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外用薬基剤

塗る・貼る・噴霧などによって外用で使用される薬は、ワセリン・ポリベース・アルコールなどのほとんど薬効を有しない基剤に成分を溶解・混和させています。

成分は同じでも、どのような基剤が使用されているかで、効果や適用に違いが生まれます。

油脂性基剤

俗に軟膏と呼ばれる薬に使用されている基剤で、刺激が少なく皮膚軟化・塗布面の保護・肉芽形成や上皮化促進などの作用があります。

乾燥面でも湿潤面でも使用ができますが、水で洗い流すことができずに塗布した部分がべとつきます。

乳剤性基剤

俗にクリームと呼ばれる薬に使用されている基剤で、水洗いが可能です。

サラリとした使用感で、浸透性は良いのですが、塗布面の保護作用は油脂性基剤よりもかなり劣ります。

滲出物を溶解して傷から吸収されますので、潰瘍を起こしている部位には禁忌です。

詳しく見ればクリームはO/W型で、水性の基剤に油滴が浮いているような形状であり、油滴の中に薬成分が溶け込んでいます。

ユニバーサルクリームと表記しているものはW/O型で、油脂性の基剤に水滴が浮いているような形状で、軟膏に近い性質や使用感があります。

水溶性基剤

吸湿性が高く分泌物を除去して乾燥させる作用があり、湿潤面に適した基剤です。

皮膚粘着性が良くありませんので、ガーゼなどに延ばして貼付します。

使用方法が手間なので、一部以外ではあまり見かけなくなりました。

懸濁性基剤

俗にゲルと呼ばれる薬に使用されている基剤で、トロリとした粘性のある液剤です。(ジェルやゼリーと呼ばれることもあります)

展びが良く、被膜を形成して塗布面を保護する作用があり、粘膜に対しても接着性は良好です。

固化して固めたものはチック剤と呼ばれ、スティックのりの要領で塗布します。

ローション基剤

ローションや液と呼ばれる薬の基材で、浸透効率は悪く、アルコール系の成分を含むものが多くて刺激がやや強いです。

湿潤面には禁忌です。

主に、軟膏やクリームなどを塗布しにくい毛髪部などの塗布に使用されます。

スプレー剤

エアゾール剤とも呼ばれ、成分を霧状あるいは微小なパウダー状にして噴霧するものです。

患部に触れずに塗布することができ、広範囲の使用には適しますが、浸透性や効果の持続性は悪く、使用量の把握も困難です。

吸引に注意が必要ですし、可燃性ガスを使用しているものでは周囲の火気にも注意を払う必要があります。

パップ剤

俗に湿布と呼ばれる薬で、布状の生地に水分を含んで糊状にした成分を付着させたもので、貼付して使用します。

比較的多くの水分を含んでいますので、貼付剤の中では刺激は弱い方ですが、厚みがあり粘着性がやや弱いです。

テープ剤

プラスター剤あるいは硬膏剤とも呼ばれる薬で、脂溶性の高分子基剤に成分を含有させたもので、貼付して使用します。(小型のパッチ剤と呼ばれるものも同じです)

剥がれにくく、吸収性は良いのですが、湿潤面には適していません。

水分を含んでいませんので刺激が強く、接触性皮膚炎を誘発する可能が高い剤形です。

各種塗布・貼付薬

外用消炎・鎮痛・鎮痒薬

局所的な炎症・疼痛・掻痒であれば、全身に作用する内服薬よりも、患部にだけ塗布する外用薬の方が簡便で効率的です。

ステロイド薬を配合した外用塗布剤は、主に消炎・鎮痒に使用されます。効果は良いのですが有害作用に注意が必要で、特に皮膚が薄い顔面・頸部・鼠頸部では皮膚委縮・紅斑・色素沈着を起こしやすいので注意が必要です。貼付剤もありますが、患部を被う密閉療法は副作用を起こしやすいので汎用はされません。長期間の大量使用では、内服薬と同様な影響を及ぼす場合もあります。

成分によってweakからstrongestの5段階の強さに区分されており、強すぎる種類を使用しないことが重要です。(中間とされるstrongクラスでも、1日30gを使い続けると副腎皮質機能不全を起こすとの報告があります)

NSAIDs薬を配合した外用塗布剤は、打撲や肩こりなどによる消炎や鎮痛に使用されます。

インドメタシン・フェルビナク・ケトプロフェン・ロキソプロフェン・ジクロフェナクなどの成分を配合した薬がよく使われます。貼付剤も含めて、これらも大量に使用すると、内服薬と同じ影響を及ぼします。(健康情報:「湿布薬の枚数制限」を参照してください)

抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を配合した外用薬は、虫刺されやかぶれなどによる消炎や鎮痒に使用されます。効果はステロイド薬に及びませんが、副作用をあまり心配せずに使用できます。

クロタミトンは作用機序がよく分かっていませんが、痒みを鎮める作用がある外用塗布剤です。正式な効能ではありませんが、疥癬の駆虫作用もあるとされます。他の塗布剤や貼付剤への添加物としても使用されることがある成分です。

ヘパリン類似物質には保湿と血行促進作用があり、乾燥性皮膚疾患やしもやけなどの治療に使用されます。名前が示すとおり、ヘパリンに類似した作用があり、トロンビンの作用を阻害して血液凝集を抑制しますので、出血を伴う損傷部位への使用は控えねばなりません。

タクロリムスは免疫抑制剤で、ステロイド薬で効果が不十分の難治性アトピー性皮膚炎に外用塗布剤として使用されます。紫外線により皮膚癌誘発の可能性があり、あまり手軽に使用できる薬ではありません。

外用感染性皮膚疾患薬

抗菌薬・サルファ剤・抗真菌薬・抗ウイルス薬など、感染症に使用する成分を配合した外用薬です。

薬剤が到達できる範囲は限られますので、皮膚や粘膜などの浅在性疾患にのみ使用します。

体内に入りませんので代謝系の有害作用はほとんどありませんが、塗布部における接触性の有害作用には注意が必要です。

特殊な塗布剤として、イミキモドはウイルス性のイボである尖圭コンジローマに対して、細胞性免疫を賦活することで効果を発揮します。患部にのみ塗布し、粘膜部に付かないように注意します。(日光角化症の効能もあります)

過酸化ベンゾイルは産生するブリーラジカルによる殺菌作用と、角質剥離を促進する作用でニキビ(尋常性ざ瘡)に使用します。抗菌剤のような耐性化はしないと言われています。

皮膚軟化・角化症治療薬

サリチル酸には角質溶解作用があり、イボやタコの除去に使用されます。塗布剤の他に貼付剤もあり、市販のイボコロリやスピール膏もこの成分です。

尿素には皮膚の水分保持量を増加させる作用があり、乾燥性の皮膚病変に使用します。刺激性がありますので、傷がある部位には適しません。ケラチナミンなどの市販薬にも使用される成分です。

ビタミンAが欠乏すると角質が肥厚しますので、ビタミンAを配合した外用塗布薬も乾燥性の皮膚病変に使用します。ユベラ軟膏はビタミンAとビタミンEを配合した塗り薬です。

カルシトール・カルシポトリオール・マキサカルシトールは、角化細胞のビタミンD受容体に結合して増殖を抑制する塗布薬です。乾癬や角化症に対して最も効果的な薬とされますが、高Ca血症を起こす可能性があり、使用量に上限が定められています。

褥瘡・皮膚潰瘍治療薬

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褥瘡とは、体位変換ができない人や極度に栄養不良状態の人において、床面と接する体部が血行不良となって周辺組織に壊死を起こした病態です。(床ずれとも言われます)

皮膚潰瘍とは、褥瘡を含めて、皮膚組織に炎症性の欠損を起こしたものです。

褥瘡の予防および治療には、体位変換やエアーマットなどによる減圧と、皮膚の衛生管理が特に重要です。

低蛋白・亜鉛不足などの栄養障害や、免疫抑制薬の影響・末梢神経障害による感覚麻痺なども誘発要因になりますので、チェックしておく必要があります。

これらの誘発要因は、可能な限り除かねばなりません。

褥瘡の分類

進行度による分類では、次のⅠ度~Ⅳ度に区分されます。

Ⅰ度:傷害が表皮に留まっている状態。発赤(紅斑)や表皮剥離が主症状です

Ⅱ度:障害が真皮に及んでいる状態。皮膚潰瘍や水泡などが起こります

Ⅲ度:皮下組織に達する欠損が生じている状態

Ⅳ度:筋肉や骨組織まで損傷された状態。骨髄炎や敗血症の可能性もあります

Ⅱ度以上になると、外見よりも奥で大きな欠損が生じている場合が多く、治療に難渋するケースも少なくありません。

アズレン軟膏はⅠ度の時期に使用する薬です。油脂性基剤による皮膚の保護作用とアズレンによる消炎作用で回復を早めます。

アズレン軟膏以外の薬では進行度による分類はあまり参考にならず、次の区分をよく使用します。

  • 黒色期:壊死組織によって患部が黒く見える時期。
  • 黄色期:感染による膿汁によって患部が黄色く見える時期。
  • 赤色期:肉芽形成が始まり、患部が赤く見える時期。
  • 白色期:表皮形成が始まり、患部が白く見える時期。

黒色期で壊死組織が大きい場合は外科的な除去(デブリドマン)が必要で、医師にしかできない処置です。

ブロメラインは蛋白分解酵素を含む塗布薬で、壊死組織の分解・除去に使用します。赤色期や白色期に使用すると、かえって治癒を妨げることになります。

黄色期は言うまでもなく感染症への対応が必要です。(外用薬で対応できない場合は、注射薬や内服薬の使用もあります)

時期を問わずに患部の衛生管理は大切ですが、消毒薬は多少なりとも細胞を傷害する作用を持っている点に注意が必要で、できるだけ使用せずに温めた生理食塩水で洗浄することが望ましいです。

白糖・ポビドンヨードは、浸出液吸収作用+殺菌作用+肉芽調整作用を持つ塗り薬で、黄色期あるいは感染が懸念される場合に使用します。浸出液には肉芽形成を促進する成分が含まれていますので、いつまでも使い続ける薬ではありません。

赤色期・白色期は回復に向かっている時期ですが、まだまだ不完全な状態ですから、衛生管理に注意しながら進行を早める手助けをします。

トラフェルミンは線維芽細胞成長因子作動薬で、赤色期の患部に噴霧します。従来薬にはない優れた血管新生作用と肉芽形成作用があります。しかし、上皮増殖因子と近縁の作用があり、正常皮膚に作用すると癌を誘発する可能性がありますので、患部にだけ定量を噴霧します。

アルプロスタジルはPG-E1製剤で、血行促進によって肉芽形成促進と表皮形成促進に働く塗り薬です。出血がある部位や妊婦には使用できません。赤色期~白色期に使用します。

ブクラデシンはc-AMP製剤で、局所循環を改善することで表皮形成を促進する塗り薬です。主に白色期に使用します。


褥瘡治療薬は、時期によって適する薬が違います。

患部の洗浄や処置は看護師が担うことが多く、医師が患部を見ることは多くありません。

いつまでも同じ薬が指示されている場合も多々ありますので、看護師から情報伝達することが重要です。

また、以前にはドライ療法と言って、患部から分泌される浸出液をガーゼなどで吸い取る処置を行っていました。

やがて、浸出液に傷の修復を促進する成分が含まれていることが判明し、患部をドレッシングテープで被うことで吸収させない処置を行うようになっています。

この処置はドライ療法に対してウエット療法と言われます。

ドレッシングテープは空気は通すが水は通さない性質があり、ウエット療法には最適です。

点眼薬・眼軟膏

結膜嚢に入り角膜と結膜から吸収させる剤形です。

一部は涙嚢から鼻腔に流れ、そこから全身循環に入ります。

吸収を促進させるため及び全身移行を減らすために、点眼後は数分間目を閉じて目頭を指で押さえることが推奨されます。

点眼薬のpHは3.5~10.5の範囲内ですが、涙液のpH(7.4くらい)から離れる程に刺激が強くなります。

理想は涙液と等しいpHなのですが、成分の安定性などの要因で難しいようです。

なお、点眼する滴数は1滴で十分で、量を多くしても効果が増すわけではありません。

複数の点眼薬を併用する場合は、最初に点眼した直後に次を点眼すると、洗い流されることになって最初の薬が効果を発揮しません。

通常は5分間以上の間隔をおいて点眼します。

眼軟膏は眼に直接塗るわけではなく、下瞼にのせるように塗布し、まばたきで拡散させます。

無菌状態を保つために手指では触れず、綿棒などを利用して塗布します。

軟膏基材によって角膜保護作用がありますが、視覚を阻害することが多いので、車の運転などの危険な作業は控えなければなりません。

点眼薬よりも眼に留まる時間が長いので、効果の持続が必要な場合に使います。

代表的な薬

麦粒腫・細菌性結膜炎・角膜炎・角膜潰瘍には、抗菌薬を配合した点眼薬や眼軟膏が使用されます。

各種の抗菌薬を配合した点眼薬がありますが、抗菌力および抗菌スペクトルから主流はニューキノロン系抗菌薬です。

真菌性角膜炎や眼内炎にはピマリシンの点眼液や眼軟膏が、単純ペルペス角膜炎にはアシクロビル眼軟膏が使用されます。(角膜ヘルペスにはポリビニルアルコール・ヨウ素点眼・洗眼液もありますが、他の選択肢はほとんどありません)

アレルギー性結膜炎には抗ヒスタミンや抗アレルギー薬を配合した点眼薬が使用され、重度のアレルギー性結膜炎・角膜炎・強膜炎ではステロイド配合点眼薬が使用されます。

また、抗アレルギー薬が無効の春季カタル(花粉症)では、免疫抑制薬であるタクロリムスやシクロスポリンの点眼薬が使用されることもあります。

眼科手術後の炎症を緩和するためにNSAIDs薬配合の点眼薬が使用されます。

この成分の目薬は涙目に対して使用されるケースもあります。

眼底検査の際には散瞳させねばなりませんので、抗コリン作用があるトロピカミドやアトロピンの点眼液が使用されます。

連用すると眼圧が上昇する場合があります。

視調整機能が麻痺しますので、この作用を応用して仮性近視の治療に使用されるケースもあります。

緑内障治療治療薬

緑内障は何からの原因で網膜細胞が傷害される疾患で、失明原因の第一位となっている疾患です。

原因として考えられるのは、眼圧(眼球内の圧力)が高くなり、その影響で網膜細胞に負荷がかかるという機序です。

しかし、日本人では眼圧が高くない正常眼圧緑内障が70%と報告されており、明確な原因は分かっていません。

正常眼圧緑内障であっても、眼圧を30%下げると80%で進行抑制されますので、治療には眼圧を下げる薬が使用されます。

眼圧を保っているのは、房水と呼ばれる眼球内の液状物質です。

房水は毛様体で産生され、90%は隅角よりシュレム管経路で、10%はブドウ膜強膜経路で排出されます。

房水の産生と排出はバランスをとっていますので、通常では眼圧は10~20mmHgに保たれています。

しかし、過剰に産生されるか、排出経路に問題が生じると眼圧が上がることになります。

房水産生阻害薬

チモロール・カルテオロールなどのβ受容体遮断薬は、房水の産生を抑制して眼圧を下げる作用があり、房水産生阻害薬の中では第一選択される薬です。涙嚢から鼻腔に入ると全身性の作用が発現することがありますので、呼吸器や心臓に疾患がある人には注意が必要です。

ドルゾラミド・ブリンゾラミドは炭酸脱水酵素阻害薬で、毛様体における重炭酸イオンを減少させることで房水の産生を抑制します。単独で使用する薬ではなく、β遮断薬で効果が不十分な場合に追加する薬です。(β遮断薬と合剤の点眼薬もあります)

房水排出促進薬

ピロカルピンはコリン作動薬で、縮瞳作用によって隅角が広がり、房水の排出が促進されます。コリンエステラーゼ阻害薬のジスチグミンにも同じ作用がありますが、ニコチン受容体作動で眼筋にも影響しますので、通常の緑内障に使用されるケースはまれです。

ジビベフリンは眼内でアドレナリンに変換される薬・ブリモニジンはアドレナリンα2受容体作動薬で、ブドウ膜強膜経路の排出を促進します。房水産生抑制作用も確認されていますが、副次的作用です。

ラタノプロスト・トラボプロストなどはプロスタグランジン誘導体で、ブドウ膜強膜経路の排出を促進します。房水排泄促進薬の中では第一選択される薬です。頻回に投与すると作用が減弱する可能性があり、1日1回の点眼です。瞼などに色素沈着を起こす場合やまつ毛を伸長する作用がありますので、付着した液は拭き取ります。

リパスジルはRhoキナーゼ阻害薬で、線維柱体に作用してシュレム管排出を促進する薬です。他の薬で効果がない場合に選択されます。

白内障・ドライアイ・加齢性黄斑変性症薬

白内障治療薬

白内障は水晶体と呼ばれるレンズのような組織が濁る疾患です。

原因としては加齢に伴うものが最も多いですが、眼のケガによる外傷性のもの、ステロイド剤などによる薬剤性のもの、風疹・糖尿病・ブドウ膜炎などの疾患によって誘発される場合もあります。

ある程度まで進行した場合は、水晶体に代えて眼内レンズを挿入する手術を行いますが、初期であれば点眼薬で進行防止を行います。

ピレノキシンはキノイド物質を競合拮抗する成分で、蛋白質が変性して不溶化することを阻害して進行を防止します。

グルタチオンは水晶体の透明性に関連した成分で、点眼によって補うことで進行を防止します。

どちらも進行を防止する効果しかなく、元の透明性を回復することはできません。

眼球乾燥症候群(ドライアイ)治療薬

涙には角膜の乾燥防止・殺菌・洗浄・栄養補給や表面を滑らかに保つなどの作用があります。

様々な原因によって涙の分泌量が減少すると、これらの作用が維持できなくなり、視力低下・眼痛や角膜上皮剥離などを起こす場合もあります。

また、涙の量だけでなく、質が悪くても油層・液層・ムチン層が正しく機能せずに、眼に悪影響があることが分かっています。

昔は、ソフトサンティアやマイティア点眼という涙を補う点眼薬が主流でした。

次いで、コンドロイチン硫酸Naやヒアルロン酸などの角膜上皮の損傷を修復する点眼薬が使われるようになりました。

最近では、涙層の障害に着目した点眼薬が登場し、治療の幅は広がっています。

レバミピドは角膜のムチンを増加する作用と炎症を鎮める効果があります。懸濁液ですので使用直後に目のかすみを感じることがあり、まれに涙道閉塞が起こります。

ジクアホソルは結膜上皮および杯細胞膜上のP2Y2受容体を刺激する薬で、水分およびムチンの分泌を促進する点眼薬です。1日6回も点眼しなければなりません。なお、薬効に個人差があると報告されています。

加齢性黄斑変性症治療薬

加齢に伴って網膜の中心部にある黄斑が変性し、変視症と呼ばれるゆがみ・視力低下・中心暗転・色覚異常などが起こる疾患です。

欧米では失明原因の1位のようですが、日本では3位です。(4位とする報告もあります)

委縮型と滲出型に大別され、委縮型には効果的な治療方法がありません。

ペガプタニブ・ラニミズマブ・アフリベルセプトは血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害する薬で、脈絡膜の新生血管を退縮することで滲出型を治療します。眼圧が上昇することがあります。

ベルテポルフィンは光感受性物質で、点滴をした後に出力の弱いレーザーを患部に照射し、新生血管を傷害します。治療後48時間は強い光にあたらないようにしないと光過敏症が起こります。

消毒薬

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消毒薬とは、生体や器具・環境の病原体を撃滅する薬です。

生体とは言いましても体内にも使用する抗生物質などとは異なり、皮膚や粘膜に限って使用されます。(一部で膀胱洗浄などで体内にも使用する場合がありますが、極めて例外的な使用です)

多くの種類は病原体を変性させたり死滅することで効果を発揮しますので、生体においても好ましくない影響を与えることを念頭に使用する必要があります。

効果を発揮する病原体の種類によって、低水準・中水準・高水準に区分されます。

低水準消毒薬:栄養型細菌・真菌に有効だが、芽胞・抗酸菌・ウイルスには無効

中水準消毒薬:抗酸菌を含む栄養型細菌・真菌および多くのウイルスに有効

高水準消毒薬:芽胞を除く全病原体に有効

低水準消毒薬

陽イオン性消毒薬

代表薬はクロルヘキシジンで、細胞膜に結合して破壊することで効果を発揮します。皮膚への刺激は少ない成分ですが、粘膜には禁忌です。ほぼ無臭で非生体にも使用されます。ヒビテンという商品名はあまりに有名で、ほとんどの医療機関で使用している消毒薬です。同系のオラネジンは手術部位の消毒専用の薬で、クロルヘキシジンに耐性の菌にも有効とされています。

第4級アンモニウム塩

逆性石鹸とも呼ばれる消毒薬で、菌体蛋白質を変性させることで効果を発揮します。生体・器具・環境のいずれにも使用可能ですが、経口毒性があります。振ると石鹸のように泡立ちます。通常の石鹸と併用すると効果が消失しますので、同時には使用しません。有名なマキロンやオスバンはこの成分です。

両性界面活性剤

陰イオンの洗浄作用と陽イオンの殺菌作用を持つ消毒薬です。有機物で効力が低下せず無臭なので、噴霧して環境を消毒する場合に使用されます。

中水準消毒薬

アルコール製剤

エタノール・イソプロパノールなどで、速効性があり低刺激性で効果が耐性化しない消毒薬です。100%の濃度では菌体の外側が変性して内にまで効果が及ばず、細菌類には約70%の濃度で効力がMaxになります。(ウイルスを対象とする場合には高濃度が必要です)穿刺部位の消毒などで使用しますが、粘膜や傷部には禁忌です。火気にも注意する必要があります。

化学的にはフェノールやクレゾールもアルコール系ですが、今では排泄物の処理時くらいにしか使用されません。(消毒薬の強さを比較する石炭酸係数は、フェノールとの効力比を示したものです)

ヨウ素製剤

イソジン(ポビドンヨード)は、速効性・低刺激で粘膜や傷部にも使用できる消毒薬です。ただし、皮膚から吸収されて甲状腺に影響を与える場合がありますので、妊婦・授乳婦・新生児では長期や広範囲の使用を避けます。褐色をしており付着すると退色しにくいので、環境の消毒には適しません。ヨードチンキも同系ですが、刺激が強いのであまり使われなくなりました。

塩素系消毒薬

次亜塩素酸ナトリウムは非生体の消毒に使用されます。金属腐食性や繊維退色性があり、有機物の存在で効力が低下しますので使用は制限されます。残留していてもミルクの成分と反応して無害となりますので、哺乳瓶の消毒にはよく使用されます。また、環境の消毒や汚物処理でも使用されますが、塩素ガスが発生する場合がありますので、密閉空間での使用は注意が必要です。

過酸化物製剤

オキシドールは酸素の酸化力で効果を発揮します。低毒性で傷部や潰瘍部にも使用可能ですが、刺激が強いのが欠点です。器具や環境には使用しません。

高水準消毒薬

アルデヒド製剤

グルタラール・フタラールなどは、加熱処理ができない器具の消毒に使用されます。生体には有毒ですので、浸漬液は残留しないように十分に洗浄する必要があります。(ホルマリンもアルデヒド系ですが、中水準に区分されます)

過酢酸は強力な酸化力によって器具の消毒に使用しますが、鉄・銅・亜鉛・炭素鋼やゴム・樹脂製品には使用ができないために、使用は限定されます。

その他

消毒薬の範疇には入れられていませんが、ホウ酸・安息香酸・サリチル酸などの酸や、銀化合物・亜鉛塩などの重金属、アクリジン・ロザニリン・チオニンなどの色素も同様な目的で使用されることがあります。

(昔はマーキュロクロムなどの水銀を含有する薬も使用されましたが、今では製造禁止になっています)

エチレンオキサイドはガス滅菌に使用される消毒薬で、エチレングリコールが残留する恐れがありますので、密閉をして使用する必要があります。

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