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パーキンソン症候群治療薬

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発症機序と症状

統合失調症やうつ病とは違い、パーキンソン症候群の発症機序は解明されています。

脳内の黒質および線条体と呼ばれる部位のドパミン作動神経が変性し、ドパミンの放出量が減少することが直接の原因です。

黒質のドパミン作動神経が線条体のアセチルコリン作動神経を抑制するという調節関係があることから、ドパミンの減少はアセチルコリン作動神経の亢進をもたらします。

コリン作動薬がパーキンソン症候群に禁忌とされているのは、この二次的亢進を更に増強してしまうからです。

統合失調症でもドパミンが登場しましたが、統合失調症が関係するドパミン作動神経は中脳の辺縁系と皮質系だと考えられており、疾患自体に関連性はないようです。

しかし、統合失調症の治療などでドパミンの働きを阻害する薬を使用すると、その影響でパーキンソン症候群を誘発してしまう場合があります。

このように、薬に起因して発症したものを薬剤性パーキンソン病と言います。

また、高齢になると脳内伝達物質が減少してパーキンソン病に似た症状を起こすことがありますが、これを老年性パーキンソニズムと言い、これと対比する意味で、遺伝的要因で発症する場合を、若年性パーキンソン病と言います。

症状としては、錐体外路の機能異常に伴うものが主で、振戦・筋固縮・無動・仮面性顔貌が4大症状とされます。

他にも、特徴的な突進現象(1歩目が出にくく、一旦歩き始めると止まることができない)も起こります。


錐体外路症状という文言が今後も出てきますので、代表的な症状を紹介しておきます。

ジスキネジア:意志に関係なく手足や口・舌が勝手に動く

アカシジア:足がムズムズして正座しておれない

カタレプシー:不自然な姿勢でも自分の意志で変えられない

パーキンソニズム:手の震えや強張り


治療薬

ドパミンの分泌が不足することで起こる疾患ですから、理論的にはドパミンを補充すれば症状は消えます。

しかし、ドパミンは脳関門を通過できない物質であるために、内服や静注によって脳に到達させることができません。

レボドバ

脳関門を通過できるドパミンの前駆物質で、通過後にドパミンに変換されて効果を発揮します。治療薬の中では最も効果に優れるのですが、脳内に移行できるのは服用の数%程度しかなく、通過前に変換されたものは副作用誘発の原因になります。また、長期使用で効果持続時間の短縮(wearing off現象)や効果の変動(on-off現象)が起こり、過量ではジスキネジア誘発もあります。他には、眼圧が上昇するために閉塞隅角緑内障には禁忌、汗や尿が黒っぽくなります。

レボドパは脳内のドパミン分泌を回復させるわけではありませんので、永久に服用しなければならず、徐々に増量が必要となるケースが大部分です。

いかに少量でコントロールするかが重要になり、そのために併用される薬も多種あります。

レボドバ代謝阻害薬

レボドパと併用する薬で、脳関門通過前にドパミンに変換されることを阻害して、中枢への移行量を少しでも増やすことと、末梢でのドパミン刺激を抑制する目的があります。(末梢でのドパミンは、NA放出・Ach抑制に作用します)ドパミンカルボキシラーゼインヒビター(DCI)であるカルビドパはレボドパとの合剤として使用され、末梢性COMT阻害薬のエンタカポンは別剤として併用されます。

MAO-B阻害薬

MAO阻害薬にはAとBの二種のサブタイプがあり、Aは主にノルアドレナリンとセロトニンに作用し、Bは主にドパミンに作用します。MAO-B阻害薬はシナプス間隙におけるドパミンの分解を抑制することで、ドパミンの作用を強めます。ただし、他のモノアミン類に作用しないわけではなく、悪性症候群やセロトニン症候群を誘発する可能性がありますので注意が必要です。(特に、高用量になると選択性がなくなると報告されています)

最近まで国内で使用可能な薬はセレギリンだけでしたが、2018年にラサギリンが登場しました。

セレギリンは覚醒剤原料の指定を受けており、取締法による制約がありますが、ラサギリンはアンフェタミン骨格を有していないため覚醒剤原料の指定はありません。

最近発売されたサフィナミドも同分類の薬で、レボドパと併用して可逆的なMAO-B阻害によってwearing off現象を改善します。

ドパミン放出促進薬

アマンタジンは神経終末からドパミン分泌を促進する作用を持っています。しかし、単独で使用して効果がある程の強さではなく、補助的に使用します。妊娠中および授乳中の使用は禁忌です。

ドパミン受容体作動薬

中枢のドパミン受容体に直接結合して刺激を与える薬です。作用はドパミンより穏やかで、主にレボドバの使用量を減らす目的で使用します。麦角系と非麦角系に大別され、麦角系は下垂体や消化器への有害作用が多いので、一般的には非麦角系を先に試します。(麦角系の代表薬はブロモクリプチン・非麦角系の代表薬はプラミペキソール)ただし、稀ですが、非麦角系は予兆がない突然の眠気を起こす場合があり、車の運転や危険な作業をする者には使用しないことになっています。

中枢性抗コリン薬

相対的に亢進状態になっているアセチルコリン作動神経を抑制する薬で、軽症例には第一選択薬とされます。(代表薬はトリヘキシフェニジル)中枢性と付いているのは脳に移行しやすい種類という意味で、末梢でも抗コリン作用は発現しますので、禁忌などの注意事項は他の抗コリン薬と同じです。中枢におけるアセチルコリンはアルツハイマー型認知症にも関係し、抑制によって認知機能の低下が進む可能性もあります。

アドレナリン補充薬

ドロキシドパはノルアドレナリンの前駆物質で、NA作動性神経の障害によってパーキンソン症候群に随伴するすくみ足や立ちくらみを緩和します。

ドパミン合成促進薬

ゾニサミドはチロシン水酸化酵素を増強する作用があり、チロシンからドパミンの合成を促進します。神経終末の貯蔵ドパミンが不足している場合には有効ですが、充足している場合には効果がありません。

ゾニサミドは抗てんかん薬としても使用される薬で、使用量が大きく違います。

抗てんかん薬

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てんかんの分類

てんかんとは「脳神経の過剰興奮により痙攣または意識消失を起こす疾患」の総称で、発症機序は未だに解明されていません。

おそらく、複数の病態をまとめて「てんかん」と呼んでいるだけで、脳機能の解明が進めば数種の独立した疾患として扱われるようになると思われます。

てんかんの分類は、過去に何度も変更されており、解説している書がいつ書かれたものかで分類法が異なる場合も少なくありません。

現在は、脳に構造的な病変がない特発性・脳に何らかの障害がある症候性という区分と、全般発作を起こす全般・部分発作を起こす局在関連という2種の区分の組み合わせて4つに大別されます。

  • 特発性局在関連てんかん:主に小児期に発症して成長に伴って治りやすく、薬が効きやすい
  • 特発性全般てんかん:主に小児~思春期に発症し、薬は比較的効きやすい
  • 症候性局在関連てんかん:年齢を問わずに発症し、薬の効果には個人差がある
  • 症候性全般てんかん:主に乳幼児期に発症して発達障害を伴いやすく、薬が効きにくい

全般発作および部分発作は型によって細分されます。

部分発作は、過剰興奮が大脳片側の一部から始まるものです。

  • ◎単純部分発作:意識消失はなく、運動や知覚に異常が起こります
  • ◎複雑部分発作:意識消失を伴い、旧分類の精神活動性発作に近いものです
  • ◎二次性全般化発作:全般発作に進展するものです

全般発作は、過剰興奮が大脳両側に発現して意識消失を起こすものです。

  • ◎欠神発作:数秒間の意識消失のみで、旧分類の小発作に近いものです
  • ◎ミオクローヌス発作:手足の筋肉が痙攣を起こす型です
  • ◎強直間代性発作:意識消失と強直性痙攣で始まり、間代性痙攣に移行する型です
  • ◎脱力発作:意識消失と筋緊張の低下を伴う型です

発作の分類も、病理の解明に伴って将来は変更される可能性があります。

薬使用における原則

てんかんの病理が解明されていませんので、根本治療薬は存在せず、中枢神経抑制作用のある薬の中から効果があったものが選ばれているのが現状です。

★発作型に適合した薬の選択★

薬によっては使用すると悪化してしまう発作型があり、薬を選択する上で発作型のチェックは重要です。

新薬では、最初の適応は部分発作への併用使用から始まり、効果や安全性を確認して適応範囲を広げていくことが多いです。

悪化や無効とは関係なく、適応の取得状況によって保険診療では使用できないケースもあります。

合併症の有無・併用薬との相互作用・妊娠の可能性なども、薬物療法を行う上で留意する点ですが、抗てんかん薬は影響が強くかつ広範囲に及ぶ場合が多いので、より慎重な検討が必要です。

★単剤で少量から開始し、効果が得られるまで増量する★

抗てんかん薬は発作時に服用する薬ではなく、発作を起こさないように服用する薬で、有効量にはかなりの個人差があります。

中枢抑制作用によって生活に支障が出る可能性がありますし、重篤な皮膚障害などの副作用報告があるものも多く、安全を確認しながら開始します。

どの段階で有効量に達するのかが分かりませんので、途中で他の薬を併用するよりも、最初の薬を増量していきます。

中毒濃度近くまで増量を要するケースも多く、TDM(薬物血中濃度モニタリング)の対象とされます。

何らかの理由で増量できない場合や、単剤では発作を抑制できない場合には、違う作用の薬を併用します。

他疾患の薬物療法においては、効果が不十分な事例では増量よりも他薬を併用するケースが大部分で、薬の使用方法が基本的に違います。

★発作のコントロールができるまで継続★

少なくても、発作が起こらなくなってから2年以上(成人では5年・小児では3年が目安)は服薬を継続します。

中止する前には段階的に減量していくのが一般的で、急激に減量したり中止すると、重積状態を誘発することがあります。

重積状態とは一定時間以上発作が継続したり、発作の繰り返しで意識が回復しない状態を言い、異常脳波が30分以上続くと脳にダメージが残りますので、緊急対応が必要な状態です。

薬の分類

抗てんかん薬は作用によって大きく5種類に分類されます。

それぞれの特徴と、代表的な薬を紹介します。

① 神経細胞のNaチャンネルを阻害して興奮伝達を抑制する薬。部分発作の治療に使用する中心的な薬ですが、欠神発作には無効や悪化させる薬が多いです。

カルバマセピン:部分発作の第一選択薬です。皮膚障害に注意が必要です。

フェニトイン:鎮静作用がないので使いやすいのですが、欠神発作は悪化させます。歯肉肥厚や小脳萎縮を起こす場合があります。

ラモトリギン:単独で全型に使用可能な薬です。皮膚障害に注意が必要です。

② 神経細胞のCaチャンネルを阻害して興奮伝達を抑制する薬。欠神発作への代表薬なのですが、他型へは悪化の可能性があります。

エトクスシミドやトリメタジオンがこの分類薬です。

③ シナプス小胞体から神経伝達物質の放出を抑制する薬

レベチラセタム:部分発作や強直間代発作に使用します。他と違う作用機序のため、難治例で併用されるケースもあります。眠気や悪性症候群に注意が必要です。

④ 抑制性ニューロンのGABA受容体を刺激する薬。全型に使用できますが、単独使用ではやや弱い薬です。

フェノバルビタール:バルビツール酸系で鎮静作用が強い薬です。薬物相互作用に注意が必要です。

クロナゼパム:ベンゾジアゼピン系で安全性は高いですが、作用は穏やかです。

ジアゼパム:継続服用ではなく、重積状態に静注で使用します。

バルブロ酸ナトリウム:全般発作の第一選択薬です。催奇形性があるために妊娠中は禁忌です。

⑤ 興奮性シナプスのグルタミン酸受容体を抑制する薬

ペランパネル・トピラマート:まだ適応拡大が進んでいない薬で、単独使用ができません。主に部分発作に対して、他の抗てんかん薬と併用して使用します。


一部の薬を除いて、眠気・めまい・ふらつきは避けられない副作用で、仕事に支障があるケースも少なくありません。

自殺企図の副作用報告がある薬もあり、心身両面のフォローが望ましいです。

最近の報告では、初発は小児よりも高齢者に多く、単純部分発作や欠神発作では罹患に気付かれない場合も多いようです

麻薬系鎮痛薬(オピオイド系鎮痛薬)

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慢性疼痛における鎮痛薬選択順序

軽いケガや歯痛などに使用する痛み止めは、局所での炎症を鎮めるを薬を使用するのが一般的です。

しかし、大きなケガや手術に伴う痛み、あるい癌性疼痛と呼ばれる癌の浸潤や骨転移等に伴う痛みは、中枢神経系に作用する鎮痛薬でないと効果がないケースが少なくありません。

中枢神経系に作用する鎮痛薬は、麻薬の指定を受けているものが多く、誰でも気軽に使用できる薬ではありません。

WHOでは、痛みの程度によってどのランクの鎮痛薬を使用するかの目安を示しています。

  • 第一段=NSAIDsや解熱鎮痛薬、必要に応じて鎮痛補助薬を併用
  • 第二段=非麻薬性オピオイドまたは弱オピオイド、必要に応じて第一段薬を併用
  • 第三段=強オピオイド、必要に応じて第一段薬を併用
  • 第四段=メサドン

NSAIDsとは非ステロイド性抗炎症薬であり、解熱鎮痛薬とは抗炎症作用がないアセトアミノフェンやピラゾロン系の薬で、バファリンやロキソニンなどの通常に使う痛み止めは大部分がこの範疇に入ります。

鎮痛補助薬とは併用によって鎮痛効果を高める薬のことで、プレガバリン・ガバペチン・三環系抗うつ薬・SSRI・SNRI・メキシチレン・ノイロトロピン・ベンゾジアゼピン系薬などがあります。(神経障害性疼痛では、NSAIDsや解熱鎮痛薬を使用せずに、これらが第一段の薬になります)

オピオイドとはオピオイド受容体に結合して鎮痛作用を発揮する薬です。

成分によって、麻薬の指定を受けていない非麻薬性オピオイドと、麻薬指定を受けているが作用が比較的穏やかな弱オピオイド・麻薬指定を受けていて作用が強い強オピオイドに分けられます。

(オピオイド受容体にはμ・δ・κの3種がありますが、まだ十分には役割区分が解明されていません)

メサドンも強オピオイドなのですが、最強ランクとされる薬で、別扱いされます。

オピオイド系鎮痛薬の使用方法

一時的な痛みに対してオピオイド系鎮痛薬を全く使わないということではありませんが、強く慢性的な痛みに対して使用するケースが大部分です。

オピオイド系鎮痛薬には用量依存性の副作用や、連用によって依存性を発現する可能性がありますので、使用に際していくつかの注意が必要です。

癌性疼痛に使用するケースが最も分かりやすいと思いますので、そこで使用する方法を紹介します。

タイトレーション:最初は少量から開始し、効果と耐薬性を確認しながら徐々に増量します。(継続使用によって耐性化が起こり、使用量の増量が必要となる場合が多いので、できる限り少量でのコントロールを目指します)

ベース+レスキュー:定時薬(ベース薬)だけで完全鎮痛を目指すのではなく、生活に支障がないレベルの鎮痛にし、突発痛には同成分の速効製剤(レスキュー薬)を追加使用します。(これも使用量を増やさないための方法です)(ベース薬とレスキュー薬を異なる成分にすると総量の把握が難しくなるので同成分とするのが基本ですが、最近は高用量のアセトアミノフェンをレスキュー薬に使うこともあります)

ローテーション:耐性や有害作用によって継続使用が困難な場合は、他成分に変更します。(最初に使用する強オピオイドは原則としてモルヒネで、ベース薬とレスキュー薬が揃っているのは現在4種あります)

アヘンアルカロイド

ケシ科植物の分泌物であるアヘンに含まれる塩基性成分です。

モルヒネ

オピオイド系鎮痛薬の代表薬で、麻薬指定を受けた強オピオイドであり、身体依存性を起こす可能性があります。

鎮痛が発現する使用量を1とした場合の作用と使用量の関係は次のとおりです。(他オピオイドも比率は少し違いますが、似たような傾向があります)

  • 0.02:便秘
  • 0.1 :悪心・嘔吐
  • 1 :鎮痛
  • 2.6 :行動抑制
  • 3.4 :カタトニー
  • 10.4:呼吸抑制

連用によってほぼ全ての作用に耐性化が起こりますが、便秘は消化管平滑筋に対する直接作用であるために耐性化しません。

便秘は鎮痛に必要な量の1/50で起こりますので、モルヒネを使用する上で非常に発現する可能性が高い副作用です。

カタトニーは緊張症とも呼ばれる統合失調症の一種で、突然の興奮・無反応・カタレプシー・幻覚などを起こします。

呼吸抑制は継続使用している状況で常に注意する副作用で、鎮痛作用の耐性化に伴う増量やレスキュー薬の多用によって誘発されることがあります。

ベース薬としては徐放錠のMSコンチン、レスキュー薬としては坐薬のアンペックや内服液のオプソが使われることが多いです。(他の剤形も多種あります)

鎮痛作用と血管拡張による心臓前負荷軽減作用から、急性心筋梗塞に使用されるケースや、中枢性の縮瞳作用で眼圧を下げる目的に使用されるケースもあります。

コデイン

代謝酵素のシトクロームによって一部が脱メチル化され、モルヒネに変換されることで効果を発揮します。鎮痛作用はモルヒネの1/6で、依存性や有害作用も弱いので弱オピオイドに分類される薬です。(1%以下の濃度では麻薬指定がありません)咳反射抑制による鎮咳作用は比較的強く、鎮痛薬としてよりも鎮咳薬として汎用され、市販の風邪薬や咳止め薬にも配合しているものが多いです。ただし、気道分泌抑制および気管支収縮作用がありますので、喘息発作中には禁忌とされています。12歳未満には禁忌で、肥満・閉塞性睡眠時無呼吸症候群・重篤肺疾患がある場合は18歳未満でも禁忌です。コデインも便秘を起こしやすいので、これを応用して下痢止めとして使用するケースもあります。

オキシコドン

アルカロイドのテバインから半合成される成分で、鎮痛作用はモルヒネの約1.5倍で強オピオイドに分類されます。(他の作用はモルヒネとほぼ同等です)生物学的利用率が高く、体内動態における個体差が少ない等の利点があります。また、代謝物に薬効がないために、腎障害例にも比較的安全です。ベース薬としては徐放錠のオコキコンチン、レスキュー薬としては散剤のオキノームや注射剤のオキファストが使われます。

合成麻薬

ペチジン

鎮痛作用を含めて全般的にモルヒネの1/10の強さがある薬です。平滑筋弛緩作用があることから、麻酔前投薬や鎮痙薬として使用されます。

フェンタニル

鎮痛作用が強く、便秘や呼吸抑制は比較的軽度な薬です。ニューロレプト麻酔や癌性疼痛などに使用されます。ベース薬として貼付剤のデュロテップ、レスキュー薬として口腔内崩壊錠のアクレフ・イーフェンがあります。(ニューロレプト麻酔は注射剤を使用します)

タペンタドール

非麻薬性オピオイドのトラマドールを改変し、μ受容体刺激作用とノルアドレナリン再吸収阻害作用を増強した薬です。(セロトニン再取込阻害作用は弱くなっています)これら作用によって、便秘や吐気などの胃腸系副作用は少なく、鎮痛作用はオキシコドンと同等になっています。わざと粉砕も溶解もできない徐放錠にしてありますので、錠剤の嚥下が可能な人にしか使用できません。なお、ノルアドレナリンやセロトニンが関係しますので、MAO阻害薬との併用は禁忌です。

メサドン

グルタミン酸受容体の一種であるNMDA受容体拮抗作用も持つ薬で、鎮痛作用は最強ランクに位置付けられます。ただし、等鎮痛比(他オピオイドとの効力比)が不定であるため、慎重な用量調節が必要な薬です。

ヒドロモルフォン

モルヒネの1.5倍の強さですが、安全域が狭く悪心・嘔吐が多いとされます。欧米では以前から使用されていましたが、日本では2018年3月に発売されました。徐放錠・速放錠・注射剤があり、ベースとレスキューが揃った4種目のオピオイドです。

非麻薬性オピオイド

ペンタゾシン

オピオイド受容体部分作動薬で、鎮痛作用はコデインに匹敵します。長期連用で筋委縮(ベンタゾシンミオパチー)を誘発することがあり、麻薬の指定は受けていませんが重度の依存も起こる可能性があります。

ブプレノルフィン

μ受容体部分作動薬で、受容体親和性が強く鎮痛作用はメサドン・フェンタニルに次ぎます。初回通過効果が大きいので、内服では無効で、注射・坐薬・貼付剤として使用します。モルヒネなどの依存症を治療する場合にも使用されることがあります。

トラマドール

μ受容体部分作動薬+SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込阻害薬)の作用を持ち、神経障害性疼痛にも効果が期待できる薬です。脱メチル化の代謝を受けることでオピオイド受容体に作用し、胃腸系への有害作用が少なく、依存性や耐性も少ない薬です。アセトアミノフェンとの合剤では「慢性疼痛」「抜歯後の疼痛」にも適応を取得し、使用される頻度が急激に増えました。使われ過ぎたことが関係しているのかは不明ですが、12歳未満には禁忌となりました。

ナルフラフィン

κ受容体作動薬で、μ受容体には抑制的に働き、鎮痛薬としてではなくμ受容体が関与する掻痒を軽減します。血液透析および慢性肝疾患に伴う難治性の掻痒に使用されます。

麻薬拮抗薬

麻薬の作用に拮抗する薬で、主に麻薬による呼吸抑制や縮瞳を回復させる目的で使用します。

麻薬依存症に使用すると急性禁断症状を誘発しますので、麻薬中毒の治療には使用しません。

ナロキソン

μ受容体拮抗薬で、受容体親和性は麻薬よりも強く、合成麻薬を含む全オピオイドに対して有効です。(半減期は短いです)内服では初回通過効果によって無効となるために、静注で使用します。

レバロルファン

μ受容体拮抗薬ですが、κ受容体作動薬でもあるために、弱い鎮痛作用を有しています。ペンタゾシンなどの一部オピオイドには拮抗作用がありません。

ナルデメジン

腸のμ受容体を阻害する薬で、オピオイド誘発性便秘に対して使用します。(それ以外の便秘には無効です)脳には移行し難い薬ですが、脳関門に障害がある場合には中枢移行して、鎮痛効果の減弱や離脱症候群を誘発する場合があります

認知症治療薬、脳循環改善薬

アルツハイマー型認知症治療薬

アルツハイマー型認知症の発症機序は確定していませんが、大脳皮質の委縮性変化・コリン作動神経の機能低下・アミロイド蛋白の沈着などが関係していると思われています。

主な症状は、健忘・うつ・理解力や判断力の低下・徘徊などです。

認知機能の低下は、他の要因でも起こる可能性はあり、健康情報の「もの忘れと認知症」を参照してください。

また、アルツハイマー型認知症と診断されている者の1/3は、大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症であるかもしれないとの報告があり、近い将来には分類が変わっている可能性もあります。

中枢性コリンエステラーゼ阻害薬

アセチルコリンの分解酵素を阻害して脳内のアセチルコリン量を増やし、コリン作動性神経を刺激することでアルツハイマー型認知症の進行を遅らせます。ドネペジル・ガランタミン・リバスチグミンがありますが、全て進行を予防する薬であって治癒させる薬ではありません。コリン作動性の副作用が発現する可能性があり、特に投与初期に消化器系の副作用(吐気や下痢など)が起こりやすいので、少量から開始します。 コリン作動薬が禁忌とされる疾患には、禁忌にこそなっていませんが慎重投与の対象になっています。なお、ドネペジルはレビー小体型認知症にも適応を持っています。

NMDA受容体拮抗薬

グルタミン酸の作用を非競合的に阻害して、神経細胞の傷害を抑制することによって、アルツハイマー型認知症の進行を防ぎます。中枢性コリンエステラーゼ阻害薬は抑制的な症状に適するとされるのに対して、当分類のメマンチンは興奮的症状に適するとされます。また、中枢性コリンエステラーゼ阻害薬は軽症~中等度の適応ですが、NMDA受容体拮抗薬は中等度~高度の適応です。てんかん発作の誘発や痙攣・失神などには注意が必要です。

脳循環改善薬

脳血管の拡張や血小板凝集の抑制によって脳血流を改善する薬で、脳梗塞などによる脳機能低下を回復させます。

昭和末期に爆発的に使用されましたが、大部分の薬が効果の裏付け不足を理由に保険適応から外されました。

今でも使用されているのは、イフェンプロジル・イブジラストが脳梗塞後遺症や脳出血後遺症に伴うめまいへ、ニセルゴリンが脳梗塞後の循環障害による意欲低下へ、ファスジルがクモ膜下出血後の急性脳虚血症状に使用されます

中枢興奮薬、禁酒薬

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大脳皮質刺激薬

カフェイン

キサンチン系薬で、中枢刺激・強心・気管支拡張・利尿などの作用を持っています。昔は強心剤として使用されたこともありますが、今は眠気・倦怠感や血管拡張および脳圧亢進性頭痛の改善に使用されます。ただし、乱用薬物のリストに載る成分ですので、安易な使用は厳禁です。カフェインクエン酸塩は原発性の未熟児無呼吸発作に使用されます。

テオフィリン

カフェインと同族のキサンチン系薬で、気管支拡張作用が強いので気管支喘息の治療に使用されます。昔は咳を伴う風邪にも汎用されていましたが、マスコミが有害作用を取り上げたことを契機に、大幅に使用は減少しました。

コカイン

ドパミンの再取込を抑制することでドパミン機能を亢進し、中枢興奮作用を発揮します。(ただし、この作用での適応はありません)粘膜を麻痺させる作用もあることから、局所麻酔薬として使用されます。オピオイドとは無関係な構造ですが、国際的な麻薬に関する単一条約によって、麻薬の指定を受けています。

メタンフェタミン

ドパミン再取込抑制および遊離促進により、ドパミン機能亢進から中枢興奮作用を発揮します。昏睡や麻酔覚醒の適応を持つ、国内で唯一治療に用いられる覚醒剤です。

メチルフェニデート

ドパミンとノルアドレナリンの再取込抑制により、神経機能を亢進させる薬です。リタリンはナルコレプシー(場所や時を問わずに強い眠気や脱力発作が起こる疾患)に、コンサータは注意欠陥/多動性障害(AD/HD)に使用されます。両剤は同成分ですが、配合量と持続時間が異なります。

リスデキサンフェタミン

他剤無効のAD/HDに使用される薬で、メタンフェタミンと構造が似ており、覚醒剤原料の指定を受けています。

モダフィニル

GABAを抑制することで中枢興奮に作用すると考えられており、ナルコレプシーに使用されます。

アトモキセチン

中枢におけるノルアドレナリンの再取込を阻害する薬で、AD/HDに使用されます。作用はメチルフェニデート(コンサータ)よりも弱いのですが、有害作用が少ないので、先に使用されるケースが多いです。

グアンファシン(本剤は中枢興奮薬ではありませんが、AD/HDの治療薬として紹介しておきます)

ノルアドレナリンα2受容体作動薬で、中枢興奮ではなく抑制の方向に作用します。AD/HDで攻撃的症状が強い場合に使用される薬です。

延髄刺激薬

ジモルホラミン

呼吸中枢を刺激して呼吸を促進させる作用と、血管中枢を刺激して血圧上昇・脈拍増加の作用を持っています。新生児仮死や水難事故などで仮死状態にある患者の自発呼吸を開始させるために使用します。

ドキサプラム

末梢化学受容体を介して呼吸中枢を刺激する薬で、麻酔や中枢神経抑制薬による呼吸抑制・覚醒遅延に使用します。麻薬による呼吸抑制で、麻薬拮抗薬が無効の場合にも使用されます。

禁酒薬

シアナミド・ジスルフィラム

アセトアルデヒドの代謝を阻害する薬で、人工的に二日酔い状態にすることで、アルコールを嫌いにさせます。アルデヒドそのものが人体に有害な作用を持っていますので、心・肝・腎・呼吸器などに重度な障害がある者には使用できません。また、奈良漬などのアルコールを含む食品や、ヘアースプレーなどのアルコールを含む化粧品にも反応しますので、注意が必要です。

アカンプロサート

アルコール依存状態で亢進するグルタミン作動神経の活動を抑制することで、飲酒の欲望を低下させると考えられています。

ナルメフェン

選択的オピオイド受容体調整薬で、μ受容体・δ受容体阻害+κ受容体部分作動の作用を持ち、ドパミン遊離を抑制することにより飲酒抑制の効果が発現すると考えられています。禁酒ではなく減酒の適応です。オピオイド受容体に作用する薬との相互作用に注意が必要です。

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