ジェロントロジー・高齢社会の人間学をテーマにしています        開かれた介護、閉ざされた介護    

Top page 

マーク 開かれた介護と閉ざされた介護  (2009年度厚生労働省調査による)

 65歳以上の高齢者に対する家族からの虐待件数は2009年度4.9%増の1万5615件で
  調査を始めて(06年調査)より最多となったと報告されています。
 虐待による死者も8人増の32人と最も多かった06年度と並びました。
 特別養護老人ホーム・グループホームなど施設の職員による虐待も8.6%増の76件。
 在宅・施設等での報告を受けた件数のみであり、実際にはもっと多くの虐待もあるような
 気がします。
 個人的な見解ですが、閉ざされた介護がその大きな原因ではないかと考えられます。
1・開かれた介護

 「助けて」といえる介護が開かれた介護といえます。一人で抱え込まない、
在宅の場合には、ホームヘルパーの上手な利用、隣近所の方々と話し合える関係を構築する
ことが大切と考えています。

 介護につきものの認知症は決して恥ずかしいものでなく、これは病気であり、認知症を
病んでる方が一番苦しんでいるということを忘れないでほしいものです。
認知症について話していると「ぼけたら何も判らないから一番いい」などと話す方も最近
でも時々出会うことがありますが、とんでもない話で、認知症の方ほど正直に相手をみて
います。損得を考えずに自分を表現しています。それを認知症と考えて貰いたくありません。
本心を正直に口に出しているような気がしてなりません。怖い時があります。
 これらのことを理解し、親族が認知症を病んでいることは恥ずかしいことでなく「助けて」
と兄弟・姉妹・地域包括支援センター・介護業者などに相談し、協力を要請できる日常が、

開かれた介護といえるのではないかと思考します。

 施設も決して特別な場所でなく、一つの社会であると思っています。
多くの近隣の人々、利用者の家族等々が多く出入りしている施設は開かれた施設でしょう。
 施設の職員の方にお願いしたい「素人の意見を大切にして下さい」と。
介護経験が長くなると自分の経験こそがもっとも正しいと思っているような方に
お逢いすることがあります。
素人の意見に耳を貸さない職員は利用者に対しても管理傾向がみられます。

 数人の高齢の方々(介護認定者でない)とお付き合いさせてもらっていますが、
これらの方々も自分の現状を他人に判って貰うことが介護前の開かれた介護予防でしょうか。
家を出ない方をどうするれば外に出て話す機会を創ることができるかが問題でありますが、
個人情報保護法が邪魔をしている面も多々あります。
本当の介護予防には行政と民間が力を合わせる必要があるのではないでしょうか。
町中の小さなグループに陽をあてて欲しいものと考えています。
 今後益々「開かれた介護」に向けて努力してゆきたいものです。
 現在は、認知症の方々に接するこころと技法が多く発表されています。
介護者のみが勉強するのではなく私達も一緒に勉強したいものです。

2・閉ざされた介護

 家族や同居人による虐待に関する相談・通報は7.9%増の2万30404件で、
その内1万5615件が虐待と確認されています。
 被害者件数は1万6002人(1件で複数の場合もある)
女性が80%近くを占めています。
亡くなった32人の理由は 「介護者による殺人」17人
            「介護放棄」による致死6人
            「暴行」などによる致死5人
虐待の加害者は、息子・・41% 夫・・17.7% 娘・・15.2%
内容別では(複数回答)「身体的虐待」・・63.5%  暴言など「心理的虐待」・38.2%
 財産取り上げなど「経済的虐待」・・26.1%  「介護放棄」・・25.5%

 施設職員による虐待は408件の相談や通報が寄せられています。

 これらの虐待をみてみますと、本来は優しくて愛情深い人々と思います。
当初は一人でもしっかりと面倒を見よう、介護に努めようと考えている方々と思いますが、
時間の経過とともにストレスが溜まり、こんな筈ではなかったとの思いが次第に忍び寄って
来るのではないでしょうか。
 そのような時に「恥ずかしい」「自分が頑張る」「外の人に知られたくない」などと
色々な思いから抱え込んでしまうのではないでしょうか。
 これらの予防には、
 イ)先ず第1に夫婦で協力することだと考えます。
   二人で(どちらの親であれ)話し合い,たまには意見の相違のために喧嘩する
   こともあるでしょう。
   建設的な喧嘩は大いにすべきです。
   次のステップとする勉強と思って欲しいものです。
   注意深く看ていますと、子供(息子・娘)の場合「自分の親のため」と思って
   やっていることが「自分の安心感を満たすために」「自分の達成感を満たすために」
   と思われるような状況に出会うこともあります。
   一生懸命介護している方はそれらが気付かないのです。
   客観的な眼で見ることも必要です。
   知らず知らずに自分の思い通りの介護に気付かない場合に
   抱え込んでしまい「閉ざされた介護」となる可能性が潜んでいます。
 ロ)兄弟姉妹
   兄弟姉妹は、おそらく仕事を抱えていることでしょう。遠く離れていることも
   あるでしょう。
   では、そのような兄弟姉妹は何ができるのでしょうか。
   直接介護に携わることができない方は、中心となっている方をこころより応援して
   ほしいものです。
   こころの応援、経済的な応援、しばしの休日など多くの支援があると考えます。
   「親を看て貰って有難う」だけでも気分は晴れます。
 ハ)在宅の場合
   近所の方に介護を頑張っていることを判って貰いましょう。
   きっといろいろな情報が集まってきますし、情報を提供してくれる方も出てくること
   でしょう。デイサービス・ショートステイ等など介護保険で利用できることを
   大いに利用しようではありませんか。
   無理してでも休みを取ることを考えて下さい。
   あなたがいなくとも「介護されている人」が直ちに悪くなることもありません。
   介護者以外の方々を信頼することも非常に大切です。必ず救いの手が現れます。
   しかし、閉ざされておりましたら、あなたが介護していることさえ近所の方々は
   知らないのです。
   介護のドアを開いて下さい。
 ニ)施設
   施設に入れば介護はおしまいではありません。
   要介護者のことを一番知っておるのは親族であるあなたです。
   施設を利用できるようになっても家族としてもつながりを持てるようにして
   欲しいものです。
   施設と協力体制を構築し、協力しあいながら大切な親族のことを考えて下さい。

 人間の命は、永遠ではありません。その人の持っている寿命があります。
介護者の思いだけで介護をすると介護される方は迷惑と思っていることも多々あると
思考します。
食べたくない時・眠る方がよいとき等など無理に強いることはやめにすることが大切です。
静かに見守る時間も必要です。
 「閉ざされた介護」より「開かれた介護」を目指して、安らかな一生が全うできるように。

                       シニア ライフ アドバイザー
                                 岡島貞雄

Top page


終末ケアに関わる人々 老人施設での安心感 死生学
高齢期の3ステージ モリー先生との火曜日 夫婦介護
看取り Gerontologyとは 老成と老衰
孤独について 生と死 認知症と拘束
老いと時間 老いには夢がある 生きると自立
老人施設での安心感 介護老人福祉施設の優しい人たち 高齢者のリハビリ
高齢者介護と延命について  介護と終末ケアについて(1) 高齢者虐待
介護施設のターミナルケア(1) 介護施設のターミナルケア(2) 介護と胃ろう
老人福祉施設と往復切符 高齢者のこころのサイン すばらしき人々
高齢者(神様)との会話 気をつけたい言葉と行動 者間距離
高齢者介護に思うこと 高齢期の3ステージ 認知症と拘束
老いには夢がある 映画(海洋天堂)と成年後見制度  小さな復活
     
老いの心・技・体 ユマニチュードによる介護  
高齢期と安心感 高齢期を生きる  介護と看取り
 笑う門には福来る 病いとこころ