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もの忘れと認知症

イラスト2 (この文書は、2015年2月に会員様へ送付した内容を一部改訂したものです)

加齢性健忘

脳も体と同じように老化します。

歳をとると若い頃のように早く走れなくなるように、ある程度の記憶力低下は仕方のないことです。

このような、歳を重ねることで起こるもの忘れを、加齢性健忘と言います。

記憶障害は軽度で、時間をおいたりヒントがあると比較的簡単に思い出せます。

もの忘れをしていることを自覚していますので、「最近、もの忘れが多くて」と自分から言う人は、大部分が加齢性健忘です。

もの忘れを自覚していなくても、会話の中に「あれ」「それ」などの代名詞が多く出るようになってくると、そろそろ注意しておいた方が良いかもしれません。

脳を刺激することで進行を防止できますので、暗算やクロスワードパズルなどで賦活しましょう。

運動中に暗算を行うと効果的との報告もあります。

認知症のもの忘れ

認知症はもの忘れを起こす代表的な疾患です。

加齢性健忘との大きな違いは、もの忘れを自覚していないことです。

周囲の人はおかしいと感じても、本人は正しいと思っており、これによって様々な問題行動を起こすことになります。

自分で置き忘れた場合でも、置いたことを忘れているので、「誰かが盗った」と飛躍した話になります。

また、記憶に残っていることを頭の中で無理につなぎ合わせようとするので、話が作り話的になります。

この作り話も、自分では真実だと思っているので、他人から指摘されると感情的になります。

原因もなく感情的な言動が出るようになったら、治療を要するレベルです。

さらにもの忘れが拡大すると、記憶から消えてしまった行為に強い不安感を覚え、安心するために、覚えている行為を何度も繰り返すようになります。

歩き回る徘徊や、全く動かない無動はこの一種です。

極めて初期の段階では、同じ話を何度もします。

この段階であれば、まだ予防が可能かもしれません。

東洋医学では、血圧が高めの場合は釣藤散や七物降下湯を、ストレスでイライラが強い場合は抑肝散を使用するケースが多いです。

漢方ではありませんが、ルミンAという薬にはアルツハイマー病の症状改善効果が動物で確認されています。

適応外の使用になりますが、非常に安全な薬ですし比較的安価ですので、予防には適しているかもしれません。

うつ病のもの忘れ

うつ病は気分が沈滞する疾患で、もの忘れと関係がないように思えますが、随伴症状としてかなりの高頻度で起こります。

加齢性健忘や認知症との違いは、忘れているわけではなく記憶を引き出してくることが苦痛になり、思い出すことを放棄しているのです。

よって、会話の中に「わからない」という言葉が増え、質問しても多くの場合は「わからない」と回答します。

物事にうまく対応できていない自分の状態を自覚していますので、思考パターンは自分を責めて自虐的になります。

うつ病患者に自殺者が多いのは、強い自虐性によります。

心身ともに動かせない重症者よりも、治療によって体の動きが少し回復してきた段階が最も危険とされています。

うつ病の診断は専門家でも難しいとされており、軽症の場合の確定診断はほぼ不可能です。

ストレスを受けると強い疲労感を感じたり、うまくいかないことがあると自分を悪く考える人は注意してください。

このような性格の人がもの忘れを感じ始めたら、帰脾湯が予防の一助になるかもしれません。

糖化最終生成物の影響

糖尿病などによって糖質が体内で過剰な状態になると、体を形成する蛋白質と糖化反応を起こして、糖化最終生成物を作ります。

この物質は血管内皮細胞などに傷害を及ぼし、脳の老化やアルツハイマー病の助長要因になると言われています。

つまり、高血糖を避けることがもの忘れの防止につながります。

血糖値を下げるホルモンはインスリンしかなく、このホルモンの分泌にはカルシウムイオンが必要です。

血糖値が高めの人がもの忘れを感じ始めたら、カルシウムが不足しないように注意しましょう。

糖化最終生成物が関与するのはもの忘れだけではなく、脱毛・動脈硬化・骨粗鬆症・代謝異常・性機能障害や、しわ・シミ・たるみなどの皮膚の老化にも関係しています。


脳炎・狂牛病などのプリオン病やアルコール依存症でも記憶障害を起こしますが、この場合は原因が明らかですし、頻度は低いので省略します。

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