ジェロントロジー・高齢社会の人間学をテーマにしています            老人施設での安心感 ” 

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マーク                                「老人施設での安心感」
  
  介護老人福祉施設などを訪問しますと、寂しそうな方、不安げな方、おどおどして
 いる方などをよく見受けます。

 そのような方に安心して頂くためには何が大切か、職員や家族がどのような接し方を
 すれば安心し、本来の姿にかえり、日々を過ごすことができるかを考えてみたいと思
 います。


 
 施設に預けたのだから面会の必要はありません、とか面会しても判らないのだから
 面会の意味がありませんとか、面会に来ない理由を自分勝手な言いわけで誤魔化し
 ている家族もいますが、あなたが子供時代に、現在認知症や身体が不自由で寂しが
 っている、お父さんやお母さんがいない時は寂しくなかったですか。


 現在は、家を離れて一人知らないところで生活しているお父さんやお母さんは寂しさ
 と不安感で日々暮らしているのです。

 不安感や寂しさが、認知症の周辺症状となって表れている方が多く見受けられます。
「だいじょうぶ」と思われる環境を一緒に創りませんか。

マーク
 1) 家族の大切さ

   老人ホームを訪問しますと、「家に帰りたい」「私のお母さんは何処」過去に買い物
 に出かけた商店街への行き方など、会う人にたずねている利用者がいます。


  その方達は、自分の家族への思いが込められているような気がしてなりません。
 しかし、そのような方の家族はほとんどといっていいほど面会の場面に出会うことが
 ありません。そのような方に親族とか、友達が面会に見えますと笑顔が違うのです。

 寂しそうな笑顔から本当にうれしそうな笑顔と変わります。

  その笑顔は、しばらく続くのです。

 他県より会いに来られる娘さんと利用者Aさんの会話です。

 「今度いつ来るの」「遠いのでそれほど来ることは出来ないのです」
 「来る日を決めて」「1ヶ月後の土曜日に来ます」
 「有難うカレンダーに書いておいて」

 利用者Aさんは、カレンダーを見ながら、「それまで元気に居れるかどうかわからない」
 そのような言葉を投げかけて娘さんとの別れを寂しがっています。

 娘さんは、非常に優しい方なのです。こころをこめてお母さんを励まし、私に声をかけ
 て帰ってゆきます。その後はしばらくAさんは、私に話しかけてきます。

 娘さんと別れたことが寂しくて私との会話となるのでしょう。

 老人ホームの生活が始まってこそ、家族としてのあなたが必要なのです。

 あなたが面会に来ることを楽しみにして日々過ごすことができればどれほど楽しく
 生活できることでしょうか。


 月に一度でいいのです。あなたのお父さんやお母さんが、
 あなたの来るのが楽しみになるようにしてあげて下さい。それを楽しみにして日々
 生活することでしょう。


 2) 職員の大切さ

 老人施設で生活している方に人気のある職員はどのような職員と思いますか。

 利用者に人気のある職人は、あまり上司の受けはいいような気がしません。
 反対に上司の受けがいい職員は、反対に利用者には人気がそれほどでもありません。

 何故でしょうか、忙しすぎるのです。走る・動きが早い、これらの行動は、年老いた
 方にはついて行けないのです。

 仕事を早くこなす為につい管理的な言葉や行動となります。
 そのことに自分(職員)が気付いていないことに問題があります。
 聞くでなく、聴くを心がけて欲しいのです。

 聴く⇒14のこころの耳です。何故という言葉を出来るだけ使わずに相手のペースに
 合わせて話しかけて下さい。
 トイレでも、移乗の場合でも、食事の場でも、年老いた方々に合わせて下さい。

 もし、それができないほどに忙しいのであれば、どうすれば忙しすぎから脱却できるか、
 考えて社会に訴えるべきと思います。
 意外と老人施設のことは知られていません。
 
 老人施設の環境を素晴らしい場所にしたいのです。
 専門家の皆様に考えて欲しいと願っています。


 3) 外部の目の大切さ

 老人施設も立派な社会です。
 特殊な社会ではありません。多くの外部の方に施設を訪問して欲しいと考えています。

 でも、いまだに老人ホームの建設や終末ケアの施設を建設しようとすると反対運動が
 おこります。人の死こそは、誰にも避けることができない、その人個人のものです。
 全ての人々に訪れることなのです。そして必ず訪れます。

 安らかなその人らしい終末を迎えることができる場所があってもいいのではありませんか。

 まだまだ、老人ホームに対する認識が十分とは思われません。ボランティアもいいし、
 家族でもいいし、その他多くの第三者が出入りすることで素晴らしい老人施設ができる
 と考えていますが、間違っているでしょうか?

 職員はプロです。プロは現状が当り前という感覚が知らない間に身について、
 新しいことに気付くことがなくなる危険性があります。
 勿論、プロとして知識を自ら深め、心も素晴らしく尊敬している方が多くいます。
 一人でも多くの方が私達素人から見て尊敬できる職員に育ってほしいものです。


 4) 社会の大切さ
 老人施設の仕事は、社会的に最も難しく、大切な仕事を行っています。

 そのことをどれだけの社会の人々が理解しているのでしょうか。
 また、反対に楽な方面に流されると、これほど楽な仕事もないと考えています。

 老人施設の幹部の方々は、もっともっと社会へ訴えて職員の仕事の環境の向上を
 目指して欲しいものです。職員の幸せ無くしては、利用者の幸せはあり得ません。

 北欧の福祉が素晴らしいと言われていますが、それは、社会が福祉の仕事を認めて
 いるからです。福祉関係で仕事をしている人達が、自分の仕事に誇りがもてるから
 です。一方、日本の場合には、一つの老人福祉施設での在籍期間が短く、渡り鳥の
 ごとく施設を替えてゆく職員もいます。

 社会的にも認知され、老人施設で働く方々が誇りをもてる環境を創りたいものです。

 5) 制度の大切さ

 介護老人福祉施設の平均介護度が、4以上を超える施設では、胃ろうの手術を施した
 利用者が多く生活しています。
 あまりにも胃ろうの方が多すぎますと、施設の中での普通の生活が奪われるような気
 がします。胃ろうの方は当然のごとく尿道留置カテーテルを施しています。

 以前には、それほど胃ろうを施した方はいなかったような気がします。

 介護療養型の施設を少なくする施策がこの結果と考えます。

 多床式の部屋(4人)に2人が胃ろうをし、ほぼ寝たきりとなっている施設もあると
 聞きます。比較的元気で、判断能力もあり、動ける利用者の方はそれらを見て
 どのように思っていることでしょうか。

 福祉と国の資金の問題ですが、私達市民も自分のこととして将来を考え、自分が
 老人施設で生活しなければならない場合にはどうあるべきか考えて下さい。

 デンマークは、消費税25%・所得税最低50%です。
 しかし、選挙の投票率は約80%だそうです。
 そして世界で最も幸せな国といわれています。何故でしょうか。

 私達も一度真剣に考えてみる必要があるような気がします。


                           シニア ライフ アドバイザー
                                岡島 貞雄


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