
水素水は雑誌やネットで広告されていますので、目にされた人もおられると思います。
水素は世の中で最も軽い物質で、通常は気体として存在しています。
この水素ガスを水に溶け込ませたものが水素水です。
常温では、最大でも100万分の3程度の濃度しか含有できません。
水素水がPRしている効能は、「細胞の老化を進める活性酸素を除去する」というもので、確かに水素イオンにはこの効果が認められています。
水中では水素分子の極一部が水素イオンに変化しますので、微量のさらに極一部ですから限りなく少量ではありますが、水素水には活性酸素を除去する水素イオンが含まれていることは間違いありません。
ところで、理系の人はすでにお気づきだと思いますが、水素イオンは酸性・アルカリ性に関係した物質で、酸性が強い液体に多く含まれています。
つまり、水素イオンが必要なのであれば、塩酸や酢酸などを使用した方がはるかに効率的です。
塩酸は非常に強い酸なので簡単には扱えませんが、もっと穏やかなアスコルビン酸(ビタミンC)やクエン酸も水中では水素イオンを放出しますし、その量は水素水よりもはるかに多量です。
「水素は他の物質よりも小さいので、どこにでも入り込める」という広告をしている品を見かけたことがあります。
確かに、水素分子はアスコルビン酸やクエン酸よりも小さいですが、放出される水素イオンの大きさは同じです。
元となる分子の大きさを比較しても、何の意味もありません。
また、血液には緩衝作用(大きな変動を打ち消す作用)があり、酸性やアルカリ性の強い物質が入ると、直ちに中和して一定のpHを保とうとします。
つまり、水素イオンを血液中で大きく増やすことは困難なのです。
水素水であれば血液中の水素イオンが増えるという根拠はなく、そのような非科学的な現象が起こるとは考えられません。
ただし、服用して血液中に入るまで(口腔~小腸)の範囲であれば、水素イオンが有益に働く可能性はあります。
顔や皮膚の洗浄に使用する場合も同じですが、水素水の価格を考えれば、このような使用は相当の資産家でないとできないでしょう。
少なくとも、血液を介さないと到達できない臓器や組織には、水素水でないと得られないメリットなどありません。
以上が科学的に見た評価です。
しかし、どこそこの湧水が眼病に効くという言伝えもあります。
多くの事例は、効くと信じて使えば2割程度の人には効いたような気がする=プラセボ効果という現象です。
水素水は、この類の品だと考えた方がよいと思います。