ジェロントロジー・高齢社会の人間学をテーマにしています     “ 病いとこころ ” 

   Top page

    コミュニケーション力   病いとこころ・・・・・・生活不活発病

 不幸にして病いに侵され体に不具合が生じた場合には治療と養生に専念することが
必要です。しかし、必要以上に養生という言葉に惑わされますと動くのが嫌になる状況に
なることもあります。いわゆるー「生活不活発病」ーです。
 高齢期の方、老人ホームでの観察を私なりに述べてみます。

2015.1月
タイトル 
  
 1)「病気の為か、こころの弱りか」動かなくなるのは
 
 

   老人ホームでよく見かける光景ですが、入院し、退院後にあまり大事を取って寝かせきり、
  本人の思うままの介護は元の元気さが失われてしまうようです。
  総体的に退院後は、体力や気力が衰えて帰ってきます。
  何故でしょうか。中には病気を治して心が萎えてしまっているような方も見かけます。
  退院後の介護の大切さをつくづく考えます。退院後はこころが弱くなっています。

   退院後は、個別的な介護や動きのお手伝いが必要ではないでしょうか。
  老人施設の職員はマンパワーに限りがあります。
  この場合は、可能な限り “家族の出番” ではないかと思います。高齢者も家族には
  安心感がありますし、入院前の気力が回復するまでは “家族の力” が大きく左右すると
  考えています。

   毎日でなくともいいのです。ケアマネジャーとよく打ち合わせをお願いしたいものです。
  在宅の場合も同様と思います。優しすぎて、本人のすべきことを取り上げないでください。
  ただ、その場合、“病後の方が安心できる雰囲気と環境” が大切です。本人任せにしない
  ことです。<見守りの大切さ> と <思いやりのこころで> 見守ってあげて下さい。


 2) 手助け(お手伝い)って何

   グループなどで話していますと「あまり手出しをすると癖になる」やることはやらせると
  いう話をよく聴きます。家事や日常生活を本人のために何もしない「本人に任せている」
  ことがいいように取れる会話に時々出会います。
  これは、やりっぱなしです。本人は動きに不安感をもっていることでしょう。

  「手助け」とは安心感を感じることが出来る雰囲気と優しい気持ちでと見守ることと思います。
  病後の方は動きに不安感があります。その不安感を安心感に変えるのも手助けと思います。
  手助けとは、こころの安心感がもてるようにすること。これも大きな手助けです。


 3) “受け入れ”と“あきらめ”の違い

   退院後、施設のソファなどに静かに座っている方は、現状を受け入れている方とあきらめ
  の感情で無表情で座っている方に分かれます。
  話しかけてみると良く判ります。現状を受け入れている方は、話に力がありますが、
  あきらめの心境で座っている方は、話しかけても反応が鈍いのです。
  
   会話を上手につくりだし、こころを開くことが大切と思います。
  このまま不安感で何もせずに時間を過ごすことは、動きが鈍くなり、生活不活発病の原因
  の大きな一つとなります。
  よく見極めて退院後の大切な時期に、適切な手を差し伸べて欲しいものです。

 
4) 目的と役割

   日常生活に目的を持ってもらうことも必要です。何か楽しいことを自らが考えるとか、
  見つける等など。
  身の回りの小さな楽しみを目的とすることで日常の動きに「はり」が出て来ると思います。
  家の周りの自然を観察する、新聞を読む、散歩する(自然観察)などの楽しみを見つける
  ことで目的ができることでしょう。

   目的が出来ましても、病後の身体では実行できない場合が多々あると思います。
  周りの方々は、それをお手伝いすることが大切です。
  目的を実行するためにはいろいろな役割があります。
  お手伝いする方が全てお手伝いするのではなく、本人に何かの役割をもってもらうことが
  必要と考えます。
  お手伝いする人と病後の身体の動きが定かでない方との二人三脚で共に実行することで
  楽しみも倍加するものと考えます。


 5) “散歩”と“書く”と“話す”こと

   先ずは近所を散歩することがいいと思いますが、最初は誰かが一緒に散歩することが
  大切ですし、無理しないことです。ゆっくりゆっくりと亀の子の歩きも良いようです。
  ゆっくりすることで、身体に自然をいっぱい受けることが出来ます。

   私の知り合いの高齢者で絵を描く、知り合いに手紙を書くなど素晴らしい日々を実行して
  いる方がいます。「書くことは」自分の心の整理にもつながります。
   「えんがわくらぶ」という高齢者の自由なつどいの中の方で「散歩・書く・話す」など全て
  兼ね備えている方もいますが、話すことが<大好き>という方もおられます。
  自然体として人の集まりに参加し、話を聴き、自分を話して楽しんでおられる高齢者もいま
  す。まずは楽しい雰囲気の中に入ることが、生活不活発病の防止に一番だと思います。

   人生に終わりという言葉はありません。生きているその日まで楽しむことが出来ましたら
  最高でしょう。しかし、少しづつ自分のことが自分で実行できなくなるのは自然の摂理です。
  少しづつ親族や施設の職員の方にお手伝いをお願いすることも良いことです。
  その中で目的を作り役割をもつことで、大いに楽しむことが出来る人生を目指しています
  が、それこそが難しく大変なことです。

   できない事は、遠慮せずに周りの方々にお願い致しましょう。
  


 
                            シニア ライフ アドバイザー
                                岡 島 貞 雄
                   

Top page


終末ケアに関わる人々 老人施設での安心感 死生学
高齢期の3ステージ モリー先生との火曜日 夫婦介護
看取り Gerontologyとは 老成と老衰
孤独について 生と死 認知症と拘束
老いと時間 老いには夢がある 生きると自立
老人施設での安心感 介護老人福祉施設の優しい人たち 高齢者のリハビリ
高齢者介護と延命について  介護と終末ケアについて(1) 高齢者虐待
介護施設のターミナルケア(1) 介護施設のターミナルケア(2) 介護と胃ろう
老人福祉施設と往復切符 高齢者のこころのサイン すばらしき人々
高齢者(神様)との会話 気をつけたい言葉と行動
高齢者介護に思うこと 高齢期の3ステージ
老いには夢がある 映画(海洋天堂)と成年後見制度  小さな復活
     
 老いの心・技・体  ユマニチュードによる介護  介護と看取り
 高齢期と安心感   笑う門には福来る  高齢期を生きる