の二次的な作用に過ぎず、本質は細菌を退治する薬です。

細菌に感染すると炎症反応が起こったり、細菌が放出する毒素によって発熱したり腫れたりします。(免疫が防御力を高める目的で発熱することもあります)

抗生物質によって細菌が退治されると原因が除かれるので、熱が下がったり腫れがひいたように感じるのです。

よって、細菌が関係していない発熱や腫れには効果がありません。

最も有名な抗生物質はペニシリンで、青カビの周囲には他の細菌が増殖しないことから発見された、世界で初めての抗生物質です。

昔は死亡することが多かった肺炎などの感染症が、ペニシリンによって治療可能となり、20世紀最大の発見の一つとされています。

次いで、放線菌から発見されたストレプトマイシンは、結核による死亡率を大幅に低下させました。

その後も様々な菌から系統の違う抗生物質が発見され、現在では大きな分類でも10以上の種類があります。

多くの種類は昭和40年頃に合成技術が確立され、化学構造を少し変える等の工夫で、多くの改良型が誕生しました。

補足:サルファ剤という細菌を退治する薬は、昭和40年以前から化学合成されていました。しかし、生物由来でないことから抗生物質の範疇に入らず、合成抗菌剤と言います。

代表的な種類と特徴

ペニシリンを代表とするβラクタム系は、長い間主流の位置にあり、現在でも汎用されている抗生物質です。

人間の細胞には存在せず細菌が持つ細胞壁という組織を攻撃するために、人体への影響が少なく、副作用が少ないという特徴があります。(培養で製造していた頃には、アナフィラキシーと呼ばれるアレルギー症状が多かったです)

しかし、結核菌およびマイコプラズマやリケッチャという菌種には効果がありません。

ストレプトマイシンをはじめとするアミノグリコシド系は、強い抗菌力を持っていますが、胃腸から吸収されないために主に注射で使用します。

効果の切れ味が良いので好む医師も多いのですが、腎障害や第八脳神経障害という難聴の副作用を起こすことがあります。

テトラサイクリン系はマイコプラズマやリケッチャを含む多種の菌に有効です。

組織移行性も良い優れた抗生物質ですが、骨や歯に沈着する性質があり、催奇形性があって妊娠中には使うことができません。

マクロライド系は抗菌力は強くないのですが、安全性に優れており、マイコプラズマにも有効なことから小児に使われることが多い抗生物質です。

抗生物質の問題点

抗生物質の効果は永遠のものではなく、相手の細菌が抵抗力を獲得すれば効果がなくなります。

これを耐性と呼びます。

更にたちが悪く、耐性は同じ系統の抗生物質にも及びます。

ペニシリンに耐性となった菌は、同じβラクタム系のセフェムやペネムなどの効力をも低下させてしまいます。

新聞等で時々出てくるMRSAは、メチシリン・セフェム耐性黄色ブドウ球菌のことで、βラクタム系の全般にわたって効果がありません。

MRSAや多剤耐性腸球菌の特効薬と言われたバンコマイシンですら、最近はかなりの耐性菌が出現しています。

耐性を起こす最大の原因は使い過ぎです。

一時期よりは使用に抑制がかかるようになりましたが、日本の抗生物質使用量は世界中でも突出して多く、感染が疑われる程度で処方しますし、感染予防でも処方されます。

疑いや予防で使用した場合は、正式な規則では保険適応ができないにも関わらず、長い間黙認されてきました。

何度も抗生物質と接した菌は、次第に抵抗力を強めていくことになり、ついには効かなくなる耐性菌となります。

マイコプラズマ肺炎に使用するマクロライド系も耐性化が問題となっている種類で、この最大の原因は魚養殖において餌にこの系統の薬を混ぜていたためと言われています。

菌の抵抗という事例は、個々人の服用方法にも無関係ではありません。

抗生物質が十分な効果を発揮するためには、一定量以上で一定時間以上という条件が必要です。(抗生物質の種類によって、量と時間のどちらがより重要かは異なります)

中途半端な量と接した程度では菌は死にませんし、抗生物質が作用しない期間が長いと再び増殖してきます。

服用量を自己判断で調節したり、飲み忘れがあると、菌を抗生物質に対して強くしている可能性があるのです。

要は、第一にやたらと使わない、第二に使うならばきちんと使うことが重要です。

強い薬が逆効果

耐性とは違う問題点に菌交代という現象があります。

ある病原菌を抗生物質で退治したところ、その病原菌によって増殖を抑えられていた他の菌が増えるという現象です。

通常では問題とならない常在菌が増殖して毒性を発揮する日和見感染も、菌交代現象の一種です。

普通の免疫力を持つ人では起こりませんが、長期療養で免疫が低下している人や免疫抑制薬を使用している人には注意が必要です。

もしも全ての菌を退治できる抗生物質があれば起こらないのですが、そのような薬は人間をも殺すことになります。

口腔や腸には善玉菌と言われる人間と共存共栄している菌がいて、我々はそれらの協力で健康を維持しています。

善玉菌まで殺傷する抗生物質は、薬ではなく毒になってしまいです。

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