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骨密度と骨質

イラスト2 (この文書は、2019年7月に会員様へ送付した内容を一部改訂したものです)

骨粗鬆症

この疾患名を耳にしたことがある人は多いと思います。

外見は正常なのに、骨の中がスカスカの状態になり、強度を保てなくなる疾患です。

事故とは無関係に起こる太い骨の骨折では、大部分が骨粗鬆症と関係していると言われています。

もちろん、男性でも起こる可能性はありますが、圧倒的に女性に多い疾患です。

この差には女性ホルモンが関係しています。

エストロゲンという女性ホルモンは、出産に備えるために骨にカルシウムを蓄える役割を担っていますが、更年期になってホルモン分泌量が減少すると、急激に骨密度を維持する力が弱くなってしまうのです。

男性でも加齢に伴って骨密度が減少する傾向はありますが、女性に比べれば変化はゆっくりです。

骨はカルシウムと蛋白質から構成されていますので、若い頃よりも食が細くなることも無関係ではありません。

骨回転

成長期を過ぎるとあまり実感することはありませんが、年齢を問わずに、骨は常に作り続けられています。

もう少し詳しく説明しますと、骨にある破骨細胞が古い骨を壊し、骨芽細胞が新しい骨を作ります。

壊す作用を骨吸収・作る作用を骨形成と言い、このサイクルを骨回転と言います。

骨回転しているおかげで骨質が維持され、ひび割れや骨折が修復されるのです。

骨芽細胞の活性は、年齢とともに低下していきます。

しかし、運動によって骨に負荷を与えると活性が高まることが確認されており、運動習慣の有無によって差が生じます。(過激な負荷ではなく歩行程度の負荷で十分です)

破骨細胞の活性は、年齢による変化よりも血中カルシウム濃度との関連が深く、カルシウムの不足状態では亢進します。

元々、骨は体を支える役割よりもカルシウムの貯蔵場所としての役割が重要で、破骨細胞は骨からカルシウムを引き出すために存在しているわけです。

血液中にカルシウムが充足していれば、わざわざ引き出す必要がありませんので、破骨細胞ががんばって働く必要はありません。

骨芽細胞を働かせて破骨細胞を休ませれば、理論上は骨密度を上げることができます。

しかし、それでは骨回転が止まってしまいますので、骨質悪化の問題が発生します。

理想は、骨吸収と骨形成がバランス良く回転し、良好な骨質が常に維持されている状態です。

骨粗鬆症治療薬

女性の骨粗鬆症には、昔は女性ホルモン薬がよく使われました。

しかし、ホルモン剤は骨以外にも作用が及び、乳房や子宮に癌を誘発する可能性を高めてしまいます。

代わって登場したのがラロキシフェン(先発品商品名はエビスタ)で、骨にはエストロゲンと同じ働きをしますが、乳房や卵巣ではむしろ抑制作用を示します。

女性ホルモン薬のような、関係のない部位への刺激を気にしなくてもよい薬です。

しかし、閉経前の女性に使用する場合は、女性ホルモンを阻害する悪影響が起こりますので、閉経後にしか使用できません。

ホルモンに関係せず、男性・女性ともに使用できる薬にビスホスホネート系があります。

この薬は、破骨細胞に取込まれてアポトーシス(細胞死)させます。

つまり、破骨細胞を減少させることで、骨吸収を強力に抑制して骨密度を上げる薬です。

ミネラル成分と結合する作用と、強い粘膜刺激性がありますので、起床直後に水で服用し、逆流を防ぐために30分間は横にならない、といった服用方法に少し面倒さがあります。(ミネラルウオーターでの服用も不可とされています)

今では週1回や月1回の服用で効果が持続する種類も登場し、多くの人が使用しています。

しかし、骨吸収の強力な抑制は古い骨が残ることになり、先にも紹介しましたように、骨回転が遅くなって骨質が悪くなる懸念があります。

最近では、骨質を気にする医師は使用を控えるようになっているようです。

参考までに、医療用のビスホスホネート系薬の一覧を紹介しておきます。

  • ダイドロネル
  • フォサマック
  • ボナロン
  • アレンドロン
  • ボノテオ
  • リカルボン
  • アクトネル
  • ベネット
  • リセトロン

乳酸菌の健康食品でも破骨細胞を抑制する品が登場しています。

骨密度が上がるのは良いことですが、骨質のことまで考えて選択しましょう。

骨吸収を抑制するよりも、骨形成を促進する方が良い骨質になると思います。

ビタミンDやビタミンKにその作用があり、見直されています。(ただし、ビタミンDには過剰症がありますので、多く摂れば良いというものではありません)

これらの成分を摂取しても、骨の原料であるカルシウムや蛋白質が不足していては効果を発揮できません。

良い骨質には、バランスの良い食事と適度な運動は欠かすことはできないわけです。

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