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排尿の不調

イラスト2 (この文書は、2014年7月に会員様へ送付した内容を一部改訂したものです)

尿排泄の仕組み

尿は、腎臓で作り・膀胱に溜め・尿道を経由して外に排泄します。

溜めて出すだけの簡単な仕組みのように思えますが、「蓄尿」と「排尿」という相反する働きを調節することによって成り立っています。

腎臓は常に尿を作りだしていますので、蓄尿の機能がないと、垂れ流しの状態になってしまいます。

腰髄の排尿中枢が下腹神経を刺激し、膀胱の筋肉を緩めて蓄えられる状態にするとともに、尿道の筋肉を収縮させて漏れ出ないようにして蓄尿します。

しかし、膀胱が蓄えられる量にも限界があり、尿量が増えて膀胱内の圧力が高くなると、脳の排尿中枢に信号を送ります。

その中枢から骨盤神経を介して、排尿筋を収縮する指令が出されると、蓄尿から排尿にスイッチが切り変わります。

下腹神経と骨盤神経は、自律神経と呼ばれる神経で、自分の意志でコントロールすることはできません。

ある程度の尿意であれば我慢できるのは、陰部神経という運動神経も関与しているためです。

つまり、蓄尿と排尿は下腹神経・骨盤神経・陰部神経という3種の神経と、膀胱の排尿筋・尿道の括約筋が連動して調整しているわけです。

このような複雑な調整をしているのは、尿が自分のナワバリを示したり、ある時には敵に存在を知られる証拠になるからです。

うかつに排尿してはおれない動物が獲得した進化の名残です。

男女による違い

排尿の仕組みそのものは、男女で差はありません。

ただ、男性は泌尿器と生殖器を兼用していますので、性交時に排尿を止める機構が備わっています。

これが前立腺で、膀胱の出口を締め付ける形で存在しています。

男性ホルモンの作用で次第に大きくなり、加齢に伴って尿道を圧迫するまでに大きくなってしまうことがあります。

高齢男性に多い前立腺肥大症とは、通常時でも排尿に影響するまで大きくなった状態で、手術を要することもある疾患です。

女性の尿道は男性よりもなかり短く、尿漏れを防ぐ力は必然的に弱くなります。

近くに位置する子宮が膀胱の拡張を少なからず制限しますし、加齢による筋力低下も加わると、くしゃみなどの軽い刺激でも尿漏れを起こすようになります。

また、尿道が短いために、雑菌の逆流による細菌性膀胱炎や、冷えによる膀胱炎を起こすケースが男性よりも多いです。

以上、体の構造から、男性は排尿障害を起こしやすく、女性は蓄尿障害や膀胱炎を起こしやすいのです。

他の関連要因

膀胱は風船のような臓器で、かなりの伸縮性を持っています。

しかし、古くなった風船が硬くなるように、膀胱の壁も次第に伸縮性が低下していきます。

膀胱壁が硬くなると、蓄えることができる量が減りますので、少し溜まった段階で脳の排尿中枢に信号を送るようになります。

これが膀胱委縮による頻尿です。

排尿には3種の神経が関与していることは上で紹介しましたが、この神経がカルシウム不足などで過敏になると、誤信号を送ることがあります。

これが心因性膀胱あるいは過活動性膀胱と呼ばれる頻尿です。

血圧の薬・心臓の薬・胃薬・安定剤・睡眠剤などでは、排尿に関与する神経や筋肉に影響するものがあります。

それが有利に作用する場合は良いのですが、尿漏れを誘発したり、尿が出なくなる場合もあります。

事故による脊髄損傷や下腹部の手術で、排尿に関与する中枢や神経に傷害を受けると、大きな排尿機能不全を起こす場合もあります。

治療における注意

重症の前立腺肥大症や癌による排尿障害を除いて、手術で対応する事例は少なく、大部分は薬による治療がされます。

蓄尿や排尿に関与している神経や筋肉に作用する薬が主流で、一昔前に比べると種類も増えて効果もアップしています。

ただし、これらの薬は根本治療薬ではなく、服用している間だけ効く対症療法薬です。

また、蓄尿障害の治療薬は排尿障害を悪化させる可能性があり、排尿障害の治療薬は蓄尿障害を悪化させる場合があります。

原因に合致した薬を選択しないと、逆効果になりますので注意が必要です。

ハルンケアやユリナールは、排尿障害を治療するとのうたい文句で市販されている薬です。

表書きは似ていますが、ハルンケアは前立腺肥大や膀胱委縮を対象とする八味地黄丸であり、ユリナールは心因性膀胱を対象とする清心蓮子飲です。

名前は漢方らしくありませんがどちらも漢方薬で、副作用は少ないものの1回の服用で効果を実感できるものではなく、継続しないと本来の効果は得られません。

健康食品のノコギリヤシは、ヤシ科なので清熱や利尿作用はあると思いますが、宣伝のような排尿改善効果があるとは思えません。

医療用にエビプロスタットという似た成分の医薬品があり、かなり以前に認可された薬ですが、服用しないよりはマシという程度の効果です。

膀胱炎に対して、すぐに抗生物質や抗菌剤を服用する人がいますが、細菌性の膀胱炎でない場合は全く意味がありません。

尿の濁りや発熱を伴う場合は細菌性の疑いが濃いですが、頻尿や残尿感程度の場合は大部分が非細菌性です。

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