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肝炎治療薬

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肝炎は経過や原因によって分類されます。

経過による分類では、初発は全て「急性肝炎」であり、8週以内に肝性脳症を発症する場合を「劇症肝炎」・8~24週の期間に肝性脳症を発症する場合を「遅発性肝不全」とされます。

それほど激烈な経過をたどらないけれども、炎症状態が半年以上継続する場合は「慢性肝炎」です。

原因による分類では、「ウイルス性肝炎」と「非ウイルス性肝炎」があり、非ウイルス性肝炎はもっと細分されて、「アルコール性肝炎」「非アルコール性脂肪性肝炎」「薬物性肝炎」「自己免疫性肝炎」「原発性胆汁性肝硬変」などに分類されます。(ウイルス性もA型・B型・C型などに細分されます)

治療薬としては、ウイルス性か非ウイルス性かで大きく異なります。

肝庇護薬

肝臓の負担を軽減する薬で、非ウイルス性肝炎の治療に使用します。(ウイルス性肝炎においても補助的に使用されることは少なくありません)

肝臓は薬を代謝する臓器なので、薬自体が肝臓に負担をかけることになり、なかなか画期的な肝庇護薬は登場しません。

古くからの薬が今でも使用されているのが現状です。

グリチルリチン製剤

甘草という植物由来の薬で、抗アレルギー作用・ウイルス増殖抑制作用・肝障害抑制作用などを持っています。安全性は高いのですが、鉱質コルチコイドのアルドステロンに似た作用を持ち、水分とNaを蓄えることでむくみを起こすことがあります。偽アルドステロン血症と言う副作用で、甘草を多く含む漢方薬や市販薬でも起こることがあります。

ウルソデオキシコール酸

胆汁の成分で、利胆作用(胆汁の排出を促進する)と肝・胆の血流を促進して機能を回復させます。脂肪肝を予防する作用も持ち、肝臓疾患にはよく使用される薬です。非常に苦い味ですので、粉砕したりかみ砕いて服用しない方がよい薬です。

グルタチオン

一種の解毒薬で、毒物の代謝を促進して肝臓の負担を軽減します。つわりや妊娠高血圧症候群にも効能を持つ薬です。(作用機序はよく分かりません)

タウリン

高ビリルビン血症における肝臓機能の改善に使用される薬です。市販のドリンク剤であるリポビタンDにも配合されている成分で、非常に安全性が高い薬です。最近、MELAS症候群における脳卒中様発作の抑制という効能が追加されました。

小柴胡湯

中焦臓器の機能不全を回復する漢方薬です。西洋薬に効果的な薬がなかったために昭和後期に汎用されていましたが、証を無視して使用されるケースもあり、間質性肺炎が散発しました。特に、インターフェロンとの併用例で頻度が高く、併用禁忌になっています。今ではあまり使用されなくなりました。

抗ウイルス薬

B型およびC型ウイルス性肝炎の治療に使用する中核薬です。

A型ウイルス肝炎は、劇症肝炎に進展しなければ比較的予後が良く、抗ウイルス薬は使用せずに対症療法で対応するのか一般的です。

インターフェロン(IFN)

細胞性免疫に関与するサイトカインで、ウイルス減少効果があります。B型およびC型ウイルス性肝炎の標準治療薬とされています。α・β・γ・PEGなどのタイプがあります。(γは抗癌に使用、PEGはポリエチレングリコールを結合させて持続性を高めたものです)インフルエンザ様症状(悪寒発熱など)はほぼ必発で、間質性肺炎や抑うつも比較的頻度が高い薬です。耐性や副作用で使用できないケースも少なくありません。内服では分解されますので注射にて投与します。

リバビリン

核酸アナログの代表薬で、ウイルスの核酸複製を阻害します。C型ウイルス性肝炎において、ソホスブビルやインターフェロンと併用され、再発率を大きく低減する効果があります。催奇形性があり、溶血性貧血にも注意が必要です。

バニプレビル・シメプレビル

プロテアーゼ阻害薬で、インターフェロン+リバビリンでも効果が不十分なケースに追加される薬です。

ダクラタスビル+アスナプレビル

NS5A複製複合体阻害薬とNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬を組み合わせた薬で、インターフェロンが使用できず遺伝子変異がないC型ウイルス性肝炎に使用されます。登場した当時は、インターフェロンなしでも治療が可能になったと話題になりました。同様な薬として、オムニタスビル+バリタプレビル、エルパスビル+グラゾプレビル、グレカプレビル+ピブレンタスビルなどがあります。まれに肝不全を誘発する場合があります。

ソホスブビル

NS5Bポリメラーゼ阻害薬で、セロタイプ1ではレジパスビルと、セロタイプ2ではリバビリンと併用して使用します。ウイルス消失率がほぼ100%という優れた効果で、この薬の登場でインターフェロンを使用しない治療が標準となりました。有害作用は比較的少ないのですが、高度の腎機能障害では使用できませんし、P糖蛋白を誘導する薬との併用には注意が必要です。

レジパスビル

NA5Aポリメラーゼ阻害薬で、セロタイプ1のC型ウイルス性肝炎でソホスブビルと併用して使われます。この組合せの更なる改良型として、ソホスブビル+ベルパスビル+リバビリンもあります。

紹介した薬は、インターフェロン以外には催奇形性や精子異常があり、妊娠には注意が必要です。

ウイルス性肝炎の標準治療

B型ウイルス性肝炎では、35歳未満ではインターフェロン、35歳以上では核酸アナログ薬が第一選択されます。(インターフェロンに対する感受性に差があるためです)

C型ウイルス性肝炎では、セロタイプ1はソホスブビル+レジパスビルで、セロタイプ2ではソホスブビル+リバビリンが第一選択です。

ソホスブビルが使用できない場合は、PEG-インターフェロン+リバビリン(+プロテアーゼ阻害薬)も候補に入っています。

なお、セロタイプは1~6までありますが、1・2以外は多くありません。

もしも他のタイプであれば、2と同じソホスブビル+リバビリンを使用します。

(セロタイプはジェノタイプと表現される場合もあります)

ソホスブビルを使用する治療は非常に高額で、1クール12週の薬剤費だけで、タイプ1では460万円・ダイプ2では370万円もかかります。

胆道疾患治療薬

一言に胆道疾患と言いましても、胆管癌・胆嚢癌・胆嚢炎・胆嚢ポリープ・胆道ジスキネジー・胆石症などがあります。

胆管癌や胆嚢癌は外科的治療が、胆嚢炎は抗生物質などの化学療法が主体となります。

胆嚢ポリープも内視鏡による切除術が一般的ですが、イボを取る薬のヨクイニンを服用して縮小する場合もあります。(ポリープとイボは組織としては同じものですが、ヨクイニンのポリープへの使用は適応外です)

胆道ジスキネジーは胆道運動異常症とも言われ、胆石や炎症がないのに右上腹部痛や吐気・腹部膨満感などを起こす疾患です。自律神経あるいはホルモン系の不調によると考えられており、治療は対症療法が一般的です。

胆石症では、胆嚢に充満したり胆管を塞ぐ程の状態であれば外科的に除去されますが、影響が大きくない場合は薬物療法も行われます。

胆石溶解薬

胆石に接して溶かす薬のような印象を受けますが、強酸で金属を溶かすようには効きません。

主たる作用は胆石の形成阻害であり、石灰化してしまった胆石には効果が及びません。

コレステロール合成酵素を阻害するケノデオキシコール酸と、胆汁のコレステロールを不飽和状態にして析出させないウルソデオキシコール酸が該当します。

溶解作用としてはゲノデオキシコール酸の方が強いとされていますが、代謝物が肝臓障害を誘発する可能性があり、使い難い面もあります。

利胆薬

胆汁の排出を促進する薬で、肝臓から胆嚢への分泌を促進する催胆薬と、胆嚢から十二指腸への分泌を促進する排胆薬に分けられます。

催胆薬の代表はウルソデオキシコール酸で、この作用によって肝臓の負担が軽減しますので、肝機能の回復にもつながります。

排胆薬は、主にオッディ括約筋と呼ばれる胆道の出口にある筋肉を弛緩させる薬で、十二指腸への排出を促進します。

胆嚢や胆管の内圧を低下させるとともに、膵液の排出も促進させますので膵炎の治療にも使用されます。

フロプロピオンとトレピブトンがあり、フロプロピオンにはCOMT阻害作用による鎮痙作用もあります。

膵炎治療薬

膵炎は、急性膵炎と慢性膵炎に分類されます。

急性膵炎は、トリプシンなどの消化酵素が活性化して膵臓組織を自己消化してしまい、周囲組織に障害が起こる疾患です。

慢性膵炎は、長期に及ぶ炎症から膵実質細胞が破壊され、繊維化してしまう疾患で、インスリンなどの内分泌能にまで影響が及びます。

蛋白分解酵素阻害薬

逸脱した消化酵素が組織を障害するのを抑制する薬です。

ナファモスタット・ガベキサートは注射剤で、急性膵炎にも慢性膵炎にも効能がありますが、カモスタットは内服薬で慢性膵炎のみの効能です。

トロンビンや活性型血液凝固因子も阻害するため、血液凝固系も強力に抑制します。(注射剤は、この作用により汎発性血管内凝固症候群(DIC)にも効能をがあります)

出血以外にも、アナフィラキシーや高K血症に注意が必要です。

シチコリンはホスホリパーゼA2阻害作用や膵細胞膜修復作用を持つ薬で、蛋白分解酵素阻害薬と併用して効果を高める目的で使用されます。

外分泌抑制薬

十二指腸では、胃から流入する消化物によってpHが低下すると、セクレチンという消化管ホルモンを分泌して膵液の分泌を促します。

膵液には胃で酸性となったものを中和する働きもあり、胃酸の分泌を抑えればその分だけ膵液の分泌も減ることになります。

よって、プロトンポンプ阻害薬が膵液の分泌を抑制する目的で使用されます。

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