ジェロントロジー・高齢社会の人間学をテーマにしています            介護施設のターミナルケア(1)

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マーク 病気による終末は、医師の診断で判る面があり判断がたやすいと思います。
しかし、老衰による終末はどのように判断すればよいのかよく判りません。

 現在まで関わってきたOさんについて感じること、しなければならないことなどを経験から
述べてみます。
はたしてOさんは、ターミナルケアと言えるかどうは定かではありませんが、
2年前の2月には「覚悟しなさい」と言われたのですが・・・。元気に頑張っています。
1)終末の判断
 病気の場合は、医師により診断されるために比較的に時間的なものが判断できやすく、
それに対応したケアを考えて家族は、本人の望む環境を作ることに専念することができると思

います。しかし高齢期の老衰の場合には終末の判断が難しく、時間的な判断もできないもので
す。ただ、「高齢だから」という一言で片づけることはできません。
 私の知り合いのOさんも「もう駄目です」と施設の看護師に宣言されてから3回目の
冬を迎えました。
 今年の冬が最も元気です。「もう駄目だから覚悟しなさい」という言葉は何だったのでしょ

うか。
 老衰のターミナルケアは基本的には判断できないものと考えています。それほど難しいとい

うことではないでしょうか。介護施設の看護など専門家の方は、簡単に言葉を使わないで欲し
いものです。

2)介護施設の素晴らしい職員たち
 Oさんのご家族は、ほぼ毎日施設に通い、食事と水分補給に通っています。

交換日誌を職員と交わしています。夜勤時のOさんの状態など家族では判らないことを
教えてくれます。家族にとっては力強く、家族も家族として感じること、希望などを連絡し合

い施設との協働で90歳になり3回目の危機を乗り切れそうですと話しています。
(もうすぐ91歳)
 もう、Oさんの言葉は聴くことができないと思っていた家族は職員からの一言で勇気すらでる

と言っています。<昨年の夏以降、声を発することができませんでしたが・・・この3月から、
発語があり、日に日に言葉数が増えています。
 夜、「有難う」「うれしい」「ほっとけばよろし」「あなたは誰?」等などと会話したこと

などを、連絡帳に書いてくれるそうです。
 ご家族も連絡帳には、職員に対するお礼の言葉、Oさんの様子などきめ細かく書いているよう
です。

3)連絡帳
 連絡帳には、その日のことは当然に書いています。誰でも見ることができるようにサイドテ

ーブルの上に置いてあります。私も時々見せて貰います。
 連絡帳には、毎日の水分補給量・食事内容・身体の状態等などOさんに対する日記帳と
言えるようです。往診してくださる主治医や訪問看護師、介護士は勿論、家族、訪問者全て
の関係者が記入し見ることができます。
 一人の高齢者、特に一度終末を宣言されたOさんが3年目を迎えたのです。
今後どのような対応にどのような状況が出てくるか。どのような安らかな最期を迎えることが

できるか、必ず来る終末に備えて看たいと職員も家族も話し合っています。
 食事帳も記入しています。連絡帳より内容は具体的です。それにより施設の職員と話し合い

職員は、Oさんの食事について考えてくれているようです。
Oさんは、本当に幸せな方だと考えています。


4)身体の状態・こころの状態について考え実行したいこと

 イ) ひとりごと(独語)    
高齢者(神様)との会話をご参照ください

 Oさんは、ひとりごとが多く出ます。それに対して「やかましい」「いい加減にして」
「静かに・・・」などなど注意していましたが、よく考えてみますと、私自身でも困った
ときや、うれしい時にはひとりごとが出てくることに気付きました。
であるならば、Oさんもひとりごとには、いろいろな意味があるのではないでしょうか。

あまり制止せず、静かに聴いてこころの状態を推し量るように努力する必要があるような気が

してきました。

 よく出る言葉「おっおっお」「ううう」唸り声のようなもの「こわい、こわい」「あほ」

「みな、あほや」「やかましい」「あっちへ行け」、、、「ごめんなさい」「ありがとう」
「おいしい」「あなただれ?」「やりなおせ」等などひとりごとのような、私達に言っている

ような言葉が多く出てきます。

 冷静にその言葉がでて来る雰囲気を考えてみたいと思うようになりました。
きっと、Oさんの本当の気持ちを、叫んでいるのかも知れません。
頭からOさんは認知症、私達は正常として判断していないか大いに反省すべき点だと思います。


 
ロ) 笑う・ゆるむ
 笑うということは非常にいいことであり、最近のOさんは、よく笑うようになりました。
笑えば、脳に酸素がよくゆきますしストレスを和らげる意味からも非常にいいことでしょう。

 私自身でも笑えば身体が温かくなり、身体もこころも緩むような気がします。
Oさんも当然のように身体の具合、こころのありようにより、笑いが違ってきます。
笑う時には、車いすが揺らぐくらいに笑います。

 高齢者特に認知症と言われる方々は常に不安なこころの状態にあります。
自分が想定しない行動(車いすへの移乗や乗り気でない行動を強いられた時)を強いられた
時には身体が強張っています。今後Oさんに対して注意しなければならない重要な点です。

 私自身で考えても身体が強張っている状況では力も出ないし、知恵も出ないし、
ストレスはたまるし、いいことはありません。身体が緩むような環境をを少しでも多く作る
ことがOさんが素晴らしい終末を迎えることになると確信しました。

 何故、そのように感じたかと言えば、若いころスポーツは、野球や柔道をしていましたが、
いい当たり、いい技が出た場合には身体に力が殆ど感じません。
反対にまずいプレーのときには、身体には力が一杯ですし、なんとなくストレスが溜まって
いる感じがしてなりませんでした。


 
Oさんもきっとそうだと思います。気分がいい時には身体が「ゆるんでいる」ことでしょう。

 “ 反省 ・・・認知症だと決めつけないこと、私達が間違っているのかもしれない。
      言葉の意味をしっかり理解できるようにOさんを理解したい・・・
      これからの目標です。

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