
頭痛は誰でも一度は経験したことがある不快な症状だと思います。
中には、クモ膜下出血のように急いで対応しなければならない危険な頭痛もありますが、繰り返し起こる慢性頭痛の9割以上は筋収縮性頭痛または血管性頭痛(片頭痛)です。
前者は頭頸部の筋肉が過剰に収縮して起こる頭痛で、バファリン程度の鎮痛剤で抑えることができます。
後者は脳血管が拡張して神経を刺激することで起こる頭痛で、弱い鎮痛剤では抑えることができません。
また、鎮痛剤の多用で、頭痛がさらに起きやすくなる薬剤誘発頭痛もあります。
痛みを一時的に抑える鎮痛剤ではなく、体質の改善で頭痛を起こしにくくする漢方療法もあります。
体質に適合した処方を数カ月続ければ、鎮痛剤が不要になるレベルまで改善することも少なくありませんので、選択の参考になる情報を紹介します。
のぼせやすい人は
アルコールが好きでのぼせやすく、頭痛を起こしやすい人は、黄連解毒湯が第一候補です。
この処方は緊張に伴って上がっている血圧を下げる効果もありますが、正常血圧の人まで下げることはありません。
便秘気味で頭はのぼせるけれども足は冷えるという人は、鬱血が関係していますので桃核承気湯の方が適します。
のぼせやすいけれども愛飲家でも便秘気味でもない人は、気滞や水滞が関係していることが多々あります。
この体質はめまいを伴うことが多く、苓桂朮甘湯が候補になります。
まめいに鼻つまりも併発している人は、川キュウ茶調散で全てが解消できる場合があります。
寝つきが悪い人は
交感神経が緊張しやすい体質です。
血圧が高め、あるいは朝方に頭痛を感じることが多い場合は、釣藤散が奏効するケースが多いです。
神経質でこむら返りがよく起こる人では、抑肝散加陳皮半夏の方が適する場合があります。
冷えが強い人は
「のぼせる」「寝つきが悪い」は気の関与が強い症状でした。
双方の症状がない場合は、血の関与が強い「冷え」を検討します。
単純な冷え性に伴う頭痛であれば、当帰四逆加呉茱萸生姜湯が最も効果的です。
吐気や下痢などの腹部症状を伴う場合は、類似処方の呉茱萸湯を選択します。
しかし、この2種は苦味が強い処方です。
呉茱萸湯には粉薬しかないので、苦味が不得手な人は、錠剤がある当帰四逆加呉茱萸生姜湯で代用することもあります。
頭痛・冷え・腹部症状に加えて、みぞおちの痞えがある場合は、桂枝人参湯が先に試すべき処方です。
以上のどれでもない人は
片頭痛は脳血管が拡張して、並走する神経に触れることで痛みます。
よって、血圧が高めの人に起こりやすい傾向がありますが、低血圧でも刺激によって脳血管が拡張しやすい体質であれば発症します。
低血圧に関係する頭痛では、半夏白朮天麻湯が最初に考慮すべき処方です。
東洋医学では、水滞がある人ほど頭痛を起こしやすいとされています。
のぼせの項でも紹介しました苓桂朮甘湯は水滞に対応した処方ですが、もっと水滞が強い場合には五苓散を選択します。
のぼせ感は弱いのですが、口渇が強くて尿の出が悪い場合に適合します。
どれにも当てはまらない、もしくは複数に当てはまって絞れないという場合には、清上ケン痛湯を検討します。
冷えを原因とする場合には適しませんが、その他の原因による頭痛の全てに対応が可能です。
無効であるケースが少ない便利な処方です。
ただし、特定の原因に絞れる場合は、そちらの方が速く効果を実感できると思います。
上で紹介しました処方は代表的なもので、これ以外にも頭痛に使用する処方は多数あります。