
日本の健康保険制度
日本の保険医療は、診察・検査・手術や医薬品などの個々に対して保険点数を定め、実際に行った内容の合計点数で医療費を算定します。
一部の疾患に対しては、治療内容や薬の種類に関係なく一定の点数で計算する包括制度もありますが、それを選択するのは医療機関であって患者ではありません。
合計点数に患者負担率(通常は3割、高齢者は収入によって1割または2割)を掛け、10円単位で四捨五入した金額が、皆さんの負担する医療費です。
残りの部分は、皆さんの保険料を徴収・管理している国民健康保険組合や社会保険支払基金より、医療機関に支払われます。
細かくは、国や都道府県が行う公費負担制度や、市町村が独自に行う福祉制度などがあって、もう少し複雑なのですが、ここでは直接関係しませんので省略します。
薬の値段(薬価)
医療用医薬品(処方箋によって薬局で受け取ったり病院で受け取る薬)は、個々に国が値段を決めています。
これを薬価と言い、上で紹介した点数算定の元になっています。
新しい成分の薬を先発医薬品と言い、この薬価は類似する医薬品の薬価を参考にして、製造費・研究開発費や使用予想数量などを加味して決定されます。
先発医薬品には特許期間がありますので、少なくとも6年間は独占的に販売ができます。(特許の範囲によってはもっと長期になります)
特許期間が過ぎると、他の製薬会社も同じ成分の薬を製造することが可能になり、特許切れで製造された薬のことを後発医薬品と言います。
外国の呼称とは少し意味が違うのですが、日本では後発医薬品のことをジェネリック医薬品と呼んでいます。
医薬品の研究開発費の大部分は、臨床試験と呼ばれる様々なデーターの収集に係る費用です。
ジェネリック医薬品は既に医療現場で使用されている成分ですので、先発医薬品との同等性を証明する程度の試験でよいとされています。
つまり、研究開発費を大幅に少なくできることになり、それに合わせて薬価も低く設定されます。
2番目・3番目となるのに従って薬価を更に低くするというルールがあり、先発医薬品の1/2や1/5という薬価のジェネリック医薬品もあります。
国民医療費は年に数千億円もの増加を続けており、先発医薬品からジェネリック医薬品への変更は、医療の質を落とさないで費用削減になることから、国が積極的に推進しているわけです。
効果は同じなの?
成分は全く同じですし、同等性を証明して製造許可を得ていますので、99.9%は同じと言えます。
ただし、内服薬を例にすれば、製造工程で使用する賦形剤や滑沢剤などの副次的な成分に違いがあります。
この部分まで含めれば100%同じとは言えません。
効果に影響を与えるような賦形剤や滑沢剤は使用を禁止されていますので、法令違反を犯さない限りは問題になることはないと思います。
例外的に、特殊な成分にアレルギーを持っている人には注意が必要な場合がありますが、これは先発医薬品においてもありえる問題です。
一部の専門家に、溶け方や吸収の早さを問題にする人がおられるようですが、それが効果に影響する程の差になるのか疑問です。
同等性を担保できない程の差があれば問題ですが、それならば製造認可が得られていないはずです。
むしろ、食事直後に服用するのか30分後に服用するのかの方が差が大きいように思います。
全ての薬がジェネリックに変更可能?
特許期間が残っている薬は、当然ながらジェネリック医薬品がありません。
局方品と呼ばれる古くから使われている医薬品にもなく、麻薬・漢方薬・血液製剤・ワクチンにもジェネリック医薬品はありません。
また、先発医薬品が発売後に効能追加した場合は、追加された効能に特許が残っていることがあり、薬としてジェネリック医薬品は存在するのだけれども、疾患によって変更できないというケースがあります。
さらに、特許が切れた2種あるいは3種の成分を合わせて1つの薬にした配合錠では、同じ成分のジェネリック医薬品を組み合わせた変更はできません。
もう少し具体的に表現しますと、配合錠(A+B)は、Aのジェネリック医薬品+Bのジェネリック医薬品に変更できないのです。
配合錠としての特許が切れて、A+Bという成分のジェネリック医薬品が登場するまでは変更されないために、先発医薬品を持つメーカーの防衛策になっています。