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痛風(高尿酸血症)

イラスト2 (この文書は、2016年4月に会員様へ送付した内容を一部改訂したものです)

どんな病気?

大部分の生物は細胞内に遺伝子を持っています。

この遺伝子を構成している成分の一つがプリン体です。

食品として摂取したものや、古くなった遺伝子に含まれるプリン体は、分解された後に排泄されます。

尿を介して排泄するためには、水に溶けやすい形にする必要があり、人間は尿酸と言う物質に変換して排泄しています。

通常であれば、尿酸が過剰になることはありませんが、強力な抗癌剤などによって多くの細胞が死滅した場合や、プリン体を多く含む食品を継続的に摂取していると、排泄しきれない尿酸が体内に増えてきます。

この段階が高尿酸血症です。

水に塩を入れると、少量であれば全て溶けますが、量を増やすと溶け切れない分が下に沈殿してきます。

これと同じように、尿酸の過剰状態が続くと、尿酸の結晶が組織に溜まり始めます。

痛風とは、尿酸の結晶が関節部に溜まり、これを処理しようとして免疫が過剰に反応することで発症します。

患部が赤く腫れてひどく痛み、名前が示すとおり、風があたっても痛みを感じる程です。

足指の関節で発症することが多く、圧倒的に男性に多い疾患です。

プリン体が多い食品

遺伝子を構成している成分ですので、量の多寡はありますが、肉でも魚でも野菜でも含まれています。

特に含有量が多いとされる食品は、レバー・魚卵・イカ・タコ・エビ・カニ・クロレラなどです。

飲料としては、ビールに含有量が多いのは有名です。

発泡酒にはプリン体が少ないと誤解している人が多いようですが、ビールのプリン体は発酵に使用する酵母に由来しています。

発泡酒も同じく酵母を使って製造していますので、同程度の含有量があります。(最近はプリン体除去処理をしたものもあります)

案外、見落とされがちなものが「だし汁」です。

日本食には鰹節のだし汁を多く使いますが、この中にはプリン体をかなり大量に含みます。

汁そのものを飲む場合は、鰹だしを控えめにして、昆布だしを主体にする配慮が望ましいです。

治療と予防

治療には、尿酸の生成を抑える薬や尿酸の排泄を促進する薬が使われます。

前者は、プリン体から作られるキサンチンという物質を、尿酸に変換するのに必要な酵素を阻害します。

尿酸の生成量は減りますが、前段階のキサンチンが増えることになり、腎臓にかかる負担が増える可能性があります。

後者は、尿細管において尿酸の再吸収を抑制し、排泄量を増やします。

ユリノームやベネシッドは尿酸トランスポーターを阻害して排泄量を増やす薬で、尿酸値の低下に効果的ですが、肝障害や尿路結石の誘発に注意が必要です。

ウラリットUも尿酸排泄を促進する薬ですが、こちらは尿をアルカリ性にすることで再吸収されにくくします。

効果は弱いですが、重篤な副作用はありません。

以上の薬は、痛風発作と呼ばれる痛みが激しい時期に開始すると、痛みを強くすることがあります。

痛みが強い時には鎮痛剤を使用しますが、やや強めで作用時間の長い種類を選択します。(ただし、鎮痛剤は尿酸の排泄を悪くする可能性があります)

治療でも予防でも、最重要事項はプリン体の摂取を控えることです。

プリン体を減らせば尿酸も減ることになります。

それと、尿をアルカリ性にすれば尿酸が排泄されやすくなりますので、菜食を心掛けます。

アルコールは代謝されると酸性になりますので、炎症を助長するだけでなく、尿酸の排泄にもマイナスです。

どうしても飲みたい場合は、悪影響の少ないワインにしましょう。

「プリン体と闘うヨーグルト」は、プリン体を栄養源にする乳酸菌を含んでいます。

体内のプリン体を減らすことはできませんが、吸収を抑制することで予防効果は期待できます。

健康食品のアンセリンは、弱いながら尿酸の生成抑制と排泄促進をしますが、ヒスチジン誘導体なのでアレルギー疾患がある人には症状を悪化させる可能性があります。

高尿酸血症に使う漢方処方は、色白で汗かき体質の人には防已黄耆湯、便秘気味で肥満傾向の人には防風通聖散、腹部のベルトを苦しく感じる人には大柴胡湯です。

おもしろいことに、これら処方は肥満症の治療にも使われる処方で、栄養過多の人ほど痛風になりやすいことを裏付けています。

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