ジェロントロジー・高齢社会の人間学をテーマにしています        “ ユマニチュード ” による介護

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 タイトル  ユマニチュード による介護

 
 最近テレビや新聞紙上でユマニチュードによる介護が話題になっています。
 以前はバリデーション療法、パーソン・センタード・ケアなどが取り上げら
 れていました。


  
それらを実施する為には時間・マンパワー・教育・待遇の改善をする必要が
 あります。これらの療法を実施する環境の整備に心したいものです。

 ユマニチュードは決して目新しいものでなく、心ある家族や介護職員はすでに
 実行しています。


イラスト  私が考える “ユマニチュード”について

 介護の基本特に認知症を病む方々に対しては、本人が主役であり、
決して介護人や家族が自分の勝手な考えで認知症の方を管理しないことだと思い
ます。

 
相手を思いやる、優しい心で接することが基本中の基本であり、それをこころ
してユマニチュードに取り組んで欲しいものです。職員も高齢者の笑顔に接する
時には待遇のことなど忘れて「仕事のやり甲斐」を実感すると思います。


1・目を合わす


 高齢者であれ、認知症の方であれ目線を合わし、優しくこころを込めて見つめ
ることは基本でしょう。
私たちの顔の表情は鏡です。こちらが不機嫌ですと相手も必ず嫌な顔をすると
思います。私たちの笑顔はミラーです。介護者は、自分個人の感情を介護現場
に持ち込まないことが求めれれます。

 優しく目線を合わせていると認知症を病んでいる人の僅かな表情の変化を
読み取ることが出来ます。
認知症の方の表情が穏やかになるまで、また、言葉を口にするまで待つことも
大切かも知れません。仕事におわれ、時間的余裕がないのが現状です。
しかし、それで高齢者が不快な思いをするようでしたら、介護施設の本来の目的
を忘れていることになります。被介護者が、主役ということを常にこころに
入れておいて欲しいものです。


2・話しかける(心からのコミュニケーション)

 施設でよく見かけることですが、スタッフが高齢者に話しかける言葉が
仕事のことだけが多いようです。
少し余裕をもって仕事以外に楽しい話が欲しいものです。言葉は、ゆっくりと
同時に二つのことを話さずに一つ一つに区切りをつけて、一つの言葉に一つの
答えが返ってくるまで、待つ気持ちと時間が欲しいものです。

 施設でも在宅でも、認知症であれそうでなくとも、高齢者は寂しいのです。
認知症の人でも、感情はしっかりと持っています。楽しいことはしっかりと
覚えています。
 特別養護老人ホームを十数年訪問しています。認知症と言われている方と沢山
おしゃべりをしました。
方向違いの会話でも当人にとっては大切なことなのです。認知症と言われている
方も、私の名前も覚えられない方が、久しぶりに訪問すると手を挙げて、笑顔を
送ってくれます。中には抱き付いてくる方もいました。
 目を合わせ、優しくゆっくりと話しかけて下さい。きっと私達にも嬉しい感情
が湧いてきます。

3・触れる

 触れることは難しいのです。NHKのテレビでは、寝たきりと言われる方の手に
優しく触れていましたが、触れるということはお互いの信頼関係と相性が必要で
しょう。自分で自分の行動が自由にできない方に、一方的に顔や手を触っている
方を見かけたことがありますが、高齢者は不安そうでした。

 認知症と言われる方は、私達より感情は敏感です。本能的に好き嫌いを判断し
ます。高齢者に触れる場合にはその場をよく観察し、認知症の方の表情を読む力
が必要と思われます。
認知症と言われる方でも自分の方から手を出してくることがよくあります。
寝たきりの方には静かに寄り添い、ムードが出るまで待つ必要があります。

 NHKの放送のように優しく触れれば直ちに効果が出るものではないと考えま
す。多くの時間をかけて、触れることの優しさを感じられるように職員は勉強
する必要があります。忙しく触れることは逆効果です。


4・立つ 

 私の義母は要介護度5で私達夫婦のもとに来ました。
その後、介護施設で要介護度4となり自走式車椅子を動かせるようになり、
職員もおどろいていました。当初は私達夫婦二人で毎日施設に通いました。

 ”立つ”に関しては、私が部屋の入口より、車いすの義母が少し歩く姿勢を
保てる高さで抱え上げ、義母自らの足の力を考えて、一歩二歩と適度の負担を
かけて、ほぼ毎日10メートル位歩いていました。時に体重の移動を強くした
り弱くしたり、良い加減にして、立つことは重要だと実感しました。
立つ力が衰えるのと平行に、食べる力が衰えてきたようでした。

 現状の施設では、忙しすぎる職員に全て任せることは酷すぎると思います。
家族と施設の協力体制が必要ではないでしょうか。
 事故や怪我を必要以上に恐れて、車いすを使用する傾向がみられます。
また、事故が発生した場合には、施設の責任を追及するばかりに力をいれる家族
もいますが、そのために車いすを使用するようになるのです。
事故について施設の責任を厳しく追及する家族は、普段施設を訪問していない
家族に多いようです。
 一方施設側としては、事故の原因を精査し、正しく事故を判断して、再発防止
に努めるべきです。
 何となく問題化せずにやり過ごすことが無いようにして欲しいものです。

 ”ユマニチュード”という素晴らしいケアを求めるのであれば、最初に述べて
いるように、「時間」「マンパワー」「教育」が必要でしょう。
介護現場の職員は頑張っています。

 介護職員にお願いしたいことは認知症と言われる方の笑顔にこころを込めて
下さい。笑顔を喜びとして下さい。「待遇の改善」も必要でしょう。
しかし、認知症の方の笑顔を自分の喜びとして勤めていますと、必ず社会的に
努力が認められることでしょう。
介護職員として誇りをもって日々勤めて欲しいものです。

 今になくてはならない仕事の一つになると確信しております。

                                シニア ライフ アドバイザー
                                      岡島 貞雄



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