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糖尿病治療薬の進歩

イラスト2 (この文書は、2014年11月に会員様へ送付した内容を一部改訂したものです)

最近の新薬開発のスピードは目覚ましく、新しい薬が次々と登場しています。

中でもここ数年で劇的に変化したのが糖尿病治療薬です。

新旧の薬をできるだけ簡潔に紹介します。

糖尿病の種類と薬

糖尿病は血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌不調や、作用が低下することで発症します。

当然ながら血糖値が高くなりますが、高血糖が直ちに命に関わるわけではありません。

糖尿病が恐ろしいのは、高血糖から網膜症・動脈硬化・神経障害や腎症などを誘発するからです。

今のところ治す方法がないために、治療の目的は血糖値のコントロールです。

生まれつきインスリンの分泌に不調がある場合をⅠ型糖尿病と言い、治療は不足するインスリンを注射で補う方法がメインです。(先天的ではなく、病気や薬によって膵臓が傷害を受け、後天的に発症するⅠ型糖尿病もあります)

Ⅱ型糖尿病は、過食や運動不足などの生活習慣によって必要量のインスリンが分泌できなくなったり、インスリン抵抗性と呼ばれる組織での感受性が低下することで起こります。

一般に、Ⅱ型では血糖降下薬と呼ばれる薬を使用し、十分な効果が得られない場合や、妊娠などの事情で使用できない場合には、インスリン注射も使用します。

大きく進歩したのは、この血糖降下薬の分野です。

古くからの薬

スルホニルウレア系は、最近まで中心的に使用されていた血糖降下薬で、膵臓を刺激してインスリンの分泌を促進します。

強力な血糖降下作用がありますが、長期にわたって使用していると膵臓が疲弊して効果が低下する可能性があります。

また、血糖値の高低に関係なく作用するために、低血糖発作を起こす危険を持っています。

ビグアナイド系も古くからある薬で、こちらはインスリンの分泌を増やすのではなく、主に体内での糖の消費を増加させて血糖値を下げる薬です。

スルホニルウレア系と比べれば低血糖発作を起こす可能性は低いのですが、まれに乳酸アシドーシスという重い副作用を起こすために、あまり使われてはいませんでした。

ところが、アメリカの保険会社が医療費支払額を減らすために、価格が安く低血糖発作を起こしにくいビグアナイド系の使用を推奨したことで、これに触発された形で日本での使用も増えつつあります。

α-グルコシダーゼ阻害薬は、腸での糖の吸収を抑える薬で、食後の血糖上昇を抑えるために補助的に併用されます。

この薬を使用している時に起こった低血糖発作では、砂糖を補給しても吸収されませんので、ブドウ糖を摂取する必要があります。

血糖値が高めの方にと謳っている健康食品の中には、作用は弱いですがこの薬と同作用を持っているものもあります。

インスリン抵抗性改善薬

インスリンの分泌量を増やすのではなく、低下した感受性を回復させれば、少ない量でも血糖が下げられるとの発想で登場した薬がチアゾリジン系です。

低血糖発作誘発の可能性は低く、膵臓への負担も少ない画期的な薬と評価され、非常に注目されされました。

当初からむくみを起こす可能性は指摘されていましたが、しばらくして、膀胱癌を誘発する危険性があるとの報告が出されました。

アメリカでT薬品が損害賠償で訴えられたのはこの薬です。

メタボリックシンドロームの進行防止にも有益な薬なのですが、発症率は低いとしても膀胱癌は相当に大きなリスクです。

因果関係は確定しているわけではありませんが、関係が否定されてもいません。

今でも日本では多くの患者さんに使われており、医師や薬剤師が正しく危険性を説明しているのか不安になります。

新しい薬

腸から分泌されるホルモンの一種にインクレチンという物質があり、インスリン分泌の調整に関与していることが分かりました。

血糖が高い場合は強く刺激し、血糖が低い場合はほとんど刺激しないという特徴があり、この物質を介して膵臓を刺激すれば、低血糖発作を起こしにくい血糖降下薬になります。

GLP-1作動薬は、インクレチンと同じ作用をする薬です。

胃で分解される成分なので、インスリンと同じように皮下注射で投与します。

DDP-4阻害薬は、分泌されたインクレチンの分解を阻害することで効果を持続させる薬です。

内服で投与でき、低血糖を含めて有害作用が少ない薬として注目され、使用量が急増しています。

特に、高齢者においては、旧の血糖降下薬より切り替えることが推奨されています。

SGLT-2阻害薬は、腎臓における糖の排泄を促進することで血糖を下げる薬です。

糖は重要なエネルギー源ですので、一度は尿中に排泄されたものが、尿細管で再吸収される仕組みがあります。

この再吸収をを阻害することで、過剰な糖を排泄するという原理です。

低血糖発作の可能性は低く、体重減少の効果も期待できるという利点はありますが、頻尿・脱水や尿路感染症を起こす可能性が指摘されており、評価が定まったとは言えません。

インスリンとは無関係に血糖を下げますので、Ⅰ型糖尿病にも使用されることがあります。


糖尿病治療において、重大な事故の可能性がある低血糖は最大の注意点です。

この点では、新しい薬は古くからの薬よりも優れています。

ただし、登場して間もない薬であるために、新たな問題点が発覚する可能性は0ではありません。

i-PS細胞による再生医療が実用化されれば、いずれは糖尿病も治せる病気になるかもしれません。

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