ジェロントロジー・高齢社会の人間学をテーマにしています           介護と終末ケアについて @ 

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記号  はじめに

 中学校時代の教師から、私に逢いたいとの連絡が入りました。
教師とは、55年間逢ったことがありません。
徳島県は、私の故郷ですが、故郷の中学校時代の先生で野球の監督をしていました。
その恩師は、年齢は97歳で高齢者施設では言葉が出ない、笑顔がない、認知症として
対応されていました。
 ある日、そこの副施設長が話しかけると会話が続き、私の名前が出てきたそうです。
連絡を受け、神戸から徳島まで面会に行きました。素晴らしい会話と思い出話ができました。

 高齢者に接する場合は、こころして話を聴いてほしいものです。
認知症でない高齢者をまわりの職員や家族、その他の人々が勝手に認知症と決めてしまって
いることが多いような気がしてなりません。
認知症と言われる方は、純粋で、きれいな、子供のようなこころをもった方が多いのです。
ゆっくりと相手にあわせて、目を見つめて会話を進めてほしいものです。
 今回の恩師との再会で、ますます接するこちらのこころが、大切なことが判りました。



記号 介護と終末ケアについて

 
ある日、介護の専門家と言われる方々とお話しをする機会をもつことができました。
「特別養護老人ホームでの終末ケアとは、どのようなことをするのですか」と質問しました
が、首をかしげるばかりで回答を得ることはできませんでした。

 そこで、終末ケアは、介護の点数が増加するのですが、それはどのようなことをするために
料金が増えるのですかとも質問してみました。残念ですが明快なる回答はありませんでした。
結局は、一人一人違い、一人一人の答えがあるということでしょうか。

 それ以来私なりに色々と考えました。
現在多くの方が、施設で終末期と言われるような状態で、苦しんでいる方がおられますが、
その実例を私なりに考えてみました。

項目
 ある高齢女性の場合
 仮にAさんとします。(90歳 要介護度5)
 Aさんは、昨年の2月頃から体調を崩し、食欲が進みません。Bさんが毎日施設に通い、
食事介助、水分補給摂取に施設と協力しながら介助のお手伝い(施設職員の)をしています。
 昨年の1月半ばに風邪がもとで食べない、飲まないの状態がつづきました。
施設の看護師は、終末ですとBさんに宣言しました。Bさんは、もう一度元気にとの気持ちか
ら医師、介護士等の方々との連携で毎日頑張り、見事看護師の宣言を見返しました。
回復し体力がついたときには食物(固形物)を口に入れて美味しいと食べてくれました。
 今年(2009年)も同じような風邪がもとで食べない、飲まないの状態が続いています。
昨年との違いは、摂食障害が続き固形物を口にしようとしないことです。
えん下力はしっかりあるので、口に飲み物が入ると、「美味しい」と聴くと、頷いてくれま
す。高栄養食(エンシュア・メイバランス等)を主食にし、果物・チーズ・バター等などを
混ぜミキシングし、口に運びます。1日施設の食べ物と合わせ1000cc以上となるようにと
頑張っていますが、1000ccには届かない日が多くなりました。

 Bさんは、Aさんのために考え出した食べ物のレシピを作成しています。

 連絡帳
 
施設の介護士・訪問ドクター・Bさんとの間で連絡帳で意見交換しています。夜勤介護士が
Aさんの状況を書いて下さることが本当にうれしく、安心感を頂けるとBさん言います。
訪問ドクターや訪問看護師さんも記入してくれます。
 Aさんの状態、点滴の必要性など、多くの面でアドバイスしてくれます。
Aさんは、恵まれていると言えるのではないでしょうか。幸せと思っていることでしょう。
項目
 Aさんについて
 
時々本当にAさんは、幸せだろうかと疑問を呈することがあります。
Aさんの食事介助は、くすり吸い飲み器あるいは子供に薬を飲ます「スポイト」を使用し、
(Bさんは)1回口にできる量は2cc〜3ccでゆっくり口内で味わいながら飲んでいま
す。Bさんは、介助のとき300cc〜400cc食べさせて(飲ませて)います。

 私が「Aさんは、本当に生きたいのか、それとも他の選択を望んでいるのか判らない」と
言うことがあります。「現状では,胃ろうや経管栄養補給と同じでBさんはそれをしないと
いう選択をしているのではありませんか」と非常にきつい言葉で私が話すことがあります。
 Aさんについて多くの方々の言葉
Bさん   「もう一度食べたいと生きる気力が戻って欲しい」の希望で頑張っています。
訪問Dr.・看護師「Bさんの思い通りにこころをつくすことそれが終末ケアと言えます」
        「悔いが残らないようにこころを尽くして下さい」
看護師「Aさんは、もう終末です。覚悟をしておくことです」それから1年半になります。
介護職員「Aさんが言葉にならない言葉を使いもっと生きたいと言っているかも知れません」

       Bさんは介護の方のことばに喜び元気が出たそうです。


 Bさん・その他の人々の喜び
 
Aさんは、1日に1回しか笑顔が出ない日。その笑顔も声としてなかなか出ません。
よく見ていないと見逃す程度の笑いです。しかし、この笑顔が見たくて介護する力が湧いて
きますとBさんは話しています。
 介護職員や施設の看護師さんが、「今日,Aさんが手でピアノを弾く真似をしてくれました」
などとAさんの表情を報告してくれます。職員さん達のこころつかいがうれしいそうです。


 終末ケアってなんだろうか
 
一人一人違い、家族としての思いも違い、全ての人々の思いも違います。
確たる回答はないと考えますが、唯一つ言えることは、

「残された家族に悔いが残らないようにすること」と言えますが、
一生懸命に頑張った人ほど「もっともっとしてあげられたのでは」
との思いが残るのではないでしょうか。そして落ち込むことが多々あると思います。
頑張った人の悩みを支えることができるのは夫であり、妻であり。そして家族だと思います。
 Aさんが、笑顔がある間、食べる(飲む)力がある間、Bさんは頑張ることでしょう。
まわりの人々がBさんを支えてやって欲しいと何時も願っています。

項目
 
フレーフレーAさん、少しでも多く笑顔を見せて下さい。
 フレーフレーBさん、客観的な視点を持つこともAさんの幸せにつなぐことを忘れずに、
           身体に気をつけて優しくしてあげて下さい。


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