イラスト1

漢方をもっと身近に

西洋薬と東洋薬のハイブリットにより、
より効果的で安全な治療を。

水滞

イラスト2 (この文書は、2009年2月に会員様へ送付した内容を一部改訂したものです)

西洋医学と東洋医学の違い

西洋医学では検査で異常な部位を探し、病名を決めてから病変部位にターゲットを絞って治療します。

他方、東洋医学では「証」を見極めてから体全体のバランスを整えることで治療します。

打撲や歯痛などの限定した部位の治療では、西洋医学が圧倒的に勝っていますが、なんとなく体が重いとか寝汗が多いなどの病名を付けられないような不調では、東洋医学でしか治療はできません。

共に一長一短があり、どちらが優れているとは断定できません。


東洋医学は「証」という独自の概念を使用しますので、西洋医学に慣れた人々には一種不可解な学問のように思われがちです。

医師や薬剤師も、大学で学ぶのは主に西洋医学であり、東洋医学は卒業後に自己で習得することになります。

漢方を使える医師や薬剤師が多くないのは、教育の影響と、西洋医学を使う前提で構築された保険制度のためです。


証のことを詳しく説明すれば厚い本になってしまいますので、最も基本とされる気・血・水について紹介します。

東洋医学では、人体の中を流れる要素に気・血・水があり、これらが澱みなく流れることで健康が維持されていると考えています。

逆から見れば、体の不調はこれらの流れに異常が生じた状態と言えます。

気とは神経系の流れ、血とは血液・ホルモン系の流れで、気鬱≒ノイローゼや血虚≒貧血というように、この2要素においては西洋医学と東洋医学で大きな概念の違いはありません。

残る要素の水は、水分を含めた代謝系の流れなのですが、この概念にはかなりの違いがあります。

水滞とは

東洋医学では代謝系の流れに不調が起こると、川に澱みができるように、不要な水が溜まると考えます。

慢性の関節炎によって膝に水が溜まる、という例が最も分かりやすいイメージです。

不要な水にも様々な状態があり、粘稠なものを「痰」、サラっとしたものを「飲」、むくみ起こすものを「水」、形として見えないものを「湿」と細分します。

水滞とは、体のどこかに「痰・飲・水・湿」が存在する状態を総称したものです。

痰やむくみは西洋医学でも治療の対象になるものですが、湿に関しては概念そのものがありません。

しかし、水滞の中で最も多いのが湿であり、東洋医学では極めて重視します。

水滞に伴う症状

痰・飲は急性病による一時的な水分代謝異常によって起こることが多く、風邪や鼻炎による咳や鼻水は典型的な例です。

水・湿は慢性的な水分代謝異常によって起こることが多く、天候が崩れる前後に症状が強くなる疾患は、100%該当していると言っても過言ではありません。

関節痛や頭痛をお持ちの人で、雨が降る前に痛み始めるという人がたくさんおられます。

思い当たる人は、水滞が必ず増悪要因に入っていますので、根本治療をするためには水への対応をする必要があります。

胃が重くて食欲がない・体全体に倦怠感がある、でも検査では異常がいないと言われる人は、湿が不調の原因かもしれません。

湿があると、スポンジが水を吸ったような状態になり、ボテっとした感じで動きが重くなります。

胃に湿があると、動きが鈍くなって食欲が落ちますし、湿があまりに多いと、腸に食物を送ることがスムースにできなくなり、上へ向かう吐気を起こすこともあります。

喘息・花粉症・アトピーなどのアレルギー疾患も、東洋医学では水滞性の疾患とされています。

喘息や花粉症は痰や鼻水が出ることが多いので、何となく納得する人も多いでしょうが、皮膚がカサカサして痒みのあるアトピーは意外かもしれません。

専門的に言うと、外乾内湿の状態がアトピーで、皮膚表面は乾燥していますが内部に水が多く、その境界で炎症に似た症状を引き起こすために痒くなるのです。

誤った対応に注意

アトピーで皮膚が乾燥しているからと言って水分を多く摂ると、内部の水を増やすことになり、よけいに症状が強くなります。

老人性の乾燥肌(皮膚掻痒症)も原理は同じですから注意しましょう。

マスコミ等で水分をたくさん摂取する水分健康法が推奨されることがありますが、水滞がある人にはメリットよりもデメリットの方が大きいです。

亀岡や南丹地区は盆地であり湿気が溜まりやすい地形です。

昔から呼吸器疾患が多く、胃の弱い人が多いのは、東京や大阪よりも水滞を起こしやすい土地であるからです。

脳梗塞防止に水分を多く摂ることは正しいのですが、多く摂り過ぎて悪影響が出る場合もありますので、適量を心掛けましょう。

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